現在、結成20周年イヤーを豪快に爆走中のSUPER BEAVER。彼らは、結成月の4月から、アニバーサリーイヤーを彩るスペシャルなライブを立て続けに開催してきた。
4月の対バン自主企画「現場史上主義 2025」(UVERworld、THE YELLOW MONKEYとの対バン)、5月のフリーライブ、ファンクラブ限定ライブに続く形で行われたのが、バンドにとって初のスタジアムワンマンライブ「20th Anniversary 都会のラクダSP at ZOZOマリンスタジアム」だった。

【画像】SUPER BEAVER、初スタジアムワンマン(全7枚)

はじめに結論から書いてしまえば、私たちにとって音楽とは何であるかを、熱く深い実感をもって感じることができたライブだった。音楽は、人生における衣食住に与することはない。いや、違う。渋谷龍太(Vo)は、「あなたの人生が音楽になる瞬間、見せてやるよ」と言った。人生こそが、音楽。一人ひとりの"あなた"の音楽が、爆音で鳴っていた。そんなライブだった。今回は、6月20日、21日の2日間にわたり敢行された同公演の2日目の模様をレポートしていく。

BGMが止まり、無音の中、いや、大歓声と熱烈な拍手の中、まずは、柳沢亮太(G)、上杉研太(B)、藤原”37才”広明(Dr)がステージイン。柳沢がコードを一発打ち鳴らし、その上に上杉のベースと藤原のドラムが重なる。そして、渋谷が登場。
「やりますか」という一言の後、1曲目「東京」の歌い出しのみマイクで歌い、すぐにそのマイクを観客に委ね、さっそくライブ冒頭とは思えないほどに壮大な合唱が巻き起こる。続く「青い春」では、渋谷は〈くじけそうならば 今度は僕らが 笑わせたいんだよ〉という歌詞を「SUPER BEAVERが」と替えて歌い、また、「突破口」では、〈証明するよ もう前例になるよ やめなかったから 笑ってる僕らが〉という歌詞を「俺たちが」と替えて歌い上げてみせる。4人と、この日この場に集まった一人ひとりの"あなた"が共に作り上げていく"俺たち"のライブは、このようにして熱き口火を切った。

SUPER BEAVER、初スタジアムワンマン「あなたの人生が音楽になる瞬間見せてやるよ」


渋谷は、ソールドアウトとなった今回の公演について、観たくても観に来られなかった人がいることを歯痒く思うと伝えた上で、「どんなことをやっても、その人の分まで楽しむということは実質的に不可能です。その人の代わりはできない」「その人が(次に)会場に来た時は、俺たちがしっかりやるから」「今日はあなたの時間だぞ」「あなたの時間を、あなたがしっかり楽しむんだぞ?」「SUPER BEAVERが、いや、SUPER BEAVERしかできない音楽を、本日は一緒にやりにきてる!」と伝えた。「一緒に音楽やりたいわけ、どうしても、あなたとやりたいんだよ」他の誰でもない、一人ひとりの"あなた"に向けて溢れ出る想いをまっすぐ語った後に披露されたのは、「美しい日」。またしても、歌い出しから巻き起こる大合唱。そして、「調子いいみたいなんで、どんどんやっちゃっていいですか?」という問いかけを挟み、「閃光」「ひたむき」を立て続けに放つ。序盤のブロックにおいて眩いハイライトを飾ったのが、最新曲「主人公」だった。サポートキーボードの河野圭のプレイによって、バンドサウンドに豊かな彩りが添えられていき、さらに、観客が高く上げた手を左右にウェーブさせながらバンドのライブパフォーマンスを鮮やかに彩っていく。七色のライティングと相まって、あまりにも美しい時間だった。

SUPER BEAVER、初スタジアムワンマン「あなたの人生が音楽になる瞬間見せてやるよ」


「紆余曲折、山あり谷あり。
ぜんぜんスマートな道のりじゃなかった」。渋谷は、これまでの20年の歩みをそう振り返る。その上で、「4人でやってきた時間が長いからこそ、あなたがいて、音楽が楽しいということ、誰よりも身に沁みて分かっている」と語り、観客に向けて深く感謝を伝える。会場中から送られる温かな拍手。渋谷は、続けてこう語る。「おかげさまです、という言葉がこれほど似合うバンドはいない」「誇れるのは、人に恵まれていること、この一点のみ。この一点がどれだけでかいか」「やべえよな、だって、あなたがいるんです」「あなたの楽しいが、すなわち、俺たちの楽しい」。

今回のライブに限った話では全くないが、ライブ中に渋谷が語る言葉は、どこまでも一貫しているし、そして、その揺るぎない一貫性こそが、そのまま各曲のメッセージの強度と化している。改めて、そう強く思う。「人として」の後、渋谷は、「音楽は、腹の足しにならない」「病気を治せない」「衣食住には勝てない」と前置きした上で、「衣食住を超える何かになりたい」と宣誓。そして、そうした想いが凝縮された「片想い」を披露。〈生きるは、衣食住だけでは ままならないよ〉〈心がないと 生きられないよ〉4人にとって、そして、私たちにとって、音楽とはどのような存在であるか、熱く深い実感を通して改めて噛み締める大切な時間になった。


各メンバーによるMCのパートが終わる頃には、あたりは真っ暗に。いよいよライブは後半戦へ。「20年間、こうやってきたわけです。これが俺たちの闘い方です」。渋谷の言葉の後に披露されたのは、「正攻法」。ステージに、さらに舞台の屋根からも豪快に噴き上がる炎。熾烈な熱狂をかいくぐるように、渋谷は、「あなたの人生が音楽になる瞬間、見せてやるよ」「考えていること、伝えたい気持ち、歩んできて見たもの、全部ここで音楽になるんだよ」「今日この瞬間、ここで音楽作ってんのは、まぎれもないあなた」「束になってかかってくんなよ、お前が一人でかかってこい」と語る。続く「秘密」では、柳沢と上杉がセンターステージへと繰り出し、渋谷はメインステージの上手の端、下手の端をダイナミックに行き来しながら、熱く親密なライブコミュニケーションを重ねていく。

SUPER BEAVER、初スタジアムワンマン「あなたの人生が音楽になる瞬間見せてやるよ」


SUPER BEAVER、初スタジアムワンマン「あなたの人生が音楽になる瞬間見せてやるよ」


SUPER BEAVER、初スタジアムワンマン「あなたの人生が音楽になる瞬間見せてやるよ」


鳴り止まぬ歓声、そして沸き上がる怒涛のコール。「いくぞ!」「もっとこい!」花道を堂々と闊歩し、そして、マイクを夜空に高く突き上げながら、会場全体をさらなる熱狂へと導き続けてゆく渋谷は、続けてこう語った。「誰一人、ないがしろにしたくないの」「あなたがしっかりと、最後の最後まで、フルテンで、フルボリュームで鳴りますように」。そして、まるで一人ひとりに呼びかけるような並々ならぬ気迫で「名前を呼ぶよ」を披露。
歌い終わり、渋谷は、「俺たちはいつだってお前の味方だ、お前にはSUPER BEAVERがついてるぞ!」と叫んだ。観客も負けていない。「まなざし」では、ダンサブルなビートを受け、一人ひとりの観客が各々自由に身体を動かし、飛び跳ねながら、己の存在を、今この瞬間ライブが楽しいという感情を、懸命に伝えてゆく。それぞれの観客の自由な動きと相まって、一人ひとり唯一無二の"あなた"の総力によってこのライブが作られていることを改めて深く噛み締めた。また、河野のプレイによって、原曲と比べて壮大さと深淵さがグッと増していた「それでも世界が目を覚ますのなら」は、言葉を失うほどに美しい名演だった。

「この場所に、不必要な人間など一人もいなかった」「全員が胸を張って、この会場を出ていく。『今日の素晴らしい時間は、私が作った。』」「一過性の安心感ではなく、この先に続くあなたの人生に、しっかりと鳴る音楽であってほしい」「俺たちの音がピタッて鳴り止んだ、その先が勝負」「その先の人生、胸を張って生きられますように」。渋谷は、祈るように、願うように、そして確信するように、そう語った。「もっと鳴らせ!」「見せてやろうぜ、誰にじゃなくて、自分自身にだよ、俺たちで見せてやろうぜ」。その熱烈な呼びかけから、「小さな革命」へ。渋谷が、〈君の夜明けのきっかけになれたら〉という歌詞の後、付け加えるかのように「それで十分だよ」と告げた一幕が忘れられない。
「あなたに言ってんだよ」「あなたに言ってんだよ」「あなたに言ってんだよ」「愛してる」。猛烈なラブコールの結晶のような「アイラヴユー」の後に、盛大に花火が打ち上がり、いよいよラストの「切望」へ。この日何度も更新されてきたピークをさらに超えていく大きさのコールが爆裂的に巻き起こる。最後の最後まで、幾度となく重ねられてゆく〈気持ちの往来〉。4人も、一人ひとりの観客も、思い残すことなく全て出し切ってみせた、全身全霊の大団円だった。

最高のライブであり、最高の音楽だった。ライブを観た、という一言では決して言い表せないような、まさにライブの当事者としての達成感を、あの日あの会場を後にする時に多くの人が感じたはずだ。人生が続く限り、音楽は鳴り止まない。私たちの音楽は、ライブ会場を出た後も、きっと高らかに鳴り渡っていく。SUPER BEAVERは、そう願い、そう信じてくれている。なんて頼もしいんだろう。どれだけ言葉を綴っても伝えきれないかもしれないけれど、最大限の感謝をここに伝えたい。


セットリスト
1. 東京
2. 青い春
3. 突破口
4. 美しい日
5. 閃光
6. ひたむき
7. 主人公
8. 人として
9. 片想い
10. 正攻法
11. 秘密
12. 東京流星群
13. 名前を呼ぶよ
14. まなざし
15. それでも世界が目を覚ますのなら
16. 小さな革命
17. アイラヴユー
18. 切望
編集部おすすめ