レイヴェイの名を知らないアメリカのティーンエイジャーはもう少ない。史上最年少でグラミーの最優秀トラディショナル・ポップ・ボーカル・アルバム賞を勝ち取った彼女のライブを覗けば一目瞭然に面白いことが1つある。彼女の音楽が往年のジャズ・スタンダードのような煌びやかさを持ちながらも、まるでテイラー・スウィフトのライブ会場のような若者に溢れる客層にあなたは驚くことだろう。
観客の平均年齢はきっと20代前半。髪留めにリボンをつけたLauversと呼ばれるレイヴェイのファンたちが、瞳を輝かせてレイヴェイを見つめる。それこそがレイヴェイが待ち望んでいた光景だということは、すっかり彼女の代表曲となった「Letter To My 13 Year Old Self」からも伝わることだろう。歌詞の「One day, you'll bе up on stage. Little girls will scream your namе」という一節を歌えば、彼女の名前を叫ぶ声が会場を包むのはもうすっかり定番の光景だ。
2ndアルバム『Bewitched』のリリースツアーを含め、2024年の彼女は大忙しに世界を股にかけた。北米、南米、オーストラリア、アジア、日本を代表する夏フェス「サマーソニック」に出演したことも記憶に新しい。その中でも特に印象的な公演は、彼女が第2の故郷と語るLAでのハリウッド・ボウル公演だ。

「LA」と聞いて何を思い浮かべるだろうか。温暖で広大なカリフォルニアの大地に、かの有名なランドマークのハリウッドサインだろうか。

ここでLAのハリウッド・ボウルという会場についても説明もしておきたい。1922年にオープンした歴史的な野外音楽堂で、キャパシティは約17000人。フランク・シナトラやエラ・フィッツジェラルドなど、レイヴェイにとって憧れのアーティストたちが公演を行なってきた会場だ。彼女がそこでオーケストラを引き連れてライブを行うことを「映画のような夢物語みたい」と話すのも頷けることだろう。
そのオーケストラというのが、LAを代表するロサンゼルス・フィルハーモニックだ。実は彼女はLAに引っ越してきた最初の夏に、このハリウッド・ボウルの最後列でロサンゼルス・フィルハーモニックを観てからというもの、長らく共演を望んでいたという。それも含めての夢の一夜に、このキャパシティですらチケットは即完だったようで、LAにも彼女のファンが大勢いることが容易にうかがえる。

なんとその一部始終が映画化され、『レイヴェイ:A NIGHT AT THE SYMPHONY: HOLLYWOOD BOWL』として1週間限定でスクリーンで上映される。夢の一夜を映像化したのは、『テイラー・スウィフト: THE ERAS TOUR』でも監督を務めたコンサート・フィルムの名手、サム・レンチ。ロサンゼルス・フィルハーモニックとの化学反応は格別で、YouTubeに公開されている「Dreamer」からも伝わるように、レイヴェイのもつ音楽の煌びやかさを一層特別なものにしている。
ステージの合間に明かされる各曲のエピソードも興味深いし、ドキュメンタリーシーンも必見だ。「(LAに引っ越してきてから)奇妙な夢の中にいるようだった」と話す彼女は、時代のスターながらも25才という等身大の若者そのままであり、「元カレが私の名前の看板を見つけたら、どんな反応をするのか考えちゃう」と冗談めかすチャーミングさもそのままに切り取られている。LAという街で出来上がった音楽たちに彩られた1時間半は、魔法のように時間を忘れさせ、幕が閉じると夢から覚めてしまうような寂しさすら感じた。
ちなみに、このハリウッド・ボウル公演は昨年末からライブ・アルバムとしても絶賛配信されている。映画と併せてあの曲やこの曲に想いを馳せるのもいい。バレンタインという愛の季節にレイヴェイからの愛に包まれる、きっと特別な1日になるはず。ぜひとも劇場へ足を運んでほしい。

映画『レイヴェイ:A NIGHT AT THE SYMPHONY: HOLLYWOOD BOWL』
2025年2月11日(火・祝)より1週間限定上映
監督:サム・レンチ
配給:カルチャヴィル合同会社
【公開劇場】
(東京)TOHOシネマズ 日本橋
(大阪)TOHOシネマズ 梅田
(京都)TOHOシネマズ 二条
(北海道)TOHOシネマズ すすきの
公式サイト:culture-ville.jp/laufey
『A Night At The Symphony: Hollywood Bowl』
再生・購入:https://LaufeyJP.lnk.to/ANightAtTheSymphonyHollywoodBowlRS