【画像】sumika、さいたまスーパーアリーナ公演(全11枚)
3月にリリースした最新アルバム『Vermillions』の収録曲を軸に据えた今回のツアー。1曲目を飾ったのは、同作のオープニングナンバー「Vermillion」だった。”鮮やかな朱色"という意味合いの曲名を体現するかのように、朱色にライティングされるステージ。片岡健太(Vo・G)は、その上を端から端へとパワフルに駆け抜けながら、また、台の上に立ったり、上の階の観客を指差したりしながら、一人ひとりの観客と熱く親密なライブコミュニケーションを重ねていく。1曲目にしてさっそく巻き起こる壮大なシンガロング。片岡は、「すごい声! もっと!」とさらなる歌声を求め、そして、「33本目、全部、今日に、ここに、命懸けて歌います。だって今日はそういう運命の日ですから」と宣言した上で、最新アルバムと同じ流れで「運命」へと繋ぐ。ジェットコースターのような目まぐるしい展開の中、観客のコールが次々とばっちり成立していき、何度も一斉ジャンプが巻き起こる。「最高じゃないか。だけど、だけど、まだいけんな!」。続けて披露されたのは、「ふっかつのじゅもん」。次々と〈会心の一撃〉をきめてみせた片岡は、「今回のツアーの中だけでなく、今までのどのライブよりも一番いいライブをやる」と高らかに宣誓。

片岡健太(Vo・G)
引き続き、「リビドー」では、メンバーと観客がお互いに高く掲げた手を向け合いながら猛烈なエネルギーの往来を重ねていき、片岡の「できたのは20年前ぐらいだけど、とっくのとうに半分はあなたでできてる」という言葉を添えて披露された「「伝言歌」」では、会場全体から再び壮大な大合唱が巻き起こる。思わず「半分以上だね!」と告げた片岡の深い充実感に満ちた表情が忘れられない。「(ライブが始まる)30分前よりも、自分のことを好きになれる。それが音楽。これがライブ」「今日のあなたが大好きです!」。観客への溢れ出るような愛が惜しみなく届けられていく熱烈な展開が続き、「Love Later」からの3曲では、ノンストップで爆走してきたこれまでのモードから一転して、じっくり丁寧に歌を響かせてゆく展開へ。その中でも特に際立った存在感を放っていたのが、小川貴之(Key・Cho)がボーカルを担う「シリウス」だった。魂の震えや感情の昂りの全てをありありと伝えるような小川貴之の渾身のボーカル、また、切実な響きを放つドラマチックなバンドサウンドが、深く心に沁みた。

小川貴之(Key・Cho)
ここで一度サポートメンバーが退場し、観客から寄せられた質問にNGなしで答えるMCパートを経て、3人のみで「Summer Vacation」を披露(片岡がベースを担当)。同曲の後、荒井智之(Dr)は、3人揃ってこうして元気にファイナルを迎えられた喜びを語り、「我々は変わらず、こんな感じで、楽しく健康にバンドをやっていけたらいいなと思います」と宣言。会場全体から送られる温かな拍手。

荒井智之(Dr)
続けて、3人で披露されたのは、「雨天決行」。その曲名のとおり、どんな逆境の時も、自分たちの意志で懸命に前進し続けてきたsumikaの姿勢を象徴する大切な一曲だ。深くお辞儀をする3人。次第にスクリーンが、雨上がりの空に架かる虹のような七色の光で満たされ、再び5人のサポートメンバーがステージイン。そして、新たなる始まりの歌「Starting Over」へ。「あなたの声も大事な楽器!」という片岡の言葉を受けて、何度も鳴り渡ってゆく高らかなシンガロング。「今のために、これまでがあった!」「始めようか!」という片岡の言葉に、sumikaが歩んできた軌跡を改めて思い起こした人は多かったと思う。「雨天決行」からの流れで披露された今回の「Starting Over」は、この日のライブにおける特に輝かしいハイライトの一つとなった。
気付けば、ライブは終盤戦へ突入。この日の一番を再び更新するような大合唱が巻き起こった「VINCENT」、同じく、この日一番の怒涛のコールが轟いた「チェスターコパーポット」を経て、「Amber」「カルチャーショッカー」「Babel」「ペルソナ・プロムナード」「グライダースライダー」「いいのに」をメドレー形式で立て続けて披露する豪華絢爛なコーナーへ。アリーナに降り、至近距離で観客とのコミュニケーションを重ねてステージに戻ってきた片岡は、人生で一番しんどかった時、つまり、sumikaが4人から3人になった時のことを振り返り始めた。もう限界かもしれない。

そう語った片岡は、観客に、「あなたは、あなたの好きを守り通してください」と呼びかけた。「今日のライブに行くことを決めたのは、あなた自身」「音楽、好きじゃん」「あなたに好きなものがあるから、ここまで歩いて来れた」「そんな"好き"を持ち合っていたら、また会う気がするよ」。そう語った片岡は、「辛い時に悲しい顔してるよりも、明るい顔をしてる自分のほうが好きだから、俺はあなたと一緒に明るい歌を歌う」と告げ、「Dang Ding Dong」へと繋いだ。「音楽を続ける」という3人の意志の力があるからこそ、この日のツアーファイナルがあり、「明るい歌を歌う」という片岡の意志があるからこそ、また、この日集まった一人ひとりの観客に「ライブを楽しむ」という意志があるからこそ、この日の時間が忘れがたい思い出になる。明るいのも、楽しいのも、決して当たり前のことではなく、それぞれの意志の力があってこそである、ということを強く、深く感じた。

いよいよ、ツアーが終わってしまう。それでも、目を閉じたら、全員が、同じ今日の記憶を思い出すことができる。だからこそ、明日からも頑張ることができる。本編ラストを飾ったのは、〈僕らは帰る〉という言葉が深い安心感を送り届けてくれた「's-エス-」だった。アンコールの「マイリッチサマーブルース」では、片岡と小川がスモークを噴射させながらクライマックスの狂騒をチアフルに煽り、続く「Lovers」では、サポートメンバーの紹介の後、片岡が「そして絶対に忘れてほしくないのは、あなたも含めてsumikaです」と力強く呼びかけた。この日のライブ、および、今回のツアーのラストを締め括ったのは、「10時の方角」。「俺たち、何度でも始まろう!」という力強い意志に貫かれた呼びかけの言葉が深く胸を打つ。片岡の「撤収!」という号令を合図に、スタッフがステージセットを片付けていく。まっさらになったステージ。それでも、この日の記憶や思い出は、いつまでも心から消えることはないし、だからこそ私たちは明日からの新しい日常を強く生きていける。エンドロール後、再びドアのセットから現れた片岡は、「ドアを全開にして、あなたの帰りを待っています」という言葉を残してステージを去っていった。
撮影:後藤壮太郎、山川哲矢
セットリスト
1. Vermillion
2. 運命
3. ふっかつのじゅもん
4. リビドー
5. 1.2.3..4.5.6
6. 「伝言歌」
7. 惰星のマーチ
8. Love Later
9. シリウス
10. 透明
11. Summer Vacation
12. 雨天決行
13. Starting Over
14. VINCENT
15. チェスターコパーポット
16. メドレー(Amber~カルチャーショッカー~Babel~ペルソナ・プロムナード~グライダースライダー~いいのに)
17. Dang Ding Dong
18. 's-エス-
EN1. マイリッチサマーブルース
EN2. Lovers
EN3. 10時の方角
Official HP:https://www.sumika-official.com/