ポルノ俳優の性被害者ら、レインボー・バーとの包括的和解に合意 米

米サンセット・ストリップの有名なバー「レインボー・バー・アンド・グリル」が、ポルノ俳優ロン・ジェレミー被告に女性客への性的加害を許していたとして提起された複数の訴訟において、被害を訴える原告側との和解に至ったことが、現地時間15日に開かれた法廷で明らかにされた。

少なくとも9人の女性がレインボー・バー・アンド・グリルを相手取り起こした訴訟に関するこの「包括的和解」により、ジェレミーの被害を訴える多くの女性たちが金銭的補償と一定の「正義」を得ることになる。ジェレミーは30件以上の性的暴行容疑と21人の被害者に関する刑事事件で、訴訟能力なしと判断され、裁判には至っていない。

「依頼人にとって本当に長い戦いでした」と、2人の匿名女性（いわゆる”ジェーン・ドウ”）を代理するアーロン・オステン弁護士はRolling Stone誌に語った。「これが被害者たちにとって得られる、ほぼ最大限の区切りだと言えるでしょう」

オステンによれば、依頼人の女性たちは2016年と2019年にウェスト・ハリウッドのこのバーでジェレミーに追い詰められ、シャツの中に手を突っ込まれたり、胸をつかまれたり、乳首を強くつねられるなどの被害を受けたと訴えており、いずれも同意のない加害だったという。彼女たちは、ロン・ジェレミー（本名ロナルド・ジェレミー・ハイアット）が常習的な加害者であることを、バーのスタッフが知りながら黙認、あるいは加担していたと主張している。

「彼女たちは本当に多くのことを経験しました。まず大陪審で証言し、のちにジェレミーが精神状態を理由に不起訴・釈放されると知ったときは、大きな失望がありました。それでも民事訴訟を続けたのです」とオステンは語る。「誰かに責任を取らせるという目的を決して見失わなかった。自分たちだけでなく、これから同じようなことが起きないようにするための正義だったのです。レインボーが今回の件から教訓を得て、二度と同じことを繰り返さないことを願います」

和解金額は非公開で、オステンは今回の包括的和解を「グループ全体の努力の成果」だと述べた。

72歳のジェレミーは2020年に4人の女性に対するレイプ容疑で起訴され、その後、告発は急速に拡大。2021年8月には、未成年を含む21人の被害者による34件の性的暴行容疑で正式起訴された。被害は1996年まで遡り、被害者の年齢は15歳から51歳に及んでいた。

ジェレミーの刑事事件は、医療上の理由により停止されたが、レインボー・バー・アンド・グリル（運営会社：ロッキン・ホース）に対する民事訴訟は継続されていた。カリフォルニア州サンタモニカで15日に開かれた審理で、ロッキン・ホースの代理人であるマイケル・モス弁護士が和解内容の概要を報告した。

「これらの案件はすべて調停にかけられ、和解に至りました」とモスはロサンゼルス郡のマーク・エプスタイン判事に語った。「すべての和解合意書はすでに原告側の弁護士に送付する準備ができています。ただ、最終的な書類の取り交わしと支払い完了には少し時間がかかるでしょう」

審理後、モス弁護士は「レインボー・バー・アンド・グリルは一貫して不正行為を否定しており、原告の主張する責任や損害について強く争ってきた」としたうえで、今回の和解は「訴訟費用などを考慮したビジネス上の判断」であるとする声明を発表した。声明では、「これまでの民事・刑事訴訟において、当店が違法行為を行った、あるいはロン・ジェレミーによる加害に何らかの形で関与したとの認定は一切されていない」とも述べられている。

なお、他のジェーン・ドウたちを代理する弁護士からRolling Stone誌へのコメントは得られていないが、関係筋によれば、ロッキン・ホース社は保険により補償される見通しだという。

「被害者の数が非常に多かった。ロッキン・ホース側が『そんなことが起きていたとは知らなかった』とは主張できない状況だったと思います」とオステンは語る。「こうした施設を相手に訴訟を起こす際、よく『我々に何が分かったというのか』という反論がされますが、同一人物による加害が、同様の状況下で何十件も起きていたとなれば、何が起きていたのかは明らかでしょう」

ロッキン・ホース社に対する訴訟では、同店の主要スタッフがジェレミーの危険性を認識していながら、出入りを許し、従業員用トイレなどの制限区域にまで立ち入らせていたと主張されていた。検察によれば、ハイアットによる刑事事件のうち8件は、レインボー・バー・アンド・グリル内で発生したという。

ジェレミーの刑事訴訟は昨年、「被告が訴訟能力を回復する可能性がほとんどない」との判断により打ち切られた。現在もレインボー・バーで薬物を盛られたうえに連れ出され、酩酊状態のままアパートで性的暴行を受けたと訴える女性による民事訴訟が継続中であり、裁判は2026年12月に予定されている。ジェレミーの遺産を管理する代理人からのコメントは得られていない。

from Rolling Stone US