2025年、ソロアーティストとしての活動を本格始動した礼衣。遡ること同年3月、Xアカウントを開設し、「礼衣、はじまります。」と高らかに宣言。
その後、同月からスタートしたMAISONdesの新プロジェクト・日曜日のメゾンデのボーカルとして次々と楽曲を発表。そして8月には、ソロ名義で自身が作詞作曲を手がける楽曲を歌うことを宣言し、9月に1stシングル「違法建築」、12月に2ndシングル「ビアンカ」をリリースした。今回、礼衣にインタビューを敢行し、大きな転換点となった2025年を振り返ってもらった。歌うこと、また、歌をつくることに彼女が懸ける深い想いを全編から感じ取ってもらえるようなインタビューになったと思う。

ー今でもよく覚えているんですけど、3月にXで「礼衣、はじまります。」と宣言して、その投稿に対して世界各国から本当にたくさんの反響があって、あの時、礼衣さんの活動がとても多くの方から待望されていたことを実感しました。歌を続けたい、新しい形で活動を始めたいという想いは、ツユとしての活動が終わった後からずっとあったのでしょうか?

振り返ると、そもそも私は、歌をやりたいって思う明確なきっかけはないまま、自然とずっと歌をやっていた感覚だったんですよね。毎回機会とか人に恵まれて歌を歌っている、みたいな感じだったんですよ。ツユとしての活動が終わって、わあどうしようってなって。人生で初めて、これからどうするかっていう岐路に立ったというか。歌をやりたいのか?みたいな。やめちゃうこともできるし、OLになるとか、いろいろな選択肢はあるよなと1回思ったんですけど。でも、歌しかないよね、やっぱ音楽しかないよねって、その時に改めて思わせてもらうことができたっていうか。
その時に、初めて、1人でやっていこうって決めたっていう感じでしたね。それが、初めて自分の意志で決めたことかもしれません。

ー3月の「礼衣、はじまります。」宣言の数日後に、最初のアクションとして、日曜日のメゾンデのボーカルとしての活動が発表されましたね。今から思うと、日メゾの発表をするより前に、礼衣として活動していくことを宣言しておくことが大事だったのだと思います。

そうですね。日メゾが始まる前に、礼衣のソロプロジェクトが始まることを言おうっていうのが最初のポストで、その時は、まだ自分が書いた曲を出すよとか言ってなかったんですけど、いろんなことをやってくよ、日メゾは礼衣の活動の一部だよ、みたいなことが伝わったらいいなと思っていました。

ーその後、日メゾとして楽曲を次々と発表しつつ、8月末に「初めて作詞作曲を手がけた楽曲をリリースします。これから、私の音楽を始めます!」「歌やめないし、きっとすごいことになりますので、もう一度見つけてほしいな」とSNSで投稿し、9月に最初の楽曲として「違法建築」をリリースしました。初めて作詞作曲を手がけたというのが大きなポイントで、ファンの方からのリアクションもすごく大きかったと思います。

どう思われるのかなっていう気持ちはありつつ、けどもう、私のリスナーさんってめっちゃあったかいんですよね。だから、絶対めっちゃ喜ぶわー、褒められるわーっていう、そんな感じでした(笑)。実際に「礼衣ちゃんの書いた歌詞、楽しみ!」みたいな感じで、すごくみんな楽しみにしてくれましたね。
すごいいい人たちばっかり(笑)。

ーちなみに、どのような流れで、ご自身が作詞作曲に携わることになったんですか?

改めて歌をやっていきたいとなった時に、じゃあ曲はどうする?ってなって。それまで私は曲を書いたことがないし、自分で書けるとも思わないし、周りからも書けると思われてない状態だから、最初は、誰に書いてもらう?というところから始まったんです。でもそこで、ちょっと作詞作曲をやってみたいかも、と思って。やっぱり、自分で書いた楽曲を自分で歌うほうが説得力が増すし、深みも出るし、聴く人への伝わり方も今までと変わるよなって思って。今までいろんな楽曲を歌ってきてるから、今まで蓄えてきたインプットだけはめちゃくちゃあるから、もう曲を書ける材料は揃ってるんじゃない?やれるんじゃない?って思って。それで、ちょっとやってみようって思ったっていう感じです。

「違法建築」は決別の曲、「ビアンカ」は新しい家

ー初めて歌詞やメロディを書く時、大なり小なり不安があったのではないかと想像するのですが、初めてチャレンジしてみていかがでしたか?

最初は、やっぱり不安でしたね。でも次第に、自分が歌いたいものを作れるんだ、自分がやりたいようにやれるんだ、みたいな気持ちになりました(笑)。いい曲作ってみろって言われたらちょっと怖いですけど、これまでたくさん歌をやってきた自信はあったから、自分が歌いたくなるメロディーを作ればいいんだなーって思うと、じゃあいけるのかなって。恐る恐るやってみた、みたいな感じですね。

ー1曲目の「違法建築」を作り上げた時、どのような実感を得ましたか?

自分でこれがいいと思って完成になってるんだけど、やっぱ世に出すまで分かんないんだなっていうか、みんなこんな感じなんだなって思いました。
達成感より、なんかできちゃったよー、これどうなるんだろう、みたいな。

ーレコーディングの時、自分が書いたメロディを自分で歌ってみて、どのようなことを感じましたか?

自分が書いたものなんで、本当に自然に歌えましたね。あんまりいろいろ考えることなく、やりたいようにレコーディングさせてもらいました。一方で、自分の楽曲なので、誰もディレクションしてくれないっていうか、私がそうじゃない?って言ったらそうなっちゃう、みたいな。

ー正解が自分の中にしかない、というか。

そうですね。もうだいぶ慣れてきたんですけど、1曲目の時は、もうぐるぐるぐるぐる変な方向に行って。ちょっと血迷いましたね。最初はめちゃくちゃ時間がかかりました。それで結局1テイク目が使われる、みたいな。

ー最もフレッシュに、最もフラットに歌えたのが1テイク目だった、ということでもあるのかもしれませんね。

そうなんです。
私、レコーディングの時に、歌詞カードに何もメモせず、真っ白な状態で歌うタイプで。意識しすぎると変になっちゃうんですよ。なるべくナチュラルに歌うのがいいなと思っていて。特に自分の曲だと、それをもう存分にやれる感じですね。

ー直球の質問をするのも野暮かもしれませんが、なぜ、一番最初の曲で「違法建築」というテーマを歌いたかったのか、または、歌わなければならないと思ったのか、お聞きしていいですか?

礼衣ソロとしての1曲目ってことだったんで、今この状態の私にしか書けないことを書きたいなって思って。そしたら、やっぱりこれまでのことになっちゃった、って感じで。「違法建築」っていうタイトルなんですけど、私、ツユの活動のことをずっとそうやって思ってて。グラグラだけど立ってる、みたいな。曲の全部がツユのことってわけでもないんですけど、グラグラな状態が保たれてて、それが壊れましたけど、そこを綺麗にしたらまた家が建ちますよ、みたいなイメージが浮かんで。どれも私がやってきたことでもあるから否定したくない、グラグラしてたけどそれはそれですごい美しいじゃん、みたいな。なくなったけど、新しい家建つしいいじゃん、みたいな。そうやって、これまでのことを肯定したかった。
その時にわあって漠然と思ってたことを、最初の曲で表現したいっていう感じでした。

ーリリースから数カ月が経って、今の礼衣さんの中で、「違法建築」は、どのような位置付けの曲になっていますか?

最初、ツユとの決別の曲と思ってたんですよ。もうツユのことを書く気はなくて。最初で最後にしようって決めてたので。さよなら、みたいな。けど、時が経って、別にそこまで強く思わなくなった、というか。ネガティブな曲じゃなくて、自分の中で、「だってそうだったやん」「こんなんでしたやん」みたいな、そういう”思い出”みたいな感じですね。

ー12月に、2曲目として「ビアンカ」をリリースしました。白、白紙というキーワードが印象的なこの曲を聴いた時、まるで第2のデビュー曲のようだと思いました。

1曲目のときは「決別の曲を書くぞ」と思って「違法建築」を書いて。その次は、前向きな曲を書こうって思って書いた感じですね。ぶち壊した更地に建った新しい家ですね、「ビアンカ」は(笑)。


今から思うと、「違法建築」は、もう言いたいこと言おうみたいな曲で。出すことに意味がある、というか。それに対して「ビアンカ」は、言いたいことを言うという意味もこもってるんですけど、キャッチーにしたいなっていう感じで。キャッチーがなんなのかは今も模索中なんですけど、ちゃんと音楽として楽しく聴けるみたいな要素も入れたいなって意識はしたので、聴いててキャッチーになってるのかなっていう感じがありますね。

ーこの歌は、礼衣さん自身の歌でもありますが、抽象的に解釈すれば、誰しもの生活や人生に響く普遍的な応援歌としても聴くことができると思いました。2曲目にこういう曲が来て、僕もとても驚きました。

ありがとうございます!

”綺麗事が眩しい”あなたへ──寄り添いすぎず突き放しすぎない言葉

ー今後はどんな曲を書いていきたいと考えていますか? もし、ご自身の中に予感やビジョンがあれば教えてください。

私自身、ちょっとひねくれた人間だっていう自覚があって。明るくていい言葉って、私にはちょっと眩しすぎて、うわってなったりするんですよね。そんな私が書く歌詞って、絶対真っ直ぐ素直にはならないわけじゃないですか(笑)。それが、私と同じような人に刺さっていったらいいなって思うので。そういう自分らしさみたいなものは、これからさらに出ていくのかなと思っています。私は、綺麗事とか、媚びを売るとか、お世辞を言うみたいなのが本当に苦手で。けど、やっぱり歌詞を書く以上、ちょっと綺麗にしなきゃいけない時もあるし、綺麗事をすごい苦手としてるけど、音楽を通してだと、そういうことを素直に言えたりすることもあって。なので、私と同じように綺麗事にうわってなる人が、いいなって思えるような、寄り添いすぎず、突き放しすぎない感じでやっていけたらと思っています。全部肯定するっていうキャラでもないんですけど、やっぱりそういうこともちょっと気になっちゃう、みたいな。このややこしい性格が反映されるややこしい曲が、ややこしい人に愛されてくれ、っていうふうに思っております。

ーご自身の性格についてひねくれているとおっしゃいましたが、そう思うようになったきっかけなどはあるのでしょうか。

私、めっちゃ偏差値が低い、ギャルばっかり集まっている女子高に通っていたんですけど、私が入っていた部活だけは全国でも激強で、その部活はとにかくめっちゃ厳しくて、だから私は真面目な生徒で。でも、教室に戻るとギャルばっかりなんですよ。私は、自分のことを、根暗で、ギャルじゃない、ギャルとは仲良くなれない、と思っていたんですけど、でも一方で、ギャルの素直さがめっちゃ羨ましいと思っていて。そういう環境で3年間過ごしたことが、私の性格に絶対影響を与えてると思います。でも、ギャルにも私の音楽を聴いてほしいです。きっと、いい子だから聴いてくれるし、応援してくれる。

ーギャルに対する信頼の厚さがすごいですね。

一番素直なんで、ギャルって。仲間意識がすごいし。私の中には、そうなりたい自分と、そうなれない自分がいて、だからひねくれた性格(笑)。

ー今後、ファンの方たちに、どのような姿を見せていきたいと思っていますか?

私は、ファンの人たちにめっちゃ支えられてて。自分がみんなの支えになってるって思わないぐらい、支えられてる実感のほうが強いんですよ。でも、みんなは「支えられてます」ってすごい言ってくれて。私は不器用ですけど、私の音楽を聴いてくれる人、共感してくれる人も、私と同じようにいろいろ抱えてると思うんで、でも私は、ファンの人たちに自分の背中を見せるとかそういうタイプではないから、これからも支え合う感じで、一緒にいてくださいって、こっちからお願いしたいっていう感覚ですね。

ー今後のライブ活動については、どのように考えていますか?

やっていきたいですね。早くそういう場を作りたいです。元気がもらえるので。綺麗事は嫌いなはずなんだけど、ファンに対してはマジで綺麗事じゃなく本気でそう思えるから。もう泣けてくるぐらいまっすぐな言葉をくれて、本当にありがたすぎて。それがなかったら、もう辞めちゃってるんで。本当に、ファンの人たちがいるから続けられるんだなって思うから。みんなが「早くやってほしい」とか、「会いに行きたい」って言ってくれるから、早くライブをやらねばって思っています。

礼衣、2025年のソロ始動を語る──“ややこしい人”を救う歌を書きたい

「ビアンカ」
礼衣
配信中
Streaming / DL:https://orcd.co/rei_bianca

礼衣
音楽ユニット・ツユのボーカリストとしての活動を経て、2025年よりソロアーティストとして本格始動。同年9月にはソロデビューシングルを配信リリース。等身大でありながらも一筋縄ではいかない言葉選びと、切なさと清涼感を併せ持つ歌声が特徴。架空の音楽アパート”MAISONdes” の中の、どこかの本棚にある「週刊少年サンデー」 「サンデーうぇぶり」発の漫画作品を、さまざまなクリエイターが音楽にするアーティストプロジェクト”日曜日のメゾンデ”ではボーカリストを務める。

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