話題の「Hans Zimmer Live」ツアーが5月に日本へ初上陸、19名の大編成で名曲の数々をたっぷり披露した映画音楽界の巨匠、ハンス・ジマー。そのツアー中、ドバイ公演の模様を記録したライブドキュメンタリー映画『ハンス・ジマー&フレンズ:ダイアモンド・イン・ザ・デザート』が、日本でもいよいよ7月11日から1週間限定で劇場公開される。


選び抜かれた名曲を圧巻のスケールで演奏

監督を務めたのはポール・ダグデール。これまでローリング・ストーンズやワン・ダイレクション、テイラー・スウィフト、アリアナ・グランデ、アデル、エルトン・ジョンなどの映像作品を撮ってきた彼は、最近ではコールドプレイの『Music Of The Spheres: Live at River Plate』を手掛けたことが記憶に新しい。17,000人キャパのコカ・コーラ・アリーナ、万博会場のアル・ワスル・プラザ・ドームといった大会場でのライブや、アラビア砂漠でのロケもフィーチャー。日本公演よりも遥かにスケールの大きい演出が堪能できる、空前のライブスペクタクル映画になっている。

ハンス・ジマーのコンサート映画が必見な理由──映画史に残る名曲を生演奏、豪華ゲストと語る創作の裏側


ハンス・ジマーのコンサート映画が必見な理由──映画史に残る名曲を生演奏、豪華ゲストと語る創作の裏側


ハンス・ジマーのコンサート映画が必見な理由──映画史に残る名曲を生演奏、豪華ゲストと語る創作の裏側


ハンス・ジマーにシンセサイザー奏者というイメージを持っている人は、エレキギターやエレキベース、ピアノに大小さまざまなシンセと楽器を持ち替えながら、アグレッシブなパフォーマンスを披露する彼の姿に度肝を抜かれることだろう。スタジオで発揮してきたマルチプレイヤーとしての強みをステージ上でも全面解禁。映画音楽の先生然とした尊大なふるまいには抵抗があるという彼の、観客との交歓を楽しみながらショーを進行していく溌剌とした姿が何とも新鮮だ。

『DUNE/デューン 砂の惑星』『インセプション』『ワンダーウーマン』『マン・オブ・スティール』『グラディエーター』『パイレーツ・オブ・カリビアン』『X-MEN:ダーク・フェニックス』『ダンケルク』『インターステラー』『ライオン・キング』と、過去に手掛けてきた映画音楽から選び抜かれたベスト・オブ・ベストな選曲にも圧倒される。これらのスタジオで緻密に構築されたスコアを、生演奏で再現するだけでも高度な演奏技術が必要とされるわけだが。それにプラスして、エンターテインメントとしてオーディエンスを興奮させる仕掛けがいくつも用意されており、ショーとしての完成度が恐ろしく高い。

ハンス・ジマーのコンサート映画が必見な理由──映画史に残る名曲を生演奏、豪華ゲストと語る創作の裏側


ハンス・ジマーのコンサート映画が必見な理由──映画史に残る名曲を生演奏、豪華ゲストと語る創作の裏側


事前に公開されているシーンからご紹介すると、「パイレーツ・オブ・カリビアン」はハンス・ジマーの作品でメロディが最も広く知られている曲のひとつ。本作で圧倒的存在感を放ち続けるチェロ奏者、ティナ・グオの熱演ぶりが確認できる。
女性ドラマー2名、アイシャ・ジジェリ+ホリー・マッジのダブル・ドラムスも強烈だ。

もうひとつ映像が公開されている「インターステラー」の演奏シーンは、高さ70mの巨大施設、アル・ワスル・プラザ・ドームで撮影されたもの。内部の壁面はプロジェクションマッピングのスクリーンになっており、壮大な映像とパフォーマンスの盛り上がりが相乗効果を生んでいる、後半のクライマックスのひとつだ。

動きのあるカメラワークも本作の魅力。各種の笛を操るペドロ・エウスターチェや、スティーヴン・ウィルソンとの活動でよく知られる超絶技巧ギタリスト、ガスリー・ゴーヴァンといったソリストたちのプレイを、クローズアップを多用して細部まで生々しく伝えてくれる。そのガスリーの横にいる、若めのハンサムなギタリストが気になる人も多いはず。彼はマン・メイドというグループやソロ名義で作品を発表してきたジョニー・マー(元ザ・スミス)の息子、ナイル・マーだ。

音のみで接してきたスコアが、ミュージシャンたちの肉体を伴って、映像として眼前に現れる……それだけでもエキサイティングなことこの上ない体験なのだが。本作は演奏シーンの間にトークの場面が挟まれる構成。ハンス・ジマーと語り合う相手は、いずれも彼と縁の深い人々ばかりで、これまで聞いたことがないようなエピソードも飛び出す。

豪華ゲストと語る創作の裏側

トークの冒頭を飾るのは、『インセプション』のサウンドトラックに参加して以降、親交を深めてきたジョニー・マー。ファレル・ウィリアムスと共に、ハンスにライブパフォーマンスをしつこく勧めた張本人がジョニーだったという。
ライブをやるに当たって「電子楽器の演奏家であってくれ」とアドバイスしたというジョニーは、バグルスのMVに出演したり、ダムドやザイン・グリフの作品に参加したりと、主にニューウェイブ畑で活躍していた80年代のハンスについても把握していたはず。「あなたの魂はロックミュージシャンだ」とハンスに語りかける真剣な眼差しが、強く印象に残る。

『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』のタイトル曲でハンス・ジマー、ジョニー・マーと共演したビリー・アイリッシュとフィニアスは、ビリーがいきなりスターダムに躍り出て戸惑っていた時期に、彼らを優しく導いてくれたというハンスとの想い出を振り返る。17歳の突っ張りまくっていた自分を客観的に語るビリーは、リラックスしていて素直だ。ここでハンスが「キーボードはちょっと退屈な楽器」と意外なことを言ったり、伝統あるスーパーマンを題材にした『マン・オブ・スティール』に取り組む際のプレッシャーについて語り出したりと、明け透けに話す様子もグッとくる。

『DUNE/デューン 砂の惑星』シリーズに出演してハンス・ジマーと接点を持ったゼンデイヤは、17歳のときに観た『インターステラー』の音楽にどれほど魅了されたかを熱心に語る。彼女が幼少期に観たという『ライオン・キング』については、ハンスがまだ幼かった子供に試写を見せたくて仕事を引き受けることにした、という話に「リドリー・スコットの映画は6歳児に見せられない」と、笑えるオチが。しかし、続けて彼が語るのは、6歳の頃に父親を亡くした体験の重さだ。そんな風に主役のライフストーリーが、トークのあちこちにちりばめられている。

度々組んで映画音楽を作るようになった年下の仲間のひとり、ファレル・ウィリアムスとのトークでは、ツアーに出るよう勧めてくれたことに礼を言いながら、映画音楽に向かい続ける自身のモチベーションと信念を語っていく。何が彼に音楽を作り続けさせているのか?という多くの人が抱いているはずの疑問に対して、ハンスはファレルも意外に思うような、常人には思いつきそうにない答えを持っていた。

????あの名作映画を彩る数々の名曲を演奏する圧巻のコンサート+創作の裏側を語る秘蔵映像がスクリーンに

『ハンス・ジマー&フレンズ:ダイアモンド・イン・ザ・デザート』
7.11(金) TOHOシネマズ 日比谷ほか全国順次公開

DUNE/デューン… pic.twitter.com/5LGfulLWXR— Culture-ville (@Culture_ville) June 26, 2025ファレル・ウィリアムスとの対談シーン

他にもドゥニ・ヴィルヌーヴ監督、ティモシー・シャラメ、プロデューサーのジェリー・ブラッカイマーなど、ゆかりの有名人たちがトーク場面に続々登場。
中でも長年のファンには、クリストファー・ノーラン監督との会話がたまらないプレゼントになるだろう。恐らく親密な分、お互いに恨み節も薄っすら入ったトークになっており、音楽作りの現場で監督がどのように介入したのか、ハンスが具体的に証言。『インターステラー』の音楽があのような方向性になった理由も、監督の口から明かされる。

会場の規模やシチュエーションを考えても、このようなコンサートを日本で実現するのはまず不可能。想像を絶する音と映像の躍動感を、ぜひ劇場のスクリーンで体験して欲しい。「本当は家にいたかった」と冗談まじりに話す60代後半の巨匠が部屋から飛び出して、内に秘めたパッションをあらわにする本作は、決まり切った”音楽鑑賞”の世界から映画音楽を切り離し、新たな次元へ突入させた画期的なドキュメンタリーとして、今後も語り継がれることだろう。

7/11(金)~公開『ハンス・ジマー&フレンズ:ダイアモンド・イン・ザ・デザート』

映画史を彩る傑作『DUNE/デューン 砂の惑星』『グラディエーター』
『インターステラー』『ライオン・キング』などから映画音楽を代表する名曲がスクリーンに甦る!… pic.twitter.com/C0UzHQfTHJ— Culture-ville (@Culture_ville) June 21, 2025クリストファー・ノーランとの対談シーン

ハンス・ジマーのコンサート映画が必見な理由──映画史に残る名曲を生演奏、豪華ゲストと語る創作の裏側

『ハンス・ジマー&フレンズ:ダイアモンド・イン・ザ・デザート』
2025年7月11日(金)~TOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開予定
監督:ポール・ダグデール
出演:ハンス・ジマー、ビリー・アイリッシュ、クリストファー・ノーラン、ドゥニ・ヴィルヌーヴ、ティモシー・シャラメ、ゼンデイヤ
制作年:2025年
制作国:アラブ首長国連邦(ドバイ)
上映時間:158分
日本配給:カルチャヴィル合同会社
日本公開情報HP:https://www.culture-ville.jp/hanszimmer
海外オリジナルHP:https://www.hanszimmerfilm.com/

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