J-POPのヒット曲を山下達郎風に歌唱したweb動画が話題のミュージシャン、ポセイドン・石川が、2月7日(木)に東京渋谷のライブハウスduo MUSIC EXCHANGEでライブ『ポセイドン祭り』を行なった。
2月4日にアルバム『ポセイドン・タイム』でメジャー・デビューを果たしたが、今回はそのメジャー・デビュー後初のライブで、会場には約300人の熱心なファンが駆けつけた。
その模様を音楽ライターの桑原シローがドキュメントしたライブ・レポートが本日発表された。
アルバム『ポセイドン祭り』がリリースされた2月4日(月)には、このアルバムのリード曲である「黄色い声が聞きたくて」のミュージックビデオが解禁。
さらに2月9日(土)には、TOKYO FM / JFN38局放送の人気番組『KIRIN BEER “Good Luck” LIVE』のゲストとしてポセイドン・石川が決定。スタジオ生ライブを放送予定だ。
また今後、名古屋、大阪、仙台でのライブも予定されている。
『ポセイドン・石川ワンマン~ポセイドン祭り~』ライブレポート
2019年2月7日(木)渋谷DUO MUSIC EXCHANGE
TEXT by 桑原シロー / photo by tawara
近来稀に見る曲者アーティスト、と言っていいだろう。ポセイドン・石川のことである。誰が呼んだか、北陸の最終兵器。最近ではシティーポップ芸人なんて呼称も定着しているようだが、口が悪い人たちの間では、リーズナブルなヤマタツなんて呼び名もあるようだ。どれもこの曲者らしいフレーズだと思う反面、どれも外れているようにも思えたりもする。
そんな彼のメジャー・デビュー・アルバム『ポセイドン・タイム』のレコ発ライヴ<ポセイドン・石川ワンマン~ポセイドン祭り~>がさる2月7日、渋谷DUO MUSIC EXCHANGEで行われた。
Twitterにアップした山下達郎風味のカヴァー動画が評判を呼び、昨年あたりからテレビのネタ番組にも多数出演、ここにきて加速度的に知名度を上げている彼のことを、いまだに芸人なのかミュージシャンなのか、論議する声は止むことがない。


MCで「ミュージシャンとしてやってきたつもりが、去年の夏あたりからリハーサルをネタ合わせと呼ぶようになって……」と自嘲気味に話していた彼だが、とにかくいちいち挙動不審な感じが可笑しくてならない。
“ポップス・メドレー”では、クイーン“Bohemian Rhapsody”のカヴァーなどもサービス。フレディ・マーキュリーとは違った粘着質で迫り、会場を沸かせた。
そして前半のクライマックスとなったのは、あの人の定番曲“クリスマス・イブ”のカヴァー。
ところで今日初お披露目だというショルダー・キーボード。彼がそれを肩にかけると、また何とも言えない可笑しみが漂い始めるのだが、なぜ彼がそれを必要としたのかは最後までわからなかった。


プログレ、フュージョン好きが透けて見える変拍子インスト“4”など、鮮やかな鍵盤捌きに聴き惚れずにいられなかったし、色鮮やかな街物語を描き出す“あんたがたどこさ”やトッド・ラングレン風のアカペラをフィーチャーした“リンゴ追分”で垣間見られるアレンジ能力の高さにも改めて唸らされたもの。“シャチに目をつけられて”や“℃-bon”といった名曲の誉れ高いオリジナル曲を聴けばわかるのだが、ルーツはジャズ。いわば正体は、ジョーイ・ドシックなどと並び称されるようなジャジーなシンガー・ソングライターなのである。
ただ、彼のクネクネしたアクションと同じく音楽性が軟体質的というか良い意味で掴みどころがなく、正体不明感が際立ってしまう。
アンコールにおいて圧倒的にカッコいい“東京シャワー”を披露したあと、イタチの最後っ屁のごとく“USA”をかまし、観客を煙に巻く様子を眺めながら、この混沌とした感じこそ彼の持ち味なのだろうと考えていた。さてこれからいったい彼の芸はどう変化していくのだろうか。ともあれ、ポセイドンのアドヴェンチャーは本格的に始まったばかり。