筆者は2024年のサマーソニックでの初来日公演を「事件」と形容したが、今回のステージでタイラが見せたのは、さらに先の飛躍を予感させるものだった。夏にリリースされたEPのタイトルを冠した「WE WANNA PARTY ASIA TOUR」、その幕開けを日本で飾ったのは、サマソニでの手応えを感じ取った結果なのかもしれない。果たして、今回のタイラはどんなステージを見せてくれるのか。
開演時刻の19時が近づくにつれて観客のざわめきが高まる中、照明が落ち、ゲストのBE:FIRSTのライブが始まる。
黒いジャンパー姿で登場したBE:FIRSTは、「タイラに向けてステージをあたためる」とMCで宣言した通り、熱のこもったパフォーマンスを見せた。ダンスパートは特にキレがあり、序盤から会場のテンションを引き上げていく。印象的だったのが「Milli-Billi」におけるソロダンスから始まるパートだ。音ハメのような動きはダンスに関しては素人の筆者から見ても切れ味抜群。
歌もダンスも高い完成度で、ゲストとして申し分ない役割だ。最後にジャクソン5「I Want You Back」の日本語カバーを披露し19時30分ちょうどに終了。観客の熱気は冷めやらず、ステージをあたためるという宣言は、間違いなく成功していたと言っていいだろう。
2025.11.11
「WE WANNA PARTY ASIA TOUR」
Tyla × BE:FIRST
Thank you!!!#WEWANNAPARTY#TYLA @Tyllaaaaaaa#BEFIRST pic.twitter.com/YSHC4pYLbW— BE:FIRST (@BEFIRSTofficial) November 11, 2025
再び客電がつき、先ほどと変わってBGMにクールなアマピアノが流れ始める。
一見して、サマーソニックやコーチェラで見せてきたステージと別物であることに気づく。ステージ全体が巨大なディスプレイとなっており、その外側を縦横三方から別枠のスクリーンが囲む……そんな特殊なステージといえば伝わるだろうか。
オープニング映像は白と黒を基調にした円形の模様を描き、今までのタイラのイメージとは一線を画すもので、この時点で期待が膨らんでしまう。ほどなくして、ダンサーたちが先んじて登場。サマーソニックの時と同様、エネルギッシュなパフォーマンスを見せてくれるだろう。
筆者は今回、3階正面という比較的離れた位置から見ていたが、それでもダンサーたちのシルエットが照明と映像に照らされ、激しく動いている様子が理解できた。この時点で、ライティングや映像の演出がかなり計算されたステージであることに気づく。
1分ほど経った頃、イントロのBGMに「IS IT」のボーカルサンプルが重なり始め、観客がさらにヒートアップ。ついにタイラが姿を現す。ビートがここでほんの数秒止まるが観客の熱狂は止まらない。
この日のタイラはピンクとイエローを基調にした自身のキャラクターを彷彿とさせるアクティブなステージ衣装。そしてピンクのウィッグを着用している。南アフリカの女性たちはウィッグで自由にヘアスタイルを変えて楽しむ文化があり、タイラのウィッグをよく見ると、そこには「TOKYO」と書かれており、日本のファンへの粋なサービスが光る。蠱惑的なダンスと卓越した歌唱力を惜しみなく披露し、その存在感はやはり圧倒的だ。曲の終盤でピンクのウィッグを観客に投げるとまたさらに大きな歓声が起きる。
Photo by Jayson Alexander (@unrulyszn)
続く「Getting Late」はサマーソニックで披露されなかったタイラのデビュー曲だ。この曲の魅力はなんといっても南アフリカ産アマピアノとポップスが高度に融合した点で、アマピアノのトレードマークであるログドラムが惜しげもなく有明アリーナに鳴り響く。タイラの歌も絶好調で、メインのメロディのみならず、流れているトラックに対してハモリのパートを歌うなどさらっと高い技術を披露し、どの瞬間も目と耳が離せない。
3曲目の「To Last」は原曲ではなく、南アフリカアマピアノのドン、DJ MaphorisaとYoung Stunnaによるリミックスをプレイ。
「To Last」が終わるとここでMCが挟まれる。「これが私にとって初めてのヘッドラインツアーなの。
そして始まるのが「Tyla, WE WANNA PARTY!」のコールアンドレスポンス。このEPのタイトルの元になった「WE WANNA PARTY」とはアマピアノでよく使われるかけ声だ。楽曲中やDJプレイ中にも煽りで頻繁に耳にするフレーズだが、このコールが有明アリーナに響く様は感無量であった。
「WE WANNA PARTY」の精神を体現
次に披露される「ART」や「BLISS」では家具や窓の映像がバックスクリーンに投影され、オープニング同様、今までにない映像表現に目を引かれる。どことなくチルでリラックスしたムードを醸し出し、スクリーンの枠に照明が走るなどのギミックで視覚を飽きさせず、タイラのシルキーな美声をさらに引き立たせる。
Photo by Jayson Alexander (@unrulyszn)
8曲目「Safer」ではアルバムにはなかったイントロが追加されており、この時点で気づいたのだが、曲間もまたスムーズに繋がるようにアレンジが加えられている。最初は映像、照明を使ったビジュアル面が相当強化されていると感じていたがそれに追従するように曲も自然にエディットや編曲されており、アルバムに伴ったツアーによる知見が反映されているように感じた。ダンサーたちのフォーメーションもまた見事で、曲によって出入りが激しい。特定の人が出続けるのではなく、その時の楽曲や映像によって必要な人数が曲のコンセプトに合わせてダンスするという仕組み。照明と相まって、どの席で見ても洗練されたパフォーマンスを楽しめたはずだ。
照明が落ちて会場が真っ暗になるが、すぐに幕間の映像が流れる。
その後、赤い照明を伴い「DYNAMITE」がプレイされると、一気にグルーヴの芯がグッと腰の辺りまで落ち、それに呼応するようにダンサーたちとタイラが激しく踊る。
さらに「JUMP」「MR. MEDIA」と続くが、ここであることに気づく。歓声が上がるタイミングは大体がダンスに起因するもので、特にTwerk(トゥワーク)のような動きをタイラがした時の歓声は悲鳴に近い歓声が上がる瞬間が多くあった。Tygers(Tylaのファンの総称、Tigersとも)にとってタイラが華麗なダンスを披露している様がこの公演の一番の見どころなのだと思うと、大変興味深く感じた。
サマソニでも披露したアリーヤの「Rock The Boat」と「On And On」のマッシュアップのあと、始まるのは「Truth or Dare」のイントロ。筆者も好きな曲だが、他の観客にとってもそうだったようで、一際高い歓声が上がる。
そのまま歌うかと思いきや、ここでちょっとした余興が入る。客席から選ばれた女性がステージに挙げられ、巨大なサイコロを渡される。一体何が始まるのか、思いつつ女性がサイコロを振るとスクリーンに「私とダンスバトルだ!」の文字が映し出される。その瞬間アッシャーの大ヒット曲「Yeah!!」が流れ、タイラとその女性が一緒にダンス。予想もしていない選曲とパフォーマンスに会場は大盛り上がり。
この日ずっと感じたのが、タイラのTygersに対するサービスが抜群で、かつエンターテインメントに昇華するアイディアも豊富であること。「私と一緒に楽しもう」、つまり「WE WANNA PARTY」の精神を優しく体現する瞬間が多くあり、この人間としての魅力も彼女の人気の理由の一つなのだと思った。
その後、サマソニそしてコーチェラでも披露された南アフリカ産のアマピアノに合わせてダンスパートが披露される。この時点でライブも後半となり、観客のダンスに対するパッションはかなり高まっており、その熱気は、主役のタイラがいなくなっても少しも冷めることがなかった。むしろ、さらに熱を帯びた空気に包まれていて、このくだりこそが個人的にいちばん心を揺さぶられた時間だった。南アフリカの人たちにとって、ダンスは非常に重要なカルチャーで、今回のように大幅なセット変更が行われていてもダンスパートが組み込まれ、日本でこれだけの観客を沸き立たせている事実に感動を抑えることができなかった。
タイラが戻ってきてさらにテンションが上がると、そのまま「SHAKE AH」「Ke Shy」と続けて南アフリカアマピアノナンバーを披露。特に「Ke Shy」で魅せたビジュアル表現が秀逸で、ツアーのディザー動画で使われていた蛍光のボディペイントを塗った映像は会場で見ると妖艶な美しさを放っていた。
My first headline tour
And its in ASIAAAAA !!!!!!! pic.twitter.com/4B008c2iHw— Tyla (@Tyllaaaaaaa) November 2, 2025
大きな飛躍を感じさせるクライマックス
会場の照明が徐々に暗くなっていき、その暗闇を活かすように「Thata Ahh」では噴射型の花火が上がり、ダンスパフォーマンスがいっそう際立つ。再び完全に客電が落ちると、今度はどことなくインダストリアルな印象があるトラックが流れる。映像は目下最新となるシングルのビジュアルのイメージが流れ、緊張感が高まる。
聞き覚えのあるスネアのカウントが流れ、続いて披露されたのは、ライブパフォーマンスとしては世界初披露となる「CHANEL」。
Photo by Jayson Alexander (@unrulyszn)
衣装チェンジを経て観客のボルテージが極限まで高まったタイミングで投下されたのは、世界を虜にしたシンプルで洗練されたあのコード。そう、「Water」がここで披露される。
今回は世界中で披露した水をかけるパフォーマンスを封印し、客席に降り立ち、一人一人話しかけるように、時にはサインなどのファンサービスをしながら歌い上げる。終盤に女性のダンサーが客席からやってきて最後のリフレインで一緒に踊るというサプライズが発生。あまりにダンスが達者なので、これは仕込みなのかハプニングなのかは判断がつかないが、歌い終わった後のタイラが「Oh My Gosh!」という呟いた表情は楽しげだ。
いよいよ終盤となったところでプレイされたのが「Breath Me」。スクリーン一面に紫のラメを散らしたような映像表現とCHANELのタイトな衣装を着たタイラの姿は紛れもなくディーヴァそのもの。その姿はシックで美しく、この日魅せてきたアクティブにダンスする姿とのギャップはまた新たな魅力を映し出していた。
CHANEL の衣装を脱ぎ捨て、聴き慣れないビートが流れ始めたと思ったら、ビヨンセの「Baby Boy」とのマッシュアップによる「PUSH 2 START」だったようだ(後で調べて分かった)。そして途中で原曲のトラックに戻すエディットも芸が細かくて良い。本日最後の曲だ。
Act like you heard me
Only serve it up if you deserve me, yeah
Pull up and earn me (Pusha, pusha)
Push to start (Pusha, pusha)
ちゃんと聞いて、わかってる?
私を手にするなら、それに見合うだけの態度を見せて
引き寄せて、私を獲得してみて (Pusha, pusha)
エンジン始動(Push,pusha)
ライブの最後に「PUSH 2 START」が歌われると、まるでファンからの愛情をさらに求めるタイラからの情熱的なアプローチにも取れるから面白いものだ。最後に新しい間奏が追加され、さらにもう一回フックを繰り返し終了。アンコールは無しでノンストップ75分。掛け値無しに素晴らしいライブだった。
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総評すると、コーチェラまでのバンドセットは確かにメンバーの技量も相まって文句なしに素晴らしい出来だった。それでも今回のライブの素晴らしさは特筆すべきものがある。今までは歌、ダンス、パフォーマンスといったプリミティブなライブとしての魅力を放っていたが、映像、照明面でのスケールアップによってショウとしてのクオリティが格段に上がった。
そして知る限りでは、タイラがこのようなライブパフォーマンスを行ったのはおそらく世界初であったように思う。「WE WANNA PARTY ASIA TOUR」の初日となった日本公演は、このまったく新しいタイラ像を先入観なしで受け止めることのできた、実に幸運な機会だったと言えるだろう。
また、客席を見渡して印象的だったのは、圧倒的に若い女性客が多かったこと。その中には、タイラをイメージしたファッションで来場している人の姿も少なくなかった。これまでアマピアノやアフロビーツ、あるいはより広義のアフリカンカルチャーでは届きにくかった層にまで確実にリーチしているのを実感できた。会場内のポスターの前に立ち、楽しそうに写真を撮るTygersたちの姿からは、タイラが新しいポップアイコンとして確かに愛されていることが伝わってきた。
もしかすると、この「WE WANNA PARTY ASIA TOUR」は、アフリカンカルチャーとポップカルチャーの境界を溶かす転換点になるのかもしれない。そう思わせるほど素晴らしい夜で、タイラの再来日を心から願わずにいられなかった。
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タイラ初の単独公演
WE WANNA PARTY
日本公演セットリスト公開
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ダンスと歌声で魅了した大盛況のライヴ・セットリストがプレイリストで公開
https://t.co/2HwB58BlW8#Tyla #タイラ来日 pic.twitter.com/52o73znFh4— ソニーミュージック洋楽 (@INTSonyMusicJP) November 11, 2025
「WE WANNA PARTY ASIA TOUR』日本公演セットリストプレイリスト
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Japanese Amapiano Producer / DJ /Writer
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