Ettoneが掲げるコンセプト「LOOSE POPS」の真髄を証明すべく、ALYSAが指名したのは、卓越したスキルと独自のレイドバック感を持つWez Atlasだった。単なる共作に留まらず、ヒップホップの文化的背景を伝える「マンツーマンの講義」から始まったこのプロジェクト。クールな質感を湛えたジャジーなトラックに対し、メンバーが持ち寄ったのは孤独な若者の葛藤を映したムードボードだった。
なぜ”劇場”という言葉が選ばれ、彼女たちは何を演じ、何をさらけ出したのか。安易なトレンドに流されず、「100年後にも残る音楽」を追求した4人の対話から、制作現場に流れていた濃密な空気と、一切の妥協を排したクリエイティブの裏側を紐解く。
─「東京劇場」という曲の始まりは、どんな感じだったんですか?
ALYSA:まずトラックのアイデアを(Ettoneの)2人に投げて、同時進行でWezさんにも声をかけて、一緒に曲を書いてほしいと話しました。
Wez Atlas:ジャズっぽい感じが、超いいなと思いました。Ettoneのコンセプト(LOOSE POPS)も聞いてたし、アンダーソン・パークみたいな、ジャズ要素が強いヒップホップも自分は好きだから、ビートを聴いて普通に盛り上がりました。
mirano:ALYSAさんからインストをいただいて聴いた時、私とpiaの間に共通のイメージがあったんですよ。冷たい雰囲気というか。そこから都会の夜景が思い浮かんで、画像検索してピンときたので、都会というイメージから東京に焦点を当てて。タイトルも「東京○○」とか「○○東京」がいいんじゃないかと、2人で話していました。
pia:最初にいただいたインストは、完成した曲とはちょっと違う感じだったんです。氷みたいな冷たいイメージが伝わってきた。色味的にはブルー。あと、Wezさんと一緒にEttoneがラップできるのがめちゃくちゃ嬉しくて、ワクワクして聴いてました。こういうジャジーなトラックにラップできるのが楽しみで。スペースがあるから色んなフロウができるなって。
ALYSA:2人が送ってきた一番初めのタイトル案が「東京フィロソフィー」だったんです。それもすごく良かったんですけど、他にも色々アイデアがあって。その後、Wezさんとやり取りして、「東京劇場」がいい気がするって言われて、「私もまったく同じこと思ってた」と。2人には申し訳ないけど、絶対この中だったら「東京劇場」だと思って。
mirano:「東京劇場」って、最初はメモ書きの一つに過ぎなかったので、拾ってもらえると思ってなくて。
ALYSA:でも圧倒的に強かったよ。
Wez Atlas:ステージに立つ身として、自分たちがやってることは音楽だし、”劇場”っていうコンセプトがあると広げやすいなと思いました。キャラを演じたり、表裏も表現できる。広がりがありそうだなって。
ALYSA:私からWezさんにデモを送ったら、「ここはこうしたい」「まるっと変えてもいいですか?」って、しっかりフィードバックをくれて。それを聞いた時、「あ、一緒にやる意味があるな」と思って「全部お任せします」と伝えました。「『東京劇場』が絶対にいい」という話からスタートして、実際にスタジオに入ってからは、ほぼ一からの作業になりました。
左から、mirano、pia(Photo by Rika Tomomatsu)
一切妥協しない──"スクラップ・アンド・ビルド"の現場
─ムードボードはWezさんも見たんですか?
Wez Atlas:はい。miranoとpiaのムードボードと資料がめちゃくちゃ役に立った。セッションのとき、それを”言葉のストック”として使って、拾えるところは拾った感じです。曲の最初のライン〈騒然な交差点の刹那を合図に幕が上がる〉は、実はmiranoが書いたんだよね。
pia:作り方は”スクラップ・アンド・ビルド”って感じでした。Wezさんがちゃんと私たちの意図を汲み取って、絶妙に調合してくれた。その場で作られたものが、そのまま最終形として使われることも多くて。何より驚いたのは「一切妥協しない」姿勢。私たちがびっくりするくらいでした。
Photo by Rika Tomomatsu
Wez Atlas:「これ、いけるっしょ」って感じで、2バース目も現場でそのまま組み立てていきました。フロウも含めて、その場で自然に出てきたものをベースにしてる。
ALYSA:私がカナダで音楽を学んでいたとき、ヒップホップのカリキュラムで黒人文化や歴史をずっと勉強していたこともあって、そういう文化的背景をすっ飛ばして突然Ettoneがヒップホップを歌うのはよくわからない流れになりそうだったから、今回はWezさんにレクチャーを頼んだんです。
Wez Atlas:歌詞書くのってめっちゃ疲れるんですよ。自分たちの曲だと一語一句責任がある。遊びで作るものと、Ettoneとしてリリースするものは重みが違う。7人いるけど2人で歌詞を考えて、7人で歌う。だから”世代の声”って感じがします。
Photo by Rika Tomomatsu
─miranoさんとpiaさんはこの曲を通して何を伝えたかったんですか?
mirano:「東京フィロソフィー」というタイトルのときは、若者の叫びを代弁する、みたいなテーマがあったんです。最初のデモは、Ettoneのメンバーの内に秘めた思いを乗せるというイメージでした。でも「東京劇場」と定まってから、劇場のステージの上で演じるという絵が浮かんで。東京にいる人間たちが葛藤しながらも楽しみながら生きていく──そういう方向性に変わったんです。
Wez Atlas:悩みや葛藤は残しつつ、サビはパワフルだし、歌っていて気持ちいい開放感がありますよね。あとラップは「ウチら最強」みたいな自慢もカルチャーとしてあるから、「Were Ettone」みたいなのも入ってる方がいい。
ALYSA:いろんな道をたどって、いい音楽を作って届けたい明るいビジョンがEttoneにはある。そういう点でテーマ的にも合ってますよね。
あと私、Wezさんのラップのレイドバックしているところが好きで、ジャズ調のビートにレイドバックしたラップを乗せたらEttoneのスタイルになると思って。で、曲が出来上がる過程で「このビートでいけますか?」って聞いたら、Wezさんが「いける」って言ってくれたんです。このビート、キックはグリッドに合わせてるんですけど、スネアは少しずらしてるんですよ。そこに分刻みで動いてる大都市、”東京”って言葉を入れてきてくれたのが嬉しかった。神様ありがとう、って思いました。
─Wezさんは他のアーティストに楽曲提供したり、人に何かレクチャーしたりするのは今回初めてでしたか?
Wez Atlas:はい。これまで友達と一緒に制作して、俺が考えたトップラインが使われるとかはあったけど、誰かと組んでがっつり作詞するのは初めてだったんです。
mirano:Ettoneの前、いろんな先生からラップのレッスンを受けてきたんですけど、こうしてアーティストになって、マンツーマンでヒップホップを教えていただくのは初めての経験と言ってもいいくらいで。より濃いレッスンの時間を経て、自分のラップのスタイルを掘り下げて、強みだったり、Wezさんの歌い方やエッセンスを吸収できた部分もあります。真剣に向き合って、ラップをもっと好きになりました。
pia:私もラップのレッスンがほぼ初めての経験でした。これまでもヒップホップは聴いていましたが、Wezさんのレイドバックな感じが私もすごく好きで、ご一緒してみて性格的にも共感できる部分がたくさんありました。レッスンを通して、スキルや音の聴き方を学べましたし、私も「piaっぽい感じ」を生み出せたらいいなと思ってます。
mirano&pia:今回はありがとうございました!
Wez Atlas:こちらこそです。レイジ(Rage)やハイパーポップとか、もっとニッチな音楽の好みもこれから出てくると思う。宿題でみんなが選んでくるビートから、すでに好みが出ていたしね。7人とも「可愛いビート」かと思ったら、めっちゃハードなのを選んできたり。chiharuとか一番ハードなビートを選んできたのでびっくりしました。そうやって好みが広がっていくのも楽しいと思います。
Mirano:アーティストって自立してるイメージがあったけど、私はずっと生徒でいたい気持ちが強くて。Ettoneとしてクリエイティブする中で、セッションして曲を作る。現場では対等な関係で向き合えているけど、教えてもらうものが大きすぎるから、ずっと学ぶ姿勢を忘れたくない。ずっと吸収していたいです。
Wez Atlas:すごくわかる。上には上が常にいる。俺もずっとそれは思う。上の人たちと仕事できてるのは嬉しいです。
左から、ALYSA、Wez Atlas(Photo by Rika Tomomatsu)
2nd Digital Singleに「東京劇場」を選んだ意味
─ALYSAさん、Ettoneのプロデューサーという立場から見て、2nd Digital Singleをこの曲にした意味は?
ALYSA:今回、2nd Digital Singleをリリースするにあたって、もっと爆発的なアップテンポの曲の方がいいんじゃないか、もっと明るい曲の方がいいんじゃないか──そういう声がなかったわけではないんです。でも私は絶対この曲がいいと思って。Ettoneの音楽性は「LOOSE POPS」って言葉だけ聞くと、ゆるっとした音楽というか、女の子らしいふわっとした感じで、言葉のイメージが先行しちゃう。それはもったいないなと。7人が集まった時のパワーもあるし、もっとできることがたくさんある。その言葉のイメージだけが先行しがちになるのは避けたかった。
レコーディングも、みんなの録りだけじゃなくて、トラックのピアノからベースまですべてにおいてこだわってやった。ピアノ一つとっても、これ以上ないところまで突き詰めたんです。一瞬のバズだけ狙ってるわけではないので、だからこそWezさんとしっかり音楽を作った。この先を見据えて「東京劇場」を出すという判断をしたわけだし、結果的にすごくいい曲になりましたし、100年後に生き残っている曲……みたいなレベルの手応えがあります。この4人で作れたクリエイティブがすごく良かったです。
Wez Atlas:バンドアレンジも、間違いなくやるよね?
ALYSA:絶対にやる!
Ettone
Digital Single「東京劇場」
Ettone
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Wez Atlas(ウェズ・アトラス)
東京を拠点とするヒップホップアーティスト。日本語と英語を自在に操るキャッチーなラップと豊かなメロディーセンスが特徴。2021年に1stミニアルバム「Chicken Soup For One」をリリースし、収録曲「Overthink」はストリーミング100万再生を突破。2023年には2ndミニアルバム「This Too Shall Pass」を発表。SXSW 2023・2024への出演やMETROCK OSAKAなど国内外のフェスへも活動の幅を広げている。
HP:https://wezatlas.jp/


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