とことんキャッチーなビートとフレーズで構成されるbbno$の楽曲はSNSとも好相性で、まさに中毒性が高く世界中のリスナーを引き込んでいる。インドネシア出身のラッパー、リッチ・ブライアンを招いて2021年にリリースされた「Edamame」はSpotify上だけでも6億回に迫る再生回数だ。
今年4月、過密なスケジュールを縫って日本を訪れたbbno$に、特別に時間をもらい取材を敢行。普段のスケジュールや自身のアーティスト活動にまつわるマーケティング手法、メンタルヘルスとの向き合い方、そして11月17日に渋谷 WWW Xで開催される初来日公演に向けての意気込みなど、1万字に及ぶロング・インタビューとしてたっぷりと話を聞いた。
「イーロン・マスクはゴミクズ」発言の真意
―あなたのヒット曲「Edamame」にちなんで、いくつか枝豆スナックを持ってきました。
bbno$:あー、これ知ってる!全部見たことある。(封を開けて)これ、マジでうまい。(ぼろっとこぼす)あっ、ごめん!
―2日前にジュノー賞(Juno Awards)の授賞式が行われたばかりですよね(※2025年3月30日にカナダ最大の音楽祭であるジュノー賞が開催され、bbno$はJuno Fan Choice部門を受賞した)。もう東京にいるなんて驚きです。
bbno$:やばいよね。JUNOに出て、そこから飛行機で移動して。
ジュノー賞で「It Boy」をパフォーマンス
―ジュノー賞でのスピーチでは「イーロン・マスクはゴミクズだ」と発言していました。その反応はいかがでしたか?
bbno$:ほんといろいろだったよ。「こいつマジでクソだな」って言ってきた人もいたし、「このbbno$って誰? ちょっと音楽聴いてみようかな」っていう人もいた。でも俺としては、「全国放送で話す機会があるなら、言うしかないでしょ」って感じだった。考える間もなく、自然に出た言葉だったよ。実はその前日、友達と哲学の話をしてていたんだ。たぶんドイツの哲学者だったと思うけど、「飾らず、自分の信じてることを率直に伝えることが大事」っていう考えがあって。まさにそれが今の俺のモットーになってる。余計なことは言わず、必要なことだけ、ハッキリ言う。

Photo by Yukitaka Amemiya
音楽活動を「ゲーム化」してる感覚
―想像を絶するスケジュールをこなしているかと思うのですが、どうやってハンドリンクしているんですか?
bbno$:正直、自分でもよくわかんない(笑)。でも、昔からずっとゲームやってたんだよね。しかも”作業ゲー”っていうか、同じことを繰り返すようなやつ。『World of Warcraft』とか、延々と続けるタイプのゲーム。だからなのか、ただ黙々と作業するのに慣れてるんだと思う。
Spotify1億再生を突破した2024年のシングル「two」。英語圏の童謡やチアリーディングでよく使われるチャント「2-4-6-8」をアレンジしたキャッチーな楽曲
―何百万人もフォロワーがいて、収入もすごいだろうし……そういう状況で、地に足をつけ続けるのは大変じゃないですか?
bbno$:いや、それが全然なんだよね。ただ、ゲームして、家族とか友達とだらだらして、美味いモノを食べられたらそれで十分。音楽もビジネスも、もちろん大事で楽しいけど──でも、人生のすべてってわけじゃない。一区切りついたら、それで終わり。もう未練とかもないと思う……てゆうか、このスナックやばいね。食べすぎる前にちょっと遠ざけなきゃ(笑)。
でもさ、よく不思議に思うんだよね。どうして人って有名になると、自分を見失っちゃうのかって。
ただ、ファンという存在ができることの”心理的な影響”は、なかなか興味深いと思っているんだ。知らない人から認識されるって、ちょっと不思議な感覚だよ。その体験がメンタルヘルスや自己認識、現実感覚に長期的にどう影響するのか……まだよくわからないけど、そのうち研究とか論文が出てくるんじゃないかな。
正直、自分自身についても、「ネット上での評価が自分をどう形作ってるのか」って、時々考える。「自分の価値=人からの見られ方」になってないか、とかね。別に「俺はこれだけ価値がある!」って思いたいわけじゃなくて、「人は自分をどう見てるんだろう?」って、ずっと気になってる。うちの姉は心理カウンセラーで、家でもそういうメンタルヘルスの話をよくするんだ。

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―なるほど。(レーベルに所属しない)インディーのアーティストであることが、メンタル面でもプラスになっていると思います?
bbno$:たぶん、そうだと思う。俺、人の指図を受けるのがあんまり好きじゃないんだよね。だから、誰にも”所有”されてないっていうのはすごく大きい。同じように、頑なに自分のやり方を通してるインディーのアーティスト仲間も何人かいて、彼らのことは共感できる。とにかく、自分のやりたいことを貫く。それが一番大事。周りにはいろいろ言ってくる人がいるけど、他人の思い通りに動いても、結局うまくいかない。だから、自分が成功してる理由の一つは、インディペンデントでいることだと思う。やりたいことを、やりたいときに、やりたいようにできる。
その反対に、「メジャーと契約したら自由がなくなる」っていうのも、やや誤解されがちだと思う。今はレーベルの力も昔ほどじゃなくなってきてるし、ソーシャルメディアがあるから、他にも売れる手段はいくらでもあるしね。
bbno$と名乗るまでの生い立ち
―自分で「音楽で食っていこう」と思ったのはいつ頃だったのでしょうか?
bbno$:音楽が”仕事”になったと感じたのは、大学を卒業したとき。その頃、月に2,700ドル(記事掲載時のレートで約39万円)くらい稼いでて、「あ、これで食っていけるな」って。年収で言うと3万ドル(約430万円)くらいだったけど、そこから本当に軌道に乗っていったんだ。
―以前から、音楽に対する情熱はあった?
bbno$:情熱を感じたのは、最初の曲を作ったときかな。当時、怪我で心身ともにかなり落ち込んでて。でも、曲を作ったらすごく気持ちが明るくなって、「ああ、これだな」って思ったんだ。それからずっと、その理由で音楽をやり続けてる。曲を書いてるとき、自分は間違いなく一番幸せ。しかも、その音楽で誰かを笑顔にできたり、トランス状態にさせたりできるのがすごく面白い。自分がハッピーな気持ちで作ったものが、そのまま人に伝わるっていうのは、本当に素敵なことだと思う。ポジティブな循環だよね。
最新シングル「Mary Poppins」
―もう少しバックグラウンドについてお聞きしたいんですが、音楽的な意味でのご自身のルーツは、どのようなものでした?
bbno$:正直、音楽理論とかはまったくわかんない(笑)。キーとかもよくわかんないし、ちょっと音痴だとも思う。でも、自分の”好き”って感覚には素直なんだ。子どもの頃はホームスクーリングで、母親が課外活動をたくさんやらせてくれて、ピアノを習ったんだけど……楽譜は読めなかったから、全部暗記で弾いてた。それなりには弾けるようになったけど、上手いってほどじゃなかったね。で、父親がジャンベっていうアフリカの打楽器を教えてくれて、それがめっちゃ楽しかった。ただひたすら、怒りを叩きつけるって感じで。だから結局、自分はもともと”音楽的に才能があった”ってタイプでは全然ないんだよ。そもそも音楽をちゃんと聴くようになったのって、14歳くらいからなんだ。
―意外です!当時、好きだったアーティストやバンドは?
bbno$:なぜか、気づいたらUKの初期ダブステップにどっぷりハマってた(笑)。それでビートボクサーのクルーと一緒にやるようになって、「あ、これ向いてるかも」って思った。毎日ビートボックスばっかりやってたし、四六時中ダブステップを聴いていて、それから、Excisionとかスクリレックスを経て、気づいたらチーフ・キーフとかグッチ・メインまで行き着いてた。とにかくネットにずっと張り付いてた感じ。
―それから、自然と作曲するように?
bbno$:最初はバンクーバーの友達と一緒に、ネットで拾ったビートにラップを乗せていたんだ。そうしているうちに自分でマイクを握るようになって、当時、全然お金がなかったんだけど、大学に進学するタイミングで友達が700ドルのマイクをプレゼントしてくれた。それが制作するようになったきっかけで、そこから上達するまでに4年くらいかかった。ストリーミングの収入もちょっとずつ増えていって、気づいたらうまくいってたんだよね。特にボーカルのレッスンとかも受けていないし、ただ「やりたい!」って気持ちが強かっただけ。アートを作ってるっていう感覚が、すごく気持ちよかったんだと思う。なんていうか、多幸感があったんだよね。

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―なるほど。bbno$というアーティスト名についても教えてください。
bbno$:昔、「Broke Boy Gang」っていうグループにいたんだけど、そのときの名前が「Baby Freestyle」だったんだ。正直フリースタイルはめっちゃ下手なのに(笑)。それで今のDJであり、親友でもあるやつが、バンクーバーで初めてライブやったときにTシャツを作ってくれたんだけど、「Baby Freestyle」って文字がシャツの背中に入りきらなかったんだよ。それで略して「bbno$」にになった。「あ、これキャッチーでいいな」って思って、そこから今に至るって感じ。
それと、俺って末っ子だから、その「ちっちゃいやつ感」も出したかった。お金を使うのもあまり好きじゃないから、ぴったりだなって。
―「ベイビーノーマネー」と読める人の方が少ないですよね?
bbno$:ずーっと名前を間違えられてきたよ(笑)。でもみんな悪気はないし、逆にそれを自分でネタにしちゃおうと思って。名前を間違えられること自体を、自分のアーティストプロジェクトの”お約束”にしてるんだ。今でも自分で「なんでこんな読みづらいって思われるんだろう?」って不思議には思うけどね(笑)。
自分でネタにした動画
まずはいい曲を作る、それから物語を用意する
―「Edamame」や「Lalala」「check」…常にヒットシングルを出し続けていますよね。楽曲リリースにおける戦略的スケジュールなどは決まっていますか?
bbno$:正直、あんまり決まったやり方はないんだよね。ただたくさん曲を作って、その中で「これいいね」ってみんなが思ったものを出してるだけ。でも、自分で曲を聴いて「あ、これは間違いなくイケてる」って確信できることもある。その自信をちゃんとファンに伝えれば、みんなちゃんと聴いてくれるんだよね。結局、それに尽きる気がする。とはいえ、正直「Edamame」以降に”超バズったヒット”はまだ出てない。でも実際のところ、世界的大ヒットを1曲出すより、中くらいのヒットを5曲持ってる方がいいと思ってて。その方がライブのときに、観客が知ってる曲が増えるから、パフォーマンスもしやすくなるんだよね。
「Lalala」はSpotify10億回を突破した2019年リリースの代表曲。〈Did I really just forget that melody?〉というフレーズがバイラルヒットの要因に
―あなたの曲を聴いていると、ビートやキャッチーな言葉選び、面白いフレーズなど全部の要素がちょうどよくハマっていると感じるんです。こうした要素をうまく組み合わせるための、特別な作り方や戦略がある?
bbno$:うーん。自分が好きなものを選ぶだけなんだよ。あとは、自分の好きって感覚をちゃんと信じること。そこが一番大事かな。基本的に、自分が生み出す音楽って、自分の性格そのものの表れだと思ってるんだよね。曲のサウンドに、自分が「これ好きだな」って思う要素を全部詰め込んでるから。だからそれ以上に深く考えることはあんまりないかな。
―その感覚は、昔から変わらない?
bbno$:いや、昔は「どうやったら人にウケるか」ばっかり考えてた。でも今は、「自分が好きな音楽を作る」ってことの方が大事だってわかったんだ。だって、もう自分のことを好きでいてくれる人がいるってわかってるから。だからこそ、自分のために音楽を作るべきなんだよね。とにかく”いい曲を作る”っていうのがすべての土台。そこからすべてが始まるんだよ。音楽がよくなかったら、どれだけおもしろくても、誰もプロジェクトには興味を持ってくれない。逆にちゃんとキャッチーな曲を出せば、人は聴いてくれる。最近は、SNSとかでバズる曲も多いけど──そもそも曲がよくなければ、バズってもその先につながらない。ちゃんと”いい曲”を作る。それが広く聴かれて、共感されれば、それが成功につながる。でも、戦略も立てるよ。
2025年のシングル「Check」は、ウォー「Low Rider」のホーンとEDMビートを土台にした楽曲。TikTokで使いやすい〈check, check, check〉というフレーズを軸に、下ネタやカルチャーネタ、成功者としての自負をリリックとMVに盛り込んでいる
―その戦略についても伺えますか。ファンの存在がベースになっている?
bbno$:まずはいい曲を作ること。それと、ファンに向けてちゃんと”物語”を作ってあげないと、彼らもついてこられない。何に共感していいかわかんないままだと、誰も関わってくれないから。経験から言えるのは、何度も何度もやってると「この人、本気なんだな」って伝わる。大前提として、曲が良くないと誰も聴かない。それはもう痛いほど経験してる。曲が伸びなかったら、それはもう──たぶん、率直に言って「いい曲じゃなかった」ってこと。俺、300曲くらい出してるから、それはもう痛いほどよくわかってる(笑)。
それと、MVを撮るときは、監督に「7月に新しい曲をいっぱい作るから、事前にいろんなジャンルに使えそうなMVのアイディアを出しといて」って伝えるんだ。そうしておけば、曲ができたときにすぐ映像がハマる可能性があるし、準備は整ってるからすぐ動ける。歌詞と映像の内容が必ずしも一致してる必要はないと思ってて、ある程度の雰囲気が合えばOK。

Photo by Yukitaka Amemiya
音楽=食べ物、国境を超える共感
―すごく興味深いです。海外市場についてはどう見てますか? 特にアジアと日本について。というのも、「La La La」は当初、中国でも大きくバズりましたよね?
bbno$:うーん。俺はもともとカナダのバンクーバー育ちで、周りの友達もアジア系が多かったんだよね。だからアジアの食べ物もずっと身近だったし、何よりツアーで一番楽しみなのが「食べること」だから、アジアとの繋がりはとっても嬉しい(笑)。地元やアメリカの(音楽的)マーケットにはあんまり関心なくて、むしろヨーロッパやアジアの方が最高。オーストラリアも回ったけど、すごく楽しかった。海外ツアーのほうがテンション上がるし、他のアーティストはあんまりそう言わないかもしれないけど、俺は長時間のフライトも全然平気。むしろ海外に行きたい派だね。この前は、ベトナムのアンダーグラウンドで大人気なLow GとAnh Phanって2人と曲を作って、ホーチミンに行ったんだ。
―海外のマーケットを意識した、別の戦略が必要だと考えますか?
bbno$:あんまりそうは思わないんだよね。音楽って、食べ物みたいなものでさ。文化が違っても、いろんな地域にミックスされて広がっていくじゃん? だから、どこの国の人でも、俺の曲を好きになれる可能性はあると思ってる。極端な話、もし2歳の子どもが初めて聴く曲が俺の「LaLaLa」だったとして、言葉なんてわかってなくても、メロディーだけで好きになるかもしれないでしょ?
特定の地域向けに曲を作る必要はないと思うけど、たとえばLow GとAnh Phanみたいな、ベトナムの大物ラッパーたちとコラボして、現地で一番有名なMV監督と組んだときは、確実にその地域での注目度は上がったね。だから、戦略として”現地に寄せていく”ことが功を奏することもある。でも結局、何がバズるかなんて予測できないんだよ。
初音ミクのコスプレに込めた想い
―話は変わりますが、あなたの初音ミクのコスプレもバズりましたよね。そもそも、どういう経緯でコスプレ文化と出会ったのでしょう?
bbno$:たまたまなんだけど、そのきっかけとなる日、ちょうどイーロン・マスクが例の件をやらかした日だったんだよ。
―例の件?
bbno$:ごめん。俺、あいつはマジでクソ野郎だと思ってる。そもそもその日、俺はTwitchでゲイの権利をサポートする配信をしてた、まさにその日に、あいつがナチ式の敬礼してたんだよ(※2025年1月20日、ドナルド・トランプ大統領の再就任を祝うイベントにおいて、イーロン・マスクが行ったジェスチャーがナチス式敬礼に似ているとして物議を醸した)。そのとき俺は『League of Legends』のキャラ、ヴィクターとしてコスプレしてた。俺の相棒のウィル・ネフはジェイスの格好をしていて、配信では ”報われない愛”をテーマに、ゲイの権利へのサポートをポジティブな形で表現してたんだ。
でも、それと同じ日に、イーロン・マスクは真逆のことをしてた。一方は巨大な影響力を使ってネガティブなメッセージを拡散し、かたや俺たちは、少しでもポジティブな空気を届けようとしてた──その対比がすごく象徴的だったんだよね。俺にとって、コスプレっていうのは”ポジティブな場”なんだ。これまでやってきた中で、否定的な空気を感じたことは一度もない。
―はい。
bbno$:子どもの頃って、「変わってる」とか「オタクっぽい」ってことが、すごくネガティブに捉えられてたんだよね。ゲーマーとか、ネットにいる人たちって、ちょっと見下されてた。俺、高校のときオンラインゲームの『World of Warcraft』にハマってたんだけど、よくからかわれてたもん。それが今じゃ、それってすっかり普通のことになってるでしょ。世界中にいろんなネット文化があるし、細かいサブジャンルもたくさんある。でもたとえば「コスプレイヤーです」って、まだ堂々と言える雰囲気じゃないよね。でもさ、コスプレって、単純に楽しいんだよ。だから、「なんでそれを楽しんじゃダメなの?」って思う。別に誰かを不快にさせてるわけでもないし、自分が楽しいならいいじゃん、って。
昔、俺のビデオグラファーが言ってくれたことがあってさ。「これまで自分が”苦手だな”とか”不安だな”って思ってたことに、あえて挑戦してみろ」って。最初にドラァグやったときもそう。「どうすればいいの?」「何をどう振る舞えば?」って戸惑ってたんだけど、いざフルでドラァグの格好して、まつ毛もつけて、お尻も盛って、全身変身した瞬間、まるで別人になったみたいで、めちゃくちゃ楽しかった。
ジェイス&ヴィクターの配信のときも、初音ミクのコスプレをしたときも、あのときと同じ感覚だった。普段の自分からいったん離れて、全然違うキャラになってみる──それがすごく美しくて、開放的で。だって、俺たちって毎日ずっと”自分”でいることに慣れすぎてるじゃん。同じことの繰り返し、同じ自分のまま。でも、ほんの数時間でも「誰か別の存在」になれるって、めちゃくちゃエキサイティングなんだよ。普段、”他人になる”なんてなかなかできない。でもコスプレって、それができる手段なんだ。それにミクって、マジで最高のキャラだと思うし。最近、ミクのそっくりさんコンテストがあって、俺もリモートで参加したんだけど、なんと1500人のミクが集まったのよ。しかもその中に、俺のミクコスを真似した人が40人くらいいて──みんなヒゲありのミクだった(笑)。「bbnomiku」っていう、ひとつのコスプレ枠ができちゃってて、ほんっと笑っちゃったよ。
「Chack」初音ミクバージョンもリリース
―そのジェンダーフルイド的な感じというか、ジェンダーに捉われないスタイルも、すごくいいと思いました。
bbno$:自分ではそんなに意識してやってないんだけどね。基本的にコスプレは全部ヒゲのままやってるし。だって、わざわざ剃るのめんどくさいじゃん。見た目はちょっとヤバい感じになるけど、それが逆にカッコいいし、面白い。
―ちなみにボカロのことって、どれくらいご存じですか? あ、日本ではボーカロイドのことをボカロって呼ぶんですけど。
bbno$:うーん、基本的な仕組みとか、Vocaloidって何かっていうのはわかってる。クリエイターの名前まではあんまり詳しくないんだけど……昔、AbletonとかVSTを違法ダウンロードしてた頃に、キー・ジェネレーターを使うと、必ずボカロの曲が一緒に流れてきたんだよね。しかもその曲、めちゃくちゃ音割れしてて、ダウンロードした瞬間に爆音で鳴り出すの。だから、俺がボカロに触れたのって、かなり早い段階だったと思う。ネット漬けのゲーマー体質だったから、そういうルートでどんどん触れてた。一回、『World of Warcraft』のゲームタイムのキー・ジェネレーターを落としたら、いきなりボカロが叫びながら出てきて、パソコンの音量MAXで強制的に鳴り始めたりして(笑)。最近、初音ミクのチームから連絡が来てて、なにか一緒にやろうか、って話が進んでるっぽい。まだどうなるかわかんないけど、何か企画が動きそうな感じはあるよ。
初来日公演は「ほぼレイヴ」
―楽曲もヒットして、SNSには600万人を超えるフォロワーがいる。名声だったり、多くの人々の目に晒されていることだったりがプレッシャーになることもありますか?
bbno$:うん、この間ちょうどセラピストとそんな話をしてたんだよね。彼女が言ってたんだけど、「他にも有名なクライアントたくさん抱えてるけど、あなたもそろそろちゃんと整理して向き合うべきだよ」って。でも幸運なことに、俺ってある意味”アンダーグラウンド”なポジションにうまく収まってる気がしてて。自分が話しかけてるオーディエンスって、たぶんこれからも”メインストリーム”になることはない層なんだよね。たとえば……$uicideboy$って知ってる?
―もちろん。
bbno$:彼らの音楽って、俺の音楽とは真逆だと思う。$uicideboy$はダークで、俺のは明るい。だから自分では、「ポジティブ版$uicideboy$」って感じでやってるつもり(笑)。彼らって、ほとんどのメジャーアーティストよりストリーミングも回ってるし、チケットの売れ行きもすごい。インタビューにも出ないし、表に出ることも少ないけど、それでも彼らは自分のやり方で、好きに生きて、ツアーしている。それって、まさに理想的なアーティストの形だと思うんだよね。自分もそこを目指してるし、今のところうまくいってる感じがしてる。今年も着実に成長できてる実感があるし、いろいろ順調に進んでる感じ。

Photo by Yukitaka Amemiya
―SNSとの付き合い方についてはどうですか。
bbno$:TikTokのアルゴリズムって、正直めちゃくちゃだからさ(笑)。どんなにフォロワーがいても、投稿した内容が”映え”なかったり、基準に合ってなかったりすると、誰の画面にも表示されないんだよね。でもまあ、言いたいことはわかる。ネットって、どんな投稿も切り取られて誤解されるリスクがある。でも、結局のところ、自分の信じてることに沿って行動して、誠実でいれば、それ以上とやかく言われる筋合いはないって思ってる。とはいえ、どんなことでも叩く人はいるから、最近はもうコメントも見ないようにしてるんだよね。
―コメントの内容は全然気にならないものですか?
bbno$:まあ、最初の10件くらいは見るよ。それで、「はい終了!」ってなる(笑)。基本的には(SNSは)「宇宙に放り投げてる」くらいの感覚でやってるし、本当の意味では(コメントやリアクションは)”存在してない”って思ってる。ほら、今この瞬間だって、俺のスマホは画面を下にして置いてあるでしょ?きっと誰かがメッセージ送ってると思うけど、今はそれが見えない。イコール、存在してないってこと。
―では最後に、定番の質問なのですが、日本のファンにメッセージをお願いします。
bbno$:この記事をどれくらいの人が読んでくれるかはわかんないけど……もし「ただ楽しみたい!」って思ってるなら、ぜひ俺のライブに来てほしい。俺、マジで東京が大好きだし、日本の文化が死ぬほど好きなんだ。ここ5~6年くらい、音楽を続けてきた一番のモチベーションって、「どうにかして日本に”食い込む”こと」だったんだよね。だから、bbno$をどうぞよろしく。ほんとに、心の底から東京が大好き。最近、日本のファンも少しずつ増えてきてる実感があるし、もっとたくさんの人に出会えるのを楽しみにしてるよ。
―11月の来日公演は、どんなライブを見せてくれそうですか?
bbno$:ぶっちゃけ、ほぼレイヴだね(笑)。完全にパーティって感じ。俺がステージでひたすらラップしまくって、1時間半くらい、ずーっと盛り上げ続けるライブになると思う。観客と一緒にジャンプして、叫んで、ぶち上がって。めっちゃ楽しい時間になるよ、間違いなく。
@bbnotiktokLMK !!!!!!♬ boom - bbno$

bbno$ : it's pronounced baby no money
2025年11月17日(月)渋谷 WWW X
開場 18:00 / 開演 19:00
チケット
VIPチケット ”BBNO$ M&G VIP PACKAGE”:21,800円
スタンディング:7,800円
※未就学児(6歳未満)入場不可。6歳以上チケット必要。
※別途1ドリンク代必要
公演ホームページ:https://www.livenation.co.jp/bbnomoney-2025