DEAN FUJIOKAが3年振り通算3枚⽬となるニューアルバム『Transmute』を12⽉8⽇(水)にリリースする。今なお予測不能な状況の世界を生き抜くために、「”変異”していくことが⼤切である」というメッセージがタイトルに込められた今作。
新曲の他、既発曲をリアレンジした「History Maker 2021」「One Last Sweet Talk」「Neo Dimension」も収録されており、まさに変異し続けるDEANの現在を体感できる作品となっている。今回のインタビューでは、現在開催中のツアーで感じていること、アルバム収録曲について、さらに自ら主演・企画&プロデュースした映画「Pure Japanese」(2022年1月28日(金)公開)についても話を伺った。

―自身最大の規模となる18都市20公演での全国ツアー「DEAN FUJIOKA "Musical Transmute" Tour 2021」の20公演中13公演を終えて終盤に入っています。久しぶりの有観客でのライブを重ねてきて、今どんな想いを持っていますか。

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まだソーシャル・ディスタンスを取る必要があったり、一緒に歌ったり踊ったりしたりできないこともあって、どうやったら会場に来ること、その空間にいることを選んだ意味を感じてもらえるか、魂が共鳴するような体験を味わってもらえるかを考えました。今は、1時間半~2時間の演目を見るときにお客さんは座っていて拍手ぐらいしか物理的な行動ができない。
そこで今回、初めてライブのために脚本を書いて演出を作ったんです。

―ご時世柄、そうなってしまいますね。

そうなったときに、物語の中に引き込むことでしか、以前の「みんなで騒ごう!」というアプローチ以外でお客さんを惹きつけ続けるのは無理だと思ったんです。それでプロットを作り始めて、それをもとに演出、曲のアレンジ、照明、小道具などを作っていきました。やっと有観客でできるようになって、でも以前とは全く違うルールのゲームの中でやっているわけで、そういう意味ではピンチでしたけど、苦肉の策でやってみたものがチャンスに変わって、新しい発見がありました。アルバムタイトルに「Transmute」、”突然変異”とつけたように、 どうやったら1つ1つの会場をTransmuteさせられるかというコンセプトでやってきて、既にもっと大きな物語を作れる可能性を感じましたし、もっとやりたいって思いました。
今まではどこかサイズが上がっていくことに対して演目として見せるクオリティが反比例するようなトレードオフな関係だなと思っていて。

―会場規模が大きくなるにつれて、感じてきたということですか。

例えば、3万、4万規模になったときにお客さんはどういう気分になるのかなと思っていて。どうしても自分のモチベーションがそこに向かわなかったんですよね。まあ、やってる方は気持ち良いだろうけど(笑)。

―お客さんが置き去りになっちゃう可能性がある、と(笑)。


観ている人はぶっちゃけどうなんだろうって。それは配信ライブをやったときにも思ったんですけど。曲が良い、パフォーマンスが良いとしても、観ているのは15分が限界で、なかなか好きだけで引き付けられないんですよね。それをどうやったら引き付けられるか、お客さん1人1人の生理現象を理解してそこから逆算して演目を作らなきゃいけないことを考えました。それは大きなハコでやるのも同じかなって。大事なことは、ステージから一番遠いところにいる人でさえも、今日この瞬間ここにいることを選んでよかったと思えるような演目作りをしないといけない。
その為にどういうことをやったら良いのか、というのは、すごく考えさせられましたね。

―こうしてツアーが進んでいると、既に完成されている今回のアルバムに対するDEANさんのモードも違っているのでしょうか? そこも”変異”しているのかなと思うのですがいかがですか。

そうですね。音源を超えなければダメだなというのは使命として今思います。音源って、どうしてもまとまっちゃうじゃないですか? それに、曲によっては3年ぐらい前のものもあるし。この2~3年は世の中の変化も大きかったですけど、自分の変化も大きかったので。
常にアップデートしないといけない立場でもあると思いますし、そういう意味では完全に過去ですね。

―今作は過去にリリースされた曲と新曲が混在していますが、新曲はいつどんな形で書いているんですか? 音楽以外の仕事も多忙な中、これだけの曲を書くというのもすごいなと思います。

1stアルバムのときは詞曲を作ってスタジオでプロデューサーと一緒にアレンジを仕上げて完成させていって、2ndアルバムのときはコライトの数をすごく増やしたんです。今回の3rdアルバムはそうしたこれまでの作り方を全部踏襲した上で、初めて詞曲からプロデュースまで自分でやった曲もありました。なので、曲によっては全部コツコツやらないといけない曲もあれば、ゼロからスタジオのセッションで仕上げていく曲もありました(「Sayonara」「Sekken」「Missing Piece」など)。

―曲ごとに構築のされ方が全く違うわけですね。
『Transmute』というタイトル、コンセプトはツアーの構想が出てくる中で決まったのでしょうか。

いや、アルバムが先です。昨年末の配信ライブが終わって、明確な変化があって、それこそ「トランスフォーム」という言葉でも足りないぐらいの爆発的な変化だなと思い始めたので。『Transmute』というタイトルはミューテーションから来てるんですけど。何か、ミュータントにならなきゃなっていうか(笑)。

―そここそ、世の中誰もがそうなっていかざるを得ないということですか。

まあ、結果そう受け取ってもらってもいいですけど、まずは自分ですね。自分がやることからしか変化は生めないと思うので。

―よく、「コロナ前のように戻ったらまたこうしよう」みたいな会話を日常生活で交わすこともあるのですが、DEANさんの中には”戻る”という感覚はないですか。

戻りたくても戻れるのかな?っていう感じですね(笑)。時代って不可逆性だから、一度起こったら戻れないんですよね。変化に適応するしか生き残る方法はないって、自分は考えてますね。それが、『Transmute』というタイトルに繋がりました。

―1曲目が「Hiragana」、最後の曲が「Sekken」という共に抒情的な曲がアルバムの始まりと終わりに置かれていることがとても印象に残りました。この2曲にはどんな思いが込められていますか。

「Hiragana」を作ったきっかけは、自分が企画プロデュースする映画(「Pure Japanese」)とも関わってくるんですけど、もっと言うとアルバムを作っているときに大河ドラマ(「青天を衝け」)を撮っていたことなんです。大河では、当時の明治維新の偉人たちの姿を垣間見ながら、自分も五代友厚という役を演じているんですけど、役作りの中で、その時代の人たちの滾る思いを目の当たりにしていて。ふと1人になったときに、その偉人たち、とくに自分が演じた五代さんに関しては、「後世に対してこういうことを思っていたんじゃないかな?」ということを感じたんです。五代さんが夢枕に立って、「君はこういう曲を作りなさい」と言われているような気がして。当時は藩がたくさんあって、まだ日本という概念がなかったんですよね。そこから日本国という概念を作り出していった人たちが後世に何を残したかったのかって考えたんです。ひらがなって、もともと女性の言葉で、ひらがなを使うことイコール女性という文学の成り立ちですよね。だから、母国語を表すのには「Hiragana」というタイトルがピッタリだと思ったんです。自分が勝手に作った明治維新のインスパイアードソングみたいな感じです。これが1曲目に合うと思ったし、アルバムも1つの映画みたいなものだと思うので、1本の映画を作るとしたらこの曲順にすることで物語が一番重層的になると思って18曲を並べました。

―最後の「Sekken」は、どういうテーマで書いた曲ですか。

最近、新宿歌舞伎町の治安の問題とかがよくニュースになってるじゃないですか? 今、そういう経済の衰退とか貧困の問題とかが諸所に表れていると思っていて。そんな日常の一コマですかね。

―「History Maker 2021」は、2016年発表の曲ですが、今回THE CHARM PARKさんによる新たなアレンジで収録されていますね。どんなイメージで制作したのでしょうか。

曲が3拍子のワルツっぽいものからコモン・タイムに切り替わるというのはすごく大きな変化で。どっちにもその良さがあると思うんですけど、ライブではコモン・タイムの方がすごく映えるなと思ったし、自分の中でこの曲の可能性をもっと引き出したいという気持ちがずっとあったんです。それで今回CHARMさんにお願いして、タイムレスな曲に生まれ変わらせたいと思って、ストリングスをメインに活かすような形で作りました。

―「One Last Sweet Talk」では1stアルバム収録の「Sweet Talk」を大橋トリオさんがリアレンジしています。

大橋トリオさんとは、自分がパーソナリティを務めるラジオでご一緒させていただいたときに「何か一緒にできたらいいですね」という話をしていて、今回アレンジをしてもらいました。もちろん、新しい曲を作るのもいいんですけど、タイムレスなものを作りたいという気持ちがより強くあって。1stのときに「Sweet Talk」という楽曲を作ったときは、なし崩し的にこれしかできなかったからああなった、みたいなところがあったんですよね。これから先の未来に連れて行きたいと思ったので、この曲を生まれ変わらせたくて、その過程を大橋トリオさんと歩んだ感じですね。

―新曲の「Spin The Planet」はポジティブなメッセージを感じました。どんなコンセプトで書いた曲でしょうか。

生き物同士の関係性をダブルミーニングにして作った曲です。SDGsじゃないですけど、地球も生命体じゃないですか? 地球も人も傷つくし、でも生きている。どうやってその傷と付き合って前に進んでいくかということですよね。この曲を作ったときが、ちょうど映画「Pure Japanese」の撮影期間中で、日光ロケで山籠もりをしていて。宿泊先の畳の上から、日光名物の霧で隠れた山、森を見ながらこの曲を作ったんです。それもあって、ちょっとenvironmentally friendly (エンバイロンメンタリー・フレンドリー = 環境にやさしい)な感じになったのかなって思います。

―映画「Pure Japanese」が曲作りにもかなり関係しているようですね。映画はどんな内容になっていますか?

現代社会に於いて日本人の定義は何なのか?というところからスタートした映画です。というのも今、DNA的には両親が日本人でも、海外で生まれ育って国籍も使う言語も日本じゃない人って普通にいるじゃないですか? 逆に両親は日本人じゃないけど日本で生まれ育って日本語を母国語として使うもいる。それが普通な時代になったときに、「何を以って日本人という定義になるのかな?」って考えたんですけど、やっぱり”日本語人(にほんごびと)”だなと思ったんです。今、こうやってコミュニケーションで自分の行動や思考のOSとして日本語を使っていますけど、このOSがじつは何かのクラウドみたいな得体のしれない存在だとして、独自の意思、目的を持って言語OSのDNAを伝えるために、我々人間1人1人を乗り物として使っているとしたら、どうなんだろうっていうところから企画を作り始めて、それをもとに映画を作ったんです。文化の輪郭を浮き彫りにする方法っていろいろあると思うんですけど、暴力ってある意味信仰みたいなものと結びつくところがあるから、すごくわかりやすいなと思ってアクション映画にしました。

―コミュニケーションするために言語OSとして日本語を使っているというのは面白い発想ですね。その感覚ってやっぱりDEANさんが海外でも活動してきた方だからなのかなと思うんですよ。今回のアルバムでは、アーティスト写真やジャケットといったアートワークでもDEANさんのアイデンティティが表現されているように感じました。

ありがとうございます。今回のグラフィックに関しては、ロシアの構成主義、ロシア・アヴァンギャルドをコンセプトに、ツアーのグッズも含めて作っていきました。ツアーでは、会場1つ1つを変異させていく"Musical Transmute"というコンセプトを会場に入った瞬間に感じてもらわないといけないので、どうやったら1つずつ趣の違う会場の空気を整えられるかを考えたときに、ストラヴィンスキーの曲でプレイリストを作って客入れのBGMにしたんです。食事で言うと、それで舌を整えてもらうみたいな(笑)。

―なるほど(笑)。会場に足を踏み入れた瞬間から"Musical Transmute"のコンセプトを味わっているという。

そうですね。アルバムのグラフィックに関してもそういうものがあるんです。今回のアルバムが何故3パターン違うジャケット(初回限定盤A『Transmute (Trinity)』初回限定盤B『Transmute (Lucaism)』、通常盤『Transmute (Epigenesis)』)になっているかというと、『Transmute』は爆発的な細胞レベルの変化だと思って作っているので、ゲノムとかDNAとかをすごく意識しました。先天的なDNAが持つ、生物の形を作るための設計図と同じぐらい、生命が大きな影響を受けるのは、後天的な環境の影響や、加齢による変化だったりするんです。そういう後天的な遺伝子レベルの変化を言葉でいうと「Epigenesis」(エピジェネシス/後成説)と言うんですけど、自分が人間として生きていて、身体中で「Epigenesis」を浴びて経験している状態のことを指しています。「Lucaism」(ルカイズム/共通祖先)に関しては、生物には共通の祖先というものがいるのではないかということで、1つの細胞がジャケットで表現されています。「Trinity」(トリニティ/ 3)のグラフィックに関しては、3枚目のアルバムで且つ3つのジャケットのパターンということもあって、自分の子どもたち3人をベースにしてMADSAKI君に作ってもらいました。

―3枚それぞれのジャケットの印象が全く違うのはそういう理由なんですね。

これは逆から遡ってリリースしているのがミソで、本当だったら細胞1つから恐竜になって哺乳類が生まれて、みたいになると思うんですよ(笑)。でも、未来を象徴した自分の子どもたちから始まって、自分という後成説「Epigenesis」を体験している1つの肉体の存在があって、元を辿ると1つの生命体「Lucaism」からみんな生まれているっていう流れがいいなと思ったので、一番最初に『Transmute (Trinity)』を先行配信リリースしたんです(10月29日に12曲入りのデジタルアルバムとして先行配信リリースされた)。そうやって、ツアー、リリースまわりが重層的に流れていくのが面白いなと思っています。

―2021年も終わりに近づいていますが、来年以降はどんな活動をお考えですか?

パフォーマンス・シアターアーツという意味では、今まで運動会みたいなアプローチでしか見せることができないのかなと思い込んでいたような場所で、その空間を全部使って1つの物語を作りたいなという気持ちがあります。音源に関しては、「とにかく良い音楽を作り続ける、以上」という感じですね(笑)。映像に関しては、今も作り続けているので、自主IP企画みたいなものも引き続きやっていきたいですね。

<リリース情報>

DEAN FUJIOKAが語る、コロナ禍以降の“突然変異”


DEAN FUJIOKA
3rdアルバム『Transmute』

発売日:2021年12月8日(水)
https://www.deanfujioka.net/transmute/
【Musical Transmute ”The Trinity”キャンペーン実施中!】
参加した方の中から豪華商品が当たるキャンペーンをお見逃しなく。
https://www.deanfujioka.net/musicaltransmute/thetrinity/
=収録曲=
1. Hiragana
2. Spin The Planet
3. Neo Dimension
4. Plan B
5. Sayonara
6. Missing Piece
7. Sukima
8. History Maker 2021
9. Follow Me
10. Runaway
(フジテレビ系⽊曜劇場『推しの王⼦様』挿⼊歌/ FOD スピンオフドラマ「ぼくの推しは王⼦様」主題歌
全⼒脱⼒タイムズEDテーマ(8-9⽉))
11. Scenario
12. Take Over
(⽇本テレビ系「スッキリ」3⽉テーマソング)
13. Searching For The Ghost
(フジテレビ系ドラマ「シャーロック」オープニングテーマ)
14. Go The Distance - JP Ver.
15. Made In JPN
(テレビ朝⽇系「サタデーステーション」「サンデーステーション」エンディングテーマ)
16. One Last Sweet Talk
17. Shelly
(フジテレビ系ドラマ「シャーロック」主題歌)
18. Sekken
【CD】
初回限定盤A:『Transmute』(Trinity) / CD+DVD LPジャケット仕様
DEAN FUJIOKA 1st Asia Tour 2019
”Born To Make History” 2019.3.30 @NHK Hall(※全楽曲収録予定)
価格:6600円(税込)
品番:AZZS-118
初回限定盤B:『Transmute』(Lucaism) /CD+DVDデジパック三方背仕様
アルバム「Transmute」に込められた想いや制作の舞台裏、真相に迫る
全国ホールツアー「DEAN FUJIOKA ”Musical Transmute”Tour 2021」初⽇までを追ったドキュメンタリー
The Journal of Transmutation
Plan B - Music Video
Runaway - Music Video
Runaway - Behind The Scenes
Fukushima - Lyric Video
Sakura - Lyric Video
価格:6600円(税込)
品番:AZZS-119
通常盤:『Transmute』(Epigenesis)/CD+DVD
DVD:昨年末に行われた初のストリーミングライブ「Plan B」のライブ映像を全曲収録
価格:5500(税込)
品番:AZZS-120
※商品の内容は、予告なく変更になる場合がございます。

<ライブ情報>

「DEAN FUJIOKA "Musical Transmute" Tour 2021」

https://www.deanfujioka.net/musicaltransmute
2021年12月18日(土)東京・LINE CUBE SHIBUYA
2021年12月19日(日)東京・LINE CUBE SHIBUYA
2021年12月25日(土)大阪・オリックス劇場
2021年12月26日(日)大阪・オリックス劇場

DEAN FUJIOKA Official Site:http://www.deanfujioka.net