「歌って踊る曲」のイメージに収まらない音楽
ーEttoneの「多様性の肯定」というコンセプトに、自分自身のどんな部分が呼応していると思いますか。また、自分に求められている役割ってどういうところだと思いますか?
mirano 役割としては、やっぱり音楽的な部分ですね。私は一番長くダンスを練習してきたので、今回の『U+U』の制作にも携わらせていただきました。グループの中ではダンス研究や新しいジャンルを取り入れることに重きを置きながら、”Ettone”という新しいジャンルを確立できたらと思っています。日々模索を続けています。
chiharu 私は「歩くシティポップ」というキャッチコピーをいただいています。最初のレコーディングの時にALYSAさんから「シティポップを女の子にしたらchiharuみたいだね」と言っていただけてすごくうれしかったですし、その言葉で自信がつきました。Ettoneの曲の中で、私の声がスパイスのような存在になれたらと考えています。
koyuki 私はムードメーカーです。練習でみんなが疲れていたり、ちょっと雰囲気が落ちている時に、グループを盛り上げて、みんなの気持ちを高めることを担当しています。
pia 私はオーストラリアで生まれ育ちました。日本の曲だけではなく、海外の音楽にも親しんできたので、幅広い情報量を持っていることがEttoneの楽曲作りに役立っていると思います。そして英語が得意なので、英語の歌詞が多いときには必ず発声練習を一緒に行い、メンバーに教えています。
anri 私は趣味が読書なので、インプットの量が多く、考えることも多いです。そのおかげかみんなに言葉を届ける機会が多いように思います。Ettoneの精神性や哲学を紡ぐ役割を担っていると感じています。実際にデビューが決まる時、みんなに向けて愛のこもった手紙を書いたんです。それをALYSAさんに写真で送ったら、それを受けてEttoneのコンセプトをアップデートしてくださったこともあって。自分の考えが形になるのはすごくうれしいです。役割としては「言葉を紡ぐこと、考えること」なのかなと思います。
shion 私は絵を描くのが好きで、EttoneのYouTubeドキュメンタリー作品のサムネイルも描かせていただきました。グループの中では、中立なタイプだと思うので、全員の意見を受け入れることができるのかなと思っています。
yuzuki 自分の感情や人生を歌に込めて、どう伝えたら届くのかを日々考えています。「こう歌ってみたら、もっと心に触れるかも?」と模索しながら役割を果たしています。
ー心に触れる音楽っていうのが、ALYSAさんの言う”LOOSE POPS”なのかもしれないですね。
anri そうですね。これまでたくさんのアーティストさんを見てきた中で、音楽やパフォーマンスに完璧を求めることが素敵であり、特徴だと思っていました。でも、LOOSE POPSの価値観は少し違うかもしれません。弱さや痛みを受け入れることが一番の軸になっているのかなと思います。私たちも様々な人生を経てEttoneという場所に集っているので、痛みや挫折などの経験をしてここに集まっているという意味でも、そこに一番共感できます。だからこそ、今つらいなと思う人にも寄り添えるような表現を心がけています。
ー1stシングル『U+U』を聴かせていただきました。皆さんのパーソナリティもそうですが、何よりも音楽が前面に出ているグループだなと実感しました。
mirano SIRUPさんは、私たち一人ひとりがどんな人生を歩んできたかを丁寧に聞いてくださったんです。曲をどうしたいかという表面的な話ではなく、「もし一度だけ過去に戻れるなら、いつに戻りたい?」といったパーソナルなことまで掘り下げてくれて。その温かさが歌詞や曲調に現れていると感じています。
anri デモを最初に聴いたとき、みんなで「どういうイメージ?」とディスカッションをしました。最終的に出たのは、「すごく人生を感じる」という意見でした。静かな冒頭の始まりから、ギターソロに至るまで山あり谷ありの波を感じる、壮大な曲だねと。そのイメージをSIRUPさんにお伝えしたら、「じゃあ人生をテーマに、さらに時計をモチーフにしてみよう」となりました。そこからみんなの人生について語り合い、それぞれの歩んできた道のりから出た言葉が歌詞にそのまま入った部分も多いんです。とても親身に寄り添っていただいたと実感しました。
mirano 苦戦した部分もありました。これまで見てきた歌って踊るアーティストのジャンルには当てはまらないと感じて。私が尊敬するダンサーの方と一緒にサビ部分の振りを作らせていただいたんですが、音楽をずっと流しながらナチュラルに出た動きをそのまま振り付けに取り入れました。
ーなるほど。ダンサーの表現の視点で音楽に合わせていったんですね
mirano いい意味で「歌って踊る曲」という枠に収まらない、斬新な表現を目指しました。
ー「サイレント・ディスコ」についても教えてください。さっきchiharuさんが「歩くシティポップ」と話してくれましたが、まさにそういう雰囲気がありますよね。90年代っぽくもあるし、ノスタルジックな感じがします。
chiharu デビュー前、クリエイティブを学ぶ期間の中で、自分たちで曲を選んで制作することがあったんです。その時にALYSAさんやみんなが選んだ曲は本当に多種多様で、その中に90年代っぽいものも多く含まれていました。私たちにとっては新しいけど、聴く人によっては懐かしく感じられる曲。そんなふうに、長く愛される音楽になればいいなと思って、日々いろんな曲を聴いています。「サイレントディスコ」はシティポップをベースにしていて、冒頭のコレオに私が歩きながら歌うシーンがあり、それがとてもシティポップを体現していると感じました。
anri 歌詞を入れる時、日本語のリズムに合わせるために言葉数を調整しました。シティポップらしく切れすぎないようオンビートで入れる工夫をしたり、Z世代らしい言葉(〈ノイキャン〉など)も盛り込みました。懐かしくも新しい曲になったと思います。
ジャパンコアを体現するグループとして
ー「Roses」の制作についてはどうでしょう? 今回の3曲の中でサウンド的には一番今っぽいですよね。
pia 英語のデモを最初に聴いた時、とても心地よく感じて、私にとっては昔から馴染みのあるサウンドでした。その後、日本語の部分をanriとchiharuとyuzukiが担当して、日本語詞を考えてくれました。
anri 英語でしか出せないグルーヴ感を壊さずに日本語に置き換え、3人で悩みながら、感性や伝えたい愛をどう落とし込むかを考え続けた一曲ですね。
ー作曲のShintaro Yasudaさんとのコラボレーションはいかがでしたか?
pia 「Roses」の英語詞を入れるセッション現場に7人全員で立ち会わせていただいたんですが、本当に圧巻でした。
mirano 最後には質問させてもらえる機会までいただけました。
anri 私が質問したのは、「なぜShintaro Yasudaさんはここまで世界的なアーティストと肩を並べられるようになったのか?」ということでした。返ってきた答えは「また一緒に仕事をしたいと思える人間でいること」で、曲を書ける人は世界にたくさんいるけど、結局選ばれるのは人間性なんだと。
yuzuki レコーディングの現場では、笑い声やクラップなども実際に録音しました。私たちの生の声がそのまま活かされていて、そういう部分にも刺激を受けました。
ー歌詞に関してはどんな内容になっていますか?
anri もともと恋人に向けたような歌詞だったんですが、ALYSAさんから「友情やメンバーへの愛をストレートに込めてほしい」というリクエストをいただきました。比喩的表現を使わず、素直な言葉で伝えることが大事だと言われて。そこで、私がみんなに書いた手紙からも言葉を引用し、一人ひとりの顔を思い浮かべながら言葉を紡ぎました。バラの本数や色合いの意味を調べたりもしながら、愛情をまっすぐ伝える歌詞にしました。
chiharu 全体は明るい曲調ですが、〈泣き出した空〉や〈黙々とした雲〉といった一度落ちるイメージの言葉も入れました。それがあるからこそ、他のポジティブな言葉がより輝く。人生の中で悲しみがあるから今を大切にできる、というストーリー性を持たせたかったんです。
pia 私は日本語が完璧ではなかったので苦戦しました。発音や表現をメンバーに教わりながら、日本人の感性に寄り添えるよう工夫しました。英語の歌詞も担当していますが、日本語の歌詞を学ぶことは大変であると同時に楽しい挑戦です。日本の文化を理解しながら、自分なりの表現を見つけていくことが、今の私にとって大きな学びになっています。
ー3曲とも日本語の歌詞の存在感が際立っていますよね。piaさんから見ると、日本語の歌詞の面白さや難しさって余計に感じるのでは?
pia そうですね。歌詞だけじゃなくて歌い方も大きく変わりました。レッスンを受けて元の歌い方から調整して、日本語の発音や表現を磨いてきました。日本語はまだ完璧ではないですし、今も難しい部分はあります。日本に来てから1年ほどなんですが、日常生活を送り、日本のことを学びながら、メンバーと一緒に歌詞を書いてきました。日本語特有のニュアンスや文化的な背景を理解するのはまだ難しい部分もありますし、自分の表現が日本人の性格や考え方と合わないと感じることもあります。でも、それもEttoneの個性の一つになると思っています。
ーEttoneが表現するシティポップみたいな音楽も、piaさんみたいな視点が入ることでより客観視できる上に、さらにオリジナリティを高められそうですよね。
anri 私たちはジャパンコアを体現するグループとして活動していますが、やっぱりpiaの視点があることで、私たちが見ている世界をいい意味で第三者的に俯瞰できている部分が大きいと思います。
ーEttoneの活動を通して、お互いの「人間性」をどう高め合っていますか?
pia ステージに立つ前に、私は必ず「シンプルイズベスト」と声をかけています。考えすぎず、その時に感じている感情をそのまま表現してほしいというリマインドです。
yuzuki 私は考えすぎてしまうことがあるのですが、仲間から「大丈夫だよ」と声をかけてもらえると落ち着けます。そういう支え合いがありがたいです。
anri みんなで必ずディスカッションするのも大事な習慣です。誰も欠かさず参加し、考えることから逃げない。以前「幸せって何だろう?」と話した時、「自分の幸せを自分で分かっていることじゃないか」という結論に至りました。その時に紹介した本を実際に買って読んでくれるメンバーもいて、共有することで学び合えています。
mirano 私は、人間って誰もが完璧ではないと思っています。自分に足りない部分を補ってくれるのが6人の仲間。短所を長所に変えてくれる視点を与えてくれる。共同生活の中で助け合い、置いていかない関係を築けているのがとても大きいと思います。
koyuki みんなアーティストというより、まずは一人の人間として人間味があって、悲しいこともうれしいことも素直に出せる。それを受け入れ合えることで、自然体でいられるし、人間性を高め合えていると感じます。
ーこれからの目標を教えてください。
anri 自分たちの中で掲げている大きなスローガンがあります。それは「人生の応援団になる」ということです。みんなで自発的に決めたことなんですが、これからアーティストとして活動していくなかで、どんなことを音楽に乗せて伝えていきたいかをみんなで話し合いました。その結果、「悲しみに寄り添いたい」「楽しさを一緒に共有したい」といったテーマが出てきたんです。それって結局、人生に寄り添うことなんじゃないか、という話になって。”人生の応援団”という言葉にたどり着きました。楽しみや喜びだけでなく、悲しみや苦しみも一緒に歩んでいけるような曲や表現をしていきたい。そう考えて、スローガンを掲げたんです。今、宿舎にはそのスローガンと、自分が個人的に伝えたい想いをみんなで書いた横断幕が貼ってあります。いつも見直しながら、その気持ちを体現できるグループでありたいと思っています。

Ettone 1stシングル
『U+U』
O21
発売中
1. U+U
2. サイレント・ディスコ
3. Roses
Package
https://lnk.to/Ettone_PKG
Streaming & Download
https://lnk.to/Ettone_UU_digital