KIRINJIこと堀込高樹とのコラボは、2019年にリリースされたKIRINJIの人気曲「killer tune kills me feat. YonYon」以来、およそ6年ぶり。
〈交差する人の想い DJみたく途切れずに 人生はまるでMixtape〉という一節には、日本と韓国のシーンを繋ぐプロジェクト「THE LINK」を2018年に立ち上げて以来、国境を越えて人と人をつなぎ続けてきたYonYonが〈選んだ道〉と〈その生き方〉が詰め込まれている。3人の関係、楽曲制作の裏側、日韓の繋がりについてグルーヴィーに語ってもらった。

Photo by Haruki Horikawa, Hair & Make up by Shuhei Kubo, Creative direction by Haruki Horikawa, Kyontie
相思相愛の出会いと再会
―まず、今回の「Moonlight Cruising」を制作しようと思った背景を教えてください。
YonYon:実は今、初のアルバムを制作中なんです。ちょっと内容のネタバラしみたいになりますが、この作品を通して、いろんな人に感謝を伝えられたらと思っていて。客演についても、これまでご縁のあった方々をお誘いしています。
―今年1月にリリースした「Old Friends」で、旧友のSIRUPさん、Shin Sakiuraさんをフィーチャーしていたのもそういう背景があったんですね。
YonYon:そうです。高樹さんとも1st アルバムのタイミングで絶対にご一緒したかったので、お声がけさせていただきました。
―高樹さんはオファーをもらっていかがでしたか?
KIRINJI:嬉しかったのはもちろんなんですが、最初にお話をもらってから完成するまで、けっこう時間がかかりました。「一緒にやりましょう」って声をかけてもらったのは、たしか2022年か2023年くらい。
YonYon:そうなんです……(苦笑)。
KIRINJI:その間にもKIRINJIのライブに出てもらったりして、「killer tune kills me」もいろんな人に聴いてもらえるきっかけになった。YonYonにはお世話になっていたので、いつか協力できたらと思っていたんです。そんなタイミングでのオファーでした。
―「killer tune kills me」は、KIRINJIが2013年にバンド編成となって以降(※現在は堀込高樹のソロプロジェクト)で最も再生された楽曲になりました。ここまでストリーミングされているのは、海外のリスナーにも届いている証拠かなと。
YonYon:韓国語が入っていることで、MVのコメント欄にも「聴いてたら韓国語が出てきて嬉しかった!」という声が多くて、韓国語を交えた歌詞を喜んでもらえて嬉しい限りです。
―KIRINJIのライブで披露するとき、YonYonさんが不在の場合は、高樹さんが韓国語パートも歌っていますよね。
KIRINJI:下手ながら、ずっとやってます(笑)。もともと女性ボーカルのレンジなので少し高めなんですが、自分の声もわりと高いほうなので、頑張ればなんとか。ただ、発音は完全にカタカナ・ハングルですね。

Slom(Photo by Jinyu, Hongki Lee)
―そんな高樹さんとSlomさんですが、実は今回が初対面ではないんですよね。昨年、おふたりで居酒屋に行かれて、そのときの通訳をYonYonさんが務めたそうですね。
KIRINJI:あのときはまず、「YonYonの曲について打ち合わせをしよう」という話だったんです。それで日程を調整していたら、ちょうどSlomさんとSUMINさん(※韓国R&Bシーンを代表するシンガー&プロデューサー)が日本に来るタイミングで、「彼らのアルバムが出るからVlogを撮ろう」という流れになって。せっかくなら砕けた場所がいいよね、ということで、僕がたまに行く高円寺の飲み屋さんで撮ることにしました。
YonYon:あのお店、めちゃくちゃ美味しかったです(笑)。
SUMIN & Slomと堀込高樹が合流するのは11:20~
―Slomさんは、高樹さんと会ってみていかがでしたか?
Slom:本当に光栄でした。KIRINJIさんを知ったのは6年ほど前、大学を卒業する前後で、特にアルバム『3』は全曲を無限リピートするくらい聴き込んでいました。Spotifyの年間まとめでも、毎年必ずKIRINJIさんの名前が入っていたほどです。
それで昨年、僕のアルバム(SUMIN & Slom『MINISERIES 2』)をリリース前に聴いていただきたくてYonYonさんを通じてお声がけさせていただいたのですが、KIRINJIの音楽はよく知っていても、高樹さんご本人がどういう方なのかを知れる機会がなかなかなくて。でも、居酒屋で実際にお話してみたら、とても繊細な方で、僕が影響を受けてきた音楽的背景も的確にキャッチしてくださって。すごく嬉しかったし、大きな力をいただきました。
会話の中で「息子さんと一緒に高円寺に服を買いに来たりすることもある」なんて話もしてくれて。僕のような若いミュージシャンは、つい気持ちが焦りがちなんですが、「自分のペースでいいんだよ」と言ってもらえたような、心が整う貴重な時間でした。
―高樹さんは、Slomさんの音楽を聴いてどう感じましたか?
KIRINJI:高円寺で聴かせてもらった「JUST A BREAKUP」はブラジリアンな雰囲気だけど、50~60年代のボサノヴァをトレースするというよりは、80~90年代のブラジル音楽を現代的に解釈したような印象で。ちょうど自分も「そういう音楽をやってみたいな」と漠然と考えていた時期だったので、すごく好きだなと思いましたね。
この曲に限らず、Slomさんのトラックは「R&Bを聴いてR&Bを作った」というより、もっと奥行きがある。いろんな音楽を摂取しながら、それをR&B的な文脈に落とし込んでいて、その知性にすごく惹かれます。
「JUST A BREAKUP」は、SUMIN & Slom『MINISERIES 2』の1曲目
―Slomさんは『MINISERIES 2』の制作中、ムタンチスのリタ・リーを研究していたそうですね。アントニオ・カルロス・ジョビンなどのブラジル音楽や、ドナルド・フェイゲンのようなAORもお好きだとか。
Slom:僕の音楽的ルーツは、ある意味では父の影響から始まっています。家ではよくジャズが流れていて、そのなかで初めて強く反応したのが、ジョビンの『Wave』でした。なぜ惹かれたのか当時はわからなかったけど、それを聴くと心が落ち着く感覚があって、ずっと聴き続けていました。
高校、大学と進むにつれ、リズム感の強い音楽に惹かれるようになって、ヒップホップやR&B、J-POPや渋谷系にも出会いました。
それで、自分のルーツを掘り下げていくなかで、5年ほど前にAORというジャンルに出会いました。ブラジルのリタ・リーや、アメリカのドナルド・フェイゲンの音楽を、韓国で自分が再構築したらどうなるだろう?という興味が湧いてきて。もちろん、韓国にもそうした音楽をやっている人はいましたが、僕の場合はヒップホップとR&Bの影響がベースにあったので、そこにどう溶け込ませるか、すごく試行錯誤しながら取り組んでいました。
―YonYonさんは2018年の「Period(過程)」で、当時23歳だったSlomさんを起用しています。Slomさんのデビューは2017年とのことなので、これはかなり早かったのでは?
YonYon:Slomくんがアメリカの流通を通じて初めてオフィシャルリリースしたのが2017年ですが、彼はそれ以前からSoundCloudに曲をアップしていて。私は2015年頃に韓国へ留学生として一時帰国していたのですが、ソウル市内でもDJ活動をしている中で、彼と出会ったんです。SlomくんのDJはめちゃめちゃカッコ良かったし、SoundCloudに上がってる楽曲がどれも素晴らしくて。「いつか一緒にやれたら」と思っていたなかで、「THE LINK」を始めるタイミングで改めて声をかけました。
Slomくんは本当にいろんな場所で活躍している人で。タイムリーなことに先月、SUMIN & Slomの共作アルバム『MINISERIES』の日本盤CDやLPが出たり、今や韓国のみならずインターナショナルに活躍されていますが、本当に休む暇もなくずっと制作しているイメージしかなくて。彼がこうして活動の場を広げられているのは、地道に積み重ねてきたキャリアがあると思っています。
『SHOW ME THE MONEY』という、韓国で国民的にバズったヒップホップ番組があって(※現在は放送終了)、そこでプロデューサーとして活躍したことが飛躍のきっかけとなり、そこから数々のアーティストの楽曲をプロデュースしたり、近年はSUMINさんとのプロジェクトも同時に進行中で、本当にいつ休んでるんだろうとつくづく思います。
―そんなSlomさんを新曲に迎えようと思った理由は?
YonYon:「THE LINK」もそうでしたが、私は「この人とこの人が組んだらケミストリーが起きそう」という発想で声をかけることが多くて。SlomくんがKIRINJIのファンだということを教えてもらった時から、いつかこのお二人を繋ぎたいという思いが芽生え、ようやくそのタイミングが来た、という感じですね。
―Slomさんは2019年に『Ace Hashimoto & Slom - 2NITE (Feat. 向井太一)』で、YonYonさんの楽曲「Period(過程)」にも参加した向井太一さん(現・TAIL)をフィーチャーしていました。YonYonさんとの出会いから、どんな影響を受けてきましたか?
Slom:YonYon姉さんと出会った頃は、ソウルでよく顔を合わせるDJのひとりという感覚で、まさか彼女を通じて日本のアーティストと一緒に制作するようになるなんて想像もしていませんでした。
「Period(過程)」を一緒に作ったあと、僕はアメリカに戻っていたんですが、ちょうどその頃にAce Hashimotoというラッパーと曲を作り、そこに向井さんも参加することになって。「ああ、これもYonYon姉さんがつないでくれたご縁なんだ」と実感しました。僕にとって、新しい地平が開けたような体験でしたし、彼女には昔から感謝しています。
「世界は狭い」とよく言いますが、偶然の出会いのように見えることも、それを可能にしてくれる誰かの存在がある。
〈選んだ道〉がもたらした「Moonlight Cruising」
―「Moonlight Cruising」はどんな曲を作ろうとしたのでしょう?
YonYon:最初、どんなテーマで書こうかってところで……かなり迷走しました。
KIRINJI:いろんなデモが送られてきました(笑)。
YonYon:せっかくの座組なので「絶対にいいものを出さなきゃ」っていう、変にプレッシャーに駆られてしまって。今の四つ打ちっぽいサウンドに落ち着くまで、デモの段階でいろんなジャンルを横断して。そのぶん、Slomくんには超迷惑をかけてしまい……。
KIRINJI:割とJ-POPっぽいのもあったよね。
YonYon:KIRINJIの作風に少し寄せた感じの曲調だったり、クラブ寄りでベース強めのハウスっぽいデモだったり……Slomくんには本当にいろんなパターンのトラックを作ってもらいました。それまではオンラインでやり取りしていたんですけど、昨年の秋に「これはもう現地に行くしかない」と決心して韓国に行きました。
そこでSlomくんがGu young junさんというギタリストを連れてきてくれて、SUMINちゃんもメンターとして参加してくれて。彼らの事務所「Standard Friends」のスタジオに4人で集まってセッションを始めたら、Young junさんがボサノヴァ風のエモいギターフレーズを弾いてくれて、みんなで「これだ!」ってなったんです。そこから今の形になりました。
Slom:『MINISERIES』の1作目では鍵盤とシンセで編曲していたんですが、2作目ではもっとアコースティックな質感を加えたくて、Young junさんを多くの曲に起用しました。彼はプロデューサーとしてちょうどキャリアを始めたところで、こうした機会に関わってもらいたくて、僕から声をかけたんです。
YonYon姉さんも話していたように、「Moonlight Cruising」にはいろんなバージョンが存在して、ある意味では「正解」を探すプロセスでした。僕がプロデューサーとして大切にしているのは、「誰もが共感できること」「アーティストが自然体でいられること」の二つで。テクニックを見せつけるよりも、その人がその人らしく輝けることのほうが重要で、それこそが優れたアレンジだと考えています。
YonYon姉さんがソウルに来てくれたとき、『MINISERIES 2』でボサノヴァを活用していたのをふと思い出して。僕自身もそれまで詰め込みすぎていたところがあったんですが、シンプルなコード進行を繊細に奏でるほうが、アーティストに「余白」を与えられるんじゃないかと思ったんです。そこからボサノヴァを選択しました。
―高樹さんは、出来上がったサウンドを聴いてどう感じましたか?
KIRINJI:「あれ、知ってるデモとだいぶ違うな」と思いました(笑)。ギターのアルペジオがサウンドの中心にあって、ブラジリアンっぽい方向に振れていて。少し意外だったけど、かっこいいなって。最初のデモにあったような、J-POP的でコードがまめに変わる曲だと、あとからメロディを乗せるのが少し難しいんですよ。でも今回はシンプルなコード進行だったから、とてもやりやすかったです。
―〈真夜中のHighway〉〈レコードみたいにまわる3号線〉という歌詞の描写はAOR/シティポップっぽい感じもしますが、このモチーフはどこから?
YonYon:私のなかで、KIRINJIの曲は「夜」のイメージなんです。高樹さんと一緒にやるなら東京の夜っぽいテーマがいいなって。あとは以前、ご飯をご一緒したときに、「人生は長距離マラソン」っていうテーマで曲を書きたいって話をしたんですよね。
マラソンって、人によって走り方が違うじゃないですか。ずっと全速力の人もいれば、ゆっくり歩いて最後にダッシュする人もいて。でも、どんなペースでも前に進めばいい。そう自分に言い聞かせるための曲が作りたいなって……そんなふうに話していたら、だんだん人生相談みたいになってしまって(笑)。
KIRINJI:そうだったね(笑)。
YonYon:だから、最初は「人」が走るイメージで書き始めたんですけど、だんだん「車」「高速道路」みたいに広がっていって。連想ゲームのように歌詞が膨らんでいきました。

YonYon(Photo by Haruki Horikawa)

KIRINJI・堀込高樹(Photo by Haruki Horikawa)
―高速道路を快調に走っていくイメージかと思いきや、高樹さんのパートで渋滞にハマってしまうのもよかったです。〈カルデサック〉というワードセンスもKIRINJI的だなと。
KIRINJI:そこに合わせて僕の方でも同じようなシチュエーションを描いてしまうと、曲が平板になるかなと思ったんですよね。だったら場面転換、視点が変わる方がいいだろうなと。「人生はマラソン」っていう話も覚えていたので、ドライブは必ずしもスムーズに進むものではない、ということを歌った方がいいかなと。
YonYon:食事の席で高樹さんに「やりたいことをやればいいんじゃない?」って言ってもらえたんですけど、その言葉が今回のリリックと重なったんですよね。〈不安な道中や 意外な結末を 楽しめたならばいいよね〉とあるように、立ち止まることにも意味がある。「いい曲を作らなきゃ」と気負っていたけど、もっと気楽にやってもいいんだなって思えるようになりました。
―締めくくりの〈君が選んだ道〉〈君が選んだ その生き方〉というパートも印象的です。
KIRINJI:そこは僕が考えたんですけど、YonYonが「迷いの中にある人」を歌っていたので。最後まで迷ったまま終わるよりも、〈選んだ道〉を肯定するほうが、スーッと着地できるような気がしたんですよね。
―もともと高樹さんが車を運転中、YonYonさんの曲「Mirror(選択)」をラジオで耳にしたことから「killer tune kills me」が実現した……というエピソードを思い出したりもしました。今回の歌詞にも〈Oh, kiler tune 流してよ〉という一節がありますね。
YonYon:「killer tune kills me」でご一緒させていただいたので、ワードのサンプリングをしたいと思って入れました。ただ、あの曲における「キラーチューン」は恋愛の比喩で別れてしまった好きだった人のことを「キラーチューン」と重ね合わせていますが、「Moonlight Cruising」ではそのままの意味で使っています。車でドライブしながら、自分にとって最高なキラーチューンをドロップして。気分を上げて前に進んでいこう、いくしかないって言い聞かせてるんです。
―Slomさんは今回のコラボを通じて、どんな感想を抱いていますか?
Slom:高樹さんのボーカルをデモで聴いたとき、「これがKIRINJIの声なんだ!」って新鮮な驚きがあって、何度も聴き返しました(笑)。YonYon姉さんの歌詞も繰り返し聴きながら、自分のなかでだんだん同化していくような感覚があって。今回の制作を通して、自分の生き方についても改めて考える機会になりましたし、感謝の気持ちでいっぱいです。
YonYon姉さんは、ずっと韓国と日本を行き来しながら、アーティストとしての立ち位置を築いてきた。周りの人をつなげる才能も突出しているし、大変なことがあっても結局はやり切ってしまう。アルバム制作の相談を受けたこともあるんですが、聴かせてもらった曲はどれも良くて。「悩まなくても大丈夫じゃない?」って思ったくらいです(笑)。
YonYon:韓国でセッションしたとき、休憩中にSlomくんとゆっくり話す時間があったんです。「久々に一緒に制作できてエモいね」なんて話していて。Slomくん曰く、2018年の当時も私から「The Link」を進めること難しさについて悩みを打ち明けていたそうで、でも、私が続けてきたことがだんだん形になっていくのを見て、「YonYon姉さんがそれに対して努力し続けたことを知っているし、自分の〈選んだ道〉をもっと肯定して上げてもいいんじゃないか」って言ってくれて。それが本当に嬉しかったです。
日本と韓国の繋がり、ギャップと可能性
―話の流れで、「日本と韓国の繋がり」についてもお聞きしたいです。高樹さんは韓国でライブをされたり、SE SO NEONとのコラボもありましたが、韓国の音楽シーンはどんなふうに映っていますか?
KIRINJI:韓国の音楽は好きですが、シーン全体を語れるほど詳しいわけではないんですよね。どちらかというと、点で聴いているような感じ。そのなかで最近気になっているのは、LEENALCHI(イナルチ)ですね。民謡っぽい伝統的なスタイルなんだけど、サウンドはニューウェーブっぽくて。ベースが2本も入っていたりするのも面白い。あとは空中泥棒も好きです。K-POPばかりが注目されがちですけど、インディーにも興味深いアーティストがたくさんいる。裾野が広いというか、全体のレベルがすごく高いんだろうなって思います。
―Slomさんがアップした「東京都心を1時間歩くためのプレイリスト」という動画も見つけました。大貫妙子さんや星野源さん、Lamp、soraといったエレクトロニカ系や、黒田卓也さんのようなジャズ系の楽曲も入っていましたが、日本の音楽に対してはどんな印象をお持ちですか?
Slom:アメリカや日本に行くたびに羨ましく思うのは、いくらでも掘り下げられそうなアーカイブが豊富に存在していることです。たとえばアメリカでは、街のマーケットで昔のBillboard誌が安く手に入ったりする。日本にも、音楽のルーツを深く研究している人たちがたくさんいますよね。韓国はジャンル別に小分けして見ると市場規模がそこまで大きくないこともあり、日本には良質な憧れや健全な競争心を与えてくれるアーティストが多いという印象です。
もちろん、インドネシアやタイなど、好きなアーティストがいる国は他にもあります。でも、なぜか日本は特別というか……僕が好きな楽器の多くが日本製だったりすることもあって、文化としての一体感を強く感じるんです。
動画で使われた楽曲のプレイリスト
―YonYonさんが「THE LINK」を立ち上げてから7年。当時よりはだいぶ交流が活性化している印象もありますが、現在の状況をどう見ていますか?
YonYon:パッと見は、すごく密接になってきているようにも映るんですけど、情報のギャップはまだまだあるように思います。たとえば「あの曲は好きだけど、作ったアーティストさんがどんな人であるのか、よく知らない」とか。「今、日本では◯◯が話題」「韓国では△△が流行ってる」みたいな話はよく聞くけれど、「他にもいい音楽はたくさんあるのに!」って思うこともあって。そういう広がりが、まだ十分に伝わっていない気がするんです。
―日本と韓国のシーンがよりよい関係を築いていくためには、どんなことが大切だと思いますか?
YonYon:もっとたくさんコラボが実現してほしいですね。どちらの国にも、カッコいい音楽はたくさん存在している。でも、やっぱり親近感がないと、なかなか聴くきっかけって生まれないじゃないですか。日本と韓国のアーティストによるコラボ曲がもっと増えることで、お互いのリスナーに出会いをもたらすきっかけになるのかなと思います。
―高樹さんは、今後も韓国のアーティストとコラボしてみたいと思いますか?
KIRINJI:もちろん興味はあります。今回のように「歌で参加してください」という形だったら、比較的やりやすいんですよね。SE SO NEONとの「ほのめかし」もそうでした。ただ、サウンドの部分から一緒に作るとか、もう少し深い付き合いをするとなると難しい。現地に行くのがいちばんですけど、なかなかフラッと行ける距離でもないし、コミュニケーションのハードルもある。言語の壁をどう越えていくかも課題だと思いますね。
YonYon:わかります。あとは「一回コラボして終わり」というパターンも結構あると思うんですよね。でも、その先に続くストーリーというか、コラボしたあとも交流を続けていける関係性に発展していくことが大事なんじゃないかなって思います。
―お互いへの理解を深めていきたいですね。Slomさんからぜひ、「Moonlight Cruising」を気に入ったリスナーにお薦めのアーティストを教えてほしいです。
Slom:Hyelyn Joo(ヒェリン・ジュ)ですね。僕と近しいプロデューサー陣が制作に関わっていて、ギタリストのGu Young Junが参加している曲もあります。ささやかでパーソナルな歌詞と、爽やかで今っぽく、丁寧に磨き上げられたサウンド。それらが融合しているところが彼女の魅力だと思います。
―最後に、今回の新曲と一緒に聴くと良さそうな韓国の楽曲を、YonYonさんにDJ視点でレコメンドしてもらえますか。
YonYon:Asoto Union(アソト・ユニオン)というグループの「THINK ABOUT` CHU」をぜひ聴いてみてほしいです。2003年にリリースされた、韓国オリジナルのAORサウンドを感じられる一曲です。「Moonlight Cruising」と並べて聴くことで、ジャンルや時代を超えた「韓国らしさ」のようなものが見えてくるんじゃないかなと思います。

YonYon
「Moonlight Cruising feat. KIRINJI」(Prod. Slom)
配信:https://nex-tone.lnk.to/MoonlightCruising
リリックビデオ:https://youtu.be/Kve7HNMrbT8
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