ヘッドライナー「大抜擢」の裏側
―フジロックのブッキングはどのようなプロセスで進んでいるんでしょう?
佐潟:まず制作陣全体で会議をして各ステージのヘッドライナーを決めていくんです。各ステージの担当者を決めてはいますけど、ヘッドライナーなどは会社に携わる人間がほぼすべて集まって、アイディアを出して絞り込んでいく。2~3人いる各ステージの担当者には、そこから先の流れなどを決めてもらっている形です。
―今年はどのように始まっていきましたか?
佐潟:最初に決まったのはヴルフペックです。実は去年、ヴルフペックとクルアンビンのダブルヘッドライナーでやろうかという案も出ていて。その流れで話し合い、今回が初来日となるヴルフペックにしようと決めました。
―オリヴィア・ロドリゴが候補に挙がっていたという話も聞きました。
佐潟:他にもチャーリーXCXだとか、そういった話はいろいろあって。その中で具体的に作業が始まったのがヴルフペックだった。

佐潟敏博(スマッシュ取締役社長)Photo by Mitsuru Nishimura

栗沢慎一(FIELD OF HEAVEN担当)Photo by Mitsuru Nishimura
―ヴルフペックについては、以前からFIELD OF HEAVENで呼ぼうとしていたそうですね。
栗沢:実は10年くらい前から噂は聞いていて、ちょこちょこヴルフペック側と話はしていたんです。でもうまくいかず、そうこうしている間にコロナ禍になり、明けてからまた話を始めたんですけど、なかなか動かすのが難しいバンドで。ワールドツアーもやらないし、アメリカでも単発でちょろっとやるくらいだから。
そこで作戦を変えて、まずはコリー・ウォンを呼ぼうと。それを成功させて、彼に「日本は楽しかった」というのを持ち帰ってもらった方がいいと思ったんです。それで、一昨年コリーをフジに呼び、去年には単独公演も成功させて、その流れで去年のツアー中に「ヴルフペックでもやろうよ」と声をかけて、今回に至ります。
―「ヘッドライナーに初来日のバンドを起用」というのも、今年のフジロックの思いきりの良さを象徴していますよね。ちなみにいつ頃決まったんですか?
山本:去年7月の頭くらいです。早かったですよね。
佐潟:基本的には毎回、前年の12月にはヘッドライナーを1、2組は決めておきたいんです。

平田天志(GREEN STAGE担当)Photo by Mitsuru Nishimura
―次に決まったヘッドライナーはどちらでしたか?
佐潟:次がヴァンパイア・ウィークエンド。彼らは5度目のフジロック出演で、ヘッドライナーとしては2度目です。だから「次の一手」というよりは、候補が絞られていくなかで出てきたイメージですね。
平田:ヴァンパイアに関しては2022年のフジが終わってからも単独公演をやりたくて追いかけていたんです。でも実現できず、今回再びヘッドライナーでフジロックに迎える形になりました。
佐潟:前回出演時は特にリリースのないタイミングかつコロナ禍でもあって、こっちの見せ方として不完全な部分もあったと思うので。今回は新作も引っ提げてのタイミングですし、いろんな意味で全開でやってもらえるのかなと。
―そして、最後に決まったヘッドライナーがフレッド・アゲインということですね。思い切った起用ではありつつ、「よくぞ!」という声で溢れかえっています。
佐潟:フレッド・アゲインも一昨年くらいから動いていて。
―そうだったんですか。もっと前にはRED MARQUEEにブッキングするために動いていた時期もあったそうですね。
高崎:昔からフレッド・アゲインには注目していて。でも予算が合わなかったりして、もう日本に呼べないんじゃないかと思っていたんですけど。毎回名前は挙がっていたので、今年はヘッドライナーとしてブッキングするために動こうと。

高崎亮(RED MARQUEE担当)Photo by Mitsuru Nishimura
―ダンス/エレクトロニック系だと、過去にはケミカル・ブラザーズやエイフェックス・ツインがヘッドライナーを務めていますが、この世代の起用は異例ですよね。
佐潟:そうですね。なかなかフジロック的なそういったアクトの後継がいなかったので、良いタイミングだと思います。ブッキングが決まったのは割と直前だったんですよね。2月半ばくらい。第1弾ラインナップの発表が2月末頃で、今年は日割りも同時に発表でしょ? 例年だったら1組か2組ヘッドライナーが決まっていれば発表していたんですが、日割りも同時となるとヘッドライナーを3日間とも決めておかないと非常にカッコ悪いので。
高崎:たしかにギリギリでしたね。

山本紀行(WHITE STAGE担当)Photo by Mitsuru Nishimura
―3組いずれもライブに定評がありますが、どんなところに注目してほしいですか?
佐潟:フレッド・アゲインはダンス/エレクトロニック系なので、派手な演出も含めて面白いステージになると思います。今もちょうど話しているところですね。
平田:アンビエントや昔のソウルをフィーチャーしている動画もあったりするので、ライブセットを通じてどういうパフォーマンスになるのかっていうのは面白そうだなと。
栗沢:ヴルフペックは照明や映像でどうこうというより、演奏で魅せるタイプですよね。普段のセットもホームっぽい感じじゃないですか。おかげさまで反響も大きいですし、いい雰囲気になるんじゃないかと期待してます。
山本:ヴルフペックのマディソン・スクエア・ガーデンでのライブ映像は、多くの方が(YouTubeで)ご覧になっていると思いますが、あの演奏が目の前で繰り広げられると思うと、すごく興味深いですよね。
平田:インストの曲で大合唱が起きるって、ヴルフペック以外で見たことがない気がするんですよね。個人的にもめちゃくちゃ楽しみです。
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―ヴァンパイアは最近のライブやフェスだと、アンコールがカバー大会のようになっていますよね。
平田:日本でもやるかわからないですけど、急にMGMTやポール・サイモン、ブルース・スプリングスティーンやらの曲をやったらかなりのサプライズですよね。去年の新作がかなり良かったので、新曲を含めどんな感じになるのか楽しみにしてます。
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各ステージが実践した攻めのブッキング
―今年は第1弾発表のインパクトが抜群でした。60組を日割りも含めて発表するのはフジロック史上初かと思いますが、どのような意図がありましたか?
佐潟:もともとは2月頭に日割りもなく海外勢だけを発表していたんです。で、3月くらいから日割りや国内アクトを発表していく流れだったんですけど、その2月の発表のタイミングでのチケットの動き方がもったいないなと思っていて。そこを活性化したかったので、最初から日割りも出すアイディアを採用したんです。
―反響はいかがでしたか?
佐潟:「今年のフジロックは、1回目の発表から色がわかりやすいからすごく買いやすい」とお客さんから言われましたね。25回以上も開催してきて、なぜ今までこうしなかったのかと思ったくらいです。いざやってみて非常に良い発表の仕方だったと自画自賛しています(笑)。現時点でのチケットの売れ行きは、コロナ以降で一番良いんです。
―それはすごい! でも2月に間に合わせるのは大変ですよね。
佐潟:プレッシャーは大きいです。
高崎:今年は例年以上に国内アクトの決定も早かったですよね。
佐潟:RADWIMPSは去年の今頃(5月半ば)には動いていたからね。これまでどうしてもヘッドライナーの海外アクトから先に動いていたんだけど、今は日本勢もスケジュールを決めるのが早いので、そこは変えていく必要があるなと。海外勢だけでは成り立たないので、核になるアーティストは押さえていかないといけないですから。Vaundyなどの国内アクトへのアプローチも今回はかなり早かった。
―今年は洋楽と邦楽のバランスもすごく良い印象です。ブッキング全体でどういうバランスを意識しましたか?
佐潟:当然、円安の影響もあり、ヘッドライナーに膨大なお金を使えない状況もあります。だからこうやって洋楽と邦楽のバランスを考えていかなきゃいけない。今回はそれが成功した一つのモデルケースになりそうな気がします。
―ヘッドライナーで大胆な起用をしたことで、それ以外のラインナップに予算を割けたと。
佐潟:そうですね、それもある。

―その後は各ステージ毎に、どういった意識でブッキングを進めていったのでしょうか?
平田:どのステージもヘッドライナーから決まっていくので、そこをベースにした流れはかなり意識していて。GREEN STAGEの2日目で言えば、ジェイムス・ブレイクのような、ヘッドライナーになってもおかしくないアクトが山下達郎さんの下にいて、さらにヴルフペックがその上にいる。ここはすごい流れを作れた手応えがあります。
山本:GREEN STAGEは、ある程度ポピュラリティがあったり、ヴルフペックやフレッド・アゲインのように初来日でも存在感の大きいアーティストが出演するのに対して、WHITE STAGEはちょっと尖った、ベクトルの異なるものを散りばめて、ここだけ独立して観ても楽しめるようなステージになるよう意識しています。たとえば、ヴルフペックの裏にフォー・テットを置いてみたり。
高崎:RED MARQUEEにはTycho、国内勢でも今ちょうど脂の乗ったサンボマスター、さらに少し懐かしさも感じるザ・ハイヴスが各日のヘッドライナーにいて。2日目にジンジャー・ルートやNight Tempoといったアクトを配置したのは、GREEN STAGEに達郎さんがいることへのリスペクトを思いきり意識しています。
深夜のRED MARQUEEに関しては、坂本慎太郎さんは「夜中にやりたい」とのことだったので金曜にお願いして。Confidence Man(オーストラリア発のレイヴ・ポップ・グループ)も土曜の馬鹿騒ぎが似合うと思いこの位置に。日曜は勢喜遊 & Yohji Igarashi、Ovall、Nujabes Metaphorical Ensembleという組み立てで。踊れるアクトを中心にしつつもバランス良く、日別で違う音が作れるブッキングができたと思っています。
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栗沢:たくさんステージがある中で、FIELD OF HEAVENでは他のフェスでやっていないような、たとえばアフリカやカリブ海のアーティストをフックアップしたり、ルーツ的なものも入れたいと思っていて。それにインプロができるような、ミュージシャンシップの高いラインナップというのもポイントの一つですね。エズラ・コレクティヴは本国イギリスだと、ロイヤル・アルバート・ホールでやるくらい圧倒的な人気で。いわゆる熱狂的なファンでなくても、パッと観た人を楽しませられるような実力があると思うんです。だからエズラの流れで、去年の新作がすごく良かったParlor Greens(米オハイオ州のオルガン・トリオ)に、(名門ブルーノートから)デビューして勢いのあるマヤ・デライラと、金曜はうまくハマったのかなと。
土曜は早々にヴルフペックがGREEN STAGEで決まっていたので、その裏の時間帯でトリを任せるなら海外のバンドより日本人の方がいいと思い、EGO-WRAPPIN'しかいないなと。そこにスカフレイムスやアフリカン・ヘッド・チャージを入れて、アフリカとジャマイカを網羅しているので良い流れを作れそうです。The Panturas(インドネシア出身のサーフロック・バンド)はウチのスタッフが観て、すごく良いとのことで入れました。日曜は難産でしたが考え抜いて、トリはギャラクティックに任せようと決めましたね。
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―GREEN STAGEの各日トップバッターも実にフジロックらしい顔ぶれです。
佐潟:フジロックらしいですよね。PIPERS(Red Hot Chilli Pipers:スコットランドの実力派バグパイプ・バンド)は2019年にも金曜のトップバッターをやってもらって、今年は新作も出るし、再びトップにしたら面白いかなと。
―USは昨年、前夜祭からの4日間で6ステージも出演。今年も4ステージ出演が決まっていて、一気にフジロックの象徴的存在になりましたね。
佐潟:USは日高(正博:スマッシュ創業者)が力を入れていて、金曜日のトップバッターの大役を任せてみようということでこの並びになりました。土曜のCA7RIEL & Paco Amorosoは早めに動いていたんです。(今年4月の)コーチェラでも話題になっていたけど、実はその前から。
高崎:ロンドンにいるスマッシュの仲間が勧めてきたんです。
山本:だから話題になる前から話を進めていて。ちょうどこっちの出演が決まったくらいで、彼らが出演したtiny desk concertsが話題になって、というタイミングで。だから(2月の第1弾で)発表したとき、周りのミュージシャンからも「動くの早くないですか?」と驚かれたくらい。
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―個人的にも「カトパコ」は目玉の一つだと思います。あとは海外×日本のアーティストの並べ方にドラマを感じたりもしました。先ほど平田さんもおっしゃっていたように、山下達郎さんを含む2日目の流れはすごいことになるんだろうなと。
佐潟:ポイントは達郎さんを海外アーティストで挟むことです。それがフジロックというか、フェスの醍醐味だと思うので。これで達郎さんにも、もしくはファンの方にも、ジェイムス・ブレイクというアーティストがいることに気づいてもらえるかもしれない。もちろん知っているかもしれませんけどね。
―フジロックとしては、達郎さんに10年近くアプローチし続けてきたそうですね。
佐潟:念願でした。ここ2、3年は半ば諦めていたんですけど「来年はちょっと可能性あるかもしれません」という話になり。待った甲斐があったなと。GREEN STAGEで達郎さんが歌ってくれるって想像するだけでもすごい。
―Suchmosは再始動した流れからの出演。フジロックとの縁が深いバンドですよね。
佐潟:去年もHedigan'sが出てましたし、SuchmosはROOKIE A GO-GOから始まり(2014年)、WHITE STAGE(2016年)、GREEN STAGE(2018年)と出演してもらった歴史がある。だから「再始動するなら出てよ」という話に当然なりますよね。実はこれまで、あまりWHITE STAGEのヘッドライナーには日本のアクトを入れてこなかったんですけど、Suchmos側と話をして、今年はGREEN STAGEの2番手ではなく、WHITE STAGEのヘッドライナーとして金曜を締めてほしいとお願いしました。サンボも同様で、いつもはGREEN STAGEだったけど、今年はRED MARQUEEのトリをお願いしました。
そもそもGREEN STAGE、WHITE STAGE、RED MARQUEE、FIELD OF HEAVENはメイン/サブの括りではないので、それぞれのステージのカラーに合ったヘッドライナーに締めてほしい。そういう意味でも、今年はうまく国内アクトを配置できたと思います。
―ヒップホップ繋がりで、日曜のリトル・シムズ~Creepy Nutsと続く並びも絶妙です。
平田:実はFKAツイッグスとも交渉していたんですが、最終的には新作が直近でリリースされるリトル・シムズに決まって、結果的にすごく綺麗な流れになりましたね。
―フジロックは単に流行っているという理由でヒップホップ・アクトを起用するのではなく、近年だとJPEGMAFIAやデンゼル・カリーもそうでしたが、フェスの色に合致するアーティストを起用していますよね。そこも好感を持てるポイントです。
山本:ヒップホップのフィールドで人気が出てきている人を呼ぶというよりも、サウンドや存在感など、トータルでフジロックとマッチするかどうかが重要なんです。リトル・シムズは、そういう意味でもぴったりハマりましたね。
平田:リトル・シムズは2019年のグラストンベリー・フェスで観たんですけど、個人的には本当に一番良かったアクトです。
―青葉市子さん、おとぼけビ~バ~、She Her Her Hers、MIYAVIさんなど、海外で人気の高い日本人アクトも揃っています。
山本:邦楽でも売れているからというよりアーティストとして、我々がフジロックに出てほしいと思うアクトにお願いしたいんです。そのうえで、海外で活躍している方はそれも踏まえて、どうやって配置していくか考えます。おとぼけの後にEcca Vandalという、南アフリカ生まれオーストラリア育ちのラウドでハイブリットなアーティストを置いてみたら面白いとか。マーシン(ポーランド出身、2000年生まれの若き天才ギタリスト)、青葉さん、パフューム・ジーニアス、Tychoの流れは持っていけるなとか。トータルとして、できるだけバラエティに富んだ形にしたいので。
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―重要なのは規模の大小だけではない、というのはステージ割からも伝わってきます。
山本:羊文学なんて今ならアリーナでできますけど、今年はWHITE STAGEでトリ前です。これはハイムが決まった時点で、ハイムの前に女性アーティストを並べたいという意図があったからなんです。サウンドとしても同じインディーロック色で。もちろん贅沢なブッキングの仕方をしているとは思っていますけどね。
―それがラインナップの並びからストーリーを感じる理由ですね。唯一の心配は、ヴァンパイア・ウィークエンドとハイムが被っていること。というのも、2018年にヴァンパイアが出演した際にダニエル・ハイムとの共演があったので「夢よもう一度」みたいな。
山本:本人たちがもしやりたいなら、急いでGREEN STAGEで一緒にやって、WHITE STAGEに戻ってくるんじゃないですかね。時間的にはやろうと思えば全然できるので。あとは本人たち次第ですね。
平田:フレッド・アゲインとフォー・テットとかもそうですよね。
フレッド・アゲイン、フォー・テット、スクリレックスの共演(2023年)
―共演といえば、北米ツアーを一緒に回り、コラボ曲もあるフェイ・ウェブスターとmei eharaさんは何か一緒にやってくれるのでは……と、勝手に期待しています。
佐潟:その2組はやりそうですよね(笑)。
―ブッキングの時点でも意識していた?
平田:完全にそういう話がありましたね。
山本:やるであろうとこっちも思っているので、日にちは一緒にして、時間帯だけズラしています。同じ日にしておいたら、あとは向こうで調整してくれるんじゃないかと。
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―HYUKOH & Sunset Rollercoaster、Balming Tiger、Silica Gelとアジアのアクトも目を引きます。
山本:ここ数年アジアのアーティストとの交流が深まっていて、向こうもフジロックを認知してくれているので、積極的にブッキングしています。HYUKOHとSunset Rollercoasterは昨年来日した流れで決まり、Balming Tigerは2022年に続いて2度目の出演です。Silica Gelは最初から「フジロックに出るのが夢」と話してくれていて。あれよあれよという間に韓国のなかですごいバンドになり、去年の仁川ペンタポート・ロック・フェスティバルではヘッドライナーのジャック・ホワイトの前に出演していました。韓国でロックバンドというとまだまだ難しい状況のなか、飛ぶ鳥を落とす勢いで支持されてるので、なんとかブッキングしたかったんです。
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―昨年は、FrikoをSNSで話題になった直後に起用して注目を集めましたが、今年はそういった、ネット上の反響を受けて急遽オファーしたアーティストはいますか?
高崎:Jane Remover(米ニュージャージー州の次世代ハイパーポップ・プロデューサー)ですかね。パンって跳ねたのを知って、速攻で動いたアーティストです。(5月の)第5弾発表の1カ月前くらいに「ここに入れよう!」って。
佐潟:話題になってたよね。SNSで。
―よくぞ!と。
高崎:YHWH Nailgun(ヤハウェ・ネイルガン:NYのエクスペリメンタル・バンド)もいきなりパンっと。急に出てきた感じで。
山本:あとはAtsuo the Pineapple Donkeyだよね。
高崎:面白いですよ。ぜひ観てください。不思議な経歴を持った隠し球です。
―Mei Semones、マヤ・デライラ、グレース・バウワーズ、マーシン、吾妻光良さん、MIYAVIさんなど、女性/男性を問わずギタリストが充実している年でもありますよね。「砂漠のジミヘン」ことエムドゥ・モクター、「スティール・ギター界のジミヘン」ことロバート・ランドルフも、フジロックで観たら間違いなく楽しそう。
山本:ナイス・ギタリストばっかり。プレイヤー的な目線でも楽しいと思います。
栗沢:吾妻さんの久々の新作も良いですよね。しかも吾妻さんは69歳で、グレース・バウワーズは18歳とかでしょ。孫くらいの歳の差。
山本:一緒に写真を撮ってほしいですね(笑)。エムドゥ・モクターはデビュー当初から話をしていたんですけど、タイミングが合わず、やっと今回ブッキングできたんです。この日のWHITE STAGEでいうと、Suchmos、OK GOっていう並びで一組ジャンル的にタイプが違うんですけど、ギタリストでMIYAVIさんを並べてみたりもしていて。
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―ダンス/エレクトロニック系では、ジェイムス・ブレイクが出演する土曜に、WHITE STAGEでバリー・キャント・スウィムとフォー・テットが続けて登場するのも見どころですね。
山本:フォー・テットの前にもう一つダンスアクトをどうしても入れたくて。探していたときに平田くんから「バリー・キャント・スウィムはどうですか?」と言われて「いいね!」っていう。
佐潟:バリー・キャント・スウィムは、去年もRED MARQUEEで動いていたんだよね。
高崎:予算が合わず諦めたんですよ。それでもやっぱり良い曲を書いていて、勢いもあるので動きましょうと。
山本:あと、この日は深夜のConfidence Manも絶対面白いと思います。
Joy (Anonymous)とフレッド・アゲインの共演映像
―個人的には3日間フル参加がベストというのはもちろんですが、今年は例年以上に1日券や金曜ナイト券で参加する人が朝まで遊び尽くすのもアリだなと思っていて。それくらい「朝まで寝かせない」感が強いラインナップですよね。金曜の夜にフレッド・アゲインを観る人は、その流れで彼とツアーをまわったこともあるJoy (Anonymous)も堪能するとよさそうだなと。
高崎:聴いてみたらすごくよかったので出てもらうことにしました。そして、金曜の最後はHiroko Yamamuraさんに締めてもらいます。
―YamamuraさんのDJはいつだって最高ですよね。では最後に、開催に向けてメッセージをお願いします。
山本:今年は例年に比べて初めて来場される方が多いようなので、ぜひラインナップ以外にも、食事や場内の景色など、フジロック全体を存分に楽しんでもらえたら嬉しいです。
高崎:フジロックは実際に足を運んでもらって、初めて良さが伝わるフェスだと思うんです。特に今年は洋楽と邦楽がバランスよくまとまっているので、もし邦楽が目当てだったとしても、それをきっかけにフジロックならではの魅力を見つけてもらえたら嬉しいですね。
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FUJI ROCK FESTIVAL '25
2025年7月25日(金)、26日(土)、27日(日)
新潟県・湯沢町 苗場スキー場
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