2025年に結成15周年を迎え、1月に「脱皮」を掲げたニューアルバム『MOLTING AND DANCING』をリリースした後、2月から「15th Anniversary Special Series」として様々なライブを行ってきたインディゴ。
DAY1「雨の藍」
初日の「雨の藍」のセットリストは、もちろん「雨」関連の楽曲が中心。〈僕らは止んでた雨に手を振って〉という歌い出しの「ダビングシーン」から始まり(〈暗闇にいる時計仕掛けの僕〉を〈武道館にいる時計仕掛けの僕〉と変えた場面も)、〈雨ざらしの古いバス停で〉と歌う「雫に恋して」や、「秋雨の降り方がいじらしい」といった曲が続き、〈雨が降った 雨が降った朝に 手を開いて 掴んだ気でいたら 夜になった 夜になっていたんだ〉と、「雨」と「夜」の両方を含む「アリスは突然に」が中盤のハイライトとなっていた。
また、初日は今からちょうど10年前、2016年にリリースされたメジャー2枚目のアルバム『藍色ミュージック』からの楽曲が多かったのも印象的だった。インディーズ時代はポストロックやシューゲイザーといったオルタナティブロックの影響を消化しながら、ポップにアウトプットしている印象が強かったインディゴが、メジャーからの最初のアルバム『幸せが溢れたら』ではいち早くシティポップに目配せし、山下達郎らの影響を消化したポップスへと接近。その後に現在の4人のメンバーが揃い、初めてリリースされたのが『藍色ミュージック』という作品だった。
当時自分が書いたレビューを見返すと、佐藤栄太郎の加入を踏まえて、「音数を削ぎ落としてリズムを際立たせた曲が増え、アンサンブルがグッと洗練された印象を受ける。〈ZAZEN BOYSとペトロールズの中間を行くオルタナティヴなポップス〉とも言うべき、独自の立ち位置を見事に獲得した」と書いていて、実際この日も長田カーティスのギターがクリーン寄りだったり、ロックバンドとしては音がかなり薄い場面が多々あったのだが、決して「足りない」という感じではなく、後鳥亮介と栄太郎による強固なリズム隊を軸に、バンドのグルーヴを確かに生み出していた。
ライブ終盤のMCで川谷絵音は、自分たちは同時代のバンドと比べて日本武道館に立つまですごく時間がかかったバンドであり、特に「2016、2017、2018くらいは、このまま終わってしまうかもしれないと思う瞬間がたくさんあった」とここまでの歩みを振り返るとともに、フランスの細菌学者(ルイ・パスツール)の「偶然は準備のできていない人を助けない」という言葉を引用して、「自分たちが曲を作り続けたことが、いろんな偶然を引き寄せて、ここに立つことができているんだと思う」と感慨を語った。『藍色ミュージック』のリリース後に活動休止期間があり、川谷は2017年の『Crying End Roll』や2018年の『PULSATE』の時期を「潜っていた」と話したりもしているが、2019年に『藍色ミュージック』の収録曲である「夏夜のマジック」がTikTokをきっかけにバイラルヒットをしたのは、まさに楽曲を作り続け、リリースし続けたからこそ引き寄せることのできた「偶然」だったと言える。
「僕が最初に雨という言葉をすごく意識して書いた曲」として、インディーズ時代のアルバム『夜に魔法をかけられて』からの「雨の魔法」で本編を終えると、アンコールでは、こちらも同じアルバムの収録曲である「抱きしめて」が演奏され、〈古い円の白いステージで〉を〈武道館の広いステージで〉と変えて歌ったのはとても印象的。さらに「迷ったんですけど、どうしても武道館でこの曲をやりたくて。今までの中で一番でかい音が出るようにカスタマイズしたので、マジで嫌だなって人は今帰ってください」という言葉に拍手が送られる中、ここで披露されたのはインディゴの楽曲の中でも屈指のオルタナチューン「晩生」で、中盤以降に何段階も歪みと音量が増していく展開は圧巻。途中でも書いた通り、ここまではクリーントーンを基調とした音が薄めの曲も多かったのだが、最後にシューゲイズな爆音を叩きつけたのもまた非常にインディゴらしかった(ラストは新曲で締めくくられたが、それについてはまた後ほど)。
DAY2「夜の藍」
2日目の「夜の藍」のセットリストはもちろん「夜」に関連した楽曲が中心で、「夜汽車は走る」で始まり、〈夜の帳が下りたら私は〉と歌う「悲しくなる前に」、〈想像以上の夜になる〉と歌う「ナハト」を続けていく。中盤で披露された「24時、繰り返す」は2016年にリリースされたシングル『心雨』のカップリングで、「夜」というテーマだからこそ披露されたレア曲だったが、その後に〈振り返る 繰り返す〉と歌う「プレイバック」を続けたのは思わずニヤリ。さらに初日の「晩生」的な立ち位置というべき爆音のオルタナチューン「実験前」では後半にメンバー4人のソロをフィーチャーした後、コーラスのえつこがドラムを叩いて、栄太郎がノイジーなギターソロをかき鳴らし、ライブ中盤のハイライトに。そんな狂騒から一転、しっとりとした「夜の恋は」へと繋げる映画のエンドロールのような流れもとても美しかった。
ライブ中盤でもう一曲特筆すべきが、スピッツのカバー「ホタル」。この曲は今年9月に行われたスピッツ主催の「豊洲サンセット」への出演時に初披露され、多くの人がご存知のように、スピッツはインディゴのバンド名の由来にもなっている重要なバンドだ。この1年を振り返ったときに、「カバー」も大きな要素となっていて、2024年にクリープハイプのトリビュートアルバム『もしも生まれ変わったならそっとこんな声になって』で「ABCDC」をカバーしたことをきっかけに、2025年1月には両バンドの2マンが行われたり、2025年8月にはART-SCHOOLのトリビュートアルバム『Dreams Never End』に「スカーレット」のカバーで参加し、今年の1月にはART-SCHOOLとThe Novembersとの3マンが行われている。
本編最後のMCでは改めてこの15年を振り返り、「15年色々あったけど、今が一番幸せで、今が一番楽しいし、今が一番バンドがいい状態で、長くやってきて良かったなと本当に思います」と語った上で、「15年の中で一つ僕は忘れ物をしていて、この武道館でみんなで一回時間を遡って、それを回収してから、みんなで未来に向かおうと思います」と話し、ここで披露されたのが「素晴らしい世界」。2日間を通じての最大のハイライトがこの曲だったと言っていいだろう。インディーズ時代に発表された最初のミニアルバム『さようなら、素晴らしい世界』のラストに収録され、〈さようなら 素晴らしい世界 ありがとう こんな僕も入れてくれて だけどこれからは一人で生きてくよ〉と歌うこの曲は、かつてはライブの最後に演奏される定番曲だったが、2016年に現在のメンバーが揃い、困難な期間も活動を続け、「もう一人ではなくなったから」という理由で、2018年の中野サンプラザでのライブをもって「封印」された曲だった。
去年1月のクリープハイプとの対バンで、インディゴが「ABCDC」をカバーしたお返しとして、事情を知らないであろうクリープハイプが「素晴らしい世界」をカバーし、インディゴのファンがざわつくというちょっとした事件もあったりしたが、インディゴがこの曲を演奏するのは実に8年ぶり。そして、当時のライブでは曲の最後にメンバーが先にステージを降り、川谷が一人残ってアカペラで、時に涙声になりながら〈大丈夫そうだ〉と歌っていたのだが、この日はメンバー全員で長尺のアウトロを力いっぱい奏でたのち、アカペラの部分はカットされて、川谷を含むメンバー全員が一緒にステージから去っていった。「15年色々あったけど、今が一番幸せで、今が一番楽しいし、今が一番バンドがいい状態で、長くやってきて良かったなと本当に思います」。まさにこの言葉を体現するようなシーンであり、この後にワーナーからソニーへの移籍を発表したことを踏まえれば、長くお世話になったワーナーに別れを告げ、次の未来へと進むための一曲だったのだと思う。
新体制で新しい未来へ
アンコールでは「冬夜のマジック」と、「夜という言葉で最初に思いついた曲」として「華にブルー」が演奏されると、2日間ともに最後に披露されたのは新曲の「カグラ」。2022年の武道館公演でも最後に当時新曲だった「名前は片想い」が披露されたように、近年のインディゴの重要なライブのラストは新曲で終えることが多く、シアトリカルな赤い照明の中、ダークではあるがダンサブルでポップなこの曲もまた、間違いなくバンドの未来を提示していた。ちなみに、川谷は初日にこの曲を演奏し、その感想としてXで「タイアップ曲では?」という声があったことに対して、「そんなわけない」と否定し、「メイドインアビス」のキャラクターをモチーフに、仮想タイアップ曲として作った「プルシュカ」と同様の作り方であることを話した。
タイアップ曲をライブで先出しというのは確かに「そんなわけない」のだが、ファンの気持ちもわからなくはない。そもそも最近ヒット曲を量産しているダークファンタジー系のアニメの主題歌を担当しているのは、インディゴとも近い世代のオルタナ系のバンドだったり、インディゴをはじめとした川谷の関連バンドから影響を受けたネット世代(彼らにとって「夜」は重要なキーワード)だったりするわけで、インディゴがこれまでそういったタイアップをほぼ担当してこなかったことがむしろ不思議であり、逆に言えば、そういった象徴的なタイアップがないにもかかわらず、武道館2daysを埋めるというのはバンドの地力の証明だと言える。
川谷がSony Music Labels内に設立し、インディゴと礼賛が所属する新レーベルの名前は「Daphnis records」。「『ダフニスとクロエ』から着想した、お互いの才能に嫉妬し合うという意味を持つレーベル」で、「嫉妬というのは醜い感情なのかもしれないけど、僕はそこから得たものが多い。これからもきっとそう」とコメントをしている。2010年代はスタンドアローンだったバンドが、2020年代に入り、上の世代とも下の世代とも徐々に繋がった先で、レーベル移籍という予想外の「脱皮」を果たした2026年。世代を問わない様々な才能と嫉妬をぶつけ合いながら、新しい世界へと進んでいくインディゴにとって、重要な区切りとなる2日間だった。
Photo by 永峰拓也
【新レーベル情報】
Daphnis records(ヨミ:ダフニスレコーズ)
所属アーティスト:indigo la End・礼賛
・公式Instagram:@daphnis_records
・公式X:@daphnis_records
indigo la End
9th Full Album『満ちた紫』
2026年5月20日(水)発売
CD予約リンク:https://ile.lnk.to/260520AL
【先行配信リリース情報】
「カグラ」
配信中
※『満ちた紫』収録楽曲
配信予約リンク:https://ile.lnk.to/kagura
indigo la End「ONEMAN TOUR 2026 『紫にて』」
2026年5月30日(土)埼玉県 戸田市文化会館
2026年6月5日(金)大阪府オリックス劇場
2026年6月12日(金)東京都 府中の森芸術劇場
2026年6月20日(土)茨城県 ザ・ヒロサワ・シティ会館(茨城県立県民文化センター)
2026年6月21日(日)福島県 けんしん郡山文化センター 大ホール
2026年6月28日(日)静岡県 静岡市清水文化会館(マリナート)大ホール
2026年7月5日(日)埼玉県 大宮ソニックシティ 大ホール
2026年7月11日(土)広島県 上野学園ホール
2026年7月17日(金)愛知県 愛知県芸術劇場 大ホール
2026年9月25日(金)千葉県 市川市文化会館 大ホール
2026年9月27日(日)京都府 ロームシアター京都 メインホール
2026年10月3日(土)新潟県 新潟テルサ
2026年10月17日(土)北海道 札幌文化芸術劇場hitaru
2026年10月23日(金)岡山県 倉敷市芸文館
2026年10月24日(土)福岡県 福岡サンパレス ホテル&ホール
2026年11月1日(日)群馬県 高崎芸術劇場 大劇場
2026年11月3日(火・祝)大阪府 フェスティバルホール
2026年11月29日(日)香川県 サンポートホール高松 大ホール
2026年12月3日(木)東京都 東京国際フォーラム ホールA
2026年12月6日(日)宮城県 仙台サンプラザホール


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