『戦国の山城を極める 厳選22城』(加藤理文/中井均・共著)が発売された。 平成の城ブームは令和に入ってもとどまるところを知らず、 100名城や続100名城をめぐるスタンプラリーに参加する人はますます増えている。
さらに、 令和の改元を機に城の御朱印ともいえる「御城印(ごじょういん)」を発行する城が続出し、 御城印集めが注目を集めている。 そんな城人気が、 ついに大本命の「山城」にまで到達しつつある。 山城とは、 「天嶮(険しい地形)を利用して、 独立した山頂部などを中心に曲輪(くるわ)群を設けた城」(『よくわかる日本の城 日本城郭検定公式参考書』より)で、 中世から戦国期に多く築かれた城のこと。 全国に3~4万あるといわれている城の中で、 一般的にイメージされる天守が残っている城は100にも満たない。 日本の城の約99%が、 じつは山城なのだ。
山城好きとして知られる
春風亭昇太師匠の言葉通り、 まさに「山城を知れば、 日本の城が解る!」といえる。 城を取り上げた人気のTV番組においても、 本書の巻頭で取り上げている高取城(奈良県高市郡)が、 数多の名城を抑えて“最強の城”として選ばれている。 ただし、 山城にはほとんど建物が残っておらず、 見どころは土塁や堀、 石垣がメインとなる。 なので、 山城の見方や楽しみ方がわかるには、 最初はガイドが必要になる。 そんな山城の世界を案内してくれるのが、 日本城郭協会の理事である加藤理文(かとうまさふみ)先生と、 同じく日本城郭協会の顧問を務める中井均(なかいひとし)先生。 年間100近い城を訪れ調査研究に携わる、 城郭研究の最前線に立つスペシャリストだ。 城漫談ともいえる面白くてわかりやすい話にファンも多く、 全国の城イベントへの登壇も多いので、 城好きの方にはいまさら説明の必要はないだろう。
取り上げた22城は、 バラエティーに富んでいる。 日本100名城にも選ばれている織田信長ゆかりの「岐阜城」(岐阜県岐阜市)から、 2020年大河ドラマ主人公・明智光秀が築城した「周山城」(京都府京都市)、 全国屈指の縄張を誇る「丸子城」(静岡県掛川市)、 存在すらあまり知られていない虚空蔵山城(長野県松本市)まで、 山城初心者はもとより山城好きにも大変興味深いランナップになっている。
城の設計プランである「縄張」は、 山城を楽しむ上で、 もっとも重要な要素ともいえる。 本書では、 縄張を理解する図版として、 著者が描き起こした「縄張図」のほかに「赤色(せきしょく)立体地図」なども掲載している。 航空レーザー計測によって樹木に覆われた地形もくっきりと浮かび上がる赤色立体地図には、 曲輪や畝状竪堀(うねじょうたてぼり)群までしっかり映し出されていて驚くこと必至。 もちろん赤色立体地図や発掘調査から推測できることなど、 城郭研究の最前線に立つ著者たちならではの最新情報も満載。 木々の葉が落ち、 下草が枯れて遺構が見やすくなるこれからが、 山城のベストシーズン。 この秋、 あなたも山城デビューをしてみよう。