テイト・マクレーには未来が見える。2024年のスーパーボウルでイーグルスが達成する勝利スコアを的確に予測した2023年の動画がその証だ。「ただの思いつきの数字だったんだですけどね」とZoomを通して笑いながら語るが、自身に予知能力があるかもしれないことは認めている。「これまでも何度か未来を言い当てたことがあるので、もしかしたら本物の予言だったのかもしれない」。
21歳のスターが次に予言するのは? ニューヨークへの転居だ。「ニューヨークこそが私の人生の次なるチャプターだと感じています」とテイトは語る。最近は『セックス・アンド・ザ・シティ』にはまっており(自身をキャリーとシャーロットのミックスと分析)、お気に入りのレストランが近くにあるロウアー・マンハッタンに新居を購入したばかりだ。
「21歳になった私の気分を形作るのはニューヨーク、ここは魔法が起こる場所なんです」。
実際、魔法はテイトの存在するところならどこでも発生しているようだ。2023年12月、彼女は2ndアルバム『THINK LATER』をリリース。デビュー作『i used to think i could fly』のメランコリックなベッドルーム・ポップから、より大胆で自信に満ちた官能的なダンス・ポップへと劇的な進化を遂げた。
昨春、彼女は長年培ったダンススキルを披露する初の大規模ワールドツアーを開始。キャリアが急上昇する中でも、テイトは作曲活動を止めなかった。『THINK LATER』のリリース直後から、3rdアルバム『So Close To What』の制作に着手した。
「仕事の一環とはいえ、作曲は私にとってのセーフスペースなんです」と彼女は説明する。「自分の感情を表現できる時間こそが、私の人生における安定の源です。だからこそ、ツアーで1年が目まぐるしく過ぎていく中でも、帰宅して自分の現状について書き続けられることは、実は素晴らしいことでした」。
『So Close To What』のコンセプト
当初からアルバム制作を目指していたわけではなかった。主に昨年8月、初のアリーナ公演となるマディソン・スクエア・ガーデンでのヘッドライナーショーで新曲を披露したいという思いからだった。彼女は1年前から手がけていた「It's ok I'm ok」をアンコールで演奏した。
「1年かけて少しずつ形作り、マディソン・スクエア・ガーデンのあの夜に披露したい楽曲に仕上げていきました」と彼女は振り返る。
『So Close To What』は今冬に完成を迎えた。
「二人は私が出会った中で最も素晴らしい女性であり、共に仕事をした中で最高のソングライターです」とテイトは熱を込めて語る。「彼女たちからソングライティングについて学び、共に時間を過ごせることは本当に素晴らしい経験でした。人生の混沌とした瞬間について、女性の視点から語り合えることがとても楽しいんです」。
テイトのアルバム全体は、かつてない名声を得ながら成長を遂げた昨年の混沌に焦点を当てている。『So Close To What』というタイトルは、彼女の実存的な不安から生まれたーー「時に自分が本当はその場にいないんじゃないかって発想、すべてを制御しようとする衝動、多くの人々の視線を感じること、21歳で人生最年長でありながら、同時にものすごく若いなって感じること」。「目的(purpose)」という概念は、この1年、彼女の心に重く横たわっていた。なぜ今もそれを見出せないのかという思いと共に。
「『私たちは何を目指しているのか? こうすることの目的は何なのか?』というコンセプトに何度も立ち返りました。目標を設定し続けても、人生のある地点で自分にまだ満足できていないとしたら。満足できる瞬間はいつ訪れるのか? これは私が自ら作り出した終わりなきループなんです」。
彼女はこれらの根源的な問いを、あらゆる収録曲の出発点として活用した。アレンとは「Purple lace bra」を共作し、「女性であることの美しくも過酷な現実」を表現した。「女性として、服装や振る舞いについて、様々な意見が寄せられることがありますよね。21歳でこうした感情を初めて経験する中で、エイミーのような、揺るぎない自信を持つ素晴らしい女性と共に、その視点を楽曲に織り込めたことは素晴らしかった。彼女も人生でこうした瞬間を経験し、同様の不満を感じてきました。彼女に打ち明け、楽曲を通じてその力を取り戻せたと感じています」。
「Nostalgia」では、人生に実感が伴わず、すべてが過ぎ去っていくような感覚について考察した。「この曲で私が最も気に入っている歌詞は『And I manifested you would leave/So the day you did I had you beat/Three steps ahead of everything(あなたが去ることを私は予感していた / だからあの日、私の方が先を行っていた / すべてに3歩先んじていた)』というくだりです」と彼女は語る。「アルバム全体と、将来の痛みから身を守ろうとする防衛本能を表現しています。それは人生に執着しすぎず、今を生きることを拒む方法です。なぜなら、人は常に自分を守るため、戦闘か逃避のモードを行き来しているのだから」。
恋人ザ・キッド・ラロイとのデュエット、「徹底的な自己探求」
テイトのビジョンを形作った一流のソングライター/プロデューサー陣に加え、『So Close To What』には2名の特別なゲストが参加している。
「I know love」は恋人キッド・ラロイとのデュエット曲だ。昨年4月に交際を公表したカップルは、長らく共同作業を望んでいた。あるスタジオセッションでアイデアを出し合う中で、ついに二人で創るべき楽曲に出会った。
「恋人としての自分とスタジオでアーティストとしての自分は、まったく異なる人格なんです」と彼女は語る。「お互いの前で歌うことには少し緊張感がありました」。
13歳で『So You Think You Can Dance』のファイナリストとなり、翌年にRCAと契約を結んだカナダ人スターに、休息の時間はない。「Miss Possessiveツアー」は前回を上回る規模で、3月から11月まで世界各地のアリーナでヘッドライナーを務める。長年ベッドルームで楽曲を書いてきた彼女だが、ライブパフォーマンスは彼女をアーティストとしてさらに成長させた。
「(ツアー)は音楽への向き合い方を完全に変えました」と彼女は説明する。「これまでセッションを始める時、ビートが私にダンサーとしてどう感じさせるかを考えたことはありませんでした。
次回のツアーに向け、テイトはさらなる高みを目指す準備が整っている。彼女はロザリアやケンドリック・ラマーによるショーの洗練性と、自身の演劇性、プロット構築への愛着からインスピレーションを得ているそうだ。「始まりから終わりまでのストーリーラインに魅了されるんです」と彼女は物思いにふける。「観客にいつ、どのような感情を抱いてほしいか、その構築に惹かれます。今年は本当にすべてのナラティブに焦点を当てたいと思っています」。
ニューヨークとその先へと向かう人生の次なる1年を見据える中で、テイトはこれまで以上に落ち着いた気持ちでいる。それは「徹底的な自己探求」と日記執筆の賜物だと彼女は考える。「ただノイズを遠ざけるようにしています」と彼女は言う。「その瞬間、私は『人生に何を求めているのか? 音楽を通じて何を成し遂げたいのか? どのように物事を変革したいのか?』と問いかけているんです。それに対して人々が意見を持つのは自由だけど、私がやりたいことをやって、それで安らかに眠れるのなら、他人の意見なんて重要ではありません」。
『So Close to What』収録の「2 hands」を「THE FIRST TAKE」で披露

テイト・マクレー
『So Close To What』
日本盤:発売中
ボーナス・トラック収録/アザー・ジャケット仕様/アーティスト・メッセージ訳、歌詞・対訳付
日本盤購入:https://TateMcRae.lnk.to/SoCloseToWhatJPNverRS

『So Close To What』
配信/輸入盤:https://TateMcRae.lnk.to/SoCloseToWhatJPNRS