アメリカ・シンシナティ出身のポストハードコアバンド・Softspokenが3rd EP『Martyr|マーター』を2月21日にリリースする。2023年からシングルとしてリリースしてきた楽曲群に新曲を加えた7曲入りの作品で、彼らの現在地が明確に示された内容になっている。
当然、今回のインタビューでは最新作がメインの内容になるのだが、前回、彼らに話を聞いたのは去年5月に初来日を果たしたときのこと。今思えば、あのときの彼らは日本に到着したばかりで、時差ボケも激しく、少々テンションが低めだった。しかし、こちらの質問に真摯に答えてくれ、かなり好印象だったことを覚えている。ツアーが始まる前のインタビューだったこともあり、ツアーについては何も聞けなかったので、今回は「Martyr|マーター」に関して語ってもらいつつ、初のジャパンツアーについてもたっぷり振り返ってもらった。やはり、日本に住んでいたことのあるクリス・ウェジントン(Gt.)や日本のアニメに詳しいケビン・ポッツ(Dr.)がメンバーにいることもあり、日本の音楽に対する解像度がかなり高い印象を受けた。そんな彼らによる日本の音楽評も楽しんでもらいたい。
関連記事:Softspokenが語る、ポストハードコアにポジティヴを落とし込む理由、日本カルチャーの影響
―去年開催した初のジャパンツアーでは東名阪4公演を行い、数多くの日本のバンドと対バンしていましたが、印象的なバンドはいましたか?
サム:SCYLAは本当によかった! 実は、日本に行く前に彼らの曲を練習して、日本で彼らと一緒にステージでプレイしたんだ。あれは本当にクールだったな。ほかにもたくさんの素晴らしいアーティストがいたけど、今となってはバンド名をすべて思い出すのは難しいよ。
ケビン:自分は、バンド全体よりも個々のドラマーに注目してて、Clones of VengeanceのドラマーとMASSCLOWZのドラマーは覚えてるな。他にも何人かいたはずだけど、俺もちょっと思い出すのは難しい。
クリス:僕もSCYLAのメンバーを贔屓しちゃうな。ケビンの言うように、僕はSCYLA のBrentとYuichiとは以前一緒にバンドをやってたからね。あと、Hant Placeも本当に良かった。そのほかにも、共演した多くが新しい世代だったり、シーンに登場したばかりのバンドで、僕たちと交流したがったり、アドバイスを求めてきて、それはとてもクールだったね。僕たちもアドバイスをするのは好きだし、そういう機会を持てたのはとても良かったよ。
JAPAN! Thank you so much for an amazing time!
初日本ツアーは本当に楽しかった!4日間で一生涯の思い出が作れました。本当にありがとうございました!
Special thanks to @rnrtoursjp, @vmagencyjp, @chanmei_camera, all the bands, and all of you!
また来ます!We'll be back! pic.twitter.com/4L5u3HV8Xp— Softspoken (@softspokenband) June 7, 2024
―ライブ以外で印象に残ったことは?
サム:奈良! 奈良公園の鹿たちだね(笑)。
―え、鹿ですか。
サム:俺とケビンとクリスは、鹿狩りが人気な地域の出身だから、鹿の写真をたくさん撮ったんだ。鹿に触れることができるなんて信じられなかったよ。あれは本当によかったね。それから、うどんも食べに行った。あれは一番美味かったな。
ケビン:泊まったホステルが小さな個室みたいで驚いた(笑)。
クリス:あと、これはみんな話すと思うけど、日本のトイレはかなりキレイだよね。
ケビン:ああ! アメリカに帰国してすぐに、「俺たちのトイレは間違ってて、正しいのは日本だ!」って思ったよ(笑)。だから、そのうち温かい便座を自分の家にも取り入れようと思ってる。
クリス:ほかにも、日本のいろんなものをバンドメンバーに見せたり、共有するのは楽しかったな。例えば、ファミチキに驚いていたり……。
サム:(興奮しながら)イェ~!
クリス:そういった小さな発見が面白かった。そもそも、アメリカのコンビニとは全然違うから、みんなにとってかなり新鮮だったみたい。「わあ、すごい!」って(笑)。
―将来、再び日本でツアーをするとして、次回へ向けての改善点などがあれば聞かせてください。
クリス:次回はもっと余裕を持ったスケジュールにしたいかな。例えば、2~3日の休みを入れて観光したり、リラックスしたりする時間を確保して、ライブは1日おきにするのが理想だね。今回のツアーはかなりハードだった上に観光もけっこう詰め込んだから、そのせいで全員かなり疲れちゃってね。もっと日本を満喫する時間があればよかったね。
―僕は東京公演を観に行きましたが、ステージとフロアに流れる温かい雰囲気が印象的でした。あれは意識して作り上げているものですか?
クリス:僕たちにとっては自然なことだね。
サム:うん、そうだね。日本にいることに感動して、ちょっと涙が出そうになったことを覚えてるよ。「俺たちはここにいるんだ……!」ってね。そういう感情も少し影響したかもしれない。それに、俺たちの楽曲自体がそもそもそういうふうに心を込めてつくられているから、自然とそうなっていったんだと思う。俺たちはとても穏やかな心持ちで演奏しているんだ。
―ジャパンツアーの後、みなさんはアメリカに戻って、花冷え。
サム:素晴らしかったよ!
ケビン:Survive Said The Prophetには本当に驚いたよ。「このバンドはアニメでも曲が使われてるくらい大きなバンドだし、俺たちとは遊んでくれないだろうな」と思ってたら、実際はめちゃくちゃ親切でさ。俺たちの機材のセッティングや撤収まで手伝ってくれたし、ショーも本当に素晴らしかった。彼らとのショーは3本ソールドアウトして、それ以外もソールドアウトに近かった。同じように、花冷え。も本当に素敵な人たちだったな。俺たちが共演したのは彼女たちにとってツアーの11本目くらいのショーだったから、メンバーはちょっと疲れていたかもしれない。でも、みんなとても親切で、ホスピタリティにあふれていたよ。このときのショーもソールドアウトだった。アメリカにおける日本のバンドの受け入れられ方は、俺たちにとっても良い影響を与えたと思う。みんな本当にポジティブだし、悪いことはひとつもなかったよ。
この投稿をInstagramで見るSoftspoken(@softspokenmusic)がシェアした投稿―日本のバンドとの共演や、日本で実際にライブをした経験を通じて、日本の音楽シーン、特にヘヴィミュージックシーンについて今、どう感じていますか?
クリス:(彼らの音楽は)速いね。それが一番の特徴。アップテンポな曲がたくさんあって、技術的な巧みさもある。テクニカルなパートがかなり多いよね。
サム:その通り。ただ、次に日本に行くときはもっとモッシュを取り入れたいな。アメリカで花冷え。とやったときは、花冷え。のライブ中にケビンと俺でモッシュピットを作ったんだ。アメリカからのちょっとしたプレゼントとしてね(笑)。
ケビン:本当は日本にいるときもそうしたかったんだけど、実際は時差ボケのせいでモッシュピットを作るほどの元気がなくてさ。4回のショーを無事にこなすだけで精一杯だったんだよ。最後の4回目のショーなんか、ライブ後にみんながカンパイしているとき、俺は立ったままで寝ちゃいそうだったし(笑)。それぐらい時差ボケは大変だったね。だから、さっきクリスが言ったように、ショーとショーの間に1日でも休みが取れてたらよかったのかも。でも、サムが言ってたみたいに、俺たちは観客と一緒に盛り上がるのが好きだし、彼らが俺たちにしてくれたようにホスピタリティを返したいんだよ。
―ジャパンツアーではロビーがサポートメンバーとして参加していましたが、彼はツアー後の9月に正式メンバーになりました。彼はジャパンツアーでみなさんの信頼を勝ち取ったんですか? 彼を正式メンバーとして迎えた要因はなんだったんでしょう。
クリス:最初にジャパンツアーを計画した頃は、僕だけがギターを担当していたんだけど、僕はリードギターとリズムギターの両方を書いているから、ライブでどっちを演奏するか毎日悩んでて、最終的にはリードを弾くことに決めて、リズムギターは他の人に任せることにしたんだ。そこで、以前からの知り合いだったロビーが手を挙げてくれて、ジャパンツアーのためにひと月ぐらいで僕たちの曲をすべて覚えてくれた。つまり、ロビーの初ライブは日本だったんだよ。ツアーを通じて、彼が本当に素晴らしい人間で、僕たちの考え方や性格にもすごく合ってることがわかった。そういうわけで、ツアー後に彼と話をして、正式メンバーにすることに決めたんだ。
―そういう経緯があったんですね。さて、EP『Martyr|マーター』がついにリリースされます。前回のEPは2021年に発表されましたが、今回リリースまでに少し時間がかかったのはどうしてですか?
クリス:僕たちはインディーズバンドだから、資金面の事情でリリースがちょっと難しかったんだ。だから、2021年の『Where the Heart Belongs』の後、しばらくはシングルリリースに集中しようと決めて、一曲一曲良いものを作りながら成長していくことにしたんだ。その過程でいくつかのレーベルから興味を持ってもらえたんだけど、話し合いを重ねた結果、どこも自分たちには合わないと思ったんだよね。で、最終的には自分たちでEPをつくるのがいいっていうことになったんだ。
―『Martyr|マーター』(殉教者)というタイトルはすぐに決まったんですか?
サム:これは自然に決まったかな。俺たちはずっと、自分たちのことをこの音楽の世界における「殉教者」のようなものだと感じていて、全てを投げうって音楽活動をする俺たちの旅路を家族も支えてくれるし、いいときも悪いときもみんな一緒に乗り越えてきたんだ。実際、このタイトルは曲の歌詞から生まれていて、「TWYLAM」の歌詞に「Martyr(殉教者)」というフレーズがあるんだ。それが俺たちの姿勢をよく表していると思う。今作はどの曲にも、正直であれ、健全であれ、そして人を愛し、人から愛される人間であれっていうメッセージが込められている。そして、俺たちはすべての感情をラウドな音楽を通じて健全に発散するんだ。あと、俺たちが常に目指しているのは、Softspokenの音楽を、次世代や、今まさにそれを必要としている人たちに残すこと。これまで、様々な曲が俺を何度も救ってくれたり、辛い一日を乗り越える助けになってくれたりしてきた。だから、今度は自分たちがそういうものを残したいんだ。多くの人に届くかもしれないし、少数の人にしか届かないかもしれない。でも、その少数の人が大切なんだよ。それが俺にとっての「殉教者」という意味なんだ。
―今作はファーストアルバムのような印象を受けました。バンドとしての姿勢が非常に明確で、サムが言ったように「愛し、愛され、自分に正直である」というメッセージがしっかりと伝わってきます。
クリス:そうだね。それが「殉教者(Martyr)」という言葉を使った理由なんだ。これは普段よく使う言葉ではないけど、僕たちのバンドのイメージや、活動に捧げるもの、そしてその活動から得られるものをよく表していると思う。
―オープニングナンバーは「TWYLAM」ですが、このタイトルは造語ですか?
サム:ああ、「TWYLAM」は「the way you look at me」の頭文字をつなげたものだよ。最近、俺たちは頭文字を使ったりして遊ぶことが多くて、たしか「Lovetok」がきっかけだったと思うんだけど、俺たちの新しいスタイルみたいに感じたんだよね。俺はいつも自分の個人的な体験や、周りの人たちの体験をもとに曲を書くようにしているんだけど、全体的なメッセージは殉教者というテーマに近いんだ。
―なるほど。
サム:曲に関して言うと、プロデューサーのキャメロン・ミゼルは、ボーカルをユニークに加工するのが得意で、この曲でも俺の声を取り込んで楽器のようにしてしまったんだ。あと、ヘヴィなパートとソフトなパートのダイナミクスもすごくクールだよね。歌詞、メッセージ、楽器、全てにインパクトがあると思う。
―「Invincible」についてはどうですか?
クリス:実は、この曲は他のアーティストのために書いたものだったんだ。名前は言えないけど、このジャンルでは有名な人。で、彼は過去に依存症のトラブルがあったから、その体験をもとにして曲を書いたんだけど、最終的に彼はこの曲を採用しなかったんだ。だけど、メンバーにこの曲を聴いてもらったら、みんなすごく気に入ってくれたから、自分たちでやることにしたんだよ。この曲のメッセージは「諦めないこと」。他人が自分を見放したとしても、自分が自分自身を見放さなければ「無敵(Invincible)」になれる、という内容。それはSoftspokenというバンドやEPのテーマにもぴったりだと思う。
―「Invincible」という言葉は力強さを感じさせるもので、曲を聴く前は「この曲はシャウトやスクリームが多、激しい歌になるだろう」と想像していたんですが、実際はメロディを重視した曲ですよね。歌い方もとても繊細です。
サム:この曲はまず、クリスがメロディと歌詞を作って、AIで生成した仮ボーカルに従って忠実にボーカルを再現したんだけど、静かなパートでは自分なりに(ドラムでいうところの)フィルみたいなものを加えたんだ。あと、”rooftops”という歌詞ではシャウトをしていて、元々はもっとスクリームが入っていたんだけど、最終的にそれは外したんだよね。なぜかというと、このメロディが本当に気に入っていて、自分の声にすごく合うと思ったから。
ケビン:最初にクリスがこの曲を聴かせてくれたとき、すぐに「これは絶対に俺たちの曲にするべきだ」と思った。ラジオで流れるような曲だと思ったし、実際俺の妹もすぐに気に入ってくれたんだ。ほかにも、普段こういうジャンルの音楽を聴かない人たちにも受け入れられているみたいで、アメリカではかなり好評なんだ。話はちょっと逸れるけど、曲をつくるときは、どれくらいスクリームを入れるべきかよく考えるんだ。この曲についてはメンバー全員が「ラジオ向きだ」と感じた。アメリカのラジオ局だと、スクリームを入れないほうがオンエアされやすいから、この曲は思い切ってソフトなアプローチをとることにしたんだよ。もしスクリームがもっと多かったら、この曲はラジオでは流れなかっただろうね。
クリス:……念のため伝えておきたいんだけど、曲作りにあたってAIのソフトを使ったのはデモの声だけで、そのほかは全部僕たちがつくったものだからね?
―そうやって念押しをしなきゃいけないぐらい、今、AIでの音楽制作は広まっているんですね。AIが作った曲と人間が作った曲の違いは分かりますか?
ケビン:正直、どんどん見分けがつかなくなってきてる。でも、AIで作られた曲をたくさん聴いてるわけではないけど、今はまだいくつか気になる点があるかな。例えば、フレーズの使い方が不自然だったりね。俺の友人はAIで遊んでいて、「俺についての曲を書いてくれ」とか「Taylor Swiftとデートする曲を作ってくれ」みたいにリクエストすると、AIが与えられたテーマに沿った曲をそのまま生成してくれるんだよ。いま言ったみたいに、不自然なフレーズになってる部分もあるけど、短期間でかなりクオリティが向上しているから驚きだよ。たぶん、数年もすれば完全に見分けがつかなくなるようなものをつくれるようになるんじゃないかな。それくらいリアルで、怖いくらい現実的なレベルに近づいてきてると思う。
―やっぱり、音楽制作にAIが入ってくるのは脅威ですか。
クリス:AIはツールとしては役立つ場面もあるけど、それを商業的に利用して、アーティストを排除しようとする人たちは必ず現れる。だから、たしかに脅威ではあるね。
―話を戻します。『Martyr|マーター』は2023年以降にデジタルリリースされた楽曲を収めていますが、今回それらの曲を1枚の作品にまとめたことで新たに気づいたことはありましたか?
ケビン:全体的に思うのは、これらの楽曲にはそれぞれ非常に強いテーマ性があるということ。俺が加入する前に書かれた曲もいくつかあるけど、どれもメッセージ性がしっかりしてるよね。今作は、クリスが言ったように、最初はシングルを中心につくっていて、「LoveTok」「Alone」「Oblivion」はアルバム用ではなく、元々は個々のアイデアから生まれたシングルだったんだよ。でも、どの曲も「自分たちのメッセージに忠実であり続ける」という強いテーマ性を共有していて、ひとつの作品にまとめたことでそのことに初めて気づいた。だから、全体を通して聴くと自然な流れと統一感があることが感じられると思う。曲順を決めるのはかなり難しかったな。最終的には、最新曲を一曲目に持ってくる「ウォーターフォール方式」にした。マーケティング的にもそれが最も理にかなっているからね。
クリス:作曲者の視点で言うと、僕たちは常に新鮮であり続け、自分たちらしさを保ちながら新しいことにも挑戦しているんだ。今回のEPのように、僕たちは本当に自由に何でもやれると感じてる。落ち着いた瞬間もあれば、すごくヘヴィな瞬間もあって、このEPではどちらもうまく表現できたと思うよ。気が早いけど、次の作品が今から本当に楽しみ。もっと大胆にどちらかの方向に振り切ってみるのも面白いかもしれない。とにかく、今回のEPがこれだけダイナミックな仕上がりになったことを誇りに思うよ。
―日本盤には3つのボーナストラック(「Oblivion」「Bones」「Sleight of Hand」のスタジオライブバージョン)が収録されていますが、これはファン投票で選ばれたものですよね。ファン投票のアイデアは誰が提案したんですか?
クリス:これは僕が日本のスタッフと話し合って決めたことだね。日本限定の特別バージョンを作りたくて、アメリカ盤には収録されていない曲を入れようと思ったんだ。ちょうどその頃、スタジオに入ってライブセットのレコーディングをする計画があったから、その音源をうまく利用することにしたんだ。
―選ばれた3曲は予想どおりでしたか? それとも意外な結果だった?
クリス:『Martyr|マーター』からもう1曲選ばれると思ってたから、ちょっと驚いた。でも「Sleight of Hand」と「Bones」も人気のある曲だから納得だし、『Where the Heart Belongs』と『Martyr|マーター』という2つの時代がミックスされているのは面白いと思う。
―今回の結果から、日本のファンの嗜好が見えたりしますか?
ケビン:俺たちの音楽は花冷え。やSurvive Said The Prophetと相性がいいと思ってる。最近は日本の音楽スタイルにもSaosinのような雰囲気が採り入れられてきているけど、彼らはそれよりも少しテンポが速いよね。「Sleight of Hand」を聴いてみたら、Survive Said The Prophetとの共通点にいくつか気付くんじゃないかな。ギターの音色やメロディの種類、あとは高音ボーカル、速いテンポとかね。そうやってどういう曲がウケそうかある程度予測することはできるけど、完全に把握するのは難しいね。
クリス:僕たちが新曲をリリースすると、X(旧Twitter)で日本のファンからギターのメロディやリードパートについてコメントが寄せられることがよくある。だから、サムのボーカル以外にも、ギターのそういった部分も日本のファンにインパクトを与えているんだと思う。あくまで推測だけどね。
―EPリリース後の予定はありますか? そして、日本に戻ってくるチャンスはありますか?
クリス:いつもその話をしているよ。特に今はちょうど僕が日本にいるタイミングだから、「また絶対に戻ってこなきゃ」と思ってるよ。リリースに関して言えば、さっき話したように、スタジオライブアルバムの準備が整ってる。リリース日はまだ決まっていないけどね。あと先日、Survive Said The ProphetのYoshと一緒に東京で作曲をしたんだ。それもリリースできたらいいなと思ってるよ。
<リリース情報>
Softspoken
EP『Martyr | マーター』国内盤
2025年2月21日(金)発売
品番:VMAR-001
レーベル:THEORIA RECORDS
=収録曲=
1. TWYLAM(トォワイラム)
2. Invincible(インヴィンシブル)
3. Throw Me Your Roses(スロー・ミー・ユア・ローゼズ)
4. I Against Me(アイ・アゲインスト・ミー)
5. Oblivion(オブリヴィオン)
6. Alone(アローン)
7. Lovetok(ラヴトック)
8. Oblivion (Live in Studio)(日本限定ボーナストラック)
9. Bones (Live in Studio)(日本限定ボーナストラック)
10. Sleight of Hand (Live in Studio)(日本限定ボーナストラック)
【国内盤仕様】
全10曲 ライナーノーツ、対訳、ボーナストラック3曲入り。デジパック。
3080円(税込)/ 2800円(税抜)
購入はこちら https://vmastore.vamprose.com/product/59836/
日本公式Website:https://softspoken.bitfan.id/
海外公式Website:https://softspokenmusic.com/
日本盤には、ファン投票で選ばれたスタジオライブ音源3曲が収録される。
当然、今回のインタビューでは最新作がメインの内容になるのだが、前回、彼らに話を聞いたのは去年5月に初来日を果たしたときのこと。今思えば、あのときの彼らは日本に到着したばかりで、時差ボケも激しく、少々テンションが低めだった。しかし、こちらの質問に真摯に答えてくれ、かなり好印象だったことを覚えている。ツアーが始まる前のインタビューだったこともあり、ツアーについては何も聞けなかったので、今回は「Martyr|マーター」に関して語ってもらいつつ、初のジャパンツアーについてもたっぷり振り返ってもらった。やはり、日本に住んでいたことのあるクリス・ウェジントン(Gt.)や日本のアニメに詳しいケビン・ポッツ(Dr.)がメンバーにいることもあり、日本の音楽に対する解像度がかなり高い印象を受けた。そんな彼らによる日本の音楽評も楽しんでもらいたい。
関連記事:Softspokenが語る、ポストハードコアにポジティヴを落とし込む理由、日本カルチャーの影響
―去年開催した初のジャパンツアーでは東名阪4公演を行い、数多くの日本のバンドと対バンしていましたが、印象的なバンドはいましたか?
サム:SCYLAは本当によかった! 実は、日本に行く前に彼らの曲を練習して、日本で彼らと一緒にステージでプレイしたんだ。あれは本当にクールだったな。ほかにもたくさんの素晴らしいアーティストがいたけど、今となってはバンド名をすべて思い出すのは難しいよ。
ケビン:自分は、バンド全体よりも個々のドラマーに注目してて、Clones of VengeanceのドラマーとMASSCLOWZのドラマーは覚えてるな。他にも何人かいたはずだけど、俺もちょっと思い出すのは難しい。
でも、一番印象的だったのはSCYLA のドラマーのYuichiだね。彼はクリスが前にやってたバンドのドラマーでもあって、今回本当に仲よくなった。彼は本当に親切なんだよ。今回、俺はライブハウスにあるドラムセットに期待して、日本にはバスドラのペダルだけ持ってきてたんだけど、結局、4回のショーのうち3回はYuichiの機材を使わせてもらったんだ。彼にしてみれば俺に貸す必要なんてなかったのに、本当に感謝しているよ。でも、どのバンドも本当によかったし、「あのバンドとは一緒に演奏したくない」と思ったバンドはひとつもなかった(笑)。間違いなく楽しい時間を過ごせたね。
クリス:僕もSCYLAのメンバーを贔屓しちゃうな。ケビンの言うように、僕はSCYLA のBrentとYuichiとは以前一緒にバンドをやってたからね。あと、Hant Placeも本当に良かった。そのほかにも、共演した多くが新しい世代だったり、シーンに登場したばかりのバンドで、僕たちと交流したがったり、アドバイスを求めてきて、それはとてもクールだったね。僕たちもアドバイスをするのは好きだし、そういう機会を持てたのはとても良かったよ。
JAPAN! Thank you so much for an amazing time!
初日本ツアーは本当に楽しかった!4日間で一生涯の思い出が作れました。本当にありがとうございました!
Special thanks to @rnrtoursjp, @vmagencyjp, @chanmei_camera, all the bands, and all of you!
また来ます!We'll be back! pic.twitter.com/4L5u3HV8Xp— Softspoken (@softspokenband) June 7, 2024
―ライブ以外で印象に残ったことは?
サム:奈良! 奈良公園の鹿たちだね(笑)。
―え、鹿ですか。
サム:俺とケビンとクリスは、鹿狩りが人気な地域の出身だから、鹿の写真をたくさん撮ったんだ。鹿に触れることができるなんて信じられなかったよ。あれは本当によかったね。それから、うどんも食べに行った。あれは一番美味かったな。
ケビン:泊まったホステルが小さな個室みたいで驚いた(笑)。
クリス:あと、これはみんな話すと思うけど、日本のトイレはかなりキレイだよね。
ケビン:ああ! アメリカに帰国してすぐに、「俺たちのトイレは間違ってて、正しいのは日本だ!」って思ったよ(笑)。だから、そのうち温かい便座を自分の家にも取り入れようと思ってる。
クリス:ほかにも、日本のいろんなものをバンドメンバーに見せたり、共有するのは楽しかったな。例えば、ファミチキに驚いていたり……。
サム:(興奮しながら)イェ~!
クリス:そういった小さな発見が面白かった。そもそも、アメリカのコンビニとは全然違うから、みんなにとってかなり新鮮だったみたい。「わあ、すごい!」って(笑)。
―将来、再び日本でツアーをするとして、次回へ向けての改善点などがあれば聞かせてください。
クリス:次回はもっと余裕を持ったスケジュールにしたいかな。例えば、2~3日の休みを入れて観光したり、リラックスしたりする時間を確保して、ライブは1日おきにするのが理想だね。今回のツアーはかなりハードだった上に観光もけっこう詰め込んだから、そのせいで全員かなり疲れちゃってね。もっと日本を満喫する時間があればよかったね。
―僕は東京公演を観に行きましたが、ステージとフロアに流れる温かい雰囲気が印象的でした。あれは意識して作り上げているものですか?
クリス:僕たちにとっては自然なことだね。
Softspokenの活動の本質は、ただ自分たちらしくあること、だからね。しかも、日本でのショーは、会場が小さく、ステージも低かったから、観客と近い距離で演奏できたことが大きなポイントだったと思う。そのおかげでより親しみやすい雰囲気を作ることができたんじゃないかな。そういった雰囲気作りはサムによるところが大きいと思う。僕たちもあの雰囲気を楽しんだよ。
サム:うん、そうだね。日本にいることに感動して、ちょっと涙が出そうになったことを覚えてるよ。「俺たちはここにいるんだ……!」ってね。そういう感情も少し影響したかもしれない。それに、俺たちの楽曲自体がそもそもそういうふうに心を込めてつくられているから、自然とそうなっていったんだと思う。俺たちはとても穏やかな心持ちで演奏しているんだ。
―ジャパンツアーの後、みなさんはアメリカに戻って、花冷え。
やSurvive Said The Prophetといった日本のバンドと共演しました。これはいかがでしたか?
サム:素晴らしかったよ!
ケビン:Survive Said The Prophetには本当に驚いたよ。「このバンドはアニメでも曲が使われてるくらい大きなバンドだし、俺たちとは遊んでくれないだろうな」と思ってたら、実際はめちゃくちゃ親切でさ。俺たちの機材のセッティングや撤収まで手伝ってくれたし、ショーも本当に素晴らしかった。彼らとのショーは3本ソールドアウトして、それ以外もソールドアウトに近かった。同じように、花冷え。も本当に素敵な人たちだったな。俺たちが共演したのは彼女たちにとってツアーの11本目くらいのショーだったから、メンバーはちょっと疲れていたかもしれない。でも、みんなとても親切で、ホスピタリティにあふれていたよ。このときのショーもソールドアウトだった。アメリカにおける日本のバンドの受け入れられ方は、俺たちにとっても良い影響を与えたと思う。みんな本当にポジティブだし、悪いことはひとつもなかったよ。
この投稿をInstagramで見るSoftspoken(@softspokenmusic)がシェアした投稿―日本のバンドとの共演や、日本で実際にライブをした経験を通じて、日本の音楽シーン、特にヘヴィミュージックシーンについて今、どう感じていますか?
クリス:(彼らの音楽は)速いね。それが一番の特徴。アップテンポな曲がたくさんあって、技術的な巧みさもある。テクニカルなパートがかなり多いよね。
サム:その通り。ただ、次に日本に行くときはもっとモッシュを取り入れたいな。アメリカで花冷え。とやったときは、花冷え。のライブ中にケビンと俺でモッシュピットを作ったんだ。アメリカからのちょっとしたプレゼントとしてね(笑)。
ケビン:本当は日本にいるときもそうしたかったんだけど、実際は時差ボケのせいでモッシュピットを作るほどの元気がなくてさ。4回のショーを無事にこなすだけで精一杯だったんだよ。最後の4回目のショーなんか、ライブ後にみんながカンパイしているとき、俺は立ったままで寝ちゃいそうだったし(笑)。それぐらい時差ボケは大変だったね。だから、さっきクリスが言ったように、ショーとショーの間に1日でも休みが取れてたらよかったのかも。でも、サムが言ってたみたいに、俺たちは観客と一緒に盛り上がるのが好きだし、彼らが俺たちにしてくれたようにホスピタリティを返したいんだよ。
―ジャパンツアーではロビーがサポートメンバーとして参加していましたが、彼はツアー後の9月に正式メンバーになりました。彼はジャパンツアーでみなさんの信頼を勝ち取ったんですか? 彼を正式メンバーとして迎えた要因はなんだったんでしょう。
クリス:最初にジャパンツアーを計画した頃は、僕だけがギターを担当していたんだけど、僕はリードギターとリズムギターの両方を書いているから、ライブでどっちを演奏するか毎日悩んでて、最終的にはリードを弾くことに決めて、リズムギターは他の人に任せることにしたんだ。そこで、以前からの知り合いだったロビーが手を挙げてくれて、ジャパンツアーのためにひと月ぐらいで僕たちの曲をすべて覚えてくれた。つまり、ロビーの初ライブは日本だったんだよ。ツアーを通じて、彼が本当に素晴らしい人間で、僕たちの考え方や性格にもすごく合ってることがわかった。そういうわけで、ツアー後に彼と話をして、正式メンバーにすることに決めたんだ。
―そういう経緯があったんですね。さて、EP『Martyr|マーター』がついにリリースされます。前回のEPは2021年に発表されましたが、今回リリースまでに少し時間がかかったのはどうしてですか?
クリス:僕たちはインディーズバンドだから、資金面の事情でリリースがちょっと難しかったんだ。だから、2021年の『Where the Heart Belongs』の後、しばらくはシングルリリースに集中しようと決めて、一曲一曲良いものを作りながら成長していくことにしたんだ。その過程でいくつかのレーベルから興味を持ってもらえたんだけど、話し合いを重ねた結果、どこも自分たちには合わないと思ったんだよね。で、最終的には自分たちでEPをつくるのがいいっていうことになったんだ。
―『Martyr|マーター』(殉教者)というタイトルはすぐに決まったんですか?
サム:これは自然に決まったかな。俺たちはずっと、自分たちのことをこの音楽の世界における「殉教者」のようなものだと感じていて、全てを投げうって音楽活動をする俺たちの旅路を家族も支えてくれるし、いいときも悪いときもみんな一緒に乗り越えてきたんだ。実際、このタイトルは曲の歌詞から生まれていて、「TWYLAM」の歌詞に「Martyr(殉教者)」というフレーズがあるんだ。それが俺たちの姿勢をよく表していると思う。今作はどの曲にも、正直であれ、健全であれ、そして人を愛し、人から愛される人間であれっていうメッセージが込められている。そして、俺たちはすべての感情をラウドな音楽を通じて健全に発散するんだ。あと、俺たちが常に目指しているのは、Softspokenの音楽を、次世代や、今まさにそれを必要としている人たちに残すこと。これまで、様々な曲が俺を何度も救ってくれたり、辛い一日を乗り越える助けになってくれたりしてきた。だから、今度は自分たちがそういうものを残したいんだ。多くの人に届くかもしれないし、少数の人にしか届かないかもしれない。でも、その少数の人が大切なんだよ。それが俺にとっての「殉教者」という意味なんだ。
―今作はファーストアルバムのような印象を受けました。バンドとしての姿勢が非常に明確で、サムが言ったように「愛し、愛され、自分に正直である」というメッセージがしっかりと伝わってきます。
クリス:そうだね。それが「殉教者(Martyr)」という言葉を使った理由なんだ。これは普段よく使う言葉ではないけど、僕たちのバンドのイメージや、活動に捧げるもの、そしてその活動から得られるものをよく表していると思う。
―オープニングナンバーは「TWYLAM」ですが、このタイトルは造語ですか?
サム:ああ、「TWYLAM」は「the way you look at me」の頭文字をつなげたものだよ。最近、俺たちは頭文字を使ったりして遊ぶことが多くて、たしか「Lovetok」がきっかけだったと思うんだけど、俺たちの新しいスタイルみたいに感じたんだよね。俺はいつも自分の個人的な体験や、周りの人たちの体験をもとに曲を書くようにしているんだけど、全体的なメッセージは殉教者というテーマに近いんだ。
―なるほど。
サム:曲に関して言うと、プロデューサーのキャメロン・ミゼルは、ボーカルをユニークに加工するのが得意で、この曲でも俺の声を取り込んで楽器のようにしてしまったんだ。あと、ヘヴィなパートとソフトなパートのダイナミクスもすごくクールだよね。歌詞、メッセージ、楽器、全てにインパクトがあると思う。
―「Invincible」についてはどうですか?
クリス:実は、この曲は他のアーティストのために書いたものだったんだ。名前は言えないけど、このジャンルでは有名な人。で、彼は過去に依存症のトラブルがあったから、その体験をもとにして曲を書いたんだけど、最終的に彼はこの曲を採用しなかったんだ。だけど、メンバーにこの曲を聴いてもらったら、みんなすごく気に入ってくれたから、自分たちでやることにしたんだよ。この曲のメッセージは「諦めないこと」。他人が自分を見放したとしても、自分が自分自身を見放さなければ「無敵(Invincible)」になれる、という内容。それはSoftspokenというバンドやEPのテーマにもぴったりだと思う。
―「Invincible」という言葉は力強さを感じさせるもので、曲を聴く前は「この曲はシャウトやスクリームが多、激しい歌になるだろう」と想像していたんですが、実際はメロディを重視した曲ですよね。歌い方もとても繊細です。
サム:この曲はまず、クリスがメロディと歌詞を作って、AIで生成した仮ボーカルに従って忠実にボーカルを再現したんだけど、静かなパートでは自分なりに(ドラムでいうところの)フィルみたいなものを加えたんだ。あと、”rooftops”という歌詞ではシャウトをしていて、元々はもっとスクリームが入っていたんだけど、最終的にそれは外したんだよね。なぜかというと、このメロディが本当に気に入っていて、自分の声にすごく合うと思ったから。
ケビン:最初にクリスがこの曲を聴かせてくれたとき、すぐに「これは絶対に俺たちの曲にするべきだ」と思った。ラジオで流れるような曲だと思ったし、実際俺の妹もすぐに気に入ってくれたんだ。ほかにも、普段こういうジャンルの音楽を聴かない人たちにも受け入れられているみたいで、アメリカではかなり好評なんだ。話はちょっと逸れるけど、曲をつくるときは、どれくらいスクリームを入れるべきかよく考えるんだ。この曲についてはメンバー全員が「ラジオ向きだ」と感じた。アメリカのラジオ局だと、スクリームを入れないほうがオンエアされやすいから、この曲は思い切ってソフトなアプローチをとることにしたんだよ。もしスクリームがもっと多かったら、この曲はラジオでは流れなかっただろうね。
クリス:……念のため伝えておきたいんだけど、曲作りにあたってAIのソフトを使ったのはデモの声だけで、そのほかは全部僕たちがつくったものだからね?
―そうやって念押しをしなきゃいけないぐらい、今、AIでの音楽制作は広まっているんですね。AIが作った曲と人間が作った曲の違いは分かりますか?
ケビン:正直、どんどん見分けがつかなくなってきてる。でも、AIで作られた曲をたくさん聴いてるわけではないけど、今はまだいくつか気になる点があるかな。例えば、フレーズの使い方が不自然だったりね。俺の友人はAIで遊んでいて、「俺についての曲を書いてくれ」とか「Taylor Swiftとデートする曲を作ってくれ」みたいにリクエストすると、AIが与えられたテーマに沿った曲をそのまま生成してくれるんだよ。いま言ったみたいに、不自然なフレーズになってる部分もあるけど、短期間でかなりクオリティが向上しているから驚きだよ。たぶん、数年もすれば完全に見分けがつかなくなるようなものをつくれるようになるんじゃないかな。それくらいリアルで、怖いくらい現実的なレベルに近づいてきてると思う。
―やっぱり、音楽制作にAIが入ってくるのは脅威ですか。
クリス:AIはツールとしては役立つ場面もあるけど、それを商業的に利用して、アーティストを排除しようとする人たちは必ず現れる。だから、たしかに脅威ではあるね。
―話を戻します。『Martyr|マーター』は2023年以降にデジタルリリースされた楽曲を収めていますが、今回それらの曲を1枚の作品にまとめたことで新たに気づいたことはありましたか?
ケビン:全体的に思うのは、これらの楽曲にはそれぞれ非常に強いテーマ性があるということ。俺が加入する前に書かれた曲もいくつかあるけど、どれもメッセージ性がしっかりしてるよね。今作は、クリスが言ったように、最初はシングルを中心につくっていて、「LoveTok」「Alone」「Oblivion」はアルバム用ではなく、元々は個々のアイデアから生まれたシングルだったんだよ。でも、どの曲も「自分たちのメッセージに忠実であり続ける」という強いテーマ性を共有していて、ひとつの作品にまとめたことでそのことに初めて気づいた。だから、全体を通して聴くと自然な流れと統一感があることが感じられると思う。曲順を決めるのはかなり難しかったな。最終的には、最新曲を一曲目に持ってくる「ウォーターフォール方式」にした。マーケティング的にもそれが最も理にかなっているからね。
クリス:作曲者の視点で言うと、僕たちは常に新鮮であり続け、自分たちらしさを保ちながら新しいことにも挑戦しているんだ。今回のEPのように、僕たちは本当に自由に何でもやれると感じてる。落ち着いた瞬間もあれば、すごくヘヴィな瞬間もあって、このEPではどちらもうまく表現できたと思うよ。気が早いけど、次の作品が今から本当に楽しみ。もっと大胆にどちらかの方向に振り切ってみるのも面白いかもしれない。とにかく、今回のEPがこれだけダイナミックな仕上がりになったことを誇りに思うよ。
―日本盤には3つのボーナストラック(「Oblivion」「Bones」「Sleight of Hand」のスタジオライブバージョン)が収録されていますが、これはファン投票で選ばれたものですよね。ファン投票のアイデアは誰が提案したんですか?
クリス:これは僕が日本のスタッフと話し合って決めたことだね。日本限定の特別バージョンを作りたくて、アメリカ盤には収録されていない曲を入れようと思ったんだ。ちょうどその頃、スタジオに入ってライブセットのレコーディングをする計画があったから、その音源をうまく利用することにしたんだ。
―選ばれた3曲は予想どおりでしたか? それとも意外な結果だった?
クリス:『Martyr|マーター』からもう1曲選ばれると思ってたから、ちょっと驚いた。でも「Sleight of Hand」と「Bones」も人気のある曲だから納得だし、『Where the Heart Belongs』と『Martyr|マーター』という2つの時代がミックスされているのは面白いと思う。
―今回の結果から、日本のファンの嗜好が見えたりしますか?
ケビン:俺たちの音楽は花冷え。やSurvive Said The Prophetと相性がいいと思ってる。最近は日本の音楽スタイルにもSaosinのような雰囲気が採り入れられてきているけど、彼らはそれよりも少しテンポが速いよね。「Sleight of Hand」を聴いてみたら、Survive Said The Prophetとの共通点にいくつか気付くんじゃないかな。ギターの音色やメロディの種類、あとは高音ボーカル、速いテンポとかね。そうやってどういう曲がウケそうかある程度予測することはできるけど、完全に把握するのは難しいね。
クリス:僕たちが新曲をリリースすると、X(旧Twitter)で日本のファンからギターのメロディやリードパートについてコメントが寄せられることがよくある。だから、サムのボーカル以外にも、ギターのそういった部分も日本のファンにインパクトを与えているんだと思う。あくまで推測だけどね。
―EPリリース後の予定はありますか? そして、日本に戻ってくるチャンスはありますか?
クリス:いつもその話をしているよ。特に今はちょうど僕が日本にいるタイミングだから、「また絶対に戻ってこなきゃ」と思ってるよ。リリースに関して言えば、さっき話したように、スタジオライブアルバムの準備が整ってる。リリース日はまだ決まっていないけどね。あと先日、Survive Said The ProphetのYoshと一緒に東京で作曲をしたんだ。それもリリースできたらいいなと思ってるよ。
<リリース情報>

Softspoken
EP『Martyr | マーター』国内盤
2025年2月21日(金)発売
品番:VMAR-001
レーベル:THEORIA RECORDS
=収録曲=
1. TWYLAM(トォワイラム)
2. Invincible(インヴィンシブル)
3. Throw Me Your Roses(スロー・ミー・ユア・ローゼズ)
4. I Against Me(アイ・アゲインスト・ミー)
5. Oblivion(オブリヴィオン)
6. Alone(アローン)
7. Lovetok(ラヴトック)
8. Oblivion (Live in Studio)(日本限定ボーナストラック)
9. Bones (Live in Studio)(日本限定ボーナストラック)
10. Sleight of Hand (Live in Studio)(日本限定ボーナストラック)
【国内盤仕様】
全10曲 ライナーノーツ、対訳、ボーナストラック3曲入り。デジパック。
3080円(税込)/ 2800円(税抜)
購入はこちら https://vmastore.vamprose.com/product/59836/
日本公式Website:https://softspoken.bitfan.id/
海外公式Website:https://softspokenmusic.com/
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