音楽、文芸、映画。
当日、会場内に立ち入ると、キャンドルアーティスト「AKARIYA」が手掛けたぼんやりと揺らめく光に彩られた幻想的な空間が目に入る。床には芝のように柔らかなカーペットが敷かれて寛げるようになっており、柔らかな漂う空気のように静かに流れているSEサウンドは、耳を澄まして聞いてみると空間に広がりのあるアンビエントな空間を作りあげている。会場のある六本木のビル街とは全く異なる、人間の五感を包み込む優しい時間の流れがあった。
開演時刻になりナカコーが登壇すると、ますはDJセッションからスタート。低周波数で鳴り響くベースサウンドの上に、鳥の声と様々な効果音とリズムが乗せられていく。それぞれ独立しているように鳴り響きながらも、どこか一つにまとまっている。時にはバイクのエンジン音のような低音が激しく鳴り響き、時には漂うように緩やかな音の物語を作り上げている。音の振動に合わせて揺れるナカコーの前に置かれたキャンドルの灯には、キャンドル一つ一つがそれぞれの音を奏でているような感覚に陥った。

DJセットのライブが終わると、トークセッションへ。高校生当時のナカコーとアンビエント音楽の出会いからトークは始まった。彼自身に影響を与えた「ライブラリー・レコード(映画・テレビ番組・放送で使用されるために制作された非商用音楽の総称)」は、2004~2005年頃の電子音楽の復刻ブームの中での出会ったという。また、アンビエント音楽の魅力については「聴いても聴かなくてもいい常に流れているもので、意識するだけだ」と語った。最近の作曲方法は、自宅でDJセットを組んで演奏した内容をライブレコーディングすることもあるという。今後も、サウンドの音像の中の一部にこだわりながらアンビエンスのカッコよさを目指していく旨を語り、第一部は幕を下ろした。
第二部もライブセッションからスタート。暗転した場内にハウリングした音が響き始めるとナカコーが登場。何よりも特筆すべきは、第一部では見られなかった、彼のギターを手に持った姿だろう。

少しの間があってトークセッションが始まる。愛煙家であることから、音楽製作中でも手放さないというタバコにまつわる話から、地元・青森県から東京で音楽を活動する経緯や現在の活動と幅広く話が触れられる。青森からミュージシャンが出ることについては、東北は孤立していて関西のようなつながりのあるカルチャーが少ない分、個性が強い表現をするのではないかと話し、青森という独自の音楽シーンを分析して話した。また、アンビエントやノイズ的な音楽についても、スーパーカーを始める前からナカコー自身はノイズサウンドを録っており、日本のノイズシーンが海外でも評価されていたことなどにも触れ、彼の音楽の支柱の一つにはノイズサウンドが根深くあったことが伺える。また、昨今のサブスク配信の中での音楽との出会い方の変化や、自身の作品背景についても言及した。
本イベントでは、あの空間に元から流れているかのような心地の良い音楽と、暗闇の中で揺らめくキャンドルの彩りは神々しささえも感じる空気感を作り上げた。新型コロナウイルスの影響でソーシャルディスタンスを保った人数制限があったものの、それが更に空間的な余裕も感じさせた。まさに「THE CHILLOUT TIME」というタイトル通り、緊縮した昨今の社会の閉塞感から解放される、居心地の良さを感じたイベントであった。
<イベント情報>
Rolling Stone Japan presents
「Coffee&Cigarettes Talk&Live」
2020年9月5日(土)CUBE六本木
第1部 14:30開場/15:30スタート/17:00終了
第2部 17:30開場/18:30スタート/20:00終了
Candle Decolation:AKARIYA
VJ:Sawano Naoki
PA:Kazuaki Noguchi(THE LAWED HERTZ)