2013年には初のフジロックでFIELD OF HEAVENのトリを務め、2017年にビルボードライブに出演。その後8年のブランクを経て、ついに2025年に日本へと帰ってきてくれた。
東京では渋谷duoに出演。2時間弱にわたるライブは、タワー・オブ・パワーやJB(ジェームス・ブラウン)など多くのファンク・レジェンドにオマージュを捧げつつ、33年目のバンドとは思えないほど若々しくパワフルなステージとなった。ジャムバンド黄金期に培った巧みなアドリブソロを、バンド全体で即興的に盛り上げつつ、圧倒的なグルーヴで空間を支配する──ライブ・バンドとしての本能がむき出しになった、まさに一夜限りのショウだったと言えるだろう。
今回はそのステージ直前に、結成当初からのメンバーであるアダム・ダイチ(Dr)とライアン・ゾイディス(Sax)を中心に、アダム”シュミーンズ”スミルノフ(Gt)、エリック”マーヴェリック”クームス(Ba)、エリック”ベニー”ブルーム(Tp)にも話を聞くことができた。12月3日(水)にリリースされたニューアルバム『Cook』についてのインタビューは、自然と彼らの深いファンクへの愛で溢れていった。
2025年10月30日、渋谷duo MUSIC EXCHANGEにて(Photo by Kazumichi Kokei)
バンドが長続きしている秘訣
―レタスは1992年の結成だと聞いていますが、なんともう33年も活動しています。これは本当に素晴らしいことですね。メンバーは少し変わりましたが、33年間を通して、バンドやサウンド、レタスのファンクというものはどのように変化してきましたか?
ダイチ:レタスは本当に多くの面で進化してきたよ。ソングライティングやレコーディングのプロセスだけじゃなく、コミュニケーションの取り方、みんながツアーをより楽しむ方法など、すべてが良くなってきた。食事やお互いの関係性まで、すべてがね。
シュミーンズ:そして、インプロヴィゼーションの方向性も進化した。特に「バンド全体のインプロヴィゼーション」という意味でね。ソリストがバッキングの上でソロを取るインプロヴィゼーションというよりも、その場でバンドが全員で一緒にインプロヴィゼーションするような感じなんだ。
ライアン:つまり「即興的作曲(Spontaneous Composition:ジャズ用語。キース・ジャレットの即興演奏をそう定義することもある)」なんだよ。
シュミーンズ:その通りだね。
アダム・ダイチ(Dr)Photo by Kazumichi Kokei
ライアン・ゾイディス(Sax)Photo by Kazumichi Kokei
―確かに、個人のソロを重視するスタイルから全体のインプロヴィゼーションを重視するスタイルへと進化していますよね。きっかけはどのようなものがあったのでしょう?
シュミーンズ:そうだね──その流れが生まれたのは、おそらくヒップホップの影響を受けた曲が増え始めた頃からだ。『Rage!』というアルバム(2008年)に入っている「Mr. Yancey」という曲はJ・ディラへのトリビュートだったんだけど、あの頃からだと思う。そうした作品が増えるにつれて、自然と変化していったんだ。
ライアン:それに加えて、僕たちがそれぞれ新しい楽器を取り入れ始めたのも大きかったと思う。僕の場合、サックスを繋いで演奏できるシンセサイザーを導入したことで、従来のサックスソロを取るだけではなく、もっと空間的で雰囲気のある音が出せるようになった。
アダム”シュミーンズ”スミルノフ(Gt)Photo by Kazumichi Kokei
エリック”マーヴェリック”クームス(Ba)Photo by Kazumichi Kokei
エリック”ベニー”ブルーム(Tp)Photo by Kazumichi Kokei
―私(筆者のDr.ファンクシッテルー)はヴルフペックの本を執筆したのですが、そこで彼らを「サステナブル・ファンク・バンド」だと表現しました。それはリーダーのジャック・ストラットンがバンド活動を極限まで減らすことで解散を避ける、新しいスタイルを生み出したからです。一方で、10代で結成したバンドで33年も活動しているレタスも、間違いなくサステナブル・ファンク・バンドだと思います。バンドが長続きしている秘訣はどのようなところにあるのでしょう?
マーヴェリック:ラブさ。お互いへのね。
ダイチ:それにヴルフペックは年に数度しか演奏しないけど、僕たちは一年中演奏してる。
ライアン:そう、僕たちはライブが本当に大好きなんだ。旅の大変さなんてあまり気にしないし、むしろそういう苦労をしてでも、ステージで味わえるあの至福の瞬間のためにやっている。僕たちが集まればいつでも、そこに辿り着けると分かっているから。
マーヴェリック:数週間でも休みがあると、気分はもう拷問さ。
ライアン:そうそう。休みが欲しいなんて言っておきながら、2週間も経つと「楽器どこ?」ってなってる(笑)。
ヴルフペックとレタス(アダム、エリック、ライアン)の共演(2016年)
『Cook』に込めたテーマとオマージュ
―では、ニューアルバムについて聞かせてください。タイトルは『Cook』で、ジャケットでは皆さんがシェフの格好をしており、ひとつの統一されたコンセプトを感じます。ユニークで、ある意味とてもファンキーですよね。このタイトルやビジュアルには、どんな意味が込められているのでしょうか?
ライアン:ある日、ダイチが僕に電話をかけてきた。ちょうどアルバムタイトルをどうしようかとみんなでメッセージを送り合っていた時だった。彼が「”Cook”ってどうだろう? ジャケットも料理とかシェフにまつわる何か、そういう方向で考えてみないか」って言ってきたんだ。僕はそのとき、ファニア・レコードのイスマエル・ミランダのレコード(『Así Se Compone Un Son』)を思い出した。今回のアルバムは、あのレコードのコンセプトに少し似てるんだ。あのレコードジャケットにかなりインスピレーションを受けて、僕たちなりのシェフ姿のバージョンを作ったんだよ。
マーヴェリック:これまで僕たちはわりと抽象的なジャケットが多かったので、今回はちゃんと自分たちの顔が写った写真を使いたいと思ったのもあるね。
ライアン:それに音楽と料理って、明らかな共通点がある。料理においては、全ての材料が最高であるか、あるいは適切な材料が揃って、はじめて全体が美味しくなる。アルバム作りも同じで、最高のサウンドに仕上げるためには、それぞれ適切な要素が欠かせないのさ。
マーヴェリック:日本のみんなにも、このアルバムを「チョー オイシイ(Cho Oishii)」って思ってもらえたら嬉しいね(笑)!
イスマエル・ミランダ『Así Se Compone Un Son』
―最近、Aquila Cellarsとのコラボレーションで、ワイン「Lettuce Crush Vol. 1」をリリースしましたね。これも今作と関わりがあるのでしょうか?
ベニー:そうだね。実は前から、自分たちのワインを作りたいと思っていたんだ。メンバーの中に、オーガニックやナチュラルワインが好きな人も多いから。ライアンと僕は、コロラド州でワインの会社もやっているんだ。地元の素晴らしいワインメーカーと協力して、オーガニックの果実を使ったワインを作っている。僕たちは音楽を作ったり、料理をしたり、美味しいものを飲んだりしながら一緒に過ごす時間が大好きなんだ。ノンアルコールでも、アルコールでもね。
ライアン:タイミングは偶然だったんだけどね。ワインの構想は数年前からあって、結果的にアルバムとシンクロする形になった。偶然のシナジーが生まれたんだ。
レタスがコロラドを拠点とするナチュラルワイナリー「Aquila Cellars」とタッグを組んだワインライン「Lettuce Crush Vol. 1」。個性の異なる2種のブレンド、Red CrushとOrange Crushを用意(※画像は公式ホームページより引用)
―近年リリースしてきた『Elevate』『Resonate』『Unify』の三部作と比べると、今作はどのようなアルバムでしょう?
ダイチ:まさにその延長線上にある作品だね。僕たちはディアンジェロと仕事をしていた偉大なエンジニア、ラッセル・エレヴァードと一緒に(『Elevate』『Resonate』で)アルバムを作って、多くのことを学んだ。彼が持っている素晴らしいアナログレコーディングの哲学を理解するのには時間がかかったけど、ライアンが特に彼のメソッドを吸収して、今では僕たち自身でもその感覚を掴めるようになったんだ。このアルバムは、ラッセルから学んだアナログレコーディング技術をさらに深め、自分たちの理想のサウンドに近づけていく過程そのものだった。そして──安らかに、ディアンジェロ。僕たちは心から愛している。
―では、個別の曲について教えてください。
ダイチ:そう、彼のアイデアだった。僕たち全員がこの曲を大好きだったしね。ナイジェルは本当に最高のシンガーのひとりだ。彼が歌いたい曲があると言ったら、僕たちは全力でそれを演奏するよ。
―今作はいろんなファンクバンドへのオマージュがあったのが印象的でした。「Keep On」はタワー・オブ・パワーのオマージュということですが、聴いてすぐにそうだと分かる完璧なグルーヴです。6人でこのサウンドに挑戦しているのも素晴らしい。これは誰が作曲したのですか?
ダイチ:あれは僕が書いた。タワー・オブ・パワーとは一緒に何度もライブをやっていて、僕たちも彼らが入っているマネジメント会社のレジーム・ミュージック・グループに入って、同じチームになったんだ。僕は21歳のとき、アヴェレイジ・ホワイト・バンドのツアーで彼らと出会って、エミリオ・カスティーヨ(タワー・オブ・パワーのリーダー)と友人になった。それ以降も連絡を取り合っていて、今回も曲を送ったら、なんと彼が歌詞を書いてくれた。それをナイジェルとベニー、そしてシュミーンズが少しアレンジして、ナイジェルのスタイルに合うように新しい歌詞を完成させたんだ。本当に素晴らしいコラボレーションだったよ。
ライアン:タワー・オブ・パワーは僕たちにとって、とても大切なバンドなんだ。彼らは僕たち全員が若い頃に夢中で聴いていた、共通のルーツ。僕は12歳のときに初めて彼らを見に行った。バークリー音大にいた時も、僕らはみんな「タワー・オブ・パワー・ヘッズ」だったよ。バンド全員に共通する原点のひとつが、ハービー・ハンコックの『Headhunters』と、タワー・オブ・パワーなんだ──ちなみに僕にとっては『Urban Renewal』がベストアルバムだ。だからこそ僕らは彼らのスタイルを演奏して、正当な形でオマージュを捧げられるんだよ。
アダム:僕は12歳のころ、タワー・オブ・パワーのドラマー(デヴィッド・ガリバルディ)に1時間だけレッスンを受けたことがあるんだ。
ライアン:僕はレニー・ピケット(タワー・オブ・パワーのサックス)にも習ったよ。
アダム:僕たちは、そうした偉大な先人たちのファンクのスタイルを絶やさないように、これからも受け継いでいきたいと思っているんだよ。
タワー・オブ・パワー『Urban Renewal』
―「The Mac」はメイシオ・パーカーのオマージュということですが、これも聴いてすぐにそうだと分かるサウンドで、素晴らしいです。全てのリフがガッチリと絡み合っていて美しい。なぜメイシオのオマージュを作曲したのでしょう?
ダイチ:僕たちはメイシオが大好きなんだ。これまで何度も彼と共演する機会があったけど、彼は本当に素晴らしい人物で、偉大なリーダーでもある。僕たちは大学時代、彼のアルバムを何度も研究したし、レタスとして最初に一緒に演奏した曲のひとつは彼のアルバム『Life on Planet Groove』からだった。だから僕たちは彼に深く感謝しているし、彼の功績を称えたいと思っているんだ。この曲では、サックスのライアンがメイシオの本質にもっとも近い演奏をしている曲だと思う。彼がソロを吹くとき、常にメイシオへの敬意を込めて、彼のレガシーを生かし続けているんだ。
ファンクの魅力とは何か?
―「Clav it Your Way」はJBs(JBのバックバンド)のような雰囲気に、レタスらしいディープなグルーヴが混ざり合い、これも最高です。以前、YouTubeのライブ映像で「Its A New Day」をやっているのを観たことがありますが、やはりあなたたちにとってJB、JBsというものは特別なバンドですか?
ライアン:JBsは間違いなく、僕たちにとって最も大きな影響源のひとつだね。JBsのメンバーの一人ひとりが、僕たち全員のヒーローなんだ。そして、彼らがJBのバンドとして成し遂げたこと──それもまた、僕たちにインスピレーションを与え続けている。この曲の制作中はツアーをしていなかったと思う、パンデミックの時期だったかな。ダイチが僕にグルーヴのデモを送ってくれて、僕はそれに合わせていくつかのパートを自宅で録音した。結果的に、そのテイクに少し手を加えて完成させたんだ。
―なるほど。ちなみに1曲を仕上げるのに、だいたいどれくらいの時間がかかるのでしょう?
ライアン:それは曲の作り方によって違うね。ダイチはバンドでもっとも多作な作曲家で、彼が最初にグルーヴを持ってきたり、場合によってはメロディやアレンジまで完成させていることもある。もし彼の中で曲のビジョンがすでに明確にできあがっていれば、あとは僕たちがそれを覚えるだけ。1時間もあれば通せる。それから3~4回レコーディングして、気に入った演奏が録れたら数ヶ所オーバーダブを加えて完成だ。だから、早ければ2~4時間ほどで1曲が形になるかな。
ダイチ:でも、その後ツアーで何年も演奏していくうちに、曲はまったく違うものに成長していく。だから、レコードに収録されたバージョンはファースト・エディションなんだ。そこからライブを重ねていく中で、曲は進化し、まるで別の生命を持つようになっていくんだよ。
―「7 Tribes」も最高です。近年、クルアンビンやグラス・ビームスのように民族的なスケールを用いたファンキーな音楽が人気になっていますし、私もそんな曲が大好きです。一方でギャラクティックなど、昔からジャムバンド界のファンクバンドはこういった怪しい雰囲気の曲を好んで演奏してきたイメージもあります。今回、この曲はどういう経緯で誕生したのでしょう?
ダイチ:僕たちはスケールを変えるのが好きなんだ。僕たちの書く曲の多くはブルース・スケールになってしまうからね。「7 Tribes」のメロディは中東的な響きがあり、マイナーメジャー(メロディック・マイナー・スケール)を使っているから、これまでと違う雰囲気がある。もちろん、僕たちは君がいま名前を挙げたバンドたち──クルアンビンなどからも影響を受けている。この曲では新しいスケールでソロを取る必要があるから、普段のペンタトニックやメイシオ的なフィーリングから抜け出すことを求められるんだ。だからこの曲の演奏は僕たちの頭を柔軟にしてくれるし、ファンクの別の側面に敬意を払うことにもなるんだよ。
Photo by Kazumichi Kokei
―ちなみに話は変わりますが、ソウライヴ(Soulive)も同時期にニューアルバムを出すと聞きました。これについてはどう感じられていらっしゃいますか?
ライアン:同じタイミングだとは知らなかった。でも、ソウライヴの新作が聴けるなんて嬉しいね。かなり久しぶりだし。彼らとはメンバーを共有していた部分もあるから。
ダイチ:初期の頃、僕たちの全米ツアーはソウライヴのオープニングアクトとして始まったんだ。彼らがいたから、僕たちもいろんな国に──アメリカにも日本にもファンがいるようになった。だから、彼らにはとても感謝しているよ。
ライアン:特に日本では本当に助けてもらったよ。当時、ソウライヴは世界中を精力的に回っていて、僕たちは年に1~2回しかライブをしていなかったから、彼らのツアーに同行させてもらったんだ。メンバーも共有し、まさに音楽的なファミリーだと言える。だから、彼らがまた一緒に演奏することになったと聞いて、すごく嬉しいね。最高のケミストリーを持つ仲間だから。
ソウライブの15年ぶりニューアルバム『Flowers』は2026年1月30日リリース予定
―では、日本のファンにメッセージをお願いします。
アダム:日本の皆さんの愛とサポートに、心から感謝しているよ。本当にありがとう。
ライアン:これからも、できる限り日本で演奏し続けたい。今回の来日は7~8年もブランクがあったけど、もうこんなに長い間を空けたくない。そして今回の来日は、スマッシュのクリスさん(栗沢慎一:フジロックのFIELD OF HEAVEN担当)のおかげでもある。彼が僕たちが戻ってくるのを助けてくれた。本当に素晴らしい人で、また一緒に仕事をしたいね。そして、ブルーノートやビルボードライブのような座って聴くクラブも大好きだけど──僕たちは基本的にはダンス・バンドだから、今夜のようにみんなで自由に踊れる空間だと最高なんだ。
ダイチ:そう、僕たちはダンス・バンドなんだ。だから、僕たちのライブに来てくれるときは、ぜひ体を動かして、自由に自分を表現してほしい(Express Yourself)。思いきり踊ってほしいんだ。
―今日のライブもソールドアウトでしたし、日本でもファンク人気が再び高まっているように感じます。そこで最後にお伺いします──ファンクの魅力とは何でしょう?
ダイチ:それはやっぱり、グルーヴだ。そしてアフリカのルーツを持つブラック・アメリカン・ミュージックである、ということ。ファンクは世界中の人々とつながる音楽なんだ。自由、表現、力強さ、そして洗練──僕たちが愛するすべてがそこにある。抗議の音楽であり、愛の音楽でもある。特にダンスと動き、そして演奏しているときに感じるあの高揚感が、どんなに素晴らしいか。だからこそ、若い世代にもぜひファンクを体験してもらいたいよ。
レタス
『Cook』
発売中
再生・購入:https://lettuce.ffm.to/cook


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