『ここが変だよ「反ワクチン」徹底分析!』
このイベントの詳細はこちら ▶︎2018年11月14(水)ここが変だよ「反ワクチン」徹底分析! https://www.loft-prj.co.jp/schedule/naked/99038 2019年1月、宗教団体『MC救世神教』の2世信者研修会を発端に三重県とその周辺の府県で麻疹の集団感染が起こった。2月に入っても終息の気配は見えず、大阪の大規模商業施設では感染源不明の麻疹のアウトブレイクが発生。また、妊婦が感染すると生まれてきた子供に先天性風疹症候群が高い確率で起こる風疹が流行、インフルエンザに罹患し医療機関を訪れる人が過去最高数に達するなど感染症への懸念が拡がっている。医療系イベントが開演
出演者が入場、医療系イベントが開演する。 「議員会館で自民党議員にMRワクチン(風疹・麻疹混合ワクチン)を接種してきた」と語るナビタスクリニック理事長の久住英二氏。 ポール・オフィット著『反ワクチン運動の真実』翻訳者のナカイサヤカ氏は「反ワクチンを巡る海外と日本の状況は驚くくらい一緒、登場人物もよく似ている」と第一声。 母親たちの悩みを聞き、適切な情報発信を続ける小児科医の森戸やすみ氏は「ワクチンが怖いと言うのは正直な意見」と前置きし「お母さんは勉強しているし、ホントに子供のことを考えている。でもワクチンについて勉強しようとするとそっちの(トンでも反ワクチン情報)ばかりひっかかる。あっちの世界に行ってしまった人は無理」としながらも「迷っている人を引き寄せたい」と語った。 まず話題となったのは最新のワクチン接種スケジュール。 「ワクチン同時接種は世界標準の方法、同時にやらないと終わらない。海外は両腕両脚に打って解熱剤渡してはい終わり。嫌なことは1回で1日で終わりの方がいい」(森戸氏) ワクチンで防げる病気は防ごうということだ。 「感染症は山ほどあってワクチンで防げる病気の方が少ない」(森戸氏) 「罹患のリスクを下げるには通院回数を減らした方がいい。予防接種の時間帯を設定している医院もある。子宮頸がんワクチン(HPVワクチン)を巡る騒動も話題に
子宮頸がんワクチン(HPVワクチン)を巡る騒動も話題になった。全国子宮頸がんワクチン被害者連絡会事務局長を務める日野市市議会議員が娘の体調不良を訴える複数の母親に対して、電話で「それ、子宮頸がんワクチンの副作用よ」と診断していたことについて「医師法違反じゃないんですか」と指摘したのが久住医師である。 「(この市議は)私たちは反ワクチンではないと仰っていたのにウェイクフィールド映画公開中止にガッカリとか言っちゃったのでバレましたね」(ナカイ氏) 「HPVワクチンを打ったあとに具合が悪くなったという娘さんがいらっしゃる母親たちとは直接何組かお話を聞かせていただいた。今も体調の悪い子がいて毎朝、やりとりしている。彼女ら(連絡会)が一様に言うのは『今度こういうデモをやるから集合しろ』とか『何々をするからカンパしろ』とかいう情報はメール等で来るんだけど『こういう治療法はいいよ』とか『こういうのが効くよ』という治癒に向かう様な情報は回ってこなかった。ポリオの会という活動をしている小山さんという素晴らしい方がいるが、彼女はポリオになって困っている人に『いい車イスが出た』とかいろんな有用な情報を本にして定期的に配布するなどされているが、そういう活動と較べてこちらの被害者連絡会にはものすごく温度差というか、それって誰のために役立っている活動なのかなと」(久住氏) つまり、同連絡会の活動は何かが違うということだ。 「普通は『何か有用な情報が得られるのかな』と。皆さんやはり困ってらっしゃるわけです。なんだが判らないけど子どもが学校に行けなくなったとか、朝起きられなくなったとか。だってワクチンなんて打っても打たなくても起立性調節障害とかで、夏休み明けて学校に行けなくなる子なんていっぱいいるわけで。それが『何でだろう』という時に『ワクチン打ったせいじゃないの?!』と言われるとそこに逃げ込みたくなりますよね。皆さん、ワクチンを受けた。受けなくて批判してるんじゃなくてワクチン受けて困っている方々が、吸い寄せられちゃっているわけで、そこに医師としてはちゃんと手を差し伸べられなかったという反省はある。『いや、それはワクチンのせいじゃないから』と突き放すのではなくて『あ~なるほど』って話聞いて『ワクチンのせいかもしれないし他のせいかもしれない、だけどこれは良くなることが一番大切だからどうやって良くなるか考えていこうね』と寄り添ってあげることが必要だったが、このワクチンを打つのが思春期の少女だったので自分の症状を表現することも難しいし、男の先生だったりすると苦手ということもあったかもしれない。そういうスイートスポットというか医療者が受け止めきれなかったところに彼女らが入り込む余地があったというところで私は申しわけなかったという気持ちはあります」(久住氏) 自己免疫疾患が疑われ体調が悪い少女に自己抗体値が高い人が多いとの報告については 「いわゆる紛れ込みなんですよね。『ワクチンを受けた後に発病したらワクチンのせいだ』というのが彼らのロジック。ロジックとして破綻している。ワクチン受けた人と受けていない人に自己抗体の出現率がどのくらい違うのかとお金掛けて調査なさったらいいんですよ。それはやらずに『私はこれは関係があると思う!』と。ホントはロジックで考えなければならないのに思い込みで発言するというのが反ワクチンをサポートする医師の特徴」(久住氏) 2018年11月の日本医師会と日本医学会の合同フォーラムにはHANS(HPV関連神経免疫異常症候群)を主張する医師が招聘されておらず、如何に納得してもらうかにしてもらうかということにシフトチェンジしていた印象がある。 「ワクチンのせいなのかもしれないという段階ではない。じゃあ現状として痛みに対してどう治療しているのか、積極的に治療していくにはどうするのかのという話だった」(久住氏)薬害オンブスパースン会議や薬害弁護団
薬害オンブスパースン会議や薬害弁護団について。薬害オンブスパースン会議主催のHPVワクチンに関する国際シンポジウムを取材して思ったのは、被害を主張するも相手にされない人が日本と同じように世界中にこんなにいるということだった。 「マッチポンプというか。『訴訟も起きているのに』とかあんたたちが訴訟起こしてるからよそでも。お互いに火をつけあっているのに向こうで火ついてますよと言っているような」(久住氏) では、「寄り添う」とはどういうことか。 「被害を受けてしまっている人というか調子が悪い人が置き去りというのは間違いないと思う。誰が寄り添ってるのかといえば誰も寄り添ってない。『あなたたちはこんな被害を受けてほんとに可哀想だね』と言うのが寄り添うことじゃないんです。『君たちの未来が閉じられてしまった』などと周りで騒いだら一番可哀想じゃないですか」(ナカイ氏) 休憩を挟んでアンケートをもとに質疑応答が行われた。反ワクチンへの説得について
Q:インスタで反ワクチンを説得するには? 「経験上無理 同じことを言い続ける 叱らないで今からでも遅くないから」(森戸氏) Q:幼稚園ママ友が反ワクチン どうするか 説得は? 「『え? なんで打たないの? 馬鹿じゃない』と言うのは効く。米の母親プロワクチン(反反ワクチン)身近な人が反ワクチンになりそうな時の手引書。あなたは反ワクチンねと決めつけない、その人はワクチンを躊躇っている人、迷っている最中なんだから。データを見せる、そこから始める」(ナカイ氏) 「ホントに打たないと決めていたら誰にも表明してくれないんですよ。まだ、小児科に来て打ちませんからと言う人はまだいいほう。必要性を感じたらいつでも待ってるからと言うといつか来てくれると思っている」(森戸氏) 「大人になって必要になれば打ちますという人もいる」(ナカイ氏) 「ワクチンに対する知識を子どもが生まれる前から産婦人科、保健師、助産師が「子どもが生まれてから2か月でワクチン始まるのよ」と事前に教えてくださるのが一番大切」(久住氏) 「産んだばかりのお母さんを集めて話したことがあるが、出産という一仕事を終えて疲れているし寝てしまう。お父さんになったばかりの人も来て聴いてくれたらいいのにと。あんまり前だとまだ駄目。子どもが目の前にいない時に話を聴いても切迫感がない。イメージができないので、お父さんも産休・育休に来てくださったらなと思う」(森戸氏) 「海外では妊娠中に3種ワクチンを打つことで子供に免疫。生まれた後のことまで産婦人科の先生に協力してくださいねというのは無理なお願いかもしれないが。妊娠中からワクチンについて受けてくだいねと」(久住氏) 会場の産婦人科医師「日本の産婦人科はワクチン接種についてあまり知らない。先天性風疹症候群の子どもが産婦人科医の目の前に来ることはない。それは産婦人科だから、みんな小児科に行ってしまいます。目の前のことには興味を持つが、先天性の病気については意識が落ちている感じはする。勉強して知識を持つ、それこそが知識人の、医者を含めて啓蒙する人たちの活動だと思っているがそこまで行ってないのは感じる。ワクチンは予防なので、起こらないことでどんないいことがあったかは目の前に一切ない。判りづらい。起こってから。救急の医者はいい、死にそうな人を助けたらみんな感謝する。ワクチンなんて『ならなかったら当たり前だろ』で終わり。過去に学んでやるしかないが、過去に学んだ人たちがだんだん消えていってる、危ない時代を知らない人ばかりになっている」医療者とのコミュニケーションについて
Q:ワクチン接種に抵抗はないが子供に不調が出た時に医療者とどうコミュニケーションを取ればよいか? 「ドクターショッピングしていい。東京なら医療機関がたくさんあるのでできる」(森戸氏) Q:ワクチンの副反応を訴える人への接し方は? 「その症状からの回復を目指すこと一緒に考えてあげることが大切。特効薬や治療法を見つけてほしいというが単一の疾患概念も確立されていないので治療法もない。話を聞くだけで治る人もいる。別の疾患の紛れ込みの人は原疾患の治療をすれば治る。大切なのはワクチンによって起きたのかどうかは関係なく、文脈を切り離して一緒に考えてあげることが重要」(久住氏) 「『可哀想だね』と言うのを控える」(ナカイ氏)メディアの問題について
Q:反ワクチンになるきっかけ、メディアの責任は? 「教育を受けたはずの医者もワクチン怖いよねと反ワクチンになりえる」(森戸氏) 「医師はわからないことをわからないと言わないといけない。不正確なことを言うと医療者への不信感を持たれる。医者に簡単に話を聞くのは難しい。こういう場も大事。SNSも補完」(久住氏) 「ツイッターで医師をフォローするといい、勉強の機会になる」(ナカイ氏) 「朝日の記者が(子宮頸がん)ワクチンが原因と書き始めた。メディアの仕事はいち早く狼煙を上げ、弱者の側に立つべき、権力の監視がジャーナリズムだが、そうでなかったという時は方向転換すべき、朝日内では今さら薬害は誤報でしたとは言えない雰囲気だと聞く。官僚が無謬性に囚われているようにメディアも罠に陥っていて論調を修正できない。同じ量、パワーでコンテンツを書いたらマイナスの方に引っ張られる。なんとなく先延ばしの状態。あと何年かするとHPVワクチン接種の機会を逸失したがために罹患する人がたくさん出てきて騒ぎになり、ようやくマイナス側に触れていたのが戻っていくと思う」(久住氏) Q:薬害弁護のビジネスのからくりは? 薬害裁判でかなりのお金がストックされているという話がある。 「タミフルの異常行動は否定された。イレッサも最終的には原告敗訴で薬害ではなかったと決着。でも報道は小さい。なぜ科学的には負けることを定期的にやっていくのかというと、メディアに出るので社会的にはプレゼンスを保つことができる」(久住氏) HPV訴訟の原告弁護団に取材すると着手金は無しとのことだった。 「成功報酬型。薬害B型肝炎訴訟、弁護士料5%で1500億円が医療問題弁護団の懐に入る計算、それだけ原資があるので裁判を起こせれば彼らにはいいのかもしれない」(久住) 訴訟の乱発によって、海外ではワクチンメーカーがワクチン製造から撤退し、供給量が足りなくなった。 「米はVICPシステムを作った。規定、クリアカットになっているのと。原資はワクチンを打つ費用に75セントくらい乗っけられている。日本は国が救済する形なのでなんとなく国が悪さしたみたいな感じになってしまう。副反応がゼロのワクチンや医療行為はない。保障の仕組みを変える必要。米ではワクチンは製薬会社の有益な収益源。それによってヒブや髄膜炎ワクチン、肺炎ワクチン、ロタ、HPVワクチンができた。利潤を追求する正当な権利がある。その結果として、我々が恩恵を受けている部分はあるのでそれを悪として陰謀論で片付けてしまうのはわかりやすい。そういうのでなくて日本のワクチンメーカーは脆弱。日本の製薬会社はワクチンを作っていない。財団法人、厚労省から補助金もらってつくる。これが訴訟でさらに減ってしまうのはよくない」(久住氏) 根強い陰謀論についても話題に。Q:国と製薬会社と政治家が結託という陰謀論があり、ワクチンは人口を減らす陰謀だというトンでも説も流布されているが 「ワクチンにお金を出したことで陰謀論はビルゲイツが原因とされてしまっている。陰謀論の人たちはワクチンなら女性を取り込めるということで。今の陰謀論の巨悪とされているのはジェフ・ベソス。ベソスがワクチンについて話すと人口を減らす陰謀だと」(ナカイ氏) 「ビルゲイツが奥さんのメリンダさんと財団作ってワクチン供給の発展途上国へ無償の慈善事業をしたところ『見返り無しのことはするわけない、人口減らそうとしている』という陰謀論になった。ビルゲイツは『世界の人口が増えすぎて子供たちがどんどん生まれて、ケアを受けてないのに、どんどん生まれてしまうのは問題だ。僕はそれを減らしたいと思う。ワクチンと教育をうまく使えばこどもが生まれ過ぎることをやめさせることができると思うよ』と言ってるだけ。それの『それ』が違う」(森戸氏) Q:ワクチンの有用性有益性を伝えるには? 「体験談をいっぱい」(森戸氏) 「今はネガティブ情報ばかりなのでそれを越す勢いで普通の当たり前のまともな情報をどんどん出す必要がある」(ナカイ氏) 久住「厚労省のHPが問題。URL長すぎ。もっとシンプルにリーチしやすくなるのが必要」(久住氏) 「(厚労省のHPは)検索がしづらい」(森戸氏) 「ツイッターをデータ解析した坪倉ドクターによると、原発、放射能関連のデマで大切なのはあとからオーソリティがちゃんとした見解を述べるよりはすぐに打ち返す必要があるという解析結果。すぐに打ち返す必要がある」(久住氏) 久住氏も連絡会事務局長の市議のツイートをすぐに撃ち落としている。 「迎撃ミサイルです(笑)、パトリオット。カウンターの情報として情報伝達はHP、インスタ、ツイッター、マルチチャンネルで『どこに行ってもワクチンの情報あるよね』という方がいい。反ワクチンがインスタに流れている」(久住氏) 「今、主戦場はインスタ。ツイッターはオーソリティでなくてもすぐに叩くので」(ナカイ) 「厚労省もワクチンについてインスタにアップすべき。アカウントで医療者を名乗って医学的に誤っていることを言っている人に対して、これこそが医療審議会で取り上げるべき話。医師会なども組織として有機的に動いていない」(久住氏) Q:補償について 「ワクチンで何かあった時に厚労省のHPでどこを見ればいいか全然判らない。インフルなどの任意接種は予防接種法ではなく厚労省の下部団体の医薬品医療機器総合機構法PMDAの保障になるが、そこの区別も判らない。情報へのリーチも悪い。そこが誤解を招く原因にもなっている」(久住氏) 「反ワクチンの人は副反応の悪い話はしても、じゃあワクチンをやめて病気になったらどうするのという話はしない、それをもっとするべき」(ナカイ) 「責任はワクチンを実施している自治体が予防接種賠償責任保険に入っているから。『私は正しいことをやるべきだと言っているだけで責任取るのは私ではない』という当たり前の回答でいい」(久住氏) 公衆衛生学の研究者からは「何故ワクチンを打ってないというと4割が忙しくて忘れてたなど機会を逃してる。これは不幸な話である」との指摘。 Q:ワクチン接種を受けない実数は? 「受けに来ない方は反医療でもあるので判らない、ネグレクトに近い家庭もある。余裕が無いという家庭も」(森戸氏) 親の状況によって子どもが健康被害に遭うリスクが高まるのは不幸なことである。 「親の思想は親の思想でいいのだが、そのリスクは子供に来る」(森戸) 自治体のデータ管理や共有についても厳しい意見が出た。 「ワクチン接種率の高低について自治体はデータを持っていない。母子手帳以外に公的機関が皆さんの予防接種歴を持っていない」(久住) 「麻疹はある、自治体ごとに」(森戸氏) 「確かに台帳はあるが、ただし子どもが転入したり転出するともう、ワクチン接種は基本、自治体・市区町村の役目なのでもう判らない。予防接種の記録の管理とマイナンバーカードとセットにして、それが何十年か前にあれば風疹を打った打たない受けた方いいなどとの騒ぎにならない。デジタルデータとして管理してもらった方がいい」(久住氏) 「反ワクチン」という言葉について、「ためらっている人、いろいろな理由で戸惑っている人を『反~』というのは反日みたいに一方的に決めつけすぎではないか?」との質問が飛んだ。 企画側としては悩んでいる親を貶める意図はないが、どうやって医学的に正しい知識を届けるかを考えた時に、惹起するためイベントタイトルを反ワクチンにした経緯がある。 「絶対的反ワクチンと穏健派反ワクチンとか。今日(スライドに)登場した人は反ワクチンと言われて批判の対象となっても仕方ない。一方で迷っている人を我々が反ワクチンと名付けて向こう側に遠ざけていることがあるとしたら我々は反省しなければいけないし、決してそういう意図はないので胸襟を開いて是非相談にきてほしい」(久住氏) インフルエンサーになってしまっていたらそれは反ワクチンと呼ばれても仕方ないことだと思う。