東京での追加公演、5月13日(火)新代田FEVERでのライブは、オープニングアクトなしで彼らのみの長丁場。演りも演ったり、アンコールも含めて計26曲を聴かせてくれた。驚いたのは、初めて聴く曲の多さ。現在レコーディング真っ最中というニュー・アルバムの収録候補曲も多く含まれていたはずだ。これまでのイメージを踏襲するロックチューンから、アコースティックセットで披露した曲、ファンキーなリフを持つ曲までバラエティ豊富。ライブでの定番になってきたボブ・ディランやスライ・ストーン、サム&デイヴのカバーに加えて、エヴァリー・ブラザーズの「When Will I Be Loved」をラモーンズばりの高速アレンジで聞かせる場面もあった。
基本的にセットリストを組まず、ステージ上で相談しながら演る曲を決めていくスタイル。お行儀よくまとまろうとしなかった分、昨年のワンマンよりガレージ・パンク度は遥かに高かったように思う。特に終盤の壊れっぷりは凄まじく、爆発力マックスの「Say Mama」には度肝を抜かれた。最後に「Night Time」と「Manchester Night Blues」で締めてからも、”もう1曲!”を求める拍手が鳴り止まなかったのは当然だ。
先にMCで告げていた通り、なんと2年続けてフジロックへの出演も決定。新作の完成に向けて意欲満々のテオ(Vo, Gt)、パン(Harmonica)、マックス(Gt, Vo)、ラスムス(Ba)、リーヴァイ(Dr)に、昨年からの流れと、気になるニュー・アルバムの内容について訊いた。
ガレージロックの超新星 #Us(アス) 東京 #新代田FEVER 公演は大団円を迎えました
アンコールでは『Underground Renaissance』のトップを飾るキラーチューン「Night Time」を披露!
そして最後にはドラムのリーヴァイからサプライズ発表も...#usbandofficial pic.twitter.com/0KH3faH2pN— ソニーミュージック洋楽 (@INTSonyMusicJP) May 13, 2025
─ライブ初日は大阪でしたね。何かおいしいものを食べられました?
パン:お好み焼き!
テオ:あれは完璧だったね。
リーヴァイ:うん、僕らも食べに行くのがとても楽しみだったんだ。
パン:今まで行った中で最高のレストランだった! タコを切ったものを食べたんだけど、それが最高でさ。詳しくわからないけど、たぶん典型的な料理だと思う(※タコの鉄板焼きを食べた模様)。フィンランドにはタコがいないんだよ。
リーヴァイ:フィンランドとスウェーデンの間に海があるんだけど、塩分の濃度が低いから彼らには好かれないみたいだ(笑)。
テオ:サメもイルカもタコも、クジラもいない。
パン:フィンランドは寒すぎるのかもね。
─日本食でこれは無理!というのはありましたか?
全員:ノー!
テオ:みんな発酵させた大豆(納豆)は無理だって言うけど、僕はそれもおいしいと思ったよ。何を食べても超グッドだった。
─去年も今回も日本ではライブがぶっ続けであったので、ゆっくり観光する時間なんてまったくなかったでしょう。
テオ:ちょっとしかできなかったけど、ただ通りを歩いたりお店に入ったりするだけでも充分だったよ。
パン:コンビニでさえもね(笑)。
─ゆっくり観光する時間がもらえたら、どこに行ってみたいですか?
パン:古いお寺とかにも行けてないし……僕は北海道に行ってみたいんだ!
通訳氏:とても美しいところだけど、あなたたちの国と似てるわね(笑)。
─やっぱり寒いところに惹かれるんですかね。去年来た時はフジロックで連日ライブをやって、さらにワンマンライブもあったので、最後まで乗り切るのが大変だったんじゃないかなと思って。
テオ:でも、他の国ではライブを1本やったら終わりで、自由な時間がありすぎる。ライブを何本もやれる方が好きだよ。それにたくさん続けて演奏すると、変化が生まれてくる。昨日は演奏したばかりのこの曲を、今夜はこうやって演奏しようか、みたいにね。
パン:1日に最低2公演できるのが理想だね。無料ライブだっていいよ(笑)。
ラスムス:僕らはミュージシャンだからね、その方がいいんだ。
─プロ意識が高いですね。去年のフジロックで、他のバンドのライブを観る機会はありましたか?
テオ:ああ、いくつか観ることができて、どれも素晴らしいショーだったよ。RAYEやノエル・ギャラガーを観た。
リーヴァイ:クラフトワークも良かったね。

Photo by Masashi Yukimoto
─さて、日本では昨年7月に渋谷WWW Xで行なわれたワンマンライブの模様を収めた『We're Us! Live in Japan 2024』が発売されたばかりですが。あの日に披露した2つの新曲はアルバムに入ってないですね。どちらも良い曲でしたけど、次のアルバム用に温存してる?
テオ:うん、そういうこと(笑)。次のアルバムに入れる可能性はある。今、次のアルバムをレコーディング中で、実はスタジオから出てきたばかりなんだよ。帰国したら、またすぐにスタジオへ戻るんだ。16曲レコーディングする予定で、それでもアルバム1枚分には多すぎるのに、どういうわけか20曲も録っちゃって(笑)。アルバムにどの曲を入れるか、まだ決めてないんだ。
パン:新曲は去年の東京で初めて演奏したんだ。だからちょっと変わったかも。1枚目のアルバムはイギリスで録ったけど、次はフィンランド北部で制作した初めてのアルバムになる……そう、寒いところだね(笑)。
─2枚目のアルバムの方向性、曲調はどんな感じになりそうでしょう?
テオ:エナジーは1枚目と同じだと思うけど、曲ごとのコントラストは少し強くなると思う。速い曲がある一方で、アコースティックな曲もいくつかあるし。次のアルバムはもっとメロディアスになると言えるかもしれないね。
パン:何年も前からライブで演奏していて、レコーディングしないままだった曲もいくつか録ったよ。
ロックンロール・バンドとしての矜持
─『We're Us! Live in Japan 2024』のライブでは、持ち曲が全て尽きるまでやり切りましたよね。この夜のことは何が印象に残っていますか?
テオ:本当に素晴らしい夜だった。フジロックで続けて演奏した後で、この日は自分たちだけのワンマンだったから、正直に言って何が起こるのかまったく予想できなかった。火曜日の夜だったから、ちょっと緊張したかもしれない……フィンランドでは平日の火曜日にライブショーなんてやらないからさ。
─あの日は、USがまだデビューしたばかりなのに、日本のファンが曲をちゃんと覚えていて感心したんですよ。
テオ:それが僕らの心にも強く残っているんだ。日本のファンの反応は、いつも信じられないくらい素晴らしい。大阪でもそれを実感したよ。去年の東京では新曲を披露したけど、多くの人がすぐにコーラスを覚えて、2度目のコーラスではもう一緒に歌ってくれた。本当に注目してくれてるんだなと感じてうれしかったね。そういうことは、他の場所では起きてない。みんな僕ら以上に(笑)、信じられないほど早く曲を覚えてくれる。
パン:テオが「Citroen Blues」を1音弾き始めただけで客席から声が上がってたもんね。
テオ:みんな本当に早く曲を覚えてくれて、時々ちょっと怖くなることもあるけど、でも本当に素晴らしいことだよ。
リーヴァイ:僕らの誰かが新曲をリークしてるんじゃないかと疑ってるんだ(笑)。
─去年のワンマンでは、他にもいくつか発見があって。CDを聴いているだけだと、「このハーモニカ奏者は吹いていない間、何をしてるんだろう?」と思ってたんですけど。実際にショーを見て、ステージ上で動き続けるパンがムードメイカーとして重要であることを知りましたよ。
パン:ありがとう。まだバンド内に僕の居場所があったぞ(笑)。
テオ:でも君が言う通りで、実際にパンがステージ上の空気を作ってるんだよ。


パン(Photo by Masashi Yukimoto)
─今回のライブでは、ハーモニカ用のマイクのケーブルがこんがらがって、ほどくのが大変だったみたいですね。
パン:昨日の東京でしょ? 誰にも気付かれてないと思ったのに(笑)。ケーブルのさばき方はわかっているつもりだったけど、自分のエゴが強すぎたのかも。次は大丈夫だと誓うよ(笑)。
─でもワイヤレスは使いたくないんですよね。
パン:ノー! ケーブルが好きなんだ。邪魔になってもね。
テオ:曲の初めにあんなことがあったから、演奏している途中で頭の中にケーブルとからみ合っているパンの姿が浮かんできて、思わず笑いそうになっちゃったよ。
パン:イギリスでショーをやった時は、ライブの最中に突然靴紐がほどけてしまってさ。すぐに結んで演奏に戻るまでの間、恐怖に怯えたよ。誰かが水を飲んだり、ギターの弦を切ったりしている間も、バンドはそのまま進み続けるからね。まあ、そういうトラブルはライブに付き物だよ。
─去年のライブを観て気付いたもうひとつのことは、パン、テオ、マックスの3人が物凄いドライブ感でエネルギーを爆発させても、曲としての形が崩れないことで。それをしっかり支えているのが、リズム隊のラスムスとリーヴァイなんだなと気付きました。
リーヴァイ&ラスムス:ありがとう!
テオ:まったくその通りで、彼らをとても信頼しているから、そのまま突っ走ることができる。それに、リズム隊とはヨーヨーみたいな感覚も生まれるんだ……行っては戻り、また行っては戻るという感じでね。まさにバンドの柱みたいなもので、全てを支えてくれている。

ラスムス(Photo by Masashi Yukimoto)

リーヴァイ(Photo by Masashi Yukimoto)
─いろいろインタビューとか読んでみると、リーヴァイはデイヴ・ウェックルとかスナーキー・パピーを好んでいて、ジャズやフュージョンも通ってきたテクニカルなプレイヤーじゃないですか。そういう人がUSでロックンロールを演奏するのって、どんな感覚なのか興味があります。
リーヴァイ:ある意味、すごく解放感があるというか。ロックンロールみたいな音楽スタイルって、テクニカルであることよりも、ドライブ感の方が重要だと思うんだ。その方がオーディエンスにとっても、ずっと面白いと思うんだよ。
ラスムス:リーヴァイは完璧なドラマー。僕が知る限り最高のドラマーだ。だからこそ彼がここにいる(笑)。全ての優れたロックンロール・バンドには、優れたドラマーがいたからね。ジミ・ヘンドリックスの後ろにミッチ・ミッチェルがいたようにさ。彼もそんな存在だよ。
テオ:リーヴァイは本当にうまいドラマーだから、よそから仕事のオファーが舞い込んでくるんじゃないかと、ちょっと心配してる(笑)。彼をこのバンドに留められるよう努力しないとね。
─ライブを観てもうひとつ発見したのは、音源で聴くよりずっとマックスのボーカルがパワフルだったことです。力強い声を持ったシンガーがテオ以外にもうひとりいるのは、バンドにとって何よりの財産ですね。
マックス:ありがとう。新しいアルバムでも歌ってるけど、次はさらに絞り出すような声が聞けるよ(笑)。
─シンガーが2人とものどを酷使するタイプの歌い方をするので、ツアー中は声の調子を維持するのが大変じゃありませんか?
マックス:(無言でテオを指差す)
テオ:それは僕にとって大きな問題なんだけど、ライブでのどをつぶすとかじゃなくて、オフステージでしゃべり過ぎて声が枯れてしまうんだよ。あるツアーではのどを守るために静かにしようと思って、紙に言葉を書いてみんなに見せてたんだけど、僕がいちいち「ヘイ」「ところで」とかやってるもんだから、メンバーがみんなイライラし始めて(笑)。

マックス(Photo by Masashi Yukimoto)

テオ(Photo by Masashi Yukimoto)
─でも歌手がしゃべると声帯に負担がかかるらしくて、大物歌手になると大事な時期にインタビューを避けるのはよくあることなんですよ。
マックス:そうそう。それに、囁き声も本当に良くないらしいね。
─ちなみに、テオは喫煙しますか?
テオ:いや、全然だよ。
─てっきり、あなたの声はタバコとかで作ったのかと思ってました。
テオ:いや、おしゃべりだからこういう声になったんだ(笑)。
マックス:前はよく囁いていたけど、今はもう囁かなくなった。他のメンバーについての悪口も囁かなくなったから、バンド内の人間関係も良くなったってことだね(笑)。
日本の音楽への興味、2度目のフジロックに向けて
─ところで、前回も今回も、ライブの前にTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTの曲をかけてたじゃないですか。日本のバンドだと、他にはどんな人たちを聴いてるんでしょう。
テオ:そうだな、たとえば…ハイマーツは知ってる?
─おお、確かに好きそうな感じがしますね、ハイマーツ。
テオ:うん、大好き。彼女たちは今もバンドを続けているのかな?
─メンバーチェンジはありましたけど、バリバリ活動してますよ。
テオ:実はあるドキュメンタリーを見てハイマーツを知ったんだ。あれは数年前、コロナ禍の頃だった。多分、ハイマーツは僕らに影響を与えたと思うよ。残念ながら、まだ会ったことはないんだけど。
パン:リズムセクションがとてもタイトだったね。実は僕ら、最近日本の古いバンドを発見したばかりなんだ(※ソニーのスタッフからはっぴいえんどの『風街ろまん』を教わって気に入ったそう)。
─ああ、そのアルバムはテオが好きなザ・バンドの音楽とも共通点がありますね。
テオ:本当にそう。とても気に入ってるよ。
─他にはどんなバンドが上がりそうですか?
ラスムス:No Buses、Melt-Banana、Cody・Lee(李)とか。
─ずいぶん幅広く聴いてるんですね。
ラスムス:シティ・ポップも好きで結構聴いてる。
リーヴァイ:(正確な発音で)山下達郎!
─前から不思議なんだけど、リーヴァイはどうして日本語をちょっとしゃべれるんですか?
リーヴァイ:僕は昔から他の国の言語を学ぶのが大好きなんだ。それに、日本のアニメやゲームに触れながら育ったから、日本語に興味を持つようになって、自然に習得していったんだよ。
─ライブでリーヴァイが日本語で話すのも、ファンの間では名物になりつつあって。
リーヴァイ:(正確な発音で)ありがとうございます! いつもすごく緊張するし、そんなに流暢に日本語を操れるわけではないんだけど、みんなが楽しんでくれてるならうれしいよ。


Photo by Masashi Yukimoto
─あなたたちと話す度に、音楽に対する探究心の深さにいつも感心させられるんですが……今もパンとテオの着ているジャケットの肩に、ペン・リーのワッペンが縫い付けられているじゃないですか(USは彼らの「Got To Know」をカバーした)。彼らは日本ではほとんど知られていないフィンランドのロックンロール・バンドですけど、USのライブを観にきたことがきっかけで、さかのぼって聴いてみようと思うファンも少なからずいると思うんですよ。
テオ:それこそ、まさに僕らが望んでいることだよ!
パン:フィンランド本国でもペン・リーのことを誰も知らないんだ。
─そもそもペン・リーのワッペンなんて初めて見ましたけど、それは自分たちで作ったんですか?
テオ:僕らの父の友人で、素晴らしいドラマーだった人……その人は2年前に亡くなったんだけど、彼がこれを作って僕らにくれたんだ。4~5人の友達のために作ったから、数個しか存在しないと思う。

ペン・リーのワッペンに注目(Photo by Masatoshi Arano)
─なるほど、そうやってペン・リーの名前が継承されているんですね。ところで、すでにライブで発表済みですけど、今年もフジロックへの出演が決まったそうですね。どんなライブが期待できそうですか?
テオ:大規模なショーになるだろうね~。キャノン砲を使ったド派手な演出で(笑)。
リーヴァイ:花火が炸裂して(笑)。
ラスムス:今はスタジオセッションの真っ最中だけど、もちろん新曲をフジロックで聴かせられると思うよ。
テオ:今の僕らにとっては、素晴らしい2ndアルバムを作ることこそが大きな目標だね。今までこれほど真剣に音楽に向き合ったことはなかった。とても集中しているんだ。セッションを続けている途中で、もしも突然Instagramのフォロワーとかが全部消えて、今後のライブが全部なくなったらどうしよう……っていう考えも頭をよぎった。そんな結果になったら残念だけど、それはそれで、そんなに悪い気分にはならないと思う。だって、新しいアルバムの曲にすごく満足してるし、きっとうまくいくと思うから。だから、今は本当にすごくいい気分なんだ。

Photo by Masashi Yukimoto
US新代田Fever公演(2025年5月13日)セットリスト
1. Black Sheep
2. A Better Hold (& a Little View) (Wigwam)
3. I Wanna Be Your Lover (Bob Dylan)
4. Snowball Season
5. Just My Situation (Jim Pembroke)
6. Citroen Blues
7. Paisley Underground
8. Got to Know
9. Help Me with My Broken Heart (Sly Stone)
10. Open City
11. Stop Talking Now
12. I Ain't Got Nobody (Sly & the Family Stone)
13. Carry Your Bag
14. Don't Call the Cavalry
15. When Will I Be Loved (The Everly Brothers)
16. Up to the Moon
17. Hold On I'm Coming (Sam & Dave)
18. It Is Gone
19. Odium
20. With You O.K.
21. Hop on a Cloud
22. Man Ray
23. While You Danced
24. Say Mama (Gene Vincent & His Blue Caps)
〈アンコール〉
25. Night Time
26. Manchester Night Blues

FUJI ROCK FESTIVAL '25
2025年7月25日(金)、26日(土)、27日(日)
新潟県・湯沢町 苗場スキー場
公式サイト:https://fujirockfestival.com
US出演
①7月25日(金) 単独 ※ステージ未定
②7月25日(金) ROUTE 17 Rock'n'Roll ORCHESTRA (feat. 山下久美子、甲本ヒロト、釘屋 玄、US、Liam Ó Maonlaí)※ステージ未定
③7月25日(金) GAN-BAN SQUARE
④7月26日(土) 苗場食堂

US
『We're Us! Live in Japan 2024』
発売中
<日本盤CDには解説&豪華特典付き>
・16ページカラーブックレット
・ロゴ&ジャケット写真ステッカーシート(初回限定盤のみ)
・ミニポスター/メッセージシート(初回限定盤のみ)
再生・購入リンク:https://USJP.lnk.to/LiveInJapan2024RS