【写真ギャラリー】ダミアーノ・デイヴィッド東京公演ライブ写真(全13点)
Photo by Masashi Yukimoto
マネスキンが3rdアルバム『RUSH!』を携えた初のジャパン・ツアーで、見事に4夜のソールドアウト公演を敢行したのは2023年12月だったが、まさか2年後にこんな展開を見せることになるとは、誰も想定していなかったに違いない。「こんな展開」とはもちろん、ここにきてフロントマンのダミアーノ・デイヴィッドがソロ・アーティストとして日本でステージに立ち、全く異なるバンドを従えて、時にはディスコのグルーヴに乗って体を揺らしたりもしながら、全く異なる曲を歌っているという展開のことだ。
思えばダミアーノが突如ソロ名義の1stシングル「Silverlines」を発表したのは、昨年9月だった。同時にバンドは実質的に活動休止状態となり、彼は今年5月17日にアルバム『FUNNY little FEARS』をリリースすると、6月初めに韓国のソウル・ジャズ・フェスティバルで初のフルセットのライブを行なった。その後数回の夏フェス出演を経て、9月11日にワルシャワで『FUNNY little FEARS World Tour』をスタート。ヨーロッパ、オーストラリア、日本、南米、北米を周る計34公演をラインナップし、12月16日にワシントンD.C.でフィナーレを迎える予定だ。地元ローマでは1万人以上を収容するパラロットマティカで2日間公演し、後半に控える南米諸国の公演は軒並み売り切れるなど、さすがの人気を見せつけている。
そんなツアーのちょうど折り返し地点となる東京・大阪での日本公演のうち、初日10月27日の東京公演は、約8,000人収容の東京ガーデンシアターで開催。19時の開演時間を迎えると、MVやセッション映像にフィーチャーされていた面々とほぼ同じラインナップだと思われる5人編成のバンドと、ふたりのバッキング・シンガーが姿を見せ、”DAMIANO DAVID”という大きなロゴがブルーの光を放つ中、我らがダミアーノが大声援を浴びながら現れる。毎公演スタイリッシュに装っている彼、今宵の衣装は、ラメのピンストライプが煌めくブラックのベスト&パンツのセットアップだ。
ご存知の通りダミアーノはツアー開始に合わせて、ナイル・ロジャース及びタイラとのコラボ曲「Talk To Me」ほか5曲を追加したアルバムのデラックス盤『FUNNY little FEARS (DREAMS)』を送り出したのだが、「Born With a Broken Heart」に始まる計20曲のセットは、「Silverlines」を除くその全収録曲と、2曲のカバーで構成。「僕という人間を知っていればカバー好きだってことを説明する必要はないよね」とは彼の言葉だ。
これらふたつのカバー曲を含む序盤で、「またトーキョーに戻って来れてめちゃくちゃうれしい! 日本に来ると元気が出て気分が浮き立つんだ」と語りかけて再会を祝し、日本で入れた腰のタトゥーを「ほらほら!」と見せてくれる彼。5曲目の「Cinnamon」でも「トーキョー、ガンバレ、ガンバレ、ガンバレ!」と日本語でオーディエンスを盛り上げ、ベストを脱ぎ捨てるとさらに歓声のボリュームが上がる。ちなみに「Cinnamon」はソロ作品の中では最もマネスキンのスタイルに近い曲だけに、上半身裸のダミアーノを観ていると、一瞬マネスキンの彼に戻ったかのような錯覚に陥ってしまう。
#ダミアーノ・デイヴィッド の圧倒的なエネルギーに日本のオーディエンスが熱狂
日本初のソロ単独ライヴより「Cinnamon」をお裾分け!
東京公演のセットリストが公開中: https://t.co/bRKnGJLrFB#DamianoDavid pic.twitter.com/VXbZQkRMa3— ソニーミュージック洋楽 (@INTSonyMusicJP) October 28, 2025「Cinnamon」
三部構成で描く「人生の旅路」
そんなことを考えていたら、本人の解説を聞いて合点が行った。総じてアップビートな最初の7曲を終え、数分のブレイクを挿んでステージに戻ってきた彼は、今回のショウがそれぞれ自分の人生の異なる時期を描いた3つのセクションで構成されていることと、第1章はキャリアの最初の10年を表していることを説明する。その10年は大きな成功をもたらし、「人生が与え得る最高の体験」に恵まれたのだが、ここにきて自分の中で何かが壊れていることに気付き、少し立ち止まることにしたのだとか。第1部が”壊れたハート”の曲(殊にダークな心境にあった時期に生まれたという「Born With a Broken Heart」)で始まり、”壊れたハート”の曲(「Nothing Breaks Like A Heart」)で締め括られたことも、偶然ではないのだろう。じゃあ、壊れてしまったのはそもそもなぜなのか。悩んだ末に辿り着いたのは「自分は誰か別の人の夢の中で身動き取れなくなっていて、それは、若い頃の自分の夢だった」という回答だったそうだ。
5曲から成る第2章のオープニング曲はまさしく、このような気付きに至るプロセスを恋の終わりに重ねて綴った『Perfect Life』だ。以後サウンドはダウンテンポに転じ、衣装も、ステージの両脇のスクリーンに映る映像もブラック&ホワイトに切り替わった。
#ダミアーノ・デイヴィッド 日本初のソロ単独ライヴでは人気曲「Next Summer」も演奏
さらに進化した圧巻の歌唱力を披露しました!
Next Summer
東京公演のセットリストが公開中: https://t.co/bRKnGJLZv9#DamianoDavid #マネスキン pic.twitter.com/o9jwR9lfq3— ソニーミュージック洋楽 (@INTSonyMusicJP) October 29, 2025「Next Summer」
このセクションでは「Tangerine」を引き継いで、「Zombie Lady」「Tango」「Angel」と、レトロなテイストの屈託ないラブソングが並び、パートナーの支えのもとに試練を乗り越えた現在の自分の姿を伝える。そして本編ラストを飾るのは、「2年前の僕だったらラブと切望感をこんな風に表す曲は書けなかったと思う」と紹介を添えた「Mars」。ディストピアンな世界で永遠の愛を誓う壮大なバラードだ。ダミアーノがステージを去った後もどんどんボリュームを上げてバンドがプレイするアウトロは、ふたりの恋人たちを残して火星に向けて飛び立つロケットを想像させずにいられない。ツイン・ギターにキーボードが加わり、イーサン&ヴィクトリアに劣らぬ強力なリズム・セクションを擁するこのバンド、歌詞に託されたエモーションの激しいアップダウンに寄り添って、終始重厚でドラマティックなサウンドを構築し、今日も絶好調のダミアーノの歌声に最高の舞台を提供する。
そう、派手なアクションは控えめにして、自分を救ってくれたこれらの曲をひとつひとつ丁寧に聞かせることに専念する彼は、終始リラックスした様子で実に楽しそうに、気持ち良さそうに歌う。曲への愛情を甘さや優しさや脆さに転化するようにして、歌い手としての引き出しを一気に増やし、ポップのハートを持つロック・シンガーから、ロックのハートを持つポップ・シンガーへ軸がシフトした感もあるが、ディーヴァと呼びたくなるボーカル力を誇り、これだけのショウマンシップと存在感を備えていて、かつメインストリームで勝負できる男性アーティストは現時点ではほかにいないのではないだろうか?
ソロとして獲得したアリーナ級のスケール
さて、残るアンコールにも触れておこう。1曲目は、序盤でも歌った「The First Time」だ。最初の「The First Time」がマネスキンと共に勝ち取った成功の高揚感を象徴するのだとしたら、今度は、試練を乗り越えて再出発する気持ちを表しているのだと捉えれば、流れに即しているのかもしれない。続いて彼は、デラックス盤の追加曲「Naked」とアルバムのフィナーレを飾る「Solitude(No One Understand Me)」を、組曲として聞かせる。つまり、〈人は自分が何者なのか分からなくなって初めて、自分が何者なのか知ることができる〉と歌う前者、〈誰も僕を理解してくれないけど、自分には分かっている〉と歌う後者、”己を知る”というテーマを共有する2曲をひとつに束ねて、〈Could you?(君にも分かるかい?)〉と繰り返し問いかけながら、90分ほどのパフォーマンスを終えたのだった。
「アリガトウゴザイマス!」と一礼した彼はそのままステージを後にするのかと思いきや、フロアに降りると、先の問いかけへの回答を確認するようにステージ前に押し掛けたオーディエンスの手を握り、途中で手渡されたサッカー日本代表のユニフォームをまとって走り抜けていく。そして、その姿をカメラが追い続け、バックステージでの姿をスクリーンに映し出すという演出で最後まで楽しませてくれたのだった。
何しろ持ち歌の数が限られているため、特にソロ・アーティストのデビュー・アルバムに伴うツアーは、たとえ大ヒット曲があっても物足りなさが残ることは少なくない。他の大物バンドのシンガーのソロ公演でも、そう感じたことがある。でもダミアーノは違った。マネスキンの曲には触れず(歌ったとしても場違いだったろう)、カバーも含めて全編を自分のアイデンティティで貫いてパーソナルなストーリーを伝える、完成されたショウを披露した。それだけでなく、『FUNNY little FEARS』が単に個人的なニーズを満たすだけの作品ではなく、アリーナ・クラスの会場を揺らすスケールを内包していたことも証明されたと思う。
となるとやはり気になるのは、来年以降のダミアーノとマネスキンの動向だ。ソロ・デビューに際して「ひと息つくにはいいタイミングなんじゃないかという意見でバンドの全メンバーが一致した」と彼は語っていたが、己を知り、自分が抱えていたわだかまりをアルバムとツアーで解消して心機一転、バンドをリブートすることになるのだろうか? ソロ活動でバランスを取りながらバンドを存続させている例は、パール・ジャムからザ・ストロークス、ブラー、レディオヘッドに至るまで枚挙に暇ないわけで、先輩たちに倣ってもらえたら理想的ではある。
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東京:https://damianodavidjp.lnk.to/Tokyo25AW
大阪:https://damianodavidjp.lnk.to/Osaka25AW
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