※追記:2026年1月28日、『LUX』日本盤CDリリース決定。詳細は記事末尾にて
ロザリア『LUX』評──自己と向き合い、永遠と交信する
By Julyssa Lopez
少し前、最新作『LUX』のプロモーション中に、ロザリアはTikTokライブを配信した。そこには、マドリードの夜の濡れた街路を車で疾走しながら、モーツァルトの『フィガロの結婚』を大音量で流し、ファンと交流しつつ豪奢なカジャオ広場へ向かう彼女の姿が映っていた。普通なら、そんな瞬間は取るに足らない、ありふれた出来事に見えるだろう。だが、なぜかその数秒間──現代のポップスターがハンドルを握り、狂騒的な交差点を駆け抜けながら、音楽史上最も永続する名作を背景にしているその光景──には、彼女の新作アルバム全体の精神が凝縮されているように感じられる。
はっきり言おう。『LUX』は、今日の音楽シーンのどんな作品とも似ていない。そして、他のどんなポップスターにも作りえないアルバムだ。これまでロザリアは、フラメンコの伝統とポップを融合させた革新的な『El Mal Querer』(2018年)や、女性性を鋭いプロダクションとレゲトンのビートで探求した『MOTOMAMI』(2022年)といった作品を通じて、「音楽シーンで最も挑発的な混沌の使者」であることを証明してきた。そして『LUX』は、彼女にとってこれまでで最も驚異的な到達点と言えるだろう。そこには、長年の研鑽と音楽史への豊かな理解が詰め込まれ、クラシックの響きやオペラの引用、13もの言語が織り込まれている。
ロザリアの作品が常にそうだったように、『LUX』もすでに論争と賛否の渦中にある。リードシングル「Berghain」は、重厚なオルガン、劇的な聖歌隊、ドイツ語によるオペラ的ボーカル、さらにビョークとイヴ・トゥモアの参加という、バロック絢爛のスペクタクル。リリースと同時にクラシック音楽ファンの間で賛否が割れ、彼女の試みを「キッチュ」と切り捨てる声も少なくなかった。だが、ロザリアはどのジャンルにおいても純粋主義者ではない。彼女の目的は、あくまで”感情を届けること”であり、そのためなら使えるものはすべて使うという姿勢を貫いている。しかも、彼女には使える”道具”が山ほどある。彼女は音楽院で正式な訓練を受けた音楽家であり、バルセロナのカタルーニャ高等音楽院(ESMUC)で、1年にたった1人しか受け入れられないと言われるフラメンコ声楽を学んだことでも知られている。彼女のカリキュラムには、ショパンからエラ・フィッツジェラルドまで幅広い音楽が含まれていたと本人も語っている。
それでいて、ロザリアの中には常に反逆心が息づいている。その不遜さこそが、『LUX』をシステムに衝撃を与える作品たらしめているのだ。彼女は偉大な作曲家たちからインスピレーションを得ながらも、もちろんこれはクラシックのアルバムではない。
最終的にこのアルバムが真に成功しているのは、すべての楽曲が深く考え抜かれ、心の奥底から生まれたものだからだ。『LUX』は、「私たちはいったいここで何をしているのか」という根源的な問いへとつながっていく。彼女は痛みや喪失、怒りや悲嘆、性と欲望、愛と信仰といったテーマに向き合いながら、自分という存在を、愛し方を、そして自らを動かす霊的な力を理解しようともがいている。
人生のように濃密で壮大な芸術体験
アルバムは、冒頭曲「Sexo, Violencia, y Llantas(セックス、暴力、タイヤ)」の劇的なピアノの和音が鳴り響いた瞬間から、肉体の世界とその先にある”何か”とのあいだで、自らの居場所を探す旅が始まる。〈その両方の間で生きられたら、どんなに素敵だろう〉と彼女は歌う。〈まずはこの世界を愛する/そしてそのあとに神を愛する〉と。
『LUX』は四つのセクション──彼女自身の言葉を借りれば「楽章(movements)」──に分かれており、ロザリアは混沌とした世界の中で、自分自身と神を探し求めて駆け抜けていく。弦楽が美しく響く「Reliquia(聖遺物)」では、彼女は信仰や笑顔、友人など、これまでに失ってきたすべてのものを思い返す。国から国へと旅を続けながら、痛みを抱えながらも”それでもなお全身で愛する”自分に気づいていく。〈でも私の心は、もともと私のものじゃない/いつだって差し出してしまう/私のかけらを持っていって/私がいないときのために取っておいて〉と彼女は歌う。
「Focu Ranni(夜明けの炎)」では、ロザリアは怒りと裏切られた約束に向き合う(この曲は、かつて予定されていた結婚式を暗示していると言われている)。
しかし、最も胸を打つ瞬間は、内面の啓示にある。アルバムのハイライトともいえる「Divinize(神聖化)」では、まばゆい弦楽と重厚なプロダクションの中、彼女はカタルーニャ語から英語へと自在に切り替え、自らをさらけ出す。〈私を傷つけて、プライドなんてすべて飲み込む/私は”神聖になる”ために生まれたことを知っている〉と歌うその声は、圧倒的な誠実さと決意に満ちている。
そして幕切れは、静かな終焉の情景だ。ロザリアは自らの棺を思い描く──マグノリアの花で飾られたそれを見つめながら、こう歌う。〈私は星々から来た/でも今日、塵となって、またそこへ還る〉と。その声には、微かな残響が光輪のように寄り添う。やがて『LUX』は終わりを迎え、幕が下りる。聴き手は息をのんだまま、彼女の歌声と対峙し、いま聞いたばかりのすべてを胸に抱えながら、自らの中に変化を見出す──人生そのもののように濃密で壮大な、ひとつの芸術体験として。
From Rolling Stone US.
ロザリア『LUX』
知っておくべき6つのポイント
先月、ロザリアが『LUX』のリリースを発表した際、彼女はそれを「女性的神秘、変容、超越の感情的弧線」と表現し、高尚で深遠なテーマと洗練された音楽性を予告していた。そしてその言葉どおり、彼女は期待をはるかに超える芸術作品を届けた。
同時に、『LUX』は非常に個人的な作品でもある。13の言語で書かれた歌詞はすでにファンたちを熱狂させ、彼女の一語一句を解読しようと分析合戦が始まっている。ロザリアは冷徹な別れの歌「La Perla」などで、自身の親密な経験にも触れている。
その音楽はアルバムを通じて、強烈かつ実験的、そして劇的な旅のように展開する。彼女自身が勧めているように、暗闇の中で聴くのが最もふさわしいアルバムだ。以下では、ロザリアの驚異的なプロジェクトから見えてくる6つのポイントを紹介する。
Photo by Noah P. Dillon
1. 惜しみなく発揮されたクラシックの素養
ロザリアは今作で、自身のクラシック音楽の訓練を存分に披露している。彼女は正式な音楽院教育を受けたミュージシャンであり、バルセロナのカタルーニャ高等音楽院(ESMUC)で、フラメンコ声楽を専攻したことで知られている。このプログラムは非常に名門で、通常は1年に1人しか受け入れないといわれている。その技術の高さはアルバム全体にわたって明らかだ。
2. 言語表現の領域も大きく拡張
New York Timesのポッドキャスト番組「Popcast」のインタビューで、ロザリアは今作『LUX』で13の言語を使って歌っていることを明かした。彼女はもともとスペイン語とカタルーニャ語を自在に操るが、今回はそれに加えて、英語、ラテン語、イタリア語、ウクライナ語、日本語、アラビア語、シチリア語、中国語(標準語)、ヘブライ語、ポルトガル語、フランス語など、計11言語を新たに学び、作品に取り入れている。彼女はその過程についてこう語っている。「ほかの言語がどんなふうに機能しているのかを理解しようとする試みの連続だった」。制作とレコーディングのプロセスは非常に骨の折れるもので、ロザリアはGoogle翻訳と専門の翻訳者の両方を駆使し、発音やイントネーションを徹底的に研究したという。それでも、正確な響きを得るまでには何度もテイクを重ねた。また、彼女はこの挑戦が「あくまで人間的な作業」であり、AIは一切使用していないことも強調した。実際に『LUX』を聴けば、その言葉が真実であることはすぐにわかる。
3. 元恋人を痛烈に斬る
ロザリアは、メキシコ音楽シーンのシンガー、ヤリッツァを迎えた楽曲「La Perla」で、自己愛的な元恋人を容赦なく切り捨てている。彼女はその相手を「地元の失望」「国民的プレイボーイ」「感情のテロリスト」と痛烈に形容し、弦楽が高らかに響く中で、こう歌い放つ。彼は〈持っているお金も持っていないお金も使い果たし〉、〈忠誠や誠実の意味を理解していない〉男だ、と。ロザリアは歌う。〈彼は真珠、誰も彼を信じない/彼は真珠、扱いには細心の注意がいる〉。ファンはこの曲が元婚約者のラウ・アレハンドロを指しているのではないかと推測しているが、実際のところそれが誰であろうと問題ではない。重要なのは、ロザリアが壮麗なアレンジの中で復讐のカタルシスを見出しているということだ。— T.M.
4. 未発表のファレル制作曲を蘇らせる
長年にわたりファンがリリースを待ち望んでいた、ファレル・ウィリアムス制作の楽曲「De Madrugá」が、ついに『LUX』で日の目を見た。この曲はもともと『El Mal Querer』期に録音されていたが、正式に発表されることはなかった。今回ロザリアは、かつて流出したバージョンの歌詞を大胆に改訂し、ウクライナ語で「私は復讐を求めてはいない」と歌う一節を加えている。以前のヴァージョンに見られた宗教的なイメージを抑え、代わりにこう歌う。〈鎖が私を縛る/あまりにも過去を振り返りすぎて 銃も、グロックも、ベレッタも あなたを撃って連れ戻すことはできない〉。新しいアレンジでは、豊かな弦楽が加わり、アルバム全体の交響的な流れと美しく調和している。— Tomás Mier
5. フィジカル盤ではまったく異なる体験が待っている
CDやレコードにボーナストラックを加えるのはよくあることだが、ロザリアはその常識を超え、『LUX』のアナログ盤とCD盤に3曲の追加楽曲を収録している。しかもそれらはアルバムの最後にまとめられているのではなく、全体の流れの中に巧みに散りばめられているのだ。たとえば、第3楽章にあたる別れの歌「Focu Ranni」では、彼女はシチリア語でこう歌う。〈私はあなたの”半分”にはならない、あなたの所有物にもならない。私は自分自身と、私の自由のために生きる〉。
同じく第3楽章の締めくくりを飾る「Jeanne」は、自己破壊をテーマにしたフランス語とスペイン語のバラードで、繊細な感情の揺れを描き出す。そして続く曲、第4楽章の幕開けとなる「Novia Robot(ロボットの花嫁)」では、作風が一変する。彼女は架空のセックスロボットの視点から物語を語り、自らの「電子的なpuchina(擬似的な愛)」を売る存在として歌うのだ。曲中では、中国語(マンダリン)とヘブライ語を行き来しながら、ロボットの恋人としての孤独や祈りを吐露する。〈私は神のために着飾る/あなたや他の誰のためでもない/私は私の神のためだけに着飾る〉— T.M.
6. 実現しなかった結婚への思いを歌に昇華
昨年、ロザリアは楽曲「Beso」のミュージックビデオを通して、ラウ・アレハンドロとの婚約を発表した。ふたりはGQの動画でプロポーズの詳細を明かし、ロザリアはスペインのインタビューでウェディングドレスの構想までほのめかしていた。しかし数カ月後、ふたりは破局し、婚約は白紙となる。その未完の物語が、フィジカル盤収録曲「Focu Ranni」に結晶している。ロザリアはこの曲で、結婚という夢から離れていく痛みと向き合っている。歌詞では、実現しなかった式をこう描く。〈空へ米を投げる人もいない/花を持ってくる人も、酔いつぶれる人もいない/彼が本当には知らなかった愛を祝福する者もいない〉。
また、ラウの名前を入れたタトゥーにも触れている。〈肋骨にあなたの名を刻んだけれど/私の心には、あなたのイニシャルはなかった〉。そして彼女は、はっきりと宣言する。〈私は自分自身と、私の自由にだけ属する〉— Julyssa Lopez
From Rolling Stone US.
ロザリア
『LUX | ラックス』
発売中
日本盤CD:2026年1月28日リリース
解説・歌詞・対訳付
CD/LP限定音源含む計18曲収録
再生・購入:https://bio.to/RosaliaLUX


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