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─2023年後半以降、LiSAさんはライブ活動をより活発化させた印象があります。今年も4月に日本武道館2DAYS公演があり、さまざまなロックフェスに出演。特に最近は観客の声出しも解禁されたこともあり、2020~2022年の制限があった環境から少しずつコロナ前に近い環境に戻り始めています。
LiSA:そうですね。一度制限されたからこその尊さみたいなものを、私もフロアの皆さんも一緒に感じていて。特に声出しが復活した直後は「いや、絶対に前よりも声出してるよね?」みたいな感覚もありました(笑)。
─確かに、いろんなアーティストさんから「最近のライブではお客さんが以前以上に歌っているし、そこから得られる一体感はコロナ以前と比べて別格なものがある」っていう声をよく耳にします。
LiSA:もともと私のライブはコール&レスポンスを必要とする楽曲がとても多くて、しかもお客さんの声もめちゃくちゃ大きいので、毎回PAさんが困ってしまうほどなんです。なので、初めて私のライブにいらっしゃった関係者の方たちからは、まず最初に私のステージに対する感想じゃなくて「お客さんすごいね!」っていう声をいただくほど。もともとそれぐらいすごかったのに、それが(声出しが)復活してから常に”PA対お客さん”みたいな戦いが続いているんですよ(笑)。それは、昨年の『LANDER』ツアー(※2023年9~12月開催のホールツアー『LiVE is Smile Always~LANDER~』)でより感じました。
─今年6月からは6年ぶりの海外公演が続いていますが、そこでも以前との反響の違いを感じるのでしょうか?(※インタビューは7月上旬に実施)
LiSA:コロナの影響なのか、あるいはこの6年の間に「紅蓮華」や「炎」という海外の方たちが受け入れてくれる楽曲がより増えたからなのかわからないんですけど、6年前まではそれこそアニメタイアップの知っている部分だけ、例えば「crossing field」ならテレビで流れる尺だけをみんなが合唱していたんですけど、今回は「炎」や「紅蓮華」をフルコーラス歌ってくれるし、「HELLO WORLD」みたいに新しく増えた楽曲たちもしっかり熱唱していた印象があります。それはコロナの期間中、ストリーミングやYouTubeを通じてより深く私の楽曲を楽しんでくれたからなのかもしれませんね。それでいうと、海外の方からはYouTubeの『THE FIRST TAKE』の印象を伝えられることもすごく多かったです。
─あの時期に蒔いた種が、最近になって芽を出し始めていると。そういう意味では、ここ数年はただつらい期間だっただけではなかったと。
LiSA:あの期間も違う楽しみ方をしてくださっていたんだなっていうのを、やっぱりライブで実感します。特に海外の方なんて日本語で歌うことってすごく難しいはずなのに、それを会場にいる8000人みんなで大合唱しているわけで、「ここ日本かな?」って錯覚するほどですから。
─しかも今年はデビュー13周年を迎えるタイミングということで、『ROUTE13』という年間テーマを掲げていろいろ動いている。ライブはもちろんのこと、「HELLO WORLD」を筆頭に順調に新曲を発表し続けていますが、8月21日にリリースされるニューシングル『ブラックボックス』……これはかなりエグい内容ですね。
LiSA:あははは、ありがとうございます!
─表題曲はテレビアニメ『NieR:Automata Ver.1.1a』(以下、『ニーア』)第2クールのオープニングテーマとして、amazarashiの秋田ひろむさんとのコラボレーションによって制作された1曲です。
LiSA:『ニーア』という作品に関して、私はまずゲームでその世界観に触れていたんですが、その後のテレビアニメ第1クールではAimerちゃんとamazarashiさんがオープニングテーマとエンディングテーマを担当していて。作品の内容や絵のタッチを知っていたので、すごくぴったりだと思っていたんです。
─では、楽曲制作に際してのやり取りというのは?
LiSA:秋田さん自身がゲームの頃から『ニーア』に深く関わってらっしゃったので、作品側からの秋田さんへの信頼がとても厚くて。なので、アニメサイドからのオーダーも”9S(ヨルハ九号S型)”の気持ちを歌ってくださいということ、「あとはより深く知ってくださっている秋田さんにお任せします」という感じでした。私も秋田さんの作られている作品に対しての信頼感がとても強かったので、私からのオーダーはほとんどなかったです。
─そうだったんですね。楽曲を聴くと、イントロからAメロで感じるポストロック的な浮遊感が非常に秋田さんらしく、Bメロからサビにかけて熱が高まっていくところにはLiSAさんらしさ強く打ち出されている。両者の魅力が最良の形で凝縮されていると思いました。
LiSA:よかったです。最初に秋田さんからいただいたデモ音源は、秋田さんの声で歌われたすごくシンプルなバンドサウンドで、amazarashiさんそのものといった感じで。秋田さんの声が乗るからこその説得力があったし、これを私の声に置き換えたときにちゃんと秋田さんが込めた思いを私が表現できるのか少し不安でしたけど、出羽(良彰)さんのアレンジによって女性の声にぴったりなテイストにできたのかなと思います。
─歌い方に関してもAメロでは感情を抑えているところから、サビに向けて熱をどんどん高めていき、Dメロで一気に爆発させている。歌詞に沿っての感情表現かなと思いますが、そのへんはどこまで意識的でしたか?
LiSA:まず、仮歌を録るタイミングにキーの設定をしたんですけど、秋田さんが表現したい喪失感をAメロでいかに表現できるか、それに合ったキー設定はすごく大切にしました。その上で、自分が歌うことで表現する喪失感とか、サビで悲しみが増していく感覚とか、おっしゃってくださったDメロで爆発させるためのタメとか、それらをベストな形で表現できるようなキー設定と歌のパワーバランスは、設計図を作っている段階ではかなり意識していたんですけど、実際ブースに入ったら曲に導かれるまま歌っていたんですよ。そうやって導かれたのは、制作に関わったみんなが歌を大切にしようとして注力してくださった結果だと思うので、これは素直に従って歌った結果なんです。
─なるほど。歌詞を読んでいるだけでも胸が締め付けられるのに、それをLiSAさんの歌で表現されることでよりまっすぐ響いて、感情がぐちゃぐちゃになるんですよ。
LiSA:私も歌っていて、とにかくつらいです(笑)。誰かとの別れに対して後悔を持っていて、それをずっと心の中に閉じ込めてしまっている人は、よりそう感じるんじゃないかと思います。
─そういう楽曲を歌う際、LiSAさんが心がけてることってあるんですか?
LiSA:あの……自分の感情がコントロールできないくらい泣いたことってありますか? 私はそういうタイミングがたまにあるんですね。ひとりになったとき、急にいろんな後悔が押し寄せてきて声を荒げて泣くんですけど、バーって泣いたあとにふと空っぽになる瞬間が訪れるんです。
─そういうお話を聞くと、LiSAさんにとって歌うことは呼吸するのと同じように、日常生活の中にある”あたりまえの行動”のひとつなのかもしれませんね。
LiSA:そうですね。なので、音楽に注力するときは常に自然体というか。ライブやレコーディグの前日まではきちんと計画をして練習するんですけど、いざ本番になったら何も着飾らず素直になってしまうんです。
─だからこそ歌が聴き手の心にスッと飛び込んでくるし、アーティストとしての信頼にもつながっているのかなと。
LiSA:ありがとうございます。でも「本当はこういう表現がしたいのに!」と、頭で考えていたことが感情に負けてできないことも多いので、まだまだ訓練が必要ですね(笑)。
─一方、カップリングの「MAKE A MiRACLE」はストレートなロックチューン。レコーディングやライブでもお世話になっているPABLOさんが作曲・編曲を担当した、ボートレース2024 TVCMタイアップソングとしてオンエア中の1曲です。
LiSA:まずタイアップのお話をいただく前に、私のライブに対する感覚をステージ上で共有してくれているPABLOさんと、「このライブの中にどういう場面が欲しいか?」みたいな会話をよくしていて。
─じゃあ、歌詞はタイアップが決まってから制作した?
LiSA:そうです。最初の仮歌詞の段階では、ただ心地よく響く言葉をハメただけだったんですけど、冒頭の〈どんどんスピードを上げて〉っていうフレーズだけはすでに存在していて。先方もこのフレーズを気に入ってくださったようなので、そこだけ変えずに書き換えました。
─なるほど。そこはボートレースとリンクするものがありますものね。この曲は聴いた瞬間にステージ上でのLiSAさんの姿が思い浮かびますが、リスナーやオーディエンスと共有する上で意識したことは?
LiSA:メロディも歌詞もですが、1回聴いただけでその意図が伝わるシンプルな内容なので、自分自身が楽器になって「みんなと楽しみたい!」とか「ミラクルを作っていくぞ!」みたいな意気込みが伝えられるといいなと思いながら歌っています。
─続いて、3曲目「洗脳」。キタニタツヤさんが楽曲制作した、ボトムが重めで非常に攻めたオルタナティヴロックナンバーです。
LiSA:キタニさん自身がすごく多彩で、本当にいろんな音楽を聴いてらっしゃって、しかもすべてにおいて深い愛を持って接していらっしゃる方という印象で。
─そうだったんですね。ということは、ライブで観たLiSAさんのイメージがこの歌詞に反映されているのかもしれませんね。
LiSA:キタニさんから見た私って、洗脳しているように見えているのかな(笑)。
─(笑)。にしても、「洗脳」ってなかなか強い言葉ですよね。
LiSA:ですよね。〈目を見ろ〉というフレーズみたいに強い命令口調の歌詞って、実は私のこれまでの楽曲にはほとんどないんですよ。それを私に歌わせるぐらい、キタニさんにはライブでの私が強く見えたのかもしれませんね。もしくは、これを私に歌ってほしいと託してくださるようなライブができていたのかな。
─そういういった歌詞と、どうのように向き合いましたか?
LiSA:よりストレートに、カッコいい自分で歌えるようにしました。私の中にもいろんな歌のチャンネルがあるんですけど、「ブラックボックス」とも「MAKE A MiRACLE」とも全然違う、ストレートな叫びのような歌です。
─〈これは、ここにきたお前を/新たな曲で抱き締めるような洗脳〉というラストの2行なんて本当に強いですものね。
LiSA:面白いですよね。いろんな知識を深く処理する能力がめちゃくちゃ強いのは、きちんとトレーニングを重ねてきた結果なのかなと。だから歌詞の一つひとつに対してなんとなく当ててはめているような、ふわっとしているところが一切ないんです。
─確信めいたものが伝わってきますものね。しかも、それをLiSAさんに歌わせようとするという。
LiSA:そこなんですよ(笑)。特にキタニさんはソングライターとして作家のお仕事もされているので、こういう人生とか自分の価値観を歌う楽曲を人に託すのって難しいんじゃないかなと思うんです。自分で歌うぶんには責任を取れるけど、それを人に歌ってもらうとなると……。私の場合は恋愛で託されるのが一番なりきれるし、作家の方たちもどちらかというと恋愛というオブラートに包んで自分の気持ちを託してくださる方が多い印象だったんですけど、こういう責任を背負わせてくれるような楽曲を託してくださる作家さんはなかなかいらっしゃらないので、そこもすごいなと思いました。
─LiSAさんはこれまでも多くのアーティストから楽曲提供を受け、歌詞においてもご自身が作詞していないものを歌う機会も多いですが、その都度「他者から見たLiSA」のイメージをいろんな表現で受け取るわけじゃないですか。
LiSA:それはすごく実感していますし、ひとつ前の作品ですけどツミキさんとご一緒した「ハルシネイト」のときもその印象を受けました。ツミキさんも本当にいろんな手札を持っていて、いろんなことができる方なんですけど、その中で「私ってミツキさんにこういうふうに見えていたんだ」という気づきもたくさんあって。それは今回のキタニさんでも強く感じたことで、13年にわたっていろんな人に「私が知らないLiSA」を引き出してもらいながら、常に自分を更新し続けてこられたんだなと思います。きっとそれがソロアーティストの楽しさなんでしょうね。
─いろんな出会いが化学反応を起こして、どんどん新しいことにつながっていく。このシングルを聴くと、そこをより強く感じました。
LiSA:やっぱり、自分自身がワクワクすることをやり続けたいじゃないですか。私は制作のたびに毎回「これが最高だ!」と思って向き合っているんですけど、そこに満足は全然していなくて。だから、「ちゃんとワクワクしてる?」って自分自身に聞けるような活動ができているかどうかをすごく大切にしています。あと、私はひとりだけではワクワクできないんですよ。私はシンガーソングライターというわけではないので、LiSAという人間を誰かの作ってくださった音楽と混ぜたときに起こる化学反応を見ることでワクワクするし、その楽曲がお客さんと混ざり合ったときにまたワクワクする。「えっ、これができるんだったらもっとこういうことやってみたい!」みたいに人と混ざり合うことで次の未来が見るというか、人が作ってくれた希望をつないでここまで来た感覚があるんです。
─LiSAさん自身のことではあるんだけども、ちょっと俯瞰で「LiSAという活動体」を楽しんでいるような。
LiSA:そうですね。自分ファーストももちろん大事ですけど、LiSAというアーティストに関してはそれ以上に「これを使ってより良いもの、より面白いことができる」ことのほうが大切なのかな。そこがブレなかったから13年もワクワクし続けられたし、これからも変わらないんじゃないかと思っています。
<リリース情報>
LiSA
『ブラックボックス』
2024年8月21日リリース
[CD] https://lisa.lnk.to/BlackBox_PKG
[配信] https://lisa.lnk.to/BlackBox_DG
初回生産限定盤(CD+GOODS)
価格:2200円(税込)VVCL 2540~1
[CD]
1. ブラックボックス(作詞:秋田ひろむ (amazarashi) 作曲:秋田ひろむ (amazarashi) 編曲:出羽良彰)
2. MAKE A MiRACLE(作詞:LiSA 作曲:PABLO a.k.a. WTF!? 編曲:PABLO a.k.a. WTF!?)
3. 洗脳(作詞:キタニタツヤ 作曲:キタニタツヤ 編曲:江口 亮)
4. ブラックボックス -Instrumental-
[GOODS]
・フォトブックレット(20P)
・ステッカー(4枚組)
通常盤(CD)
価格:1430円(税込)VVCL 2542
[CD]
1. ブラックボックス(作詞:秋田ひろむ (amazarashi) 作曲:秋田ひろむ (amazarashi) 編曲:出羽良彰)
2. MAKE A MiRACLE(作詞:LiSA 作曲:PABLO a.k.a. WTF!? 編曲:PABLO a.k.a. WTF!?)
3. 洗脳(作詞:キタニタツヤ 作曲:キタニタツヤ 編曲:江口 亮)
4. ブラックボックス -Instrumental-
期間生産限定盤(CD+Blu-ray)
価格:2420円(税込)VVCL 2543~4
[CD]
1. ブラックボックス(作詞:秋田ひろむ (amazarashi)作曲:秋田ひろむ (amazarashi) 編曲:出羽良彰)
2. MAKE A MiRACLE(作詞:LiSA 作曲:PABLO a.k.a. WTF!? 編曲:PABLO a.k.a. WTF!?)
3. 洗脳(作詞:キタニタツヤ 作曲:キタニタツヤ 編曲:江口 亮)
4. ブラックボックス -Instrumental-
5. ブラックボックス -TV ver.-
[Blu-ray]
1. ブラックボックス -MUSiC CLiP-
2. MAKE A MiRACLE -MUSiC CLiP-
3. ブラックボックス -NieR:Automata Ver1.1a 第 2 クール non-credit opening-
※アニメ描きおろしイラスト使用デジパック仕様
※アニメ描きおろしイラスト使用ステッカー同梱
<ライブ情報>
ソニー銀行 presents「LiSA LiVE is Smile Always~COCKTAiL PARTY~」[SWEET&SOUR]
9月14日(土)大阪城ホール ※SWEET
9月15日(日)大阪城ホール ※SOUR
9月21日(土)ポートメッセなごや 第1展示館(愛知) ※SWEET
9月22日(日)ポートメッセなごや 第1展示館(愛知) ※SOUR
9月28日(土)横浜アリーナ(神奈川) ※SWEET
9月29日(日)横浜アリーナ(神奈川) ※SOUR
10月19日(土)真駒内セキスイハイムアイスアリーナ(北海道) ※SWEET
10月20日(日)真駒内セキスイハイムアイスアリーナ(北海道) ※SOUR
11月3日(日)マリンメッセ福岡A館 ※SWEET
11月4日(月祝)マリンメッセ福岡A館 ※SOUR
11月16日(土)セキスイハイムスーパーアリーナ(宮城) ※SWEET
11月17日(日)セキスイハイムスーパーアリーナ(宮城) ※SOUR
11月30日(土)国立代々木競技場第一体育館(東京) ※SWEET
12月1日(日)国立代々木競技場第一体育館(東京) ※SOUR
12月14日(土)サンドーム福井 ※SWEET
12月15日(日)サンドーム福井 ※SOUR
※DAY1 が SWEET・DAY2がSOUR となります。
チケット情報
指定席/着席指定席/車椅子席 11000円(税込)
※チケット販売に関する詳細はオフィシャル HP をご確認ください。https://l.lxixsxa.com/cocktailparty/
LiSA Official Website http://www.lxixsxa.com/