2015年に、スナーキー・パピーの元メンバーであるロバート・”スパット”・シーライト(Dr)と、現メンバーのネイト・ワース(Per)によって結成されたファンクバンド、ゴースト・ノート。2024年の久々の来日では、リードシンガーを加えた現体制でステージに立ち、その衝撃は苗場の空気を一変させた。強烈なグルーヴと、大衆を巻き込む熱量、そしてスパットの一声で次々と展開やリズムが書き換えられていく即興性──もはや「曲を演奏する」というより、「その場で作曲している」と言ったほうが近いかもしれない。ゴースト・ノートが圧倒的なライブ・バンドであることを、誰の目にも焼き付けた瞬間だった。2025年はライブハウスという距離の近い空間で、さらに濃密で自由度の高いパフォーマンスを披露した。
そんな流れの中で迎える、2026年のビルボードライブ公演(2月2日・横浜、2月5日・東京)。今回はその来日を前に、バンドリーダーのスパットに話を聞くことができた。彼らのサウンドはどこから来て、どこへ向かおうとしているのか。スパット自身のドラム・スタイル、現在のメンバー編成、そしてマイクで指示を出しながらライブを自在に展開させる現在のステージングは、どのようにして生まれたのか。スパットの語りから、バンドの現在地と揺るぎない核心を読み解く。
2025年、オランダ・North Sea Jazz Festivalでのライブ映像
結成秘話とコンシャス・ファンクの思想
—日本でのライブは3年連続ですね。私も最近頻繁にゴースト・ノートのライブを観れて嬉しいです。ここ最近の活動の中で、日本でのライブは特別な体験になっていますか?
スパット:もちろんだよ。本当に特別な、素晴らしい体験だった。僕たちは日本が大好きだし、これまでにもいろんなアーティストと来日して演奏してきた。(ゴースト・ノートの)キーボードのドミニク・ザヴィエル・タプリンと一緒に、TOTOのツアーでも来日した。どれも素晴らしかったよ。
だからずっとゴースト・ノートを日本に連れて来たいと思っていて、その機会がついに訪れたから、すごく嬉しかった。みんなが歓迎してくれるなら、これからも毎年行きたいね。
この投稿をInstagramで見るNate Werth(@nwerthy)がシェアした投稿2025年2月の来日ツアーも大盛況
—ぜひ、毎年来てほしいです! では改めてバンドについて聞かせて下さい。ゴースト・ノートはどのようにスタートして、どのように今の形になっていったのでしょうか?
スパット:最初は僕と、パートナーのパーカッショニスト、ネイト・ワースだけでスタートした。僕たちは二人ともスナーキー・パピーで演奏していて、2015年に二人でビートを作るレコーディングをしようと決めたんだ。
最初はツアーをするつもりは全くなかったんだけど、アルバムが完成したらツアーの依頼が来た。スタジオでは基本的に二人でレコーディングしていたので、ツアーメンバーが必要になって、バンドにメンバーを加え始めた。そこからアルバムを出すうちに、いろんなメンバーが入ってバンドは自然と大きくなり、今ではフルバンドの編成になったんだ。
最新アルバム『Mustard n'Onions』ではさらに進化して、ボーカルも取り入れた。パンデミックの後、2020~2021年頃にボーカルを入れ始め、リードシンガーのマッケンジー・グリーンも加入してくれた。バンドはずっと進化し続けていて、今の編成や、作っている音楽にはとても興奮しているんだよ。
—ネイト・ワースとのコンビネーションはあなたにとって特別なものだと思います。実際に演奏している時はどんな感覚ですか?
スパット:そうだね……双子の兄弟みたいな感じかな。僕たちは一緒にうまく演奏する方法を、自然と身につけてきた。長年一緒に演奏してきたミュージシャンのファミリーがいて、ネイトもその一員なんだ。ずっと一緒に音楽を作ってきて、同じ音楽を聴いて育って、同じように学んで、世界中を一緒に回ってきた。
—ゴースト・ノートはどんなアーティストの影響があるのでしょう?
スパット:僕たちはみんな、ジャズを勉強するところからスタートしたと思う。そこから始めるなら、もちろんジョージ・ベンソン、ジョン・コルトレーン、キャノンボール・アダレイ。僕個人で言えば、アート・ブレイキー、ハービー・ハンコック、マイルス・デイヴィス。それからウェザー・リポート、リターン・トゥ・フォーエヴァー、ヘッドハンターズなど。
ファンクではラリー・グラハムとグラハム・セントラル・ステーション、スライ&ザ・ファミリー・ストーン、タワー・オブ・パワー、ジェームス・ブラウン、プリンス、ジョージ・クリントンとPファンク。
ブルースだと、ジョニー・ギター・ワトソン、B.B.キング、アルバート・キング、それからレイ・チャールズ。他にも、ロックだとジミ・ヘンドリックスとか……。こうしたいろんなアーティスト、いろんなジャンルの音楽すべてが、僕たちが演奏している音楽に影響を与えている。
僕たちはその影響を、すべて一つにまとめようとしている。つまり音楽を作るとき、そうした色々なアーティストたちのニュアンス、経験や、志のすべてが、僕たちの演奏の中に出てくるんだ。
—あなたは以前、ゴースト・ノートの音楽を「コンシャス・ファンク」と表現していました。それはどういう意味ですか?
スパット:それは、今話したこととまったく同じなんだ。コンシャス・ファンクは、僕たちのすべての影響源や発見を包み込む音楽だ。そして同時に、聴いた人々にこれらのジャンルの音楽に気付いてもらう(コンシャス=意識的・自覚的な姿勢)という意味もある。
僕らや、僕らの影響源の音楽を知ることによって人々は音楽への愛を保ち、音楽の歴史への理解を深めることができる。世界が音楽に平和を見出したり、音楽を通じて人生のポジティブな面や楽しい瞬間を捉えられるようになる……そういう意味なんだ。
スパットが語るグルーヴ/ドラム論
—ゴースト・ノートの近年のライブを見てとても驚いたのが、ライブの展開が自由で、非常に即興性が高い、ということです。次にどんなリズムになるのか、どんな展開になるのか、ということが、かなり即興で決められているように感じました。観ているこちらは先が読めなくて、まるでジェットコースターのように楽しめます。どうやってこのスタイルになっていったのでしょう?
スパット:僕たちは毎晩演奏しているから、その時々の観客からいろいろなインスピレーションを受けるんだ。それで曲の演奏の仕方を変えたり、ステージで毎回違うことをやったりするようになった。
僕の作曲では、バンド全員の個性が出るように書いている。
そしてさっきも言ったけど、僕はジェームス・ブラウンの大ファンだ。もし僕がドラマーじゃなかったら、たぶんステージ前方で踊って、次の展開を指示していたと思う。でも僕はドラマーだから、ドラムの後ろに座らないといけない。だから(次の展開など)すべてを声で伝える必要があるんだ。
—ここ数年でそうなってきたとのことですが、以前は違ったのでしょうか?
スパット:そうだね、昔は違ったよ。たぶん6年くらい前から、マイクを使ってメンバーを紹介したり、ソロを振ったりするようになった。
それから、マイクで次の展開やリズムの指示を出すようになった。そういう即興が、僕たちの音楽の作り方に楽しい追加要素として加わったんだよ。僕たちの表現の核には即興がある。僕は作曲でもソロパートなどで即興の余地を作るし、そこではすべてが自由で、みんなで楽しんで、観客からもエネルギーをもらっている。それが僕たちの今のパフォーマンスになっているんだ。
2025年11月、Tiny Desk Concertで快演を披露
—次はグルーヴについてお聞きしたいです。あなたたちのグルーヴは本当に素晴らしい。細かく鳴り続けるクリックのように非常にタイトなのに、そこに機械的な感じは一切ない。有機的で、うねりがあり、完全に生のグルーヴです。こんなにタイトなのに、ここまで生々しいファンクのグルーヴはめったに体験できないと思っています。これはどのようにして実現しているのでしょう?
スパット:僕たちは時間をかけて、自然とそういったグルーヴが生まれるようになってきたんだと思う。言葉で説明するのは難しくて……(演奏中の)僕たちは、ほとんど幽体離脱みたいな感覚なんだ。お互いの音をよく聴いて、反応し、返していくことでそうなっていく。
さっきも言ったように、僕たちはみんないろんなアーティストから影響を受けて、それぞれの音楽の言語の一部を研究し、学んできた。その影響や要素が、お互いを聴きながらグルーヴを作っていると、自然と演奏に現れてくるんだ。もちろん、その瞬間に何が起きるかは分からない。僕たちにとっても予測不能だ。でもそれが楽しい。そして僕は、全体が巧妙に、まとまった流れになるように導くよう心掛けている。バンドリーダーとして、それは当然の役割だと思うからね。
—今の話とも関連しますが、あなたのドラムはとても音楽的ですね。メンバーのプレイに即座に反応して新しいリズムやフィルを組み立てていく様子は、ドラマーの枠だけに収まらず、他の楽器のプレイヤーのように感じる瞬間もあります。一方でグルーヴももちろん素晴らしく、リズムとフレーズの両面をドラムで演奏している。そのようなスタイルや音楽性はどこから来ているのでしょう?
スパット:他のメンバーの音を聴くことや、フレージングという点で、僕にもっとも影響を与えた人物は、マイルス・デイヴィスだ。彼は、楽器を使って語るようにフレーズを組み立てていた。スペース(ソロの無音の箇所)を生かして演奏する方法を見つけ出し、しかもミュージシャンとして、メロディックにプレイしていたんだ。
そして僕は作曲家でもあり、ピアノも弾くので、ハーモニーの考え方も理解している。だからドラムを、リズム楽器であると同時に、音程を持つメロディックな楽器だと捉えているんだ。実際のドラムの音程や、その音楽的なトーンを意識して演奏に取り入れている。それが、僕のドラムに音楽性が感じられる理由だね。
ロバート・”スパット”・シーライトのドラム演奏にフォーカスした2020年のライブ映像
—ゴースト・ノートは、いま日本では「新世代ファンク」や「ファンク・ミュージックを未来へと押し進めている」という紹介をされています。私は、2000年代のジャムバンドのジャムとグルーヴを、スナーキー・パピー以降の文脈で再定義した新しさがあると感じて、そこに大変魅力を感じているのですが、実際には、あなた自身はゴースト・ノートの新しさはどこにあると思いますか?
スパット:確かに、僕たちのファンクは単なるノスタルジーじゃない。さっきも言ったように、1970年代、特に70年代前半の音楽や、あの時代全体が、今の僕たちの音楽を作るうえでの大きなインスピレーションになっている。でも今は2026年だから、その後に生まれたすべての音楽も、当然そこに取り込まれている。だから、新旧の要素や音楽における新しい探求心がうまく混ざり合った、いい組み合わせになっているんだ。
そして僕たち自身にとっては、それは「新しいことをやっている」という感覚ではなく、ただ自然なことなんだよ。音楽で自由に自己表現できている感覚があって、それがリスナーや観客に届いて、楽しんでもらえている。その実感が増えれば増えるほど、僕たちはますます刺激を受けて、楽しみながら新しい音楽を作り続けることができるんだ。
実力派メンバーとの出会い、来日公演に向けて
—先ほど、リードシンガーとしてマッケンジーを加えたと仰っていましたね。彼は本当に素晴らしいボーカリストで、彼の存在でステージがより華やかになったと思います。どのようにして彼をメンバーに迎えたのですか?
スパット:彼とは以前からよく一緒に過ごしていたんだ。とても才能があるボーカリストで、彼がNPG(プリンスのバックバンド)で活動していたのも見ていたよ。僕たちの多くが住んでいるLA周辺で、一緒に歌ったり、レコーディングしたりして、自然とケミストリーや仲間意識が生まれたんだ。それで歌を取り入れ始めた時に、「フロントで歌ってくれる人がいたらいいな」と思った。それでここ3年ほど、マッケンジーと一緒にツアーをしているんだ。
次の新作は、アルバム全体を通して彼をフィーチャーして、一緒にみんなで歌う作品になる予定だ。マッケンジーは本当に素晴らしいボーカリストで、彼がいてくれるのは最高だよ。
マッケンジーが歌う「Nothing Compares 2 U」(2018年)
—他のメンバーについても教えてください。現在のメンバーはダラスのミュージシャンだけで構成されているわけではありませんね。ピーター・クヌーセンや、ダニエル・ワイタニスなど、他のコミュニティ出身のミュージシャンもいます。みんな、どのようにして集まってきたのですか?
スパット:そうだね。今のゴースト・ノートには、スナーキー・パピーのようにノース・テキサス大学の卒業生が揃っているわけじゃないんだ。あれはスナーキー・パピー時代ならではの感じだったね。ただ、やっぱり僕が生まれ育ったダラスがこのバンドの土台になっている。そこが出発点だったんだ。今は多くのメンバーがLAに住んでいるけど、長い年月の中で、いろんな人やミュージシャンと出会ってきた。
最初の重要な出会いのひとつが、サックスのスライ・シルベスター(シルベスター・オニェジアカ、Sly 5th Ave.としても活動)だね。彼はストリングス・アレンジャーで、『Mustard n'Onions』のストリングスは全部彼がアレンジした。タイトル曲の「Mustard n'Onions」も彼の曲だ。彼は(NPGホーンズの一員として)プリンスとも一緒に演奏していた。もともとノース・テキサス大学出身で、最初期からバンドにいる数少ない一人だ。今はLAのUSC(南カリフォルニア大学)で、音楽の修士号を取るために勉強している。だからツアーにはあまり参加できないけど、今でもバンドの一員だよ。
次が、アルトサックスのジョナサン・モネズ。彼はダラス出身だけど、ノース・テキサス大学で出会ったわけじゃなくて、街で演奏しているのを見て知り合いになった。とにかく驚異的なプレイヤーで、バンドにいてくれて本当に嬉しいよ。最初はスライのサブとして入ったんだけど、今は正式メンバーだ。
そこからホーンセクションが揃っていった。トロンボーンのダニエル・ワイタニスは一番新しいメンバーだね。彼とは、僕がマイケル・リーグとビル・ローレンスと一緒にやっていたビル・ローレンス・トリオのプロジェクトでツアーしていたとき、アトランタで出会った。彼のバンドが前座を務めていて、彼の演奏に一発で惚れ込んだ。それで一緒に演奏してもらって、すぐに正式メンバーになったよ。
ギターのピーター・クヌーセンは、ポートランドでのツアー中に出会った。彼が参加していたバンドが、僕たちの前座を務めていてね。彼の演奏を聴いて、また同じパターン。素晴らしいミュージシャンに出会って、そのままバンドに入ってもらう、っていう流れだね。
キーボードのドミニク・ザヴィエル・タプリンは、彼が主催していたLAのジャムセッションで出会った。とにかくファンキーで、演奏もすごく成熟していて、「絶対にバンドに入ってもらわなきゃ」と思ったんだ。
最近まで、モノネオンという素晴らしいベーシストがいた。彼は世界最高クラスのベーシストのひとりだと思っているよ。でも彼はソロアーティストとして活動していくことを決めた。だから僕たちは、彼が羽ばたいていくのを応援して、送り出したんだ。
そして新しく入ってくれたベーシストが、ジャスティン・マッキニー。僕たちはジェイ・マックって呼んでる。彼もプリンスと一緒に演奏していたし、リヴ・ウォーフィールドの音楽監督もやっている。クリス・デイヴ&ザ・ドラムヘッズにも参加していたし、本当にいろんな経験を積んできているんだ。すごくファンキーだし、カントリーのフィーリングもある。出身はアラバマ州バーミングハムだけど、今はダラスに住んでいるんだ。バンドにとって、本当に素晴らしい存在だよ。みんな、彼のことが大好きなんだ。
Photo by Lauren Elle Jaye Jenkins
—今回はネイトが不在の来日となりますね。私は逆に、ネイトがいない時のあなたの演奏がどのようになるのか、すごく興味があるのですが、実際にはライブではどのような変化がありますか?
スパット:そんなに大きな変化はないよ。ネイトがいないときは、僕がもっとパーカッションをプレイする。ドラムセットも少し違う形になるね。でも、音楽自体は変わらない。同じフォーマットなんだ。
面白いのは、僕が二人分の役割をしなければならないこと。でも、それがまた楽しい。それから、少しスペースが増えるね。メンバーがいない時は、それだけスペースができる。だから、みんなでその空間を埋める方法を見つけるんだ。それが本当に、とても面白いんだよ。
—最後に、ライブを楽しみにしている日本のファンにメッセージをお願いします。
スパット:日本で演奏しながら、素晴らしい時間を過ごせるのを楽しみにしているよ。日本のファンのみんなが踊って、僕らの音楽を楽しんでくれるのを見るのがとても嬉しいんだ。新しいファン、新しいリスナーに会えるのも楽しみだし、コミュニティを広げて、これからも何度も戻ってこられるようになれたらいいなと思っている。グッズも持っていく予定なので、みんなに共有できたら嬉しいね。みんなのために特別に用意した時間を、一緒に最高に楽しむ準備ができているから、本当にワクワクしているよ!
ゴースト・ノート来日公演
2026年2月2日(月)ビルボードライブ横浜
1stステージ 開場/開演:16:30/17:30
2ndステージ 開場/開演:19:30/20:30
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2026年2月5日(木)ビルボードライブ東京
1stステージ 開場/開演:16:30/17:30
2ndステージ 開場/開演:19:30/20:30
>>>詳細・チケット購入はこちら
■メンバー
マッケンジー・グリーン(ボーカル)
ピーター・クヌーセン(ギター)
ジャスティン・マッキニー(ベース)
ロバート・”スパット”・シーライト(ドラムス)
ドミニク・タプリン(キーボード)
ジョナサン・モネズ(サックス)
ダニエル・ワイタニス(トロンボーン)
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