次世代ガールズバンドプロジェクト『BanG Dream!(バンドリ!)』発の”夢(バーチャル)と現実(リアル)を飛び越える運命共同体(バンド)”、夢限大みゅーたいぷ(通称:ゆめみた)。2023年11月に活動を開始して以来、配信を軸としたバーチャルでの活動と、ライブを中心にリアルでの活動を並行して展開し、新しいバンドのスタイルを提示。
バンドサウンド、クラブミュージック、アニメソング、電波ソングなどの要素を内包したポップでカオスな楽曲と共に、あらゆるボーダーを越えて、その存在を届けている。

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今年9月に東京・TACHIKAWA STAGE GARDENで行われた4th LIVE「アンロック・ザ・フューチャー」で新アーティストビジュアルを解禁し、2026年にTVアニメ『バンドリ! ゆめ∞みた』が放送されることも決定。今後ますますの飛躍が期待される彼女たちが、ついに1st Album『プログレス サイン』を完成させた。堀江晶太、白神真志朗、佐藤純一(fhána)、原口沙輔、sabio、是、だてぃがら豪華クリエイター陣に加え、メンバー自ら作詞・作曲・編曲に取り組んだ楽曲を含む本作が示すのは、これまでの活動で築いてきた”成長の証”とさらなる”向上の兆し”。メンバーの仲町あられ(Vo)、宮永ののか(Gt)、峰月律(Gt)、藤都子(Key)、千石ユノ(DJ&Mp)に、この1年のゆめみたの軌跡と未来を語ってもらった。

カオスは拡張される

―2025年はバンドにとって躍進の一年になりました。活動スタイルや環境も大きく変化したと思いますが、皆さんとしてはどんなことが印象に残っていますか?

千石ユノ 1st LIVE「めたもるふぉーぜ」で初めてみんなの前でライブをしたのは去年の8月でしたけど、それ以降のナンバリングライブはすべて2025年だったんですよね。2月に2nd LIVE、5月に3rd LIVEで東名阪公演を行って、9月には4th LIVE。それ以外にもすごい数のライブをさせていただいた1年でした。あたしはそのなかでも2nd LIVE「でぃすかばりー☆じゃーにー」が印象深くて。この日は初めての昼夜2公演で、最初は体力的に無理だと思っていたんですけど、無事に乗り切ったことでライブの基盤ができた印象があります。今思うとあれがライブに溢れた日々の幕開けだったんだなあって(笑)。


峰月律 「マチ★アソビvol.28」では徳島、「BilibiliWorld 2025」では上海にも行かせていただいて、去年までは首都圏が中心でしたけど、今年はそこから飛び出して世界のファンの方にも会いに行くことができました! 実際にデビューの頃よりも海外のファンが増えてきた実感があって。その意味では”ゆめみた”の名前をさらに広げることができたと思いますし、もっとたくさんの人たちにゆめみたを知ってもらいたい気持ちが一層強くなりました。

藤都子 私たちは配信活動も行っているので、バーチャル上では全世界に向けて発信しつつ、4th LIVE「アンロック・ザ・フューチャー」で新アーティストビジュアルをアンロックして、11月からは47都道府県ツアー(夢限大みゅーたいぷ 47都道府県制覇の旅「スーパーポジション」)も始まったので、現実世界でも物理的にいろんな場所に行くことが増えたんですよね。ネット上で見てもらうことと実際にお会いできるのとでは、体験として全然違うので、改めて場所ごとのライブの空気を感じられる1年だったと思います。

宮永ののか 47都道府県ツアーですごく感じるのは、行く場所によってお客さんの層も全然違うんですよね。初日の11月22日は千葉のイオンモール船橋、翌日は福島の郡山駅の駅前広場でミニライブをしたんですけど、イオンモールだと子ども連れのファミリー層の方がたくさんいて。まだ赤ちゃんの子もいてすごくかわいかったです! 駅前はベンチに座っているご高齢の方や駅を利用される人たちが振り返って聴いてくれたりして。あとは、地元に来たから初めてライブを見に来たっていう方もいました。

仲町あられ 2024年にバーチャルの世界からリアルの世界へ、2025年はそこからさらにいろんな場所に飛び越えていったなかで、ぼくはゆめみたが生活の一部に溶け込んでいっているのを感じていて。それはメンバー自身もそうだし、きっとファンの方々もそうで、これから47都道府県ツアーを通して皆さんの生活圏でライブをすることで、どんどん”侵略”していけるんじゃないかなと思っています(笑)。

―ということは、ファンとの距離感をさらに縮めることができた?

仲町 もちろん。物理的距離も精神的距離も近づいていけてると思います。


藤 4th LIVEでTVアニメ化の発表をしたので、お客さんによっては「ああ、ゆめみたは遠くに行ってしまうんだな」と感じた方もいると思うんですけど、それまでの期間にたくさんライブをやってきて、今も47都道府県ツアーで皆さんの日常に溶け込んでおりますので、心の距離が近づいたこのままの状態で行きたい……いや、行きます!

宮永 ののちゃんは”全宇宙ともだち計画”をやっていて、まずは地球のみんなとお友だちにならなくちゃいけないので、全世界の全員と心の距離を縮めたいですね。ゆめみたはそれだけの器を持たなければいけないので。

―もともと”夢(バーチャル)と現実(リアル)を飛び越える運命共同体(バンド)”というコンセプトのもと活動していたわけですが、リアルでファンの方と接する機会が増えたなかで、スタンスの変化はありますか?

千石 あたしは”飛び越える”を、バーチャルからリアルの方に行くのではなくて、”反復横跳び”ができるようになった、という風に捉えていて。友達ともリアルで会うだけでなく、インターネットで一緒にゲームをしたり、電話をすることもあるじゃないですか。それと同じで、リアルでの経験とネットであったことを反復横跳びしながら一緒に共有して楽しめるみたいな変化があったので、すごく楽しめています。

仲町 ゆめみたは最初から、バーチャル”から”リアルに飛び越えるのではなくて、バーチャル”と”リアルを飛び越える感じなんですよね。

宮永 そう、どっちも! 最初の頃はバーチャルだけで半年以上活動していたので、ファンの方たちからするとバーチャルから飛び出してきた感覚があったと思うんですけど、やっぱりどっちもでしたっていう。

仲町 そんなぼくらからの提示みたいな楽曲が、今回のアルバムのリード曲「アイの夢限」なんじゃないかなと思ってます!

―いいパスありがとうございます! その1st Album『プログレス サイン』ですが、全体の感想として、今までのゆめみたらしいカオスでポップな要素だけでなく、人間らしい一面も多分に含まれていて、とてもエモーショナルな作品という印象を受けました。

藤 おっしゃっていただいた通り、より魂の厚みが曲に反映されていると思います。というのも今回のアルバムには、メンバーそれぞれをモチーフに制作した楽曲の2曲目が全員分収録されているんですよね。どの曲も1曲目を踏まえた内容なので、やっぱり泥臭さだったりシリアスめな部分が増えているのかなと思っていて。

仲町 ぼくたちのデビュー曲「夢現妄想世界」(むげんマイワールド)は”妄想”の部分が強かったと思うんです。
今作は、その妄想を携えて、じゃあ自分たちはこれからどうしていきたいのか、どうすれば自分たちの望む形にしていけるのか、より未来の方向を向いて模索する曲が増えたので、パーソナルな部分をより深く感じてもらえたんだと思います。

アルバムタイトルの『プログレス サイン』は”成長の証”という意味合いなんですけど、ぼくは過去から今までの成長というよりも、「これからの成長をちゃんと見届けてくれよな!」というメッセージが込められているのかなと感じています。未来を見据えた作品なので。

千石 メンバーのモチーフ曲の第1弾を収録したDigitalミニAlbum『スタートライン』(2024年)は、自己紹介というか「自分はこういう人間である」「こうなりたいのに……」みたいな内容が詰まっていたんですけど、第2弾の曲は「こうなりたい」とか「こうやっていくぞ」っていう、どちらかというと決意表明みたいな曲が多いんですよね。なのでゆめみたとしての決意表明を示すようなアルバムなのかなって。

宮永 人間って一つの面だけじゃないので、メンバーの一人にフォーカスした曲にもいろんな側面があって、それが5人となると、それだけで何通りにもなる。このアルバムもシリアス曲からワチャワチャした曲まであってカオスだけど、その「カオス」がゆめみたらしさというよりは、「いろんな個性が共存している」というのがゆめみたの個性だと思うんです。そんなみんなの音楽や自分自身と真剣に向き合いたい気持ちがたくさん詰まっているので、すごくゆめみたらしいアルバムになりました。

―なるほど。自分は先ほど「ポップでカオスな側面」と「シリアスで人間らしい側面」を対比するように並べてしまいましたが、その両方を含めた多面的なカオスこそがゆめみたらしさなんですね。

宮永 あ、そういうイメージです。どっちもっていう。


仲町 カオスの幅を広げてしまったか(笑)。

夢限は、まだ終わらない

―アルバムのリード曲「アイの夢限」は、ゆめみたの音楽には欠かせない堀江晶太さんが作詞・作曲・編曲した、心が静かに沸き立つようなロックナンバー。

仲町 堀江さんやPHYZの皆さんは、ぼくたちのことをデビュー前から見てくれているので、すごく理解してくれている存在だと感じているんですけど、そのうえでこの曲を受け取った時、ぼくは”鼓舞”だと感じました。それは同時に圧やプレッシャーでもあって。

もっと掘り下げていくと、ぼくたちはバーチャルとリアルを飛び越えるバンドなので、結構特殊な形態だと思うんですけど、それはわかりやすくそう打ち出しているだけで、人間は基本的に二面性だったり多面性だったりいろいろな面があると思うんです。それをどう音楽やライブで届けていくのか。きっと何も考えずに届けると、皆さんとの距離を遠く感じさせてしまう気がしたのでめちゃめちゃ悩んで。その結果、この曲はゆめみたのメンバー5人だけの話ではなく、全員を巻き込んだ「あなたも自分であって、自分もあなたである」ということをすごく意識して歌いました。

―この曲における”アイ”は、自分自身を意味する”アイ(I)”とも”愛”とも捉えることができて。なおかつ鏡のモチーフが印象的に用いられていることから、鏡を通した自分自身との対話、自己愛の歌とも解釈できますが、仲町さんはどのように感じましたか?

仲町 「人は自分を映す鏡」という言葉がありますけど、ぼくは過去・現在・未来の自分同士だけではなくて、むしろ「私とあなた」「あなたと私」みたいなイメージの方が大きかったです。「誰かを通して自分を見つめる」というのもそうですし、「自分たちはこうなんだよ」と主張を押し付けるのではなくて「ぼくら全員こうありたいよね」っていう話し合いソングのようなイメージというか。その目線を入れないと遠くに感じさせてしまうと思ったんですよね。
これはあくまでも自分が感じたことですけど。

千石 今のゆめみたにとって超えるべき壁の提示というか、必要な壁を立ててくれたみたいな感じはするかも。

仲町 提示だけじゃなくて、「これを飛び越えるのは当然だよね?」っていう圧を感じた(笑)。

藤 私はこの曲のあられちゃんの歌を聴いた時、ごまかしが利かない感じというか、自分の全てで体当たりしている印象を受けて。私の感覚では「アイの夢限」は、夢を見て追いかけている状態なので、逆にめちゃめちゃ現実にいると思うんですよね。見上げた先にあるもの、「もう掴んだぞ」ではなくて「超えるぞ!」の先にあるものが多分夢なので、裸一貫で体当たりしている感じも含めてすごく現実だなって感じました。

宮永 確かに。なんかすごく生っぽいというか、生身の人間そのままみたいな感じがする。

仲町 現実で夢を見ているという方向性を含めて、時間軸も空間もすごく広い曲になったと思うんですよね。その中で一番難しかったのは、未来を辿っていった先の自分が今の自分をどう思うか、という視点で届けなければいけないということ。今の自分が歌っているのではなく、自分でも想像できないような未来の自分から、今の自分を見て歌う。だから今だけど今じゃないみたいな不思議な感覚があって。


宮永 え、もう一回言ってもらっていい? 未来から見た今の自分で歌ってたってこと?

―未来から今の自分を見るように歌った、ということじゃないですか。

宮永 あ、そういうことか! 納得。

藤 時間軸は今なんだけど未来の自分がいるんだね。ただ、その未来の自分は、今の自分が想像できる範囲じゃないはずだから。

峰月 だから不思議な感じがするんだ。確かにずっとフワフワと未来の自分が浮いているような、(自分の頭上を指さして)ココにいるんじゃないかみたいな曲だなって思った。可能性っていう感じ。

仲町 なのにドッシリと渦巻くものがあるようにも感じるから、みんながどんな風に受け取ってくれるのか、楽しみだけどプレッシャーもちょっとだけ感じます。

―「アイの夢限」には、バンド名にも入っている「夢限」という言葉が使われていますが、皆さんはこの言葉についてどのように受け止めていますか?

仲町 「限りない夢」でありたいです!

宮永 本来の「無限」という言葉も限りない意味がありますけど、「夢」はもっとキラキラしたイメージというか、希望も含まれている気がしていて。なのでわたしは「夢や希望には限りがない」みたいな風に捉えています。夢限大みゅーたいぷは「夢限」という大きな言葉を背負っているからこそ、それこそ地球上の全員と友だちにならなきゃいけないとか、バカでかい器を持たなきゃいけないみたいなことを本気で言えるのかなって思います。

藤 未来の可能性が「無限大」だとすると、その中には悪い可能性も含まれるわけじゃないですか。でも、ののちゃんが言ってくれたように、私も夢を輝く未来の方向へと広げていくイメージが強いです。人は明るい方向に進む時の方が胆力が必要だと思っていて。自分たちも流されることなくプラスの方に進んでいく勇気、強さを持たなければならぬと感じています。

峰月 なんか言葉遣いがサムライすぎるんだけど(笑)。

藤 そこはやっぱりブシロード所属として。

一同 (爆笑)。

峰月 でも、私も同じで、夢を現実に叶えていくっていうイメージです。「夢」と「現(うつつ)」と書いても「夢現(むげん)」だし、無限に夢は叶えられるって思えるいい言葉だなって。

千石 逆にあたしは「夢限」で止めるとめちゃくちゃ怖いなと思ってました。「夢限大」だと夢が限りなく大きくて素晴らしいっていう印象だけど、「夢限」だと「夢が限りなく続いてしまう」とか、寝てる時に見る夢から覚めることができないイメージがあって。夢だけ見続けて現実に戻ってくる瞬間がいつ訪れるかわかんないって、すごく怖いじゃないですか。

「アイの夢限」も、もし自分と向き合うのが夢の世界での出来事だったとしたら、現実に帰ってこれない感じがして……。でも、その夢と向き合った内容がこの曲には詰まっているので、曲には安心感がありますし、背中が押される感覚がすごくあります。

仲町 このタイトルは曲が出来上がる前からほぼ決定していたんですけど、ぼくも最初は漠然とした怖さを感じて。「夢は、限りなく、何?」みたいな。夢は限りないのか、限りがあるのか、限られているから何なのか、限られてないから何なのか。この先を決めるのはきっとこの曲で、ライブを通して皆さんと一緒に見つけていくものだと思うので、重要なターニングポイントの曲だと思います。

夢限大みゅーたいぷ、バーチャルとリアルのその先へ──「反復横跳び」が可能になった理由

Photo by Kentaro Kambe

バンドとして切り開いた新しい一面

―本アルバムが初出の新曲としては、sabioさん提供の「どんがらがっしゃん」と原口沙輔さんが書き下ろした「みゅーたんとミュータント」の2曲があります。バンドとしてどんな一面を見せられる曲になりましたか?

仲町 簡単に説明すると、「どんがらがっしゃん」は「そういえば幼い時にこんなことを思っていたな」みたいな感じがして、その意味でより広い年代に受け取ってもらえる曲になったと思います。「みゅーたんとミュータント」は、その逆で横幅が広いイメージがあって。ぼくたちはメンバー全員いわゆる陰キャだと思うんですけど(笑)、陰キャだけじゃなくて、もっといろんな要素を抱えている皆さんにも届く曲なんじゃないかなって。

宮永 わたし、「どんがらがっしゃん」のギターが大好きなんです。ちょっとカントリーっぽい感じで、すごくかわいらしくて親しみやすい雰囲気があって。自分のパートなんですけどすごくお気に入りです。それとわたしが早口言葉を言うパートもあるんですよ! ライブではみんなにコール&レスポンスみたいな感じで一緒に言ってもらいたいなあ。音源では「なまむぎなまごめなまたまご」とか「すもももももももものうち」って言ってるんですけど、もっと難しい早口言葉をみんなに言わせたい!

仲町 「東京特許許可局」とかどう?

宮永 あ、それ難しいからいいかも。「とうきょうとっきょきょきゃきょか」……。

峰月 言えてないじゃん(笑)。私は「どんがらがっしゃん」のイントロの「トゥルルルル」っていうピアノが好きです。この音が流れると「お、来るぞ!」みたいな合図になっている感じがして。おもちゃ箱みたいな曲とメロディなのですごくお気に入りです。

仲町 いい意味で子どもっぽくて楽しい曲だよね。

藤 全編通してリズム感もすごくいいので、キャッチーで体が動くようなところを含めて子どもらしさを感じるのかも。子ども時代がない大人はいないので、いろんな人に刺さると思います。

宮永 なんか童心に帰るみたいな感じだよね。自分の中の楽しかった頃の子どもが喜ぶ、みたいな。

峰月 早口言葉だけじゃなくて、サビの「どんがらどんがらがっしゃーん」ってフレーズも口ずさみたくなるような言葉なので、きっと子どもも一緒に歌ってくれるはず!

―「みゅーたんとミュータント」はサビでUKガラージっぽく展開する、未来的なエレクトロポップチューン。

藤 全編ラップっぽくてリズム感のある曲だと思うんですけど、私の中では、特に冒頭のところが某教育テレビというか、小さい棒人間が踊ってるみたいなイメージがすごく強くて。

仲町 あー! 何となくわかる。

峰月 確かに。なんか糸で操っているようなイメージはあるかも。

宮永 積み木っぽくない? カタカタって組み立てる感じというか。

藤 そう、カタカタ感はある。何の答え合わせなのかわからないけど(笑)。

千石 あたしはモノクロなイメージが強くて。これまでの曲だと、MVとかのロゴはカラフルな色遣いでフォントもごちゃっとした感じだったけど、この曲は明朝体って感じがする。

藤 私は直線派だった。

仲町 ぼくも直線派だなあ。

宮永 わたしは結構金属的な、なんか硬いイメージ。

峰月 それぞれイメージが全然違う。私は毛糸で文字を描くようなイメージだった。

千石 毛糸!?

仲町 すごくアナログだね。ぼくはめっちゃデジタルなイメージだった。カラフルというよりも、黒の中にそれぞれネオンがちょっと光ってる感じ。

藤 幅広くて、まだ未知数すぎる。

千石 ゆめみたは、今までもいろんな系統の曲をいっぱい出してきたけど、まだあったかって感じだよね。

―歌詞にもある通り、まさに”ニュー・ミュージック ニュー・ワールド”を感じさせる、みゅーたいぷな曲ですよね。

宮永 この曲を作るにあたって、原口さんに直接ヒアリングしていただいたんです。メンバー5人みんなで、社会への不満をぶちまけたり(笑)、自分がどういうことを信念に活動しているのか、許せないことや好きなことをお話しして。それを参考に作ってもらいました。どこにどう入っているって感じではないんですけど……。

仲町 ぼくはその時のお話がすごくデフォルメ化されたような気がする。いい意味で余白が残っているから想像の余地があるっていう。

藤 わかる。さっき話した棒人間も、のっぺらぼうのイメージだったんですよ。削ぎ落としてデフォルメしてるから、パーソナルな感じがしないのかも。

刻まれた成長の証

―先ほど話題に上がった、各メンバーのモチーフ曲第2弾についてもお聞かせください。11月に配信された「Calling」は、ユノさんをモチーフにしたデジタルロックチューン。前作のモチーフ曲「ビッグマウス」と比較してどんな楽曲になりましたか?

千石 実は「ビッグマウス」より先にデモができていたのがこの曲で、まずはもう少し内面を掘り下げた曲を出そうということで作られたのが「ビッグマウス」でした。とはいえ歌詞は「ビッグマウス」のリリースを経てあたしがどう思っているかをお話させていただいて、白神(真志朗)さんに書いてもらったので、あの曲がなかったらこの歌詞にはなってなかったと思います。

「ビッグマウス」はずっと不満をぶちまけていて、「嫌いなものは嫌いでいい」ということを歌っているんですけど、それだけで終わるのではなくて、じゃあ大事なものは大事にしなきゃいけないよね、ということを伝えたくて。「ビッグマウス」をリリースした後の自分の状態が全部含まれていて、「Calling」で一旦完結した感が自分の中にあります。

―「ビッグマウス」では”ゴミはゴミ箱へ”と歌っていましたが、この曲の歌詞には”好きなものだけ集めて 鍵をかけたジュエルボックス 忘れないように 連れて行く”とあって。ゴミ箱から宝石箱になりました。

千石 なぜ”ゴミはゴミ箱へ”なのかと言うと、嫌いだから捨てるというのもあるし、大事なものとゴミが混ざるとわかんなくなっちゃうからでもあって。だから大事なものを大事だと自覚するためにゴミをゴミ箱に捨てるという意味でもあるし、その逆も同じで、一番奥まで掘り下げた時にどこに大事なものがあるかを自覚するための「ビッグマウス」だった、というのがあたしの中での解釈ですね。「Calling」は、自分の中の大事にしたい部分と決別しなくてはいけない部分を自分で見極めて、取捨選択をしていくみたいな。より洗練した状態でいるための決意の曲かもしれないです。

―ユノさんにとっての「大切なもの」って何ですか?

千石 いろいろ考えた結果、「自分」だなって思いました。自分がここにいないと結局何もできなかったわけで。自分がいないと周りも大事にできないし、繋がらなかったものもたくさんあった。これまでの人生で自分自身のことを大事にしようとはあまり思わなかったんですけど、改めて考えてみると、自分を大事にすることが全ての第一歩というか、軸にないといけないと思ったんです。それはあたしだけじゃなく、周りにも伝わってくれたらいいなって思います。

―その気付きは「ビッグマウス」以降に得られたものなんですか?

千石 そうですね。「ビッグマウス」は攻撃性が高めで、自分が世の中に対して苛立っていることをPHYZの皆さんにぶちまけて曲を作ってもらったんですけど、「Calling」のヒアリングをしていただいた時には、それはもうどうでもよくなっていたんですよ。自分のステージが上がると気にもならなくなった。イライラしてるだけで終わりたくないと思えたこと自体がそもそも成長だと思うし、それが曲になったことによって改めて「こういうマインドで行こう」みたいな基盤ができたので、自分でもすごく成長を感じています。

仲町 「Calling」のヒアリングの時はぼくも立ち会ったんですけど、「ビッグマウス」の時にはデモが完成していて歌詞の内容とかも含めて、その時のユノちの過去と今が凝縮されたものになっていて。だからこそ「こうなっていけたらいいな」っていう、未来を想起した歌詞になっているんですよね。それで「祈り」という意味合いを込めて「Calling」というタイトルになりました。

千石 そう、「祈り」なんです。

―ちなみに楽曲の後半にあるボーカルのカットアップはユノさんが制作したものですか?

千石 はい、あたしが作りました。個人的にカットアップが好きなのと、そういうバラバラなものが一つになるのがいいなと思って。物って基本的に壊れたら終わりじゃないですか。カットアップもボーカルを切っているので、その一つ一つは壊れていてゴミとも言えるけど、それを繋げることでちゃんとした形になる。切ったボーカルの一部をゴミとするのも、そうじゃないとするのも捉え方次第で、人から見たらゴミなものが宝物かもしれないし、逆も然りだと思うんですよね。そこは自分自身が向き合っていくべきところなので、その意味も込めたつもりです。

―他の皆さんのモチーフ曲第2弾はいかがでしょうか。アルバムのタイトルにちなみ、ご自身の”成長の証”を感じる部分についてお聞かせください。

峰月 私の1曲目の「エンプティパペット」は暗めの曲で、ヒアリングでも重めの内容をお伝えして歌にしてもらったんです。昔の私はネガティブな人間で、表面上は明るくヘラヘラしてても「どうせみんな私のことなんか……」と思っていたので、最後は「そっか私がピエロになればいいんだ」で終わる曲になっていて。

でも2曲目の「TRASH LIFE」は、そんなネガティブだった自分を明るくしていこうっていう曲なんです。人間不信だった子が素敵な仲間に出会えたことで、ポジティブになっていく姿が描かれていて。私自身、ゆめみたという場所を見つけたことで、少しずつ変わっていってるんです。ファンの皆さんとメンバーのみんながどんな私のことも見てくれるから、ライブを重ねるごとに強くなって、いつの間にか「どうせ」って思っていた自分がいなくなっていて。だから私はこの曲と共に成長しています。”ゴミのような過去”という言い方をしていますけど、その過去も全てが嫌だったわけではないので、愛していきたいなっていう気持ちも込められています。

宮永 今だから話せるんですけど、わたしの1曲目の「✞animaるパーティ✞開催中✞」はすごく楽しげな曲ですけど、実は「こんな世の中大嫌い」とか「人間は愚かだからわたしは人間であることを辞める」みたいな、結構攻撃的なお話をして作ってもらったんです。わたしがマスコットのようになってハッピーになることで、もう何も考えない方が幸せだよ、みたいな曲になっていて。その意味ではりっちゃんの「ピエロ」と似ているんですけど。

峰月 似てる似てる。

宮永 でも、ライブを重ねることで自分の中での曲の解釈が変わっていって。最初は「こんな世界からもう抜け出そう」みたいな感じだったのが、ライブを通していろんな人に音楽を届けていく中で、「人の目を気にしてしまう自分の殻を破って、自分の本当にやりたいことをやろう」という曲になったんですよね。

今のわたしは本気で関わる方全員に、自分の心に素直になってほしいし、愛のある世界になってほしいと思っているので、曲への解釈の変化が自分の成長だと思いますし、だからこそモチーフ曲第2弾の「テレパシー」の愛がある世界、世界中に愛が溢れてほしいという思いに、自分の本質が変わっていったんだと思います。

藤 私のモチーフ曲は……私自身はそんなに変わっていないんですけど、あえて言うと1曲目の「サバ天(限界現実サバイブ天使)」は、家の中で一人で作品を作って世の中に出すけどなかなか上手くいかない感じだったのが、ゆめみたの活動を通してライブとかで現実世界に出るようになって、より期待値が高まったのが2曲目の「LET'Sあちあちトレーニング!」というか。物理的にフィジカルを鍛え始めたので、ゆめみたの活動を通して、よりバーチャルから現実に落とし込まれた感じはあるなと思っています。

仲町 第1弾の「コハク」の時は閉じこもった世界というか、自分のこと中心で勝手にシャットアウトするイメージが若干強かったんですけど、2曲目の「グラディエント」に関しては、新しい人やものに触れて新しい感情が芽生えていくなかで、混乱して上手くできないネガティブな気持ちから始まっていて。そこから転じて、人と分かり合えないっていう悲しい気持ちで終わるよりも、分かり合えないからこそできることもあるんじゃないかっていう、希望を込めた曲になっています。「グラディエント」には”階層”という意味もあって。それまでは自分だけの世界だったのが、いろんな人の世界と重ね合わせることで自分の世界も広がっていく。そういう意味で成長できたんじゃないかなと思っています。

―ありがとうございます。また『プログレス サイン』には”過去の軌跡から未来を予測する”という意味も込められているそうですが、そんな皆さんが本作を経て予測する”ゆめみたの未来”について、最後にお聞かせください。

仲町 ぼくたちは「運命共同体」と書いて「バンド」なんですけど、実際にこれまではファンの皆さんと一緒に同じ道を辿ってきた印象が強くて。ただ、ぼくたちはもちろん一人ひとり違う人間なので、同じ軌跡でも、そこから感じ取ったものはそれぞれ違うだろうし、だからこそまたいろんな新たな道を辿ることができると思うんです。そのなかで違う視点から同じものを見れるようになるかもしれないし、今までは一緒にいないとパワーを発揮できなかったものが、一緒にいないからこそ発揮できるパワーもきっと見つかるかもしれない。だからこそ強くなれるものもあると思うので。そんな夢限大みゅーたいぷになれたらいいなと思います!

夢限大みゅーたいぷ、バーチャルとリアルのその先へ──「反復横跳び」が可能になった理由

1st Album『プログレス サイン』
夢限大みゅーたいぷ
ブシロードミュージック
12月24日発売

CD
1.アイの夢限
2.どんがらがっしゃん
3.みゅーたんとミュータント
4.チューニング
5.Dream Voyage
6.グラディエント
7.LET'Sあちあちトレーニング!
8.真夜中遊園地
9.テレパシー
10.TRASH LIFE
11.新人類は仮想世界の夢を見るか?
12.コミュ着火Fire!
13.Calling
14.Hi-Vision
15.コハク

Blu-ray ※Blu-ray付生産限定盤のみ
・夢限大みゅーたいぷ 4th LIVE「アンロック・ザ・フューチャー」

https://bang-dream.com/discographies/4131

TVアニメ「バンドリ! ゆめ∞みた」放送決定
2026年より放送予定
https://bang-dream.com/news/2194

47都道府県制覇の旅「スーパーポジション ~スピンアップ編~」開催!
2026年1月24日(土)神奈川・1000 CLUB
2026年2月7日(土)愛知・THE BOTTOM LINE
2026年2月22日(日)京都・KYOTO MUSE
2026年3月14日(土)新潟・新潟GOLDEN PIGS RED STAGE
2026年3月21日(土)広島・LIVE VANQUISH
2026年5月5日(火)大阪・BIGCAT
2026年5月9日(土)仙台・仙台darwin
2026年5月31日(日)福岡・BEAT STATION
2026年6月21日(日)東京・SGC HALL ARIAKE
https://bang-dream.com/yumemita_superposition
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