ロンドンの次世代アーティスト、ローラ・ヤング(Lola Young)が通算4作目となる最新アルバム『Im Only F**king Myself』をリリース。Z世代から絶大な支持を集める彼女の現在地とは?

ローラ・ヤングに社交辞令はない。
アルバム冒頭の「F**K EVERYONE」で彼女はこう吐き出す。〈好きでもない男とヤりたい、彼らは気にしない/サヨナラを言うだけ〉。しゃがれ声のサウス・ロンドン出身者が放つこのフレーズは、虚勢と不安が絶えずせめぎ合い、鋭い観察と毒気をまとった機知に変わっていく。そういったラインがアルバム『Im Only F**king Myself』には無数に刻まれている。歪んだギターリフやとろみのあるコーラスといった90年代オルタナ直系の音像が、混沌をやわらげるクッションとなりつつも、その痛烈さを削ぐことはない。

この混沌はむしろ必然だろう。最新作は「Messy」のヒットを経て生まれたものだ。2024年の前作『This Wasnt Meant For You Anyway』に収録された同曲は、〈私は散らかりすぎて、そして潔癖すぎる〉というコーラスが人生の気まずさを映す動画のBGMとして拡散し、ネットで大ブレイクを果たした。突然の注目を浴びるなか、彼女はコカイン依存から抜け出すためリハビリ施設に入所したが、『Im Only F**king Myself』を聴けば、彼女がこれからも赤裸々な自分を隠すつもりはないことがわかる。

今作にはタイトルに絵文字が付いた曲もあり、メッセージアプリから飛び出したような歌詞と”酸っぱいバブルガム”風味のオルタナ・ポップが、剥き出しの瞬間をさらに強調する。「Not Like That Anymore」では〈人生なんてクソみたいなもん、とくに全部クスリで吹き飛ばしたらね〉と歌い、かつての悪癖から自由になったことを高らかに宣言する。過去の曖昧な関係を吹っ切ったあと、〈私は自分をめちゃくちゃにしてた、でももうそういう意味じゃない〉とウィンクしながらシャウトするのだ。
「Walk All Over You」では、〈あなたはエゴのために私を愛した、私はあなた自身を愛したのに〉と吐き捨て、彼女を「靴の裏の汚れ」のように扱った相手に毒を浴びせる。その声は多重録音で重ねられ、毒のこもった言葉に艶やかなリボンを巻き付けてみせる。

もちろん感情の深部に触れる瞬間もある。バラード「SPIDERS」では、破滅的な関係に引き裂かれながらも抗い続ける。〈車に乗って/騒ぎは起こさないで/せめて一度でいいから、私を”不完全じゃない”と感じさせて〉と絶叫する声は、BRITスクールで磨かれた力強さで、ざらついたロックの伴奏に不思議なほど映える。終盤の「who f**king cares?」はアルバムで最も切迫感に満ちた曲だ。ギター弾き語りをボイスメモで録音したこの曲は、虚無に呑み込まれる直前の堂々巡りする思考をそのまま封じ込めている。

率直さとユーモアを併せ持つ彼女のパーソナリティが、アルバムを最後まで牽引していく。ラストでは友人のフリースタイルに大喜びしたあと、「とにかく、これでアルバムは終わり。じゃあね!」と陽気に締めくくる。それはまるで、パブで長い午後を一緒に過ごす友人のようだ。細部まで語られる彼女のストーリーは尽きることがなく、素のままで周囲を惹きつける。
さらに、音楽性のジュークボックスを自在に操るセンスまで備えているのだ。

From Rolling Stone US.

ローラ・ヤング『I’m Only F**king Myself』解説 ロンドンの次世代が解き放つカオス
Lola Young: I'm Only F**king Myself Vinyl & CD. Norman Records UK

ローラ・ヤング
『Im Only F**king Myself』
再生・購入:https://umj.lnk.to/LY_IOFM
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