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・一部の隙も無い「Butter」は今年を代表するサマーアンセム
2020年代のグローバルなポップミュージックの世界はBTSを中心に回ることになるかもしれない。彼らの最新曲「Butter」は最早当然の如く全米初登場1位。昨年9月の「Dynamite」を皮切りに、わずか9カ月間で4曲が全米1位奪取というすさまじい勢いだ。
ビートルズが4カ月、シュープリームスが7カ月一週、ジャスティン・ティンバーレイクが7カ月半、ジャクソン5が8カ月半で同様の記録を達成し、それに次ぐのがBTSだと言えばそのすごさがわかるだろう。BTSの全米初登場1位は3曲だが、この記録を凌ぐのはアリアナ・グランデの5曲のみ。今のBTSの勢いならアリアナを抜くのは時間の問題だ。事実として、BTSは世界のトップ中のトップアーティストたちと肩を並べる存在となっている。
そして、「Butter」はそんな彼らの勢いをまざまざと見せつける名曲だ。
BTS (방탄소년단) Butter Official MV
この曲は、シック「Good Times」やクイーン「Another One Bites The Dust」の系譜を継ぐベースラインが印象的な、80年代風の爽快なディスコファンク。韓国のアーティストはターゲットとする国の市場を踏まえて戦略的に曲調を変える傾向にあるが、「Dynamite」から継続して採用された「Butter」のディスコ路線は、ダフト・パンク「Get Lucky」(2013年)やマーク・ロンソン&ブルーノ・マーズ「Uptown Funk」(2014年)に始まり、ドージャ・キャット「Say So」(2019年、ヒットは2020年)に至るまで、ここ10年の北米メインストリームにおけるスタンダードのひとつ。「Dynamite」よりも80年代色が強調されたのは、昨年に特大ヒットを飛ばしたザ・ウィークエンドやデュア・リパが80年代風だったことを意識したのかもしれない。
Daft Punk - Get Lucky (Official Audio) ft. Pharrell Williams, Nile Rodgers
Doja Cat - Say So (Official Video)
つまり、「Butter」はアメリカでの成功を決定的なものにした「Dynamite」の路線を確信をもって推し進めたと同時に、それからわずか9カ月の間でより現代的にチューンアップしてきたということだ。
2020年代ポップの産業構造はBTSを中心に書き換えられる?
BTSが2020年代のグローバルなポップミュージックの中心になるというのは、音楽的な周到さだけが理由ではない。ポップカルチャーとはアートと産業の複合体。BTSは産業面から見ても重要な転換期の中心にいる。
既に報じられている通り、BTSの所属事務所HYBEはスクーター・ブラウンがCEOを務めるイサカを買収。スクーターと言えば、ジャスティン・ビーバーやアリアナ・グランデのマネージャーを務め、テイラー・スウィフトの初期6作の出版権を持つ人物。まさに2010年代の北米メインストリームにおける最重要プレイヤーの一人だ。その会社を韓国の芸能事務所が手中に収めたということは、BTSの全米進出がより勢いづくだけではなく、グローバルなポップ産業の地図がBTS中心で大きく書き換えられる可能性も示唆している。
また、「Butter」にはプロデューサーとソングライターとして、BTSのアメリカでの所属レーベル、コロンビアの会長兼CEOロン・ペリーの名前がクレジットされていることでも話題を呼んだ。ペリーはその慧眼で知られる人物であり、自身が設立した音楽出版社ソングスではザ・ウィークエンド、ロード、ディプロなどと契約。
The Weeknd - Starboy ft. Daft Punk (Official Video)
Lil Nas X - Old Town Road (Official Video) ft. Billy Ray Cyrus
そして、そんな現行のポップシーン最強の目利きが、今もっとも深くコミットしようとしているアーティストの一組がBTSなのだ。実際、BTS初の全編英語詞曲として無数のデモの中から「Dynamite」を選んだのもペリーだという。
BTS (방탄소년단) Dynamite Official MV
もっとも、レーベルCEOのような裏方がプロデューサーだけでなくソングライターとしてもクレジットされるのは極めて稀。ペリーは「曲のアレンジやミキシングまで関わる」タイプだと発言しているので、今回はソングライティングにも関与したということかもしれない。ただ、スクーターがアリアナとジャスティンの2020年コラボ曲「Stuck With U」に同じくソングライターとしてクレジットされていたことを踏まえると、2020年代における産業構造の変化の中で新しい利益配分の形が模索されているのではないか?と考えても穿った見方ではないだろう。
BTSのことを「K-POPの世界進出」という切り口で語るのは最早ナンセンスだ。2020年代のグローバルなポップミュージックは、あらゆる面でBTSを中心に動こうとしている。
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Edited by The Sign Magazine