作詞作曲編曲をすべて自ら行うシンガー・ソングライター、Iwankof(イワンコフ)。2024年1月に1stシングル「where???」でデビューして以降、JポップとJロックにトラップビートを掛け合わせたキャッチーでユニークな楽曲をコンスタントに発表しているが、7月にリリースするファーストミニアルバム『UNION』からの先行シングル「君からの脱獄」のリリースと同時に覆面を取り、顔出しをすることに。
この記事に掲載されているアーティスト写真で初めて素顔を見せている。また、東京と地元福岡での初のライブ&自主企画を開催することも発表された。

「君からの脱獄」はなかなか別れられない恋愛を脱獄にたとえた楽曲だ。抜けの良いバンドサウンドから始まり、途中でワルツに展開するなど、アグレッシブでカラフルな曲調が特徴的だ。素顔も年齢も出身地も謎だったスタート地点からどんどんベールを脱いでいるIwankofにインタビューした。

―Iwankofを始める前はバンドをやっていたそうですが、一番影響を受けたアーティストというと誰なんでしょう?

Iwankof:Age Factoryだと思います。曲を作る上でいろいろと吸収させてもらっているのはTohjiさん。曲を作っている最中に何かリファレンスが欲しいなって思った時は2組の曲を聞くことも多いですね。両者ともダークな空気感がある中で爽やかさがあったり、おいしいところを出すのがとてもうまいなって思いながら勉強させてもらっています。

―ロックバンドとラッパーっていう違いはありますが、Iwankofさんの中では共通するものがあるという。

Iwankof:両方とも根っこにハードコアを感じるんです。僕はハードコアが大好きなので惹かれるんですよね。
琴線が通じるというか。

―Iwankofの楽曲はメロディーを重視したキャッチーなものが多いですが、意識しているんですか?

Iwankof:今やってる音楽はいろんな人に届いてほしいと思っているので、無意識にどんどんキャッチーな方に寄っていってるのかなと思います。曲を作る時にJポップを聞くこともありますし。小さい頃に聞いていた嵐をはじめとするアイドルの曲が意図せずとも出てきているのかもしれないです。「うんめい」っていう曲を作った時も、あそこまで可愛いポップな曲にするつもりはなかったんですが、昔聞いてた曲の影響が出てるんだろうなと。「こっちだよ」っていう風に手招きされた気がしました。Tohjiさんは歌詞がすごく好きなんですよね。僕ラッパーの何でもありな世界観の歌詞が大好きで。Tohjiさんは特に「俺の世界観」みたいなものが突き詰められていると思ってて。TohjiさんのVlogを見て、どういう環境で曲を作っているのかをチェックして、それをイメージしながら歌詞を書いたりします。

―最新楽曲の「君からの脱獄」は抜けの良いバンドサウンドから始まって、ストリングスのパートもあったりしますが、何かリファレンスはあったんですか?

Iwankof:この曲は歪んだバンドサウンドっていうことを最初に決めて、ビートが入ってラップパートになってサビにいく展開だといつも通りだなって思って、これまでやったことのないことをやってみようと思ったんです。それで、拍子が変わってワルツになるパートを入れて。
初めてアレンジャーさんにがっつり入ってもらったんですよ。いろいろな意見をいただきながらキャッチボールして、自分1人では出てこなかったであろうアレンジを引き出してもらえました。すごく楽しい制作でしたね。全体のイメージとしては、『プリズン・ブレイク』っていうドラマを見ていたら、主人公が脱獄しようとする中でいろんな障害があって、ひとつ抜けたと思ってもまた新たな障害が立ちはだかる。それって恋愛っぽいなって思ったんですよね。相手から抜け出したのにまた追いかけられるみたいな。そのイメージで歌詞を書いたら面白いんじゃないかと思って、そのまま「君からの脱獄」っていうテーマにしました。

―『プリズン・ブレイク』を見て恋愛に重ねたのは、どんなに逃げても未練が断ち切れないみたいなことだったんですか?

Iwankof:というよりも、別れたはずなのに振り払えないみたいなことですね。ドラマの主人公のマイケル・スコフィールドは自分を捕まえようとする人から逃げ続けるけど、自分の場合は彼女と別れてしがらみから自由になりたいけど、別れたはずの彼女から夜中にLINEが来たりして抜け出せない。そういうところがスコフィールドと重なったんですよね。あんなイケメンじゃないですけど(笑)。

ー「君からの脱獄」というワードが「君からの告白」や「君からの敗北」っていう風にどんどん展開されていくのもフックになっていますが、歌詞はどんなところにこだわったんですか?

Iwankof:語感を重視した部分はあるんですが、比喩表現を多く使いましたね。
<辞世の句置いてく>っていう歌詞は「お別れしましょう」っていう決別の言葉の意味で、その後の<ウォレットチェーン ベンチに引っかかったまま>っていう歌詞は、実際に彼女に別れの言葉を言った後、乗らなきゃいけないバスが来てるのにベンチにウォレットチェーンが引っかかって動けなくて「どうしよう! 気まずい!」って思ってる間にバスが行っちゃったことがあって。そのエピソードが面白かったなと思って使いました。

―実体験なんですね。

Iwankof:僕の歌詞は基本実体験でフィクションはほぼないですね。<想像以上に銀色のUFO>っていう歌詞は、友達が昔乗ってた車がみんなにアイアンボール号って言われるくらい古くて汚い銀色で、その友達と彼女が寝た後、夜中に遊びに行ったことがあったので、逃走用の車のイメージで書いた歌詞です。タイトルにもなっている「君からの脱獄」もそうですが、誰も使っていないようなワードを使うところにはこだわっていると思います。

―「無期懲役」や「囚人」っていう言葉も歌詞としては珍しいワードですよね。

Iwankof:<次は無期懲役だといいね>っていう歌詞は「俺じゃない誰かと最後まで添い遂げたらええやん」っていう意味で使ってますね。

―この曲のリリースのタイミングで覆面を取って顔出しをされるわけですが、理由は何なんでしょう?

Iwankof:単純に暑いんですよね(笑)。7月に初めてライブをやるにあたって、最初スタッフさんとライブ用のマスクを作ろうっていう話をしてたんですが、友達や他のアーティストさんと遊んでて「写真撮って大丈夫?」って聞かれたり、気軽に自分の好きな服とかを発信し辛かったり、「いろいろやり辛いな」って前から思ってて。結局マスクに対して特にこだわりもないので外そうかなと思いました。

Iwankofが語る、顔出しの理由、『プリズン・ブレイク』に恋愛を重ねた「君からの脱獄」

Iwankof

―初ライブとして、東京と福岡でSUTEZENIとMercy Woodpeckerを招いた自主企画を行うタイミングだったことが大きかったわけですね。


Iwankof:そうですね。このライブには僕としてはすごく長い物語があって。それを全部ここで話すのは野暮だと思うので端折って説明させてもらうと、僕が昔バンドをやっている時に「もう音楽が作れない」「誰からも必要とされてない」って思うほど挫折をしたんですね。その時にMercy Woodpeckerのメンバーがずっとそばにいてくれて、「ライブ遊びおいで」とか「飲み行こうぜ」って普通の友達に戻ったみたいにいろいろ誘ってくれたことで救われたんです。飲んでる時に「また曲作ったら」とか「音楽やったら」って言ってくれたことでIwankofを始めました。僕の人生にとってかけがえのないバンドなので、まだIwankofを始める前「また音楽やろうかなって思ってる」って伝えたら、「初ライブには俺らを呼んでね」って言ってくれたので声をかけました。二つ返事でOKしてくれたので本当に感謝しています。

―SUTEZENIとはどんな関係性なんでしょう?

Iwankof:もう1組誰を呼ぶか考えた時にバンドだとよくある企画っぽいなって思って、1人で活動してる人を呼びたかったんですよね。スタッフさんがSUTEZENIさんを薦めてくれて、曲を聞いたらどんどんのめり込んでいって、お会いしたことはないんですが、ただ曲が好きで声をかけさせてもらいました。いずれ楽曲でもご一緒できればいいなって思っているので、自分にとって過去と未来に繋がる2アーティストに出ていただくことになった形です。

―今住んでいて活動の拠点である東京と地元の福岡で開催することにしたのはどうしてだったんでしょう?

Iwankof:最初は東京だけだったんですが、自分がこれまでお世話になったライブハウスでやりたくて、CLUB CRAWLとLIVE HOUSE Queblickに力を貸していただく形になりました。福岡では僕は今元気に音楽をやれてますよっていう姿を家族や地元の友人に見せたいなって思ってます。


―自主企画の東京公演直前にファーストミニアルバムの『UNION』がリリースされます。これまでリリースされた楽曲すべてと未発表曲が収められていますが、どんな作品にしようと思ったんでしょう?

Iwankof:「これが僕です」っていう名刺代わりのような作品だと思います。9曲も入ってるのにミニアルバムなんですが、「君からの脱獄」や未発表曲の「救世主ちゃん(読み:メシアちゃん)」とかを作っている中で、「俺もっとかっこいい曲作れるな」って思って。これまでの曲もかっこいいと思っているんですが、もっともっとヤバい曲を作れると思ったので、いつか「今ホームラン打てる」って思った時にフルアルバムを作りたいなって思って今回はミニアルバムにしました。

―『UNION』っていうタイトルにはどんな想いが込められているんですか?

Iwankof:結合とか何かと何かがくっつくっていう意味の単語で自主企画のタイトルも「UNION」なんですが、真っ暗な部屋で1人で曲を作っていたところから、いろんな人が曲を聴いてくれて繋がっていくイメージをしながら制作していたので、実際に繋がってライブとかで答え合わせができたらいいなと思ったんです。

―「救世主ちゃん」はEDMやJポップが交じり合った攻撃性もダークさもあるラップ曲ですが、どんなことを意識したんでしょう?

Iwankof:ミニアルバムの中で唯一「救世主ちゃん」だけライブをやることが決まった後に作った曲なんです。僕はずっとライブがしたくてたまらなかったんですが、「自分が一番解放できる曲ってなんだろう」って思った時に、暗い曲の方が本当の自分が出せるんじゃないかなって思って。ステージ上で全部のベールを脱げるような曲を作ろうって思ってできたのがこの曲です。

―全部DTMで作った曲ですか?

Iwankof:そうですね。サウンドのイメージとしては、すごく面白いクラップの使い方をしたいって思ってて、わけわかんないクラップがずっと鳴ってるんですよね。適当にパソコンで打ってただけなので自分でもよくわかってないんですけど(笑)、個人的にはお気に入りで、ライブでどうアレンジされるかを楽しみにしてもらいたいですね。

―もう1曲の未発表曲「ぐちゃぐちゃ」は浮遊感のあるカオティックでダークな楽曲です。


Iwankof:こういうダークな曲は結構すぐできちゃうんですよね。この曲を作る時、パソコンの前で座ったまま5時間ぐらい何も出てこなくて。これまでの人生でそんなこと1回もなかったので「うわ、どうしよう」って思ってたんですが、寝落ちしちゃって肘をキーボードにバンって付いたら1音目が鳴って。そこで「この音良いかも」って思ってどの音だったか探して、そこから30分くらいで出来上がった曲ですね。

―DTMもあればバンドサウンドもあり、9曲バラバラの方向性の曲が入っていますが、曲ごとに制作のアプローチは大きく違ったりするんですか?

Iwankof:そうですね。1人だからこそできることってわがままを言えることだと思ってて。ライブの形態も考えずに自由に作れるじゃないですか。「こういう曲を作ってみたい」って思ったら何のストレスもなくすぐに取り掛かれるところが良いなって思います。ジャンルもバラバラで、言ってしまえば取りとめのない曲がどんどん増えていくんじゃないかなと思ってるので自分としても楽しみですね。

―今「こんな曲を作ってみたい」って具体的に考えてることはありますか?

Iwankof:もっと勉強していずれ作りたいって思ってるのは、ミスチルとTohjiさんみたいなラッパーさんの曲を足して2で割ってまたいろいろ掛けるみたいな曲ですね。トラップビートとか自分の好きな文化をどれだけ聞きやすくするかっていうのが自分の使命なんじゃないかと最近思ってて。曲を作る上での課題みたいなものになってるなって思います。

―7月の初ライブはどんな形態でやろうと思っていますか?

Iwankof:40分の持ち時間を目いっぱい使って体験したことのないようなライブにしたいなって思ってます。「1秒1秒を楽しくするにはどうしたらいいんだろう?」って考えてて。バンドで活動してた時にはできなかったようなことがいろんな方たちのおかげでできるので、わがままを言わせてもらってたくさん面白いことを準備しています。今回はバンドでやろうと思ってますが、1人でダークなヒップホップ寄りの曲を中心にライブをやることもできるだろうし、かわいくポップな曲を中心に一緒に踊りながらライブをやることもできるだろうし、これからいろんな戦い方ができるようになればいいなって思ってます。

<リリース情報>

Iwankofが語る、顔出しの理由、『プリズン・ブレイク』に恋愛を重ねた「君からの脱獄」


Iwankof
シングル「君からの脱獄」
2025年6月25日リリース

Iwankofが語る、顔出しの理由、『プリズン・ブレイク』に恋愛を重ねた「君からの脱獄」


Iwankof
ミニアルバム『UNION』
2025年7月16日リリース
=収録曲=
1. where???
2. うんめい
3. 救世主ちゃん(読み:メシアちゃん)※未発表曲
4. ぐちゃぐちゃ ※未発表曲
5. 悲劇のような喜劇のなかで
6. in miracle
7. 君からの脱獄 ※6/25リリース先行シングル
8. Summer Dreams
9. VIKA

<ライブ情報>

FIRST LIVE
Iwankof pre. "UNION"
2025年7月19日(土)東京CLUB CRAWL
2025年7月26日(土)福岡Queblick
出演:Iwankof、SUTEZENI、Mercy Woodpecker

more info:Iwankof オフィシャル X https://x.com/iwnkf_
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