―Taigenさんは11月中旬に帰国され、さまざまなイベントに積極的に出演されていますよね。
Taigen:昨日もちょうどDJの二人会があって。OZWICKっていうロンドンの後輩ですごく気合の入った日本人のDJなんですけど、ちょうど日本に帰ってきていて。BO NINGENとして見せられる部分だけじゃなく、自分をDJだったりトラックメーカーとして知ってくれているクラブの人たちにも幅を見せられるのは本当にありがたい機会だなと思っていますね。
Sara Tonioni @ Botanique, Bologna 10.07.2025
―こうした日本での刺激が、ロンドンでの活動にもフィードバックされていくんですね。
Taigen:制作にもフィードバックされますね。自分は日本にいるとき、とにかくイベントをめちゃくちゃ詰めるんですよ。ライブであったり、DJであったり、本当にいろんな種類の現場に行きたいし、出演もしたい。そこで刺激をもらって成長することで、イギリスに戻ってからの自分にも返ってくるし、BO NINGENにもフィードバックされる。
―帰国される前、Xにアップされていた「一期一会」というトラックはどういう経緯で制作された音源なんでしょう?
今回の日本ツアーに向けてボーカル/編集、トラック一晩でフリースタイルしました。完璧主義崩れの真面目系クズ脱却に向け、これからはちょくちょくBandcampあげてきます。
FREE DLです。
お気持ちは現場に遊びにきて貰えたら????
ブッキングもまだ募集中????
[一期一会]https://t.co/8uJzhcykwl— Taigen Kawabe/Ill Japonia (@TaigenKawabe) November 15, 2025
Taigen:日本に帰る前にスタジオに入って何かやろうかなと思って。最初は、BO NINGENのデモや自分のソロ作品を試そうと思ったんですけど、うまくはかどらなくて。自分の場合、どうしても考え込んでしまうところがあって。特にバンドのほうは新作に時間がかかっていることもあって、「どう出すか?」まで考えすぎてしまう。だから今回は、「日本ツアーに向けて」というテーマを決めて、フリーで出しちゃおうと。さっき話した”循環”にも通じるんですけど、リリースすることで、ソロにもBO NINGENにも瞬発力みたいなものが生まれる。完璧主義とまではいかないけど、考えすぎて出せない自分から少し脱却したくて、それがバンドにもフィードバックできたらいいなと思って作りました。
―ここからは、BO NINGENの2025年について振り返っていただけたら嬉しいです。
Taigen:夏はフェスティバルをいくつか回らせてもらったんですが、6月に久々にロンドンで単独公演をThe Domeというところでやりまして。シークレットライブだったり小規模のギグは挟んでいたんですが、単独公演+UKツアーというのは久々で。去年は「LE GUESS WHO?」というオランダ・ユトレヒトのフェスでキュレーションもさせていただいたんですけど、BO NINGENとしても、メンバーのソロも出たし、日本から食品まつりさんを呼んだり、Gorgonnくんにも出てもらったり。ロンドンの即興音楽まわりのアーティストも出演して、ヨーロッパに散らばっている自分たちのクルーを呼んで、ブッキングして、というのをオランダでできたのが、去年のハイライトだったんです。
Sara Tonioni @ Botanique, Bologna 10.07.2025
その次のハイライトが、今年のRoadburn Festivalで。2年前はメインステージより1つ小さいステージだったんですが、今年はメインステージでオファーをいただいて。Roadburn Festivalは、昔でいうATP(All Tomorrows Parties)みたいに、フェス側とアーティストで話しながら、どうスペシャルにするかを作っていくフェスで。そこで提案されたのが、「セカンド・アルバム『Line The Wall』を全曲演奏してほしい」というオファーだったんです。セカンドはもう12年前くらいの作品で、今でもライブでやっている曲はあるけど、過去をまるごと今やるというのは、ちょっとためらいもあって。結果的に、本当にやってよかったし、すごく良いチャレンジになりました。
―そこでのチャレンジが、今回の日本公演にも繋がっているんですね。
Taigen:新作がまだ完成しているわけではないので、ワンマンを大きい箱でやるというよりは、もっとエクスクルーシブな公演を企画したほうがいいよねとなって。
―2ndアルバム『Line The Wall』は、海外でも日本でも”BO NINGENを知らしめた作品”として紹介されることが多いですよね。BO NINGENにとって、このアルバムはどんな作品になっているんでしょう。
Taigen:多くのバンドがそうだと思うんですけど、ファースト・アルバムは、デビューまでに作ってきた曲をまとめて出したような初期衝動の塊なんですよね。BO NINGENもそうで、ミックスも自分でやったり、あの時のBO NINGENがそのまま音になっている作品。そこから、セカンドをどうステップアップさせるか。
『Line The Wall』ジャケット
いまでもライブの最後にやる「Daikaisei」という15分くらいの曲があるんですけど、同じリフがずっと続いてトランスしていくような曲で。初めて観たお客さんでも、終演後に「最後の曲、どのアルバムに入ってるんですか?」と言われることが本当に多くて。そういう代表曲が入っている作品でもあるし、プロダクション面でも、バンドのアプローチでも、ダンスミュージック/ベースミュージックの考え方をバンドサウンドに持ち込む挑戦を詰め込んだアルバムだったと思います。ミックスはプライマル・スクリームやポールウェラー、エイジアン・ダブ・ファウンデーションなども手掛けている、ファンキー・ナチョことマックス・ヘイズさんにお願いしたんですけど、音像的にも明確にステップアップしているんです。ファーストが初期衝動の塊だったとしたら、セカンドはそこから一段、音のクオリティも、気合いも、全部次へ行こうとしている。そんな作品ですね。
―2025年に、『Line The Wall』をどうアウトプットしていこうと話し合ったんでしょう?
Taigen:構成を一回書き出して覚え直す作業をした時、「普通8小節・16小節で変わるところが、なんでこんな変なタイミングで変わるんだ?」みたいな発見があって。
―BO NINGENは、ライブでの出音の迫力もすごいですよね。当時の作品を、いま改めてライブで全曲聴けるというのは貴重です。
Taigen:3週間前くらいに、Jawara Alleyneというロンドンのファッションデザイナーと、BO NINGENの過去アーカイブを使ったファッション企画をやったんです。昔の物販の布パッチとかパス、写真、古いギター弦なんかも全部渡して、それを服にコラージュしてもらうみたいな。その発売記念のシークレットライブが、会場にスピーカーが一個くらいしかなくて(笑)、本番は乗り込みのPAさんがいなかったので、「もうバランスだけ取れればいけるでしょ」という状態でライブしたんです。そしたら、その日、お客さんから音が良かったと言われて。BO NINGENらしさって、案外そういうところにもあるのかもしれないなと思ったりしました。
Sara Tonioni @ Botanique, Bologna 10.07.2025
―アシッド・マザーズ・テンプルのツアー参加の影響も大きかったんじゃないですか?
Taigen:今年の4~5月にアシッド・マザーズ・テンプルのツアーを29本サポートさせてもらったんですが、そこで学ぶこともすごく多くて。やっぱり現場で叩き上げていく感覚は大事にしたいですし、ライブでの瞬発力は、自分にも、BO NINGENにとっても、すごく強みだと思っています。ある意味、それがコンプレックスになった時期もあって。「音源は音源でカッコいいけど、ライブはもっといいよね」って言われることがすごく多かったんです。ライブのバンドという認識が強いことは誇らしい反面、それをどうパッケージするかは、バンドとしてずっと抱えてきたテーマというか。コンプレックスと言うと強すぎるかもしれないんですが、ずっと頭のどこかにあるテーマではありましたね。
―そういう意味で、近年のBO NINGENの音源はライブ並の迫力を感じます。
Taigen:極端な例だと、亡くなられてしまいましたがダモ鈴木さんは、カンを辞めてからは絶対にスタジオ・アルバムを作らないというテーマがあったんですよね。ライブに宿るマジックはスタジオで失われるというライブ特化の哲学があった。一方で自分たちは、スタジオでしかかからない魔法みたいなものもすごく好きなんです。ライブとはまったく違うけれど、同じくらいの衝撃や迫力を別のアプローチで出せる。昔のインタビューでもよく言っていたんですが、ライブは五感六感全部で体験するもの。でも音源は基本的には耳だけ。耳だけに集中することでしか見えない景色、音源にしかできない魔法というものも間違いなくあって。そこは自分たちはすごく大事にしていますし、強く信じている部分ですね。
―クラブシーンに大きく影響を受けているTaigenさんだからこそ、そういう部分も活きているのかなと思います。
Taigen:そこはすごく意識しているところで。バンドがクラブ的なアプローチをすること自体は別に珍しいことじゃないと思うんですけど、安易にそっち側に寄りすぎないようにというか、自分たちがやる意味はすごく考えています。12年前、『Line The Wall』を作った時もそうですし、「今バンドというフォーマットでやる意味って何だろう」と常に意識している気がします。12年前って、今ほどではないですけど、バンドを組むことのハードルや価値が変わってきていた時期で。若いアーティストでもソロでやる人が増えて、バンドの形態自体が少しずつ減っていったタイミングだった。今ではもっとそうだと思いますけど、ファーストより、セカンド『Line The Wall』の時のほうが、その変化の波を意識していたんじゃないかな、と感じています。
―バンド観が変わり始めた時期の作品を、いま演奏することは、未来にもつながる出来事になりそうですね。
Taigen:そうですね。過去を見ることで、自分たちがどう変わってきたかがすごくはっきり見える。ちょっと話はズレるんですけど、この前、久々にカラオケに行ったんですよ。食品まつりさんと、いま世界中をDJで回っているRISA TANIGUCHIさんと。カラオケって歌詞がバーッと画面に出るじゃないですか。そこで「自分の歌詞って、ここからちょっと影響されてたのかも」と思って。それこそビジュアル系だったり、J-POPだったり。そこで初めて気づく自分のルーツの断片みたいなのも見えたりして。BO NINGENの曲も1曲だけカラオケに入っていて。『Line The Wall』に入っている「Henkan」なんですが、誰かが入れて(笑)。毎回ライブで歌詞を変えている曲なので、カラオケで当時の歌詞を見て「こんなこと言ってたのか……」みたいな。変な話、ライブで再現する時より、カラオケで歌った時のほうがその感じが強かったかもしれないですね。面白かったです。
―当時の自分の歌詞と変わった部分、変わらない部分でいうと、どう感じましたか?
Taigen:根本は変わってないなと。テーマは抽象的なんだけど、刺すところは刺すというか。自分で言うのもなんですが、フックとかパンチラインはかなりストレートで、包まずにズバッと言っている。その反面、抽象度が高い部分もある。そのバランスは、ファーストから今まで一貫しているんだなと。今新作を作っている中で、「いいんだけど、これ昔やったよね?」みたいな議論がわりと出るんです。BO NINGENの中での自分のアイデンティティをどう更新していくのか? 更新しすぎるとBO NINGENから外れるし、逆に寄り過ぎても焼き直しになる。この数年は本当にそこに向き合っていて。年齢的にも40手前くらいで、ここからどうメイクしていくかをすごく考える時期で。そんな中、セカンドアルバムを再現したことで、発見がすごくあった。ライブで再現したことで気づいたエッセンスを、もう一度引き出しとして持ち帰る、という作業が今回すごくできた感覚があります。
―ちなみに、現在進行形の新作は、リリースはいつ頃を目指しているんでしょうか。
Taigen:いまはレーベルだったり、どの段階の形でレコーディングに入るか調整をしているところで。デモやバージョンは山ほどあって、逆に考えすぎてしまうというか……ソロもそうなんですが、いろんな案が溜まりすぎると考える時間だけ増えてしまうんですよね。フェスやライブではどうしても既存曲が中心で、そこに新しい曲を少し混ぜていく形になるので、新曲を試す場が少ない。なので、どのタイミングで曲は完成なのか、Readyなのかという判断がすごく難しいんです。ただ、ここ最近ようやく全パート含めて前進し始めて、形が見えてきたのが現状で。来年中に出せればベストかな、というペースで動いています。
Sara Tonioni @ Botanique, Bologna 10.07.2025
―日本で3年ぶりの単独ライブ。メンバーの皆さん自身も、楽しみなんじゃないですか。
Taigen:だいぶ楽しみにしています。特にコロナを挟んで、1本1本のライブの重みが変わってきていて。Roadburnは4月でしたけど、その後の夏フェスでイタリア含めヨーロッパ各地を回ったり、毎週いろんな国でライブしているんですが、昔より1本1本が特別に感じるというか。いまはファイルを送り合って音源制作することが増えたんですけど、行き詰まることもあるし、意見のすり合わせでモヤモヤする場面もあるんです。でも、ライブをやると一発でそれが解消されるというか。「やっぱりBO NINGENでライブすると違うな」「4人で続けていられてありがたいな」と思える瞬間が増えました。当たり前じゃないんですよね、本当に。あと、日本は歌詞が全部伝わるから、MCも多分英語より喋ってしまうと思うんです(笑)。日本は自分たちの生まれ故郷でもあるので、特別な感覚があります。3年ぶりの日本公演となると、かなりエモーショナルになるんじゃないかなと思いますね。
―当時のアルバムの曲をやるということで、なおさらですよね。
Taigen:「Ten To Sen」という曲があって。BO NINGENにしては比較的ストレートというか、今聴くとちょっとビジュアル系っぽいというか、ポップとまでは言わないけれどメロディがしっかりしていて歌う曲なんです。それを今歌うと、自分でもグッと来るというか、当時とはまったく違う感情がそこに乗る。その変化がすごくハッとした部分で。今でもそういう感情を持てること自体がありがたいなとで。自分たちの過去の曲をやっていてビリビリ来る感覚それもすごく嬉しいし、大事にしたい。この感覚は忘れちゃいけないなと何度も思いましたね。
―1月13日のFEVERでのライブは、どんな構成になりそうでしょう?
Taigen:2部構成で、途中で少し区切りを入れる形になると思います。Roadburnでいうところのシークレットセットでやった部分と、『Line The Wall』でやった部分を日本では両方やるというか。それを公演の中で混ぜるのではなく、ちゃんと分けて提示するというイメージです。『Line The Wall』の全曲再現に加えて、新曲や、新アルバムに関連する曲、ベスト選曲に近い形のパートも考えています。
―貴重かつ、この先にもつながるライブになりそうですね。
Taigen:一度Roadburnでやってはいるんですが、もう一回ちゃんと聴き直したり、練習している中でも、前回とは違う発見があるので、メンバーそれぞれまた新しい気づきが出てくるだろうなと思っていて。そういう意味でも、自分たち自身とても楽しみな公演ですね。
<ライブ情報>
BO NINGEN performing "Line The Wall"
2026年1月13日(火)新代田FEVER
18:30 開場 / 19:30 開演
チケット 前売り 5000円 / 当日券 未定
チケット・リンク:https://t.livepocket.jp/e/19cfg
出演:BO NINGEN
SPECIAL GUEST:GRIMM GRIMM


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