クリス&リッチ・ロビンソン兄弟を中心にジョージア州アトランタで結成され、1990年にアルバム『Shake Your Money Maker』でデビューしたザ・ブラック・クロウズ(The Black Crowes)。途中兄弟不仲による活動休止時期(兄弟は”解散”という言葉を使用したこともある)が何度かあったものの、2019年にリユニオンして以降はパンデミック期も乗り越え、ライブのみならず音源制作にもたいそう意欲的だ。
その証拠に3月12日には、『Happiness Bastards』(2024年)に続く新作『A Pound of Feathers』を発表し、翌4月14日・15日には東京・Zepp DiverCity (TOKYO) で来日公演を行なうことが決定している。身体を突き上げるようなロックンロールが足りていないと感じているなら、この機会を逃す手はない。

バンドの休止中も兄弟が音楽活動自体を止めたことはなかったが、ここへきて彼らの音楽熱はますます高まっているようにも見える。短時間で作り上げた新作からは、なりふり構わぬ人力ロックンロールがザブザブと溢れ出すが、その一方で彼らの血肉になっているブルースやソウルはディープな味わいとモダンな洗練味のバランスをとりながら、このアルバムをオルタナティブな位置に立たせている。

今回のインタビューでリッチは「若い頃は生き急いでいた」と語ったが、一分一秒無駄にせず音楽に邁進するという意味では、今の彼も、私には十分生き急いでいるように見える。上は成人から下は5歳まで7人の子供を持つリッチは、まだまだ長生きしなくてはいけないが、こと音楽に関しては、年齢不相応のがむしゃらぶりがあってこそのロビンソン兄弟。相変わらず口も滑らかなリッチに、新作のこと、ロックの殿堂ノミネートのこと、ピーター・バック(R.E.M.)とのプロジェクトのこと、そして4年ぶりとなる来日公演のことなどを訊いた。

「直感に従った」ニューアルバム

─新作『A Pound of Feathers』を聴きました。ジャンルやスタイルに固執しないクロウズの真骨頂。『Amorica』を初めて聴いた時の気分を思い出しました。

リッチ:それは嬉しいな。

─改めて、このバンドにタブーはないな、と。


リッチ:ああ、その通りだよ。

─資料によれば「10日間で書き、録音し、完成した」とありますが、ツアー中などに書きためた曲もありますよね?

リッチ:というか、LAの自宅にスタジオがあるから、ある意味いつも曲は書いてるんだ。ツアー中も書くし、常にギターを弾きながら何かしら作っている。レコーディングできる素材は、いつも手元にある感じだね。

新作に関しては、クリスに渡せる曲が30曲くらいあったから、まずそれを送った。全部完成させたものじゃなくて、ヴァースやコーラスだけのものもあれば、ほぼ1曲分できているものもあった。今回は、それをスタジオで作り込もうと決めて、メロディやアレンジをスタジオの中で一緒に練り上げていったんだ。

こういうやり方でアルバムを作るのは、すごく刺激的だった。制作期間は10日くらい。スタジオに入って「ここがヴァースじゃない?」「いや、そこはコーラスだろ」と、クリスと意見を出し合った。そこから僕がブリッジやイントロを書き、リアルタイムで曲を完成させていった。こうやって作ると、余計な心配をせず、直感で動けるんだ。


曲作りって「前よりいいものを作らなきゃ」という思いにとらわれて、自分自身と競ったり、考えすぎてしまったりすることがある。でも僕たちは「いや、これが今の形なんだ」って受け止めた。時間に限りがあったからこそかえってクリエイティブになれて、直感に従えた。実際、それを実践できたことを、このアルバムははっきり示していると思う。

─クリスとの作業をスムーズに進めるための秘訣は?

リッチ:今もアルバムを作ることが楽しみで、そのためにはお互いのやり方を尊重するってこと。あまり干渉しすぎないというか。あと、プロデューサーにジェイ(・ジョイス/前作も彼が手掛けている)を迎えたのも良かった。クリスも僕も、普段は主張が強いし、自分のやり方を通すタイプだ。でも今回は「自分はこう思っている」ということをまずジェイに話して、主導権を彼に渡した。そうすることで、余計な問題や衝突を防ぐことができた。結果、それが良かったと思う。

とは言っても、ふたりとも「レコードを作ることが好きで仕方がない」という思いは同じだし、お互いのファンだっていう部分は変わらない。
僕はいつだってクリスが曲に何を足してくるのか楽しみだ。たいていの場合、僕にはできないことだったり、予想もしてないことだったりするからね。同じことをクリスも感じるんだと思う。「お、いい曲じゃないか。形にしてみよう」って。若い時と変わらない興奮や高揚感がそこにはあるんだ。

The Black Crowesが語るバンドの新章、来日への想い、今も揺るがぬロックンロールの美学

Photo by Ross Halfin

─「直感に従う」と話していましたが、出来上がった楽曲を1枚のアルバムにまとめていくには、何らかの指針が必要なのではないですか? 

リッチ:いつも曲やアルバムを作るのはインスピレーションの連続で、最初から計画を立てることはまずないんだ。

もちろん、たとえば『Amorica』のように「音にこだわったスタジオ・アルバムのマスターピースを作りたい」と決めて、サウンドや録音に集中したことはあるよ。その逆で『The Southern Harmony and Musical Companion』のように、ライブ録りで、たった8日で即興的に作ったこともある。そうやってアルバムごとに「どう作るか」の大まかなテーマを考えることはあるけど、それが曲作りを支配することはない。どんな時も自分に書ける曲を書き、それをテーブルの上に並べる。すると不思議と、曲同士が互いを呼び寄せ合うんだ。
「あ、これとこれが合うな」「これはうまく繋がらない」「これは似すぎている、違いすぎる」というように。つまりは自然の流れに任せているだけ。僕が曲を書き、クリスが引き寄せられた曲に歌詞が乗り、選ばれた曲が自然と集まってアルバムになる。そして最後に全部を聴き、「これでいい!この曲順で行こう。この流れで行こう」ってなるんだ。

─クリスは本作に関して「これは日曜の朝にかけるレコードじゃない。土曜の夜を熱く燃やす一枚だ」と言っていましたが。

リッチ:ああ、言ってたね。

─「土曜の夜を熱く燃やす」とは何を意味するのか、あなたなりの解釈を聞かせてください。

リッチ:つまり、勢いと直感で作ったアルバムで、それが音にもそのまま表れているっていうことさ。大事に扱わなきゃいけないような繊細なアルバムなんかじゃない。ガサツで、荒々しいレコードなんだ。
プレイヤーに放り込んで、大音量で鳴らしてほしい。そういうところ、僕ら自身、すごく気に入ってるんだよ。

─なるほど。となれば、アルバムのオープニングを飾る先行シングル「Profane Prophecy」は、まさに今作を象徴する1曲だと言えますね。

リッチ:普段、作曲はアコースティック・ギターですることが多いんだけど、あれはエレキ・ギターで書いた曲だ。リフで派手に始まる、とにかくクールな曲。それでいて、聴いているうちに別の場所へ連れて行かれるような……いわば旅をする曲なんだ。自分でも、あんなふうに展開するとは思っていなかった。そこがスタジオ・ワークの面白さだね。

あの曲に限らず、このアルバム自体がそんなふうにして作られたから、最後の最後まで何が出来上がるのかわからなかった。その予測不能さが、さらに興奮を高めてくれた。ロックンロールって、本来はそういうものだと思う。
衝動的で、きわどくて、どっちに転ぶかわからない。レールから外れてしまうかもしれないし、外れずに、とてつもなく最高なものになるかもしれない。僕はずっとロックンロールをそう捉えてきた。

「Profane Prophecy」はまさにそんな1曲だ。書き始めた瞬間から「これは特別な1曲になる」とわかっていたし、最後までそれはブレることがなかった。結果にも本当に満足しているよ。

R.E.M.ピーター・バックとの「クールな体験」、ロックの殿堂について

─あなたはクロウズと並行して自身の音楽活動も継続していて、2024年にはSilverlitesのアルバムも発表しました。いくらクロウズにタブーがないとはいえ、バンドでは表現しきれないものをソロやプロジェクトで表現したい、という思いがあるのでしょうか?

リッチ:Silverlitesは……僕がピーター・バックと一緒にやりたかったからやったっていうだけの話なんだよ。彼はR.E.M.の一員であり、子供の頃の僕らに大きな影響を与えてくれた人だから。そもそもは、クールなニック・ドレイク・トリビュート・ライブが出来ないものかと考えたことが、スタートさ。ヴァン・ダイク・パークスにストリングス・アレンジをお願いして、ニック・ドレイクの曲をやるっていう。そこで最初に声をかけたのがピーター・バックだった。ピーターとは不定期的に交流があったし、共通の友人がいたので、その友人経由で連絡先を手に入れたんだ。そしてイタリアにいる時に、連絡をとって話をしたら、彼も「すごくいいね。ぜひやりたい」と言ってくれた。

アメリカに戻り、同じ時に僕たちふたりがナッシュヴィルにいるってわかったんで、2日間ホテルを押さえた。アイデアを持ち寄り、15曲くらい録音したかな。厳密なプランがあったわけじゃないけど、すごくいい感じだったよ。クロウズとR.E.M.は決して同じことをやってるわけじゃないけど、僕らの土台には、常に彼らがいたわけだから。

そしてコロナ禍になり、みんな家にこもる日々だった。録音の時にドラムを叩いてくれたバレット・マーティン(元スクリーミング・トゥリーズ)が「あれをちゃんと形にしよう」と言い出した。僕もピーターも「好きにやっていいよ」とOKし、少し曲をまとめ直し、バレットがドラムを重ね、ジョセフ・アーサーを呼んで歌ってもらったんだ。そりゃあクロウズとは違ったよ。まず、ミュージシャンの顔ぶれが違うわけだし、誰かのために書いているわけでも、何かを狙っていたわけでもなかったから。かといって、何も考えてなかったわけじゃない。そういう意味じゃ、自由だったね。

僕は湧き上がるものを、自分から止めたりしない。気に入ればそれでいい。「これはクロウズの曲じゃない」とかは考えない。ただ曲を書く。曲が生まれる邪魔をしない。そしてどうなるかを見るだけ。そうすると、曲の方が自然と行くべき所に向かうんだ。クロウズの曲になることもあれば、別のプロジェクトの曲になることもある、っていうそれだけさ。

─クリス以外と曲を書くことで、違う経験がもたらされますよね?

リッチ:当然、違うよ。ジョセフとクリスはまるで違うタイプのシンガーだし、メロディ・センスもアプローチも違う。バレットのドラムもこれまで僕が慣れ親しんできたスタイルとは違う。そういう意味で、彼も違う要素を持ち込んでくれたよ。

ピーターと僕がおもしろいのは……ふたりで演奏していくうちに、しまいにはどっちがどのパートを弾いたか、わからなくなるんだ。「これって僕が弾いたんだっけ? それともお前?」とピーターが言い出す始末さ。実にクールな体験だったよ。つまりは、違う人間が集まれば、それぞれが持ち寄るものによって違うものが満たされる。そういうことじゃないかな?

The Black Crowesが語るバンドの新章、来日への想い、今も揺るがぬロックンロールの美学

リッチ・ロビンソン(Photo by Masanori Doi)

─昨年、ロックの殿堂へのノミネートを知った時、最初に思ったのは、どんなことでした? 

リッチ:「俺も歳とったな」……。

─(笑)。

リッチ:いや、すごく嬉しかったよ。ノミネートされた人間は「それだけで嬉しい」と言うし、それに対して「そんなこと言って」と思われるかもしれないけど、本当なんだよ。受賞していたらさらに嬉しかったけど、ノミネートだけで十分だ。僕たちが35年間やってきたことの重みを感じさせられるというか、「誰かがどこかで見てくれているんだな」と思わされたよ。それってすごくクールじゃないか。

同じことはグラミーにも言える。若い時に一度だけノミネートされたのが、最優秀新人賞だった。90年か91年か覚えてないけど、マライア・キャリーに負けたんだ。よく覚えているよ。でもグラミー候補になり、35年後にはロックの殿堂入り候補にもなったなんて、凄いことだよね(ちなみに、前作『Happiness Bastards』はグラミー賞の最優秀ロック・アルバムにノミネートされている)。

─あなたが選ぶロックの殿堂にはどんな人たちが名を連ねますか?

リッチ:いい質問だね。誰だろう? 大勢いるよ。ジョー・コッカーが(今年まで)まだ殿堂入りしてなかったのには、すごく驚いた。当然入っていると思っていたからさ。実際、「彼らは殿堂入りしてなかったの?」と驚かされるバンドは大勢いる。だからシンディ・ローパーが殿堂入りしたのは良かったと思う。

僕だったらテレヴィジョンを入れたいし、ピーター・グリーンも入れたい。サウンドガーデンは何度もノミネートされて、ようやく殿堂入りした。レニー・クラヴィッツはまだのはずだ。僕らが親しくしていて、同じくらい長いキャリアを持っていても選ばれていないバンドは大勢いて、どういう基準で選んでいるのか僕にはよくわからない。でも他にも、入っていたらクールだなと思う人は大勢いるし、そうやってバンドっていうのはお互いにインスパイアしたり、されたりしながら存在してるわけだからね。ロックの殿堂には、それを書き留めておくような意味もあるんだ。

90年代の記憶、来日公演に向けて

─17歳の自分に、今の自分が会いに行けるとしたら、どんなことを言ってあげたいですか?

リッチ:17歳の頃って、誰もが生き急いでて、6カ月が永遠みたいに感じられるんだ。僕もそうだった。アルバム用に曲を書き始めたのがちょうど17歳の時で、「She Talks To Angels」は最初に書いた曲の一つだった。その時はそれがアルバムに入るなんて思ってなくて、ただ書いただけ。ジョージ(・ドラクリアス)が僕らを契約しようと働きかけてくれている時も「なんでこんなに時間がかかるんだ! あと半年も待たされるのか!?」とイライラしていたよ。だから、その頃の自分に会えるなら「そんなに焦るな。もう少し辛抱強くなれ」と声をかけるよ。

─焦ってイライラしても、素晴らしいデビュー作を作り上げました。

リッチ:結局、僕らはどんな時も自分たちの作りたいレコードを、作り続けてきたんだと思う。『Shake Your Money Maker』ほどの成功を収めたアルバムを作ったバンドなら、95%、いや99%が、あれをもう一度再現しようとするか、もしくは慎重に、次の「Hard To Handle 」をどう書くか、誰が書くか……を考えただろう。でも僕らは、そんなの知るか!と思っていた。

『Shake Your Money Maker』のツアー中、クリスと僕でアルバム2枚分に相当する曲を書いたよ。とにかく書いて、書いて、書きまくった。でも『Southern Harmony』を作るとなった時、残したのは2曲だけ。1から新しいアルバムを作った。

というのも、あのファースト・ツアーは本当にエキサイティングで……18~20カ月で350本のライブをこなし、ツアーが終わるなりスタジオに直行し、8日間で録音したんだ。エンジンフル回転でね。それが『Southern Harmony』だ。どんなプレッシャーにも、他人の意見にも影響されるもんか!という気持ちだった。そう出来たことを、今に至るまでずっと誇りに思ってるよ。

─最近、スヴェン・パイピーン(Ba)がバンドを離れたという話がありますが、これは本当?

リッチ:ああ、スヴェンは抜けたよ。でも彼のことが大好きなことに変わりはないし、同じアトランタの昔からの親しい友人だ。長く一緒にやってきたけれど、今が彼にとってのタイミングなんだと思う。誰かが抜けていくのは、いつだって寂しいよ。スヴェンのことは大好きだし、すごく才能あるやつだから。でも全員にとってこれで良かったんだと思う。

─4月の来日メンバーが決まっていたら、教えてください。

リッチ:バンドはここ3~4年変わってないよ。マディことマーク・ダットン。彼はクリスともやっていたし(クリス・ロビンソン・ブラザーフッド)、昔はマーク・フォードのバーニング・トゥリーでベースを弾いてた。最高のやつなんだ。マディとはもう36年来の知り合いだ。大のロニー・レイン・ファンだから、それはすごく助かる。ほら、僕たちもロニー・レインが大好きだからさ。

─今回のアルバムで叩いたカリー・シミントンも同行しますか?

リッチ:カリーも来るよ。カリー、ニコ(・ベレシアルトゥア/Gt)、エリック(・ドイチュ/Key)、マディ、そして僕とクリス、バッキング・ヴォーカルのマッケンジー(・アダムス)とレズリー(・グラント)だ。

─4年ぶりとなる来日公演ですが、どんな感じになりますか?

リッチ:ニューアルバムからの曲もやるけど、昔の曲もたくさんやる予定だ。あとはカバー曲、そして長いこと演奏していなかった、ちょっとレアな曲も久々にやろうかと思っている。最高のショウにするよ。僕らもすごく楽しみだ。日本に行くのは大好きなんでね。

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The Black Crowesが語るバンドの新章、来日への想い、今も揺るがぬロックンロールの美学

ザ・ブラック・クロウズ来日公演
2026年4月14日(火)・15日(水)Zepp DiverCity (TOKYO)
オープニングアクト(両日出演):The Asteroid No.4
18:00 open/18:45~ The Asteroid No.4/19:40~ The Black Crowes
チケット料金:1F スタンディング ¥17,000/2F 指定 ¥20,000(ドリンク代別途/税込)
公演詳細:https://udo.jp/concert/TheBlackCrowes26

The Black Crowesが語るバンドの新章、来日への想い、今も揺るがぬロックンロールの美学
THE BLACK CROWES READY THEIR MOST AMBITIOUS STUDIO ALBUM YET | A POUND OF FEATHERS - The Black Crowes

ザ・ブラック・クロウズ
『A Pound of Feathers』
2026年3月13日リリース
配信リンク:https://orcd.co/poundoffeathers
日本盤詳細:http://bignothing.blog88.fc2.com/blog-entry-16529.html
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