トンボコープの全国ツアー「FANDOM TOUR 2025」。そのツアーファイナル公演が、10月23日(木)、Zepp Hanedaにて開催された。
9月にリリースした全19曲のメジャー1stアルバム『FANDOM』が総力を尽くした渾身の作品であったように、この日のライブも、現時点で持ち得る全てを懸けて臨む気概を感じさせる圧巻の公演だった。そして何より、一人ひとりの〈君〉への深く真摯な想いがまっすぐに伝わってくるライブだった。順を追って振り返っていきたい。

【画像】トンボコープ、Zepp Haneda公演(全37枚)

SEは、アルバムにおいても幕開けの役割を担っていた「FANDOM」。そしてアルバムと同じ流れで「アイデンティティ」からライブがスタートする。ロックアンセムとしての堂々たる響きに呼応するように、高らかに歌声を重ね、懸命に拳を突き上げていく観客。ライブ開始直後とは思えないほどに熱く輝かしい光景が広がり、いきなり胸が高鳴る。続けて、雪村りん(G・Vo)の「踊ろうぜ!」という呼びかけから「Freedom!」へ。同曲の間奏では、でかそ(B)が「何も不安がらず好きに楽しめ。全員愛してる!」と告げる一幕も。そして、林龍之介(Dr)が「東京ー!」と地元へ帰ってきた喜びを叫ぶ中で「風の噂」へ。雪村が「一番高く跳んだやつが優勝。
全員ジャンプ!」と呼びかけ、観客は何度も一斉ジャンプを繰り返してみせる。なんて熱烈な応酬だろう。最初のMCパートでは、雪村が、「君たち一人ひとりが主人公。そんな気持ちで最後まで楽しんでもらえたらと思います」と観客に語り、「君と音楽が楽しめたら、それが地獄だったとしても俺はそれでいい」という言葉を添えて「地獄でいいから」へ繋ぐ。続けて、「今日ここに持ってきた喜怒哀楽、全部俺に聞かせてくれよ!」と力強く呼びかけ「喜怒哀楽」へ。雪村は、マイクをフロアに向け、サビの全ての歌詞を大胆に観客に託し、観客は見事に大合唱で応える。そうした熱いリアクションを受け、雪村は思わず、「最高だぜ。聴こえるよ、君の声!」と叫んだ。

トンボコープ、Zepp Hanedaで伝えた真摯な想い「今日は約束の日にしたいと思うんだ」

雪村りん

トンボコープ、Zepp Hanedaで伝えた真摯な想い「今日は約束の日にしたいと思うんだ」

でかそ

「囚人」「daratto」を経て、2度目のMCパートへ。雪村は、今回のツアーの全ての公演でセットリストを変えてきたことを振り返りつつ、「今日はツアーファイナルにふさわしい超パワフルなセトリを持ってきました」と宣誓。そして、そらサンダー(G)が奏でる重厚にして豪快なギターリフを皮切りに、まるで激流のようなバンドサウンドが堰を切ったように流れ出し、ライブアレンジが施された「明日の一面」へ突入。ロックバンドとしての野性を容赦なく解放していく4人。
ギターソロとベースソロがぶつかり合い、ドラムソロも炸裂。そして雪村が「次、お前の番だ、全員跳べー!」と呼びかけ、観客が一斉ジャンプを繰り返す。ライブだからこその熱烈な展開はまだまだ続く。「過呼吸愛」では鮮やかなタオル回しが巻き起こり、「Now is the best!!!」では快活なハンズクラップが4人のライブパフォーマンスを熱く彩る。「むかしむかし」では、幾度となくコール&レスポンスが重ねられ、最高潮に達したところで雪村が「くだらないことしようぜ」と告げ、「くだらないこと」へ。次の「MUNSELL」しかり、とにかく観客の歌声が盛大で、一人ひとりの観客こそが主役であることを改めて強く感じさせる展開だった。

トンボコープ、Zepp Hanedaで伝えた真摯な想い「今日は約束の日にしたいと思うんだ」

そらサンダー

トンボコープ、Zepp Hanedaで伝えた真摯な想い「今日は約束の日にしたいと思うんだ」

林龍之介

ここで雪村は、人前で喋るのが苦手なタイプであるが故に、これまでのライブではMCで喋ることを事前に携帯のメモに書いて準備していたことを明かした。ただこの日は、メモを書かずにライブに臨んだという。その理由は、「そんな自分を変えたいから」。雪村は続けて、その瞬間ごとに心の内から湧き上がる言葉を紡ぎ出すように語り始める。生きていたら、嫌なことや苦手なことに立ち向かわなければいけない時や、恥をかく時が、否応もなく訪れる。そういう瞬間に聴こうと思うのがトンボコープの音楽だったらいい。
君にとってトンボコープはそういう存在でありたい。そうした迫真のMCの後に披露されたのは、「フラッシュバック」だった。〈君にとって僕は どんな存在だったの 教えて教えて教えて〉という歌詞が、先ほどの雪村の決意の言葉と相まって深く胸に響く。続けて、「俺のなけなしの本音を聴いてください」という前置きを挟み「レインコート」へ。前の曲と同じように、〈だから僕が だから僕が だから僕が歌うよ〉という歌詞が一際エモーショナルに響く。鳴らされるバンドサウンドはヘビーで壮大な響きを放っているが、雪村の歌は、まるで長年の友人がすぐ隣で語りかけてくれているような親密さを帯びていて、とても感動的だった。

トンボコープ、Zepp Hanedaで伝えた真摯な想い「今日は約束の日にしたいと思うんだ」


「俺のなけなしの気持ちがこうやって燃え続けていられるのは、音楽で繋がっているから」「繋がっている証、その証明の歌」。雪村の言葉を受けて届けられたのは、勇壮な響きを放つライブアンセム「HEART BEAT」。突き上がる無数の拳。重なる熱烈な歌声。大サビに入る前、雪村が「愛してる」と告げた一幕が胸を打つ。そして、「音楽でずっと繋がっていよう! ぶつかる準備はできてるか!」という呼びかけから「彗星」へ。
まるで手を取り合うかのように声を重ね合う雪村と一人ひとりの観客。あっという間に、残すところあと1曲。雪村は、今回のツアーのチケットの売れ行きについて悔しい思いを抱いたことを赤裸々に伝えつつ、次のように語った。「すげえ悔しいけど、悲観してない」「こんなに温かい人がいてくれる。明るい未来しか見えない」「だから今日は約束の日にしたいと思うんだ」「君と約束がしたい。俺は絶対諦めない。来年のツアーは売り切らせてみせる」「どんだけくじけようが、落ち込もうが、君がいる限りは頑張れます。君と出会えてよかった」。温かな拍手が送られる中で披露された本編ラストの曲は、〈君に出会えてよかった 君を愛して良かった〉と歌う「あとがき」だった。アンコールでは、まるで再び本編が始まるかのような猛烈なエネルギーを放つ「始まりの合図」が披露された。「鼾」「オールアローン」をもって、この日のライブ、および、今回のツアーは締め括られたが、今日は、約束の日であり、新しい始まりの日。そうした晴れやかな余韻を感じ取った観客はきっと多かったと思う。
最後に4人は、「ありがとうございました!」と深くお辞儀をし、温かな拍手と歓声が止まない中、ステージを去っていった。

トンボコープ、Zepp Hanedaで伝えた真摯な想い「今日は約束の日にしたいと思うんだ」


トンボコープ、Zepp Hanedaで伝えた真摯な想い「今日は約束の日にしたいと思うんだ」


トンボコープ、Zepp Hanedaで伝えた真摯な想い「今日は約束の日にしたいと思うんだ」


セットリスト
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1. アイデンティティ
2. Freedom! LIVE ver
3. 風の噂 LIVE ver
4. 地獄でいいから
5. 喜怒哀楽 LIVE ver
6. 囚人
7. daratto
8. 明日の一面 LIVE ver
9. 過呼吸愛
10. Now is the best!!!
11. むかしむかし
12. くだらないこと
13. MUNSELL
14. フラッシュバック
15. レインコート
16. HEART BEAT
17. 彗星
18. あとがき
SE. VISION
EN1. 始まりの合図
EN2. 鼾
EN3. オールアローン
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