英語カバーが大きな話題を呼び、着実に注目を集めているAnonymouz。

そんな彼女が全世界600億ストリーミングアーティストFleurieとのコラボレーション楽曲「Pink Roses」をリリースした。
年齢もキャリアも国籍も異なる2人は、どのようにして今作を完成させたのか。制作にまつわるエピソードから、お互いが感じるアーティストとしての魅力まで、Zoomを通して対談を行った。

関連記事:ベールに包まれたシンガーAnonymouzが告白

―今回はAnonymouzさん、FleurieさんによるZoom対談となります。まずは、アーティストとしてのお互いの印象を教えていただけますか?

Anonymouz:すごく特徴的な声で、優しさや可愛らしさの中に芯が通っていて、本当に素敵なアーティストだと思います。

AnonymouzとFleurieが語る初コラボ曲、真の純粋さ描いた「Pink Roses」

Fleurie

Fleurie:彼女の歌声が好きで、歌詞で綴る描写が好きで、曲に込められた愛や柔らかさにも魅力を感じました。あとは衣装も好きです。
個性的なアクセサリーで隠すことによって、Anonymouzというアーティストのミステリアスさを引き立てている。とても神秘的でありながら、曖昧ではなく主張もハッキリしている。ひとたび歌い出せば彼女の内側が露わになって、みんなが共感するんです。

Anonymouz:ヘアアクセで素顔を隠しているからこそ、真っ直ぐに感情をぶつけられるというのがあって。そこを理解していただけたのがすごく嬉しいです。私もFleurieさんの声が大好きなので、歌声を褒めてもらえるのは感激です!

―そんなお二人は今回「Pink Roses」で初コラボを果たします。
どういう経緯で決まったのでしょう?

Anonymouz:担当スタッフがFleurieさんと知り合いだったのが、ことの始まりでした。

Fleurie:ええ。彼は大学時代からの友人なんですけど、ある日「日本人のミュージシャンとコラボしないか?」と連絡をもらいました。というのも、私は以前から日本が大好きで「私の音楽を日本でもっと聴いてもらいたい。そして日本人アーティストとコラボしてみたい」と彼に話していたんです。

―日本のどんなところがお好きなのでしょう?

Fleurie:人々の誠実さやお互いを尊重するのもそうですし、東京のカラフルなところにも惹かれています。
私は本が好きなんですけど、渋谷の小さなブックストアを巡るのがすごく楽しかったんですよ。ただ歩き回るだけでも街のエネルギーを感じられて、今までに訪れた街とは全然違う印象を受けました。

―Fleurieさんが日本好きだったことを覚えていて、コラボを提案されたと。

Anonymouz:そもそもFleurieさんがフィーチャリングで参加されたLinkin Parkの「In The End」のカヴァーは有名ですし、最近はアルバム『Supertropocali』をよく聴いているんですけど、リード曲の「Supertorpicali」も好きですし「That Kind Of Girl」も大好き。「そんな有名アーティストさんとコラボできるの!?」と驚きが大きかったです。

Fleurie:ありがとう(笑)。
「コラボをするに当たって何か曲のアイデアはある?」と尋ねられて、以前から温めていた「Pink Roses」を提案しました。そしたら彼女(Anonymouz)も興味を示してくれて、思わず胸が踊りました。最初は私の手元にあった楽曲を提供するだけと思っていたんです。ところが、彼女が「一緒に歌いたい」と言ってくれて、とても嬉しかった。それで一緒に曲作りをすることになりました。

―楽曲制作はどのように進められたんですか?

Anonymouz:まずはFleurieさんからデモをいただいたんですけど、私が歌うパートにも英語の歌詞が付いていたので、そこを自分なりの解釈で日本語に書き換えて。
最終的には英語と日本語の歌詞の良いところを選んでいって、1曲に仕上げました。

Fleurie:それぞれの芸術性を持ち寄ることが出来たのは素晴らしいことで、とてもよくマッチしたと思ってます。

―「Pink Roses」にどんな思いを込めたのでしょう?

Fleurie:「もし本当の私を知っている人が、私に恋してくれたらどうなるのか?」という白昼夢のような内容です。あなたのことを知りたいと思っている人、あなたを大切にしたいと思っている人が登場して、大切にされることでいかに心が生き生きとさせられるのか、という歌になっています。

Anonymouz:すごい可愛い恋の曲、というのが第一印象でした。私はそういう曲をリリースしたことがなかったので、とにかく新鮮でワクワクして。
元の歌詞に”ピンクのバラをもらったんだ” という英詞があるんですけど、私はそれを<トキメキをもらった>とか<恋をある日もらった> と解釈しました。「まだ片想いだけど、きっと相手も私に恋心が芽生えている」って確信してるような、そんなイメージで日本語部分の歌詞を書いていきました。

―これまでは感傷的な心の機微、デリケートな内面を表現する楽曲が多かった中、可愛い恋愛曲を歌うことはなかったですよね。

Anonumouz:ここまでストレートに恋愛を表現した曲はなかったので、すごく嬉しいです。やっぱり片想いっていうテーマがあると、”赤らむ頬” とか ”高まる胸” とか、すごいワクワクするような、キラキラした言葉が多くて。自分なりに片想いの曲を沢山聴いて「確かに、この言葉一つで恋って伝わるな」と発見や研究をして、それを歌詞にも反映させています。

―情景が浮かぶような楽曲ですよね。

Anonymouz:そうですね。主人公の女の子は、好きな人の隣でキュンキュンしてときめいている。相手からはピンクのバラをもらっているのに、なかなか自分の気持ちを伝えられずにいる。いい意味でのもどかしい画を思い浮かべながら、歌詞を書きました。

Fleurie:私がしたいと思うデートをイメージして、私自身をキャラクターに当てはめる感じで歌詞を書きました。

―Fleurieさんがしたいデートって?

Fleurie:先ほどお話ししたように、ブックストアへ行くとか食事へ行くとか、そんなシャイでシンプルなデートってあるじゃないですか。誰かと恋に落ちた時って、美味しいものを食べたり素敵なスポットへ行ったり、そんな贅沢をしなくても相手と一緒にいられるだけで良くて。楽曲を作る上で想像していたのは、シャイな女の子が男の子と出会って、お互いがお互いのことだけを見ている。それでピンクのバラをもらうことで関係性が爆発するイメージです(笑)

―ハハハ。作曲に関しては、どんなことを意識して作られましたか?

Fleurie: 友人のCOLEとZach Nicitaと一緒に作ったんですけど、ともに天才的なソングライターなんですよ。メロディに関してはCOLEがかなり手助けをしてくれました。『Song Land』という、ソングライターが有名シンガーやバンドに曲を書いて、彼らがソングライターたちをジャッジして勝者を決めるっていう、言うなれば『The Voice』や『アメリカン・アイドル』のソングライター版のようなTV番組があって。彼女はその番組のファイナリストの一人で、とっても素晴らしいソングライターなんです。サビの”pink roses”の部分も彼女のアイデアなんですよ。Zachはロサンゼルス在住で、沢山のアーティストに楽曲提供をしているのですが、この曲のストリングスを含む全ての楽器、ストリングス・サウンドを担当してくれました。さらにメロディにおいても、多くのインスピレーションも与えてくれました。

―2人なくしては、この曲は生まれなかったと。

Fleurie:そうです。曲のAメロ部分を書いたのですが、私たちは「とってもクールだね!」と盛り上がっていたら、そこにCOLEが”ピンク・ローゼス”のメロディを乗せ始めて同時に生まれたんです。私たちは歌詞のストーリーに寄り添うような、キュートで遊び心があってハッピーなサウンドを作りました。同時にラジオのサウンドトラックだったり、人々がTikTokで使いたくなるような、聴く人が心地良くなる最高のビートになっています。

Anonymouz:すごく甘いメロディなんですけど、裏のアレンジではサビの部分で深めのビートが入っているので、リズムが取りやすくってノリやすい。楽曲の世界観はもちろん、そのギャップもすごい好きです。

―レコーディングでは、どんなことを意識しながら歌われましたか?

Anonymouz:ちょっと奥手な女の子が、どうにかこの恋を成就させたいと思っている一生懸命さや、先ほどお話しした情景を思い浮かべながらレコーディングしました。

Fleurie:恋に落ちた時のことを思いながらレコーディングしました。メロディがとても楽しいので、そのテンションで歌うこと、心地よくなることを心がけました。Anonymouzさんが語りかけるようにラップする”I used to be a flower on the wall”の箇所は私がこれまでに決してやったことのない歌唱法。『Supertropicali』を作り始めた頃に、楽曲の中に語り描けるようなパートを模索してみようと思っていたんです。テイラー・スウィフトがやっていたり、他のアーティストもやっていることだったので私もトライしてみたかったので、初めてそれを聴くことが出来てとても興奮しました。

Anonymouz:私も話しかけるような歌い方は初めてでした。それを恋している女の子風に表現するのが大事だと思ったので、良いテイクが録れるまで何度も歌いましたね。翻訳もFleurieさんが作ってくださった世界観を壊さないようにってすごく意識していたので、今温かい言葉を頂けてすごく報われた気持ちです。

―改めて「Pink Roses」はどんな楽曲になりましたか。

Fleurie:タイムリーなサウンドでありながら同時にタイムレスでもありますので、この曲にとても自信を持っています。この曲は私にとってとても大切なものとなりました。

Anonymouz:新鮮なメロディやソフトラップのところもそうですし、サビの伸ばしながら揺れる箇所とか、私には思いつかなかったことばかりで。それをアメリカのシンガーソングライターの方々とコラボできたことで、Anonymouzだけでは生まれなかった楽曲がリリースできるのはすごく嬉しいです。ソングライティングの部分でも、とても勉強になりました。

―せっかくの機会なので、お互いに聞いてみたいことはありますか?

Anonymouz:じゃあ私から良いですか? どのように作曲しているんですか?

Fleurie:歌詞を元にイメージを膨らませることもありますし、リズムだけでメロディがついていないこともあります。時にはメロディがあって「この音は何を語っているのかな?」と探っていく場合もあるので、ソングライティングの方法は毎回異なりますね。

Anonymouz:(※ここからAnonymouzも通訳を介さず、自ら英語でFleurieに話しかける)曲作りの方法が楽曲によって異なるというのは興味深いお話でした。歌詞を先に書くこともあれば、メロディを聴いてそれが何を語っているのかを聞き取ることもあるというのは、私の今後の曲作りでトライしてみたいです! ちなみに、その素敵な歌声は自然に歌っていたら出来上がったのか、試行錯誤して見つけたのか、どうなんでしょう?

Fleurie:とてもいい質問ですね! 現在の歌声に辿り着くまで、長い時間がかかりましたね。レコード会社との契約ではなく、この7~8年ずっとソングライティングの出版契約を結んでいて。その契約の下、TVや映画への楽曲提供をしていて、シーンに合わせた特定の楽曲依頼を受けているんです。例えば、消防士をテーマにした新しいTV番組があったとして、彼らがいかにして人々を救出するのかというのがストーリーだとします。そうすると私たちはヒーローに関する曲を書くことになる。その大まかなストーリーを経て、誰かのヴィジョンに私の歌声を反映させるのですが、常に(物語の中の)キャラクターを演じることを必要とされるんですよね。しばらくすると、どのキャラクターが私なのか、そのキャラクターがどう感じるのかが分かってくるんです。そこから私自身の音楽を作り始めます。

Anonymouz:あなたの歌声はとてもナチュラルで、まるで物語を語っているようで大好きです。演技をしているわけではなくて、様々なキャラクターの中でご自身のスタイルを見つけている。それはきっと、歌声の中に沢山のストーリーを込めているんでしょうね。

Fleurie:私からも質問したいんだけど、あなたの夢は何ですか?

Aonnymouz:こうしてレコード会社から自分の曲をリリースできることはとても幸せなことで、私が本当に幼い頃から思い描いていたことだったから、人生の目標は一生歌い続けて行くことです。

Fleurie:素敵ですね。

Aonnymouz:もう一つ質問があるんですけど、好きなアーティストはいますか?

Fleurie:私のお気に入りのバンドはコールド・プレイ。

Anonymouz:私も好きです!

Fleurie:お気に入りの女性アーティストはテイラー・スウィフト。ソングライティングについて考える時、クリス・マーティン(コールド・プレイ)と彼のソングライティング、そしてテイラーに対して感謝しているんです。彼らは共にストーリーを曲の中に描きますし、ポップミュージックの歌詞の中に詩を多用することで大勢の人の心に届くんですよね。あなたはどう?

Anonymouz:私もテイラー・スウィフトが好きなので、嬉しいです。

Fleurie:彼女はとってもいいですよね!

Anonymouz:はい! 今年はオリヴィア・ロドリゴをよく聴いていました。彼女もまた本当に沢山のストーリーをシェアしてくれているので。今この2人が私のお気に入りのアーティストですね。

―最後はお互いに今日の対談を通して感じた人柄や、伝えたいメッセージをお願いします。

Anonymouz:曲作りの面でもストーリーを作るところからも、思い描いていることとか感じていることなど、何においても考えが行き渡っている人だと思いました。すべてにちゃんと意味があって、とにかく素敵な人だなと再確認しました。

Fleurie:私が彼女に関して知っているのはわずかですが、それでもピュアな心の持ち主だということは言い切れます。あなたは自分自身のためだけでなく、歌唱を通して周りの人に喜びをもたらすように努めている。周りの人の気持ちを理解しようと歩み寄っています。あなたはしっかりとしたヴィジョンを持った本物のアーティスト。そのヴィジョンを信じて進んでください。あなたの周りにいる人があなたをサポートしてヴィジョンが育って形になることを楽しみにしています。また、あなたのアルバムを楽しみにしています。あなたはとてもクリエイティブで聡明で、そしてスウィート。あなたのキャリアが花開く日をとても心待ちにしています。

Anonymouz:素敵な歌声とメロディセンスの持ち主であるあなたとソウルメイトになって、一緒に曲を作ることが出来て光栄です! 多くの人がこの曲を好きになってくれるはずですし、この曲を聴けば、世界は少し明るく優しくなると思います。このような機会を頂けたことに感謝します。ありがとうございます。

Fleurie:この曲には真の純粋さがある。純粋で、若い愛、そして甘くて無邪気な曲です。多くの人がこの曲を自分という物語のサウンドトラックのように感じる、という意見に賛成ですし、その役割をアーティストとして担えるのは素敵なこと。私たちが物語を描き、他の人たちは自分たちの物語を作り、そこに自分たちの想像力を注ぎ込む。そんな作業を一緒にできたことを光栄に思います。そして、このプロジェクトを通じて、日本に新しい友人ができました。

Anonymouz:ありがとう(ニッコリ)。

<リリース情報>

AnonymouzとFleurieが語る初コラボ曲、真の純粋さ描いた「Pink Roses」


Anonymouz feat. Fleurie
「Pink Roses」 
配信中

Anonymouz
『Ladder』
2022年11月16日(水)CDリリース
※2022年10月31日(月)先行配信リリース

Anonymouz
メジャー1stフルアルバム『11:11』
2023年2月15日(水)CDリリース

Anonymouzオフィシャルサイト:https://anonymouz.jp/