【動画はこちら】オジー生前最後の「Paranoid」「Crazy Train」
ー前にあなたにインタビューしたのはかなり前のことなんですよ。
ビリー・コーガン どのくらい前だって?
ー1992年です。
ビリー・コーガン それは随分前のことだな!(笑) ということは、33年ぶりに話をするわけだ。
ー1992年と言えば、初来日の時ですよ。
ビリー・コーガン 非常によく覚えてるよ。日本に行けるというのでワクワクしてたんだ。
ーCLUB CITTA'(クラブチッタ)でライブをしましたね。
ビリー・コーガン あのライブの音源はヴァイナルでリリースしたんだよ(注:『Live At Kawasaki 2.24.92』)。
ー思い出深いライブだったから、リリースをしたんですか?
ビリー・コーガン バンドの初期の音源ってあまり良くないものが多いんだけど、僕たちが1992年に日本で演奏した時は利点があってね。
ー1992年と言うと、日本で90年代半ばにモッシュ文化が始まる前ですから、まだ時代が追いついてなかったのかもしれません。
ビリー・コーガン そうだろうね。非常に静かだったから(笑)。ちょうどその日本ツアー中にニルヴァーナの東京公演もあったから、観に行ったんだよ。中野サンプラザだったかな。ニルヴァーナは「Smells Like Teen Spirit」で大ブレイクしてた時期だったけど、日本の観客はとても静かだった。「ニルヴァーナに対してもこんなに静かなのだから、これが普通なのかな」と思ったよ。
ーそれでも日本でのファンはスマッシング・パンプキンズの音楽を愛していましたよ。
ビリー・コーガン 僕たちにとって、日本のファンとの関わりは魔法のような10年間だった。何度もツアーを行い、多くの成功と素晴らしい思い出を作ることができた。日本のツアーが決まると、バンドのメンバーはいつも大騒ぎだった。大好きな場所だし、いつも幸せを感じてたし、楽しい思い出しかなかったから。
ー今回、再びツアーで来日しますね。
ビリー・コーガン 12年ぶりになるね。
ーあなたとジェームズ・イハ、ジミー・チェンバリンの3人が日本で揃うのは、2000年以来の25年ぶりになります。日本では25年ぶりに3人のライブが観れるということで非常に盛り上がっていますよ。
ビリー・コーガン 25年前は3人で日本武道館でライブをやったんだよね。
ーSacred and Profane Tourで、日本武道館を含めて8カ所でツアーを回りましたよね。
ビリー・コーガン あの時はバンドは困難な状況にあったんだ。
ー2000年の来日ツアー自体はどうでしたか?
ビリー・コーガン 僕の記憶では良いツアーだったと思う。チープ・トリックの「I Want You to Want Me」を演奏したのを覚えてるよ。シカゴで育った僕にとって、チープ・トリックは特別なバンドだから。
ーチープ・トリックはシカゴ出身ですからね。彼らのライブ・アルバム『チープ・トリックat武道館』は大きな意味があったんですね。
ビリー・コーガン もちろんだよ! 1978年に出たあのアルバムは僕の少年時代の重要な一部だった。あのアルバムの「I Want You to Want Me」は大ヒット曲だった。ラジオでも1時間おきに、同じ時間にかかってたんだ。
ー僕も同世代ですから、聴きまくりましたよ。あの曲の後に「This next one is the first song on our new album」(次の曲は僕たちのニュー・アルバムの1曲目です)ってMCで言うんですよね。
ビリー・コーガン そうそう。「I want you……to want……me!」(と、MCの真似をする)(笑)
ーそこで女の子たちが絶叫するんですよね(笑)。
ビリー・コーガン そうそう!
ーそして今年、25年後に再び日本武道館でやるわけですが、どのような気持ちですか?
ビリー・コーガン さっきも話したように、僕たちは様々な困難を経験してきた。今回は再び日本武道館で演奏できるだけじゃなく、25年経っても日本武道館をソールドアウトにすることができた。本当に美しい気持ちしかないね。人々が長年に渡ってこのバンドに関心を持ち続けてくれてるんだ。実は何年もの間、日本のプロモーターからは出演オファーが来なかったんだよ。僕たちが行きたくないわけはないから、毎年「日本に行けないか?」と問い合わせてたんだけど、需要がないと言われ続けてたし、クラブで、2公演のオファーが来る程度だった。
ー(笑)。
ビリー・コーガン でも今、太陽が一周したみたいに状況が好転した感じだ。バンドは良い勢いとエネルギーでカムバックできたし、音楽的にも間違いなく充実した時期を過ごしてる。ジェームズが復帰してから7年以上経つけど、安定と幸福、多くの新しい思い出が生まれてるんだ。
ー今回、すでに2会場でソールドアウトになっていますし、追加公演も発表されましたね。めちゃくちゃ日本で人気じゃないですか。
ビリー・コーガン よくわからないよ。長年、需要がないと言われ続けてたから、もう忘れられたのかと思ったし、興味がないのかなとも思ってた。僕の経験から言うと、バンドが良い演奏をすると良いことが起きるけど、活動を休止すると人々が勝手なイメージを作り上げる(笑)。僕に関するストーリーは勝手に作り上げられたからね。今回のツアーの良いところは、僕たちがバンドの強さをちゃんと見せられたら、将来のツアーなどいろいろな道も開けるだろうということだ。
音楽という贈り物は、理屈ではなく直感で授かるもの
ー今回、どのようなセットリストになるのか非常に興味深いのですが、セットリストはいつもどのように考えています?
ビリー・コーガン ジェームズが復帰した時、良い機会が訪れたと思ったんだ。2007~2018年の間、多くのファンは僕に腹を立ててた。僕が演奏するセットリストが気に入らなくてね。ファンはもっとグレイテスト・ヒッツ的なセットリストで演奏してほしかったんだ。でも僕は、「いや、自分のやりたい音楽を演奏したい」ってなって(笑)。それでジェームズの復帰後、観客が期待するものと、オリジナルメンバーの3/4が再び集まったバンドの創造性、この2つのバランスを模索することにした。コロナ禍も経てるんだけど、この7年間はグレイテスト・ヒッツ中心のセットリストになってる。ただ、最近は若い観客がたくさんライブに来るようになって、彼らがグレイテスト・ヒッツ以上に、それこそクラブチッタでやった当時のような、ギターミュージックと楽曲の限界を押し広げるような、激しいスタイルを求めてる傾向に気づいたんだ。だから今はよりアグレッシブなギターのアプローチとの良いバランスを見つけて、最新アルバム『Aghori Mhori Mei』の曲をグレイテスト・ヒッツ的なセットリストにミックスして、新たなバランスで演奏してるよ。
ー今になってすべてが一周したのではないですか? これまで30年以上にわたってリリースしてきたアルバムや楽曲にしても、ファンやメディアの評価が良くなかったものもありますが、良くないアルバムは一枚も出してないんですよね。しかも後になって再評価されることが多いです。基本、アグレッシブなギターサウンドの方が人気だとは思いますが、ギターの少ない音楽性も野心的で素晴らしかったと思います。
ビリー・コーガン 僕は常に自分の音楽的なビジョンに忠実であれば、最終的には勝つものだと信じてきた。それは時代のトレンド以上に大切なものなんだ。多くの人は僕たちを特定のギターサウンドで認識するんだけど、バンドの人気曲の多くにはアグレッシブなギターサウンドが入ってなかったりする。「1979」にアグレッシブなギターはないし、「Disarm」はストリングスだらけだし、「Tonight, Tonight」はポップソングだ。
ジャーナリストによる「グランジ・バンド」というレッテルにしても、嘘ではないけど、怠慢な見方だと思うんだ。僕たちはグランジをやるギター・バンド以上の存在だと思うし、ザ・フーやレッド・ツェッペリン、ビートルズ、ザ・キュアーのように、ギターサウンドをコアに持ちながらも、多様な音楽を探求してきたんだ。この姿勢こそが、30年経った今も支持されてる理由だと信じてるよ。「90年代のバンドで、ギターミュージックで、こういう曲をやる」っていうのとは違うんだ。そういう見方は怠慢だけでなく、危険だよ。このバンドは、90年代は批評家受けするタイプのバンドではなかった。何故成功したのかというと、当時としては非常に斬新なスタイルの音楽を作ってたからだ。僕とジミーで再結成して、2007年に『Zeitgeist』を出した時はあちこちで酷評されたけど、今では愛されるアルバムになってる(笑)。2012年には僕だけがオリジナルメンバーで、アルバム『Oceania』を出したけど、これも今では愛されるアルバムになった。2005年にはほぼエレクトロニック・ミュージックでギターは少しだけのソロアルバム『TheFutureEmbrace』を発表してるけど、これも今では愛されるアルバムになってる。ストリーミングの時代になったから、批評家の評価よりも、僕が辿ってきた音楽の軌跡の方が正しかったというのが明らかになったんだ。
ーそれこそ、1998年に4thアルバム『Adore』を出した時も、ファンが期待するものと違う音楽を発表しましたよね。
ビリー・コーガン あれは少しクレイジーな選択だったかもしれないし、今でもそれは感じてる。例えば、ザ・フーを例に取ってみると、ファンは、「これは好きじゃないな」、「何でこんなことするんだろう」、「何で「The Kids Are Alright」のパート2を作らないんだろう」とか言うよね。でも歳を重ねて聴き直すと、そこでやっと理解できたりするんだ。人も変われば、人生も変わるし、別れもあるし、それでも人生は続いていく。音楽アーティストは、自分が人生で乗り越えたことを音楽に反映させるものだ。ザ・フーが1982年に出した「Eminence Front」にしても、当時は全然好きじゃなくて、僕にはポップ・ソングにしか聴こえなかった。でも今では名曲と言われてるよね。アーティストは自分たちのミューズ(芸術的霊感)に従うしかないんだよ。観客は来たり去ったりするものだし、それが世の常というものだ。フランク・シナトラ、エルヴィス・プレスリー、ビートルズ、U2……オールタイム・ベストと言われるアーティストは、そこを通過してきたんだ。だからそこにチャレンジするのは珍しいことじゃない。
音楽という贈り物は、理屈ではなく直感で授かるものだから。この前、日本の有名なアニメーター(宮崎駿)が、最後の作品『君たちはどう生きるか』を公開したよね。1年前に子供たちと観に行ったんだけど、僕には全く理解できなかった。アーティスティックだし、複雑なんだ。でも、彼は間違いなく天才で、僕は馬鹿な観客でしかない(笑)。映画を観終わった後、9歳の息子が「映画、良かった?」って聞くから、「理解できなかったよ」って答えたら、「僕は理解できたよ。青い鳥と少年の話なんだ」と説明してくれたんだ(笑)。アーティストというのは常に未来を見てる。優れたアートは、観客が好きにならなくてもしょうがない。理解されるまでに時間がかかるものだから。
ー過去2作のアルバムにしても、2022年の『Atum: A Rock Opera in Three Acts』では三部作のロックオペラという世界観でしたし、2024年の『Aghori Mhori Mei』では再びよりアグレッシブなギターサウンドを復活させています。今もなお音楽的な挑戦は続いていますね。
ビリー・コーガン ありがとう。僕はアルバムの制作を始めると非常に時間がかかるんだ。ただ、今の僕は9歳、6歳、ベイビーの3人の子供の父親だ。だから、スタジオで何時間も作業するのは本当に大変なんだ。正直、「こんな苦労する価値ってあるのか?」と思うこともあるよ。それでいつも自問自答してるのが、「新しい何かを生み出すのであれば、努力する価値はある」ということなんだ。「過去の繰り返しであれば、何故人生を無駄にするんだ?」、「以前作ったものをもう一度作る必要があるのか? 新しいものを作るべきだ」、「たとえ失敗しても、新しい挑戦であることが重要なんだ」。そう考えることで、僕はいつも頭の中をクリアにしてるよ。実際、それが良いのか悪いのかは、誰にもわからない。僕は自分が作ったアルバムが人々から酷評され、20年後には名作と呼ばれる、そういう経験をしてるんだ(笑)。だから、何が真実なんだ?と思うよ。20年前が正しいのか、20年後が正しいのか。
ーでも長い目で見ると、あなたは間違ったことはやってこなかったですね。
ビリー・コーガン そう言ってもらえてうれしいよ。自分では良いアルバムの作り方をわかってるつもりだし、多くの人も同意してくれてる。同時に、多くの人が理解できないのは当然だということもわかってる。これは英語の表現で言うと、「人生で与えられたカード」のようなものだ。僕は生まれも育ちも普通じゃなかった。変わった家庭環境で育ったし、父も母も型破りな考え方の持ち主だった。だから、他とは違うことが僕にとっての自然な状態なのに、世間からはいつも「それは悪いことだ」と言われてきた。どう考えたらいいのかはわからないけど、音楽だけは僕にできる確かなことなんだ。
ーところで、7月5日にイギリスのバーミンガムで開催されたオジー・オズボーンの最後のコンサート「Back to the Beginning」はどうでした? あなたはスーパーグループの一員として、「Breaking the Law」と「Snowblind」を歌いましたよね(※この取材は7月17日に行われた)。
ビリー・コーガン 素晴らしかったよ。あの日は信じられないほどの結束力を感じたし、それは観客も感じてくれたと思う。2日間リハーサルをやって、3日目が本番だった。全員がオジーとブラック・サバスのために最高のショーを作ろうとしてたね。リハーサルの時点で特別なものになることはわかってたよ。特別なものになるというのは、観客に受けるという意味ではない。それでも、あの日はロックの歴史の中で最高の日になったし、チャリティとしても最高の日になった。1億9千万ドル以上を集めたし、ヤングブラッドが歌った「Changes」のライブ音源もシングルでリリースされたから、さらに金額は増えると思う。とにかく素晴らしい一日だったよ! 素晴らしいアーティストたちばかりが集まったし。周りを見渡しながら、「こんな祝福の場に自分も参加できてるなんて信じられない。本当に光栄なことだ」って思ってたよ。
ーあれはまさにロックというカルチャーそのものの祝祭でしたね。
ビリー・コーガン 「ロックは死んだ」と言う人がいるけど、どこを見てそう言ってるんだろう? 27歳のヤングブラッドからスティーヴン・タイラーまでいるんだ。いろんな世代を超えてるし、僕の世代からはトム・モレロ、トゥールのダニー・ケアリーとアダム・ジョーンズもいて、どの世代も自分たち世代を代表して一堂に会したんだ。あれこそロックミュージックの圧倒的な力だよ。一丸となった時の破壊力は止められないね。ポップミュージックの存在がかすんでしまうほどだった。おそらくロックミュージックは20年間の昼寝から目が覚めたんじゃないかな。僕たちは自分たちの力を認識し、ポップ・シーンなんて完全に無視すべきなんだ。だけどポップ・シーンはモンスターに変貌してるから、もはや制御不能だし、SNS、論争、ファッションで溢れてるよね。でもロックの本質というのは、時代が変わろうとも、心の奥底から湧き上がる偽りのない表現なんだ。あの日のステージにいたほとんどの人はファッションモデルではない。ディズニー的なシステムから生まれたポップスターでもない。僕たちは地下室や路地裏で育ったし、ロックとブルースを愛してきた。あの日のステージには、ロックミュージックの真の力と魔法があったと思う。僕はこの勢いが確実に次世代へと受け継がれ、ロックアーティストの新しい波にインスピレーションを与えていってほしいと願ってる。

Photo by Joseph Cultice
<INFORMATION>
THE SMASHING PUMPKINS
Rock Invasion 2025 Tour
■追加公演
9⽉18⽇(⽊)神奈川・KT Zepp Yokohama
OPEN 18:00 / START 19:00
TICKETS|1F スタンディング 17,000 円 2F 指定席 20,000 円
※別途 1 ドリンクオーダー、未就学児⼊場不可
クリエイティブマン 03-3499-6669
9⽉20⽇(⼟)大阪・なんば Hatch
OPEN 17:00 / START 18:00
TICKETS|1F スタンディング 17,000 円 2F 指定席 20,000 円
※別途 1 ドリンクオーダー、未就学児⼊場不可
キョードーインフォメーション 0570-200-888
■日程
9⽉15⽇(⽉・祝)・名古屋・COMTEC PORTBASE
OPEN 18:00 / START 19:00
TICKETS|1F スタンディング 17,000 円 2F 指定席 20,000 円
※別途 1 ドリンクオーダー、※未就学児⼊場不可
キョードー東海 052-972-7466
9⽉17⽇(⽔)東京・⽇本武道館 SOLD OUT!
OPEN 18:00 / START 19:00
TICKETS|S 席 17,000 円 A 席(税込/全席指定)15,000 円 ※未就学児⼊場不可
クリエイティブマン 03-3499-6669
9⽉21⽇(⽇)大阪・Zepp Namba SOLD OUT!
OPEN 17:00 / START 18:00
TICKETS|1F スタンディング 17,000 円 2F 指定席 20,000 円 ※別途 1 ドリンクオーダー、未就学児⼊場不可
キョードーインフォメーション 0570-200-888
9⽉24⽇(⽔)福岡・Zepp Fukuoka
OPEN 18:00 / START 19:00
TICKETS|1F スタンディング 17,000 円 2F 指定席 20,000 円 ※別途 1 ドリンクオーダー、未就学児⼊場不可
キョードー⻄⽇本 0570-09-2424
9⽉25⽇(⽊)広島・広島⽂化学園 HBG ホール
OPEN 18:00 / START 19:00
TICKETS|S 席 17,000 円 A 席 15,000 円(税込/全席指定) ※未就学児⼊場不可
YUMEBANCHI(広島) 082-249-3571
企画・制作・招聘:クリエイティブマン 協⼒:The Orchard
https://www.creativeman.co.jp/artist/2025/09tsp/