【写真を見る 全7点】金ピカの入れ歯ではない、れっきとしたアクセサリー
ラッパーJust-Iceのために作った1セットがアルバム『Kook & Deadly』のアートワークに登場すると、プレイン氏の名前が知れ渡り、たちまち家族経営の店の前にはグリルズを買い求めるラッパーたちが長蛇の列をなした。「急に若者たちは目にしたものを真似しはじめ、ラッパーたちもみな――フレイヴァー・フレイヴやクール・G・ラップやジェイ・Zなど――流行に乗り遅れまいと彼のもとにやって来た」と、リンドグレン氏はハック誌とのインタビューで語った。だがプレイン氏でさえも、現代のグリルズ製作者には舌を巻くことだろう。デジタル時代で作品が市場に出回るようになった今、製作者も世界のあちこちに存在している。
グリルズ復活の理由もそこにある。リル・ナズ・Xやエイサップ・ロッキーが新作ビデオで着用し、ロバート・パティンソンが特注品をつけて雑誌の表紙を飾り、流行りものは決して見逃さないマドンナも、『トゥナイト・ショウ』で自前のグリルズを披露した。
日本のヒップホップシーンの中心地から太陽が降り注ぐロサンゼルスまで、引く手あまたのジュエラーたちを紹介しよう。みな常識を覆し、ひと昔前には想像もつかなかったような作品を作り上げる面々だ。
1. 秋山哲哉
場所:日本、東京
顧客:エイサップ・ロッキー、YZERR、ゆるふわギャング、SWAY、スティーヴ・レイシー

©秋山哲哉
東京都北部の台東区の中心に、今もっとも尊敬を集めるジュエラーの1人、秋山哲哉氏がいる。かれこれ20年近く日本の名だたるアーティストのために腕を振るってきた人物だ。
口を閉じることができないスパイク
2. クローヴァ・レイ・スミス
場所:イギリス、ロンドン
顧客:Bree Runway、VTSS

©クローヴァ・レイ・スミス
クローヴァ・レイ・スミスの作品についてひとつ言えるのは、どれもデザインが実験的で型破りだという点だ。ロンドンを拠点に活動するジュエラーは、しばしば彫刻的なアプローチを用い、ユーザーの歯にぴったり合わせて、ぴかぴかに磨き上げた野生のツタのような有機的な形のグリルズを作り上げる。好奇心をかき立てられると同時に魅惑的だ。
3. イアン・デルッカ
場所:カリフォルニア州ロサンゼルス
顧客:J・バルヴィン、BFRND、キム・ジョーンズ

©イアン・デルッカ
音楽業界とファッション業界のもっとも華やかな中心にいるのがイアン・デルッカだ。彼が手がけた2万ドル相当のairpodは、ディオールのデザイナーのキム・ジョーンズにも愛用された。悪名高きバレンシアガの作曲家BFRNDの首元や、J・バルヴィンの白い歯を飾ったのもデルッカの作品だ。ハーパースバザー誌の撮影現場でバルヴィンと出会った後、「すぐに意気投合した」と彼は述べている。「作りたいと思っていたグリルズのスケッチを何枚か彼に見せた。それがきっかけだった」 ニコロデオンのアニメ番組『スポンジ・ボブ』の20周年に寄せて製作したグリルズは、印刷技術を駆使して14金のベースにグラフィックを施した極めてユニークな作品だ。グリルズの未来は「オート・ジュエリー」になるとデルッカは予想する。「高級ジュエリーの視覚表現は広がっている。グリルズがそうした流れのひとつになるのは避けられない」
4. ファニータ・カレ
場所:メキシコ、メキシコシティ
顧客:Yung Beef、La Zowi、ヤンリーン、ドージャ・キャット

©ファニータ・カレ
ファニータ・カレの作品は度肝を抜くことが目的ではない。ブリュッセルやマルセイユで過ごした後、現在はメキシコシティを拠点とするカレは、仰々しく、これでもかというほど奇抜な作品を作る。
父子ともにグリルズ職人
5. Alligator Jesus
場所:カリフォルニア州ロサンゼルス
顧客:バッド・バニー、リル・ナズ・X、ロバート・パティンソン、オジー・オズボーン、ビリー・ジョー・アームストロング

©Alligator Jesus
始めは大学時代のサイドプロジェクトだった。だがAlligator Jesusことデヴィッド・タマルゴのビジネスはあっという間に世界的センセーションを巻き起こし、いまやセレブ級のファンが軒並みオリジナル作品を求めにやってくる。リル・ナズ・Xやバッド・バニーなどのアーティストが、InstagramやTwitterで総計5400万人のフォロワーに向けて得意げにひけらかすのも頷ける。インセイン・クラン・ポッシー――タマルゴ自身も熱烈なファン「ジャガロ」だった――のグッズ販売やWEBサイト製作に明け暮れた若いころの影響に、映画やアートの情熱を融合して製作したグリルズは、2000年初期の華美なデザインと職人的な手法が溶けあう、いままで見たこともない作品だ。
6. ギャビー&イーラン・ピナソフ
場所:ニューヨーク州ニューヨーク
顧客:タイラー・ザ・クリエイター、デュア・リパ、ウータン、リル・ウージー・ヴェート

©ギャビー&イーラン
ニューヨークの由緒あるダイアモンド地区に居を構える父と息子の2人組。無限のクリエイティビティを発揮して、デュア・リパやタイラー・ザ・クリエイターなどのミュージシャンの口元を彩っている。息子のイーランがローリングストーン誌に語ったところによると、1990年に渡米した父のギャビー・ピナソフ氏は「イスラエルで培った歯科技師の経験を活かして」すぐに開業したそうだ。
【関連記事】タトゥーを顔に入れる時代「フェイス・タトゥー」アーティスト11人
from Rolling Stone US