RIZEの『TOUR 2025”NOLU”』、刺激的に開幕。ツアー第二夜、横浜での怪獣激突から伝わってきた尋常ではない本気度が意味するもの。


【ライブ写真ギャラリー】『TOUR 2025”NOLU”』追加公演

6月3日、ちょうど1年ぶりとなるRIZEのツアーがKT ZEPP YOKOHAMAにて開幕した。そしてその24時間後、『TOUR 2025”NOLU”』は早くも新局面を迎えることになった。6月4日、前夜と同じ場所で開催されたのは、すでに各地での公演チケットがほぼ完売となっているこのツアーの追加公演。しかも今回唯一の対バン形式のライブで、彼らとステージをシェアするのが”濱の大怪獣”の異名をとるOZROSAURUSとなれば、この夜が当たり前の熱狂で終わるはずもなかった。

まず断っておきたいのは、OZROSAURUSはRIZEの登場を前にフロアを温めるためにそこに招かれたのではなく、ステージ上でのMACCHOが吐いた言葉をそのまま借りるならば「異なった音楽をぶつけあって高めるため」に、そこに「乗り込んで」来たのだということ。だから実際、開演定刻の19時にスタートした彼らのパフォーマンスは約1時間に及んだ。実のところ、MACCHO自身がオーディエンスに「初めて観るやつは?」と呼びかけた際に多くの手が挙がっていた事実が示していたように、来場者の多くはいわゆるRIZERたちだった。その意味においてはある種のリスクを抱えながらプレイすることになったわけだが、そこであからさまに観衆に寄り添おうとすることも、かといって暴走することもなく、彼らはあくまで自らのスタイルに忠実なライブをやり抜くことで共感の輪を広げ、場内の熱を高めることに成功していた。

正直なところ筆者自身もOZROSAURUSの音楽や経歴について明るいわけではないのだが、いわゆるDJセットを軸としつつ、中盤ではキーボード奏者Takumi Kanekoを招きながら展開されたそのパフォーマンスからは、わかりやすくデフォルメされた過激さではなく、淡々とした時間の流れゆえに味わうことのできる愛情や情熱といったものが伝わってきた。また、「14歳からコレをやってきた」と語るMACCHOは自らを「俺こそがラップ、ラップの申し子。誰も勝てんよな?」とまで言い切っていたが、そうした発言が傲慢に聞こえなかったのは、彼の言葉、彼の声に、それに似つかわしい説得力を感じられたからだろう。

そして筆者が彼の物言いを聞きながら感じていたのは、それはまさにJESSEが言いそうなことでもあるな、ということだった。
音楽的な枠組みにこそ微妙な違いはあるが、基本的な考え方、姿勢には重なるところがきっと多い。だから両者は共鳴しあい、リスペクトしあい、こうした特別な機会を設けることにしたのだろう。話は前後するが、RIZEのステージの後半、JESSEはMCの中で、この日、OZROSAURUSが「リハから本気」であるさまを目の当たりにして思わず泣いてしまったことを明かしていた。確かに彼には感激屋なところもあるが、「リハからあんなに本気なやつら、ホントにあんまりいないから」という彼の言葉は社交辞令ではなかったはずだし、それは彼自身も常に本気だからこそ口にできたことなのだと思えてならない。

そしてRIZEのステージもまた、当然のように本気度の高すぎるものだった。なにしろ1曲目から「カミナリ」が炸裂し、その終盤にはJESSEの姿がステージから消えていた。ギターを抱えたまま背面ジャンプでフロアの人波の上に浮かんでいたのだ。以降も彼らのステージは余分な空白の時間を設けることなく、緩急の”急”の部分ばかりを追いかけ続けるように進んでいった。そんな彼らの本気に、オーディエンスも当然のように本気で応えていく。通り一遍の一体感を超える熱が、そこには渦巻いていた。

RIZEとOZROSAURUS、“怪獣同士”が響かせたリアルの音

Photo by cherry chill will.

RIZEとOZROSAURUS、“怪獣同士”が響かせたリアルの音

Photo by cherry chill will.

しかも彼らはこの夜ならではの特別な趣向を用意していた。ステージ後半で金子ノブアキ(Dr)、KenKen(Ba)、Rio(Gt)の3人がひとたびその場から立ち去ると、入れ替わりにDJと3人のMCが登場。
「本気に対しては、こっちも本気をかますのが礼儀」というJESSEの言葉に導かれて始まったのは、彼自身を含む4MCのユニットであるE.D.O.の楽曲、「Revolver」だった。さらに、その体制にKenKenが加わっての「BLACKLIST」が炸裂したかと思えば、全員総出での”火事と喧嘩は江戸の華”へと雪崩れ込んでいく。

その後、ふたたび正調RIZEの状態に戻った彼らはさらに必殺曲の連発を続け、「Why Im Me」で何度目かの絶頂へと達し、ひとたび着地点へと至った。しかしこの特別な夜が、そのままおとなしく終わるはずもない。アンコールに応えてメンバーたちがステージ上に戻り、JESSEは「怪獣呼んでいいっすか?」と呼びかける。そこに招かれた2人の人物が誰だったのかは言うまでもない。総勢6名の猛者たちがステージ上で入り乱れながら披露したのは、OZROSAURUS「星を願う」だった。歌詞にカート・コバーンが登場するこの曲には当然のようにNIRVANAの匂いがするが、それがRIZEの演奏によって体現されるというスペシャルな趣向に、筆者は単なるサプライズを超えた感慨めいたものをおぼえた。

RIZEとOZROSAURUS、“怪獣同士”が響かせたリアルの音

Photo by cherry chill will.

そんな特別な場面を経て、さらに2曲を披露したところでこの夜のライブは終了……となるはずだったが、最後の最後にはさらなるサプライズが待ち受けていた。実はこの翌日、6月5日は金子ノブアキの誕生日だったのだ。バースデー・ケーキ、そして完全に予定外の「NAME」。明るいカオスとでも形容できそうなライブは、なんともいえない至福感に包まれながら終了した。


今回こうして追加公演がツアーの序盤に組み込まれることになったのは、いわゆる大人の事情というか、単なる日程の都合でしかなかったのだろう。実際、ツアーこの先もまだまだ続いていく。しかし今やある種のプレミア感を伴うようになっているRIZEのツアーにおいて、この夜のような特別な機会の到来は、バンド自身にとっても思いがけない刺激になったに違いない。この局面での怪獣同士のぶつかり合い、劇薬同士の混ざり合いが、ここから先の『TOUR 2025”NOLU”』の物語にどのような作用をもたらすことになるかが、楽しみでならない。

文・増田勇一

RIZEとOZROSAURUS、“怪獣同士”が響かせたリアルの音

Photo by cherry chill will.
編集部おすすめ