それぞれみんな音楽フリーク
――今作はオリジナル作品になりますがアニメ企画の成り立ちについて伺えますか。
佐藤:ストーリー原案を担当したじんさんとプロデューサーの橋本(太知)さんが知り合ったことで、2人の間で音楽とロボットをテーマとしたオリジナルのアニメ・シリーズを企画することとなり開発がはじまったそうです。そして、じんさんが私の関わった「カウボーイビバップ」や「エウレカセブン」を好きだったという話を橋本さんが聞き、たまたま橋本さんと私が別の企画(実現はしなかった)で仕事をしていたことで、誘われて企画開発のメンバーとして参加することになりました。
――音楽ものとしての“成り上がり”物、フェスを中心にした“スポ根”物も選択肢としてあったのかなと考えていますが『LISTENERS』を「ボーイ・ミーツ・ガール」をベースにした理由があればお教えください。
佐藤:まずは、音楽ものでロボットものというお題があったのですが、「成り上がり」や「スポ根」にすると必然的にバトル中心のロボットものにしてしまいそうですし。どちらかというとバトルというよりも、ロードムービー的な旅ものにしたかったのが、理由のひとつです。そして、旅をするなら、やはり男女でということで、結果的にボーイ・ミーツ・ガールものになっていきました。なので、まずは旅ものという部分が大きかったです。
――そうだったんですね。TRACK01はまさに旅立ちの情景でこれからの物語にワクワクしました。エコヲの地元は廃品集積地、リバチェスタという地名からもイギリスの炭鉱がモデルの様に感じています。音楽的な面からも舞台として意識されたのでしょうか。
佐藤:リバチェスタは、シンプルに「ビートルズ」のリバプールと「オアシス」のマンチェスターの合成造語です。
――エコヲの姉・スエルが経営する「oasis」というバーの名前・二人のイクイップメントが「VOX/AC30」など、これだけ随所に盛り込まれた音楽ネタはどのようにネタ出しされているのですか。
佐藤:これは、企画のコアメンバー、じんさん、橋本さん、わたし、安藤監督、キャラ原案のpomodorosaさん、メカデザインの寺尾(洋之)さんらが、それぞれみんな音楽フリークなので、全員です。会議で話しながら、みんなでネタ出ししていった感じです。
――やっぱりそうだったんですね。音楽を盛り込んだ独特の世界観、これだけコダワリの強い作品だと細部まで情報共有が大事になってくるのではと感じていますがどのように皆さんで共有されていったのですが。
佐藤:1年ぐらいに渡って企画会議から脚本会議までコアメンバーで毎週5~6時間ぐらい行っていたので、その話し合いで具体的に世界観を共有していきました。

違和感と共有感のバランスがとれるところをさぐって
――みなさんで時間をかけて丁寧に作り上げていったという事なんですね。単に名前を使うだけでなく音楽用語も作品と見事にリンクされているのが素晴らしいと感じました。
佐藤:これもコアメンバーでの会議の中で具体的にデザインやサウンドも含めて、リンクさせていきました。
――毎話ネタが豊富でそちらを追いかけるのも大変ですが楽しいです。ただ、あまり濃すぎると音楽がそれほど詳しくない方はついてくるのが大変になります。今作ではあまり詳しくなくても楽しめるのでそのバランス感覚が素晴らしいと感じています。
佐藤:コアメンバーには、私や橋本さんといった40、50代から当時20代だったじんさんまでの世代的な幅の広さがあるギャップを利用して、互いに違和感と共有感のバランスがとれるところをさぐって決めていきました。

――知識だけでなく世代としてもバランスが取れたチームなんですね。だから、どの世代の方が観ても楽しめる作品になっている。セリフ回し・ビジュアルデザインなども各キャラクターが立っていて素晴らしいチームワークだなと感じました。
佐藤:こうしたそれぞれのネタについても、台詞は脚本家、デザインは絵描き、という感じで分業しているのは、最終的なアウトプットだけで、発想のはじまりは、みんなでの会議で共有されていった場合がほとんどです。
――各話タイトルをアルバムタイトルなどからつけていらっしゃいますが、物語とも意識されているのですか。
佐藤:もちろん、リンクを意識しています。特にタイトルと繫がるバンドに関しては、登場するロボットの乗り手のキャラクター造詣にも影響しています。

出会って変化していく様にも注目してほしい
――これだけみなさんで向き合って作品を構成していく中で印象に残っていることがあれば伺えますか。ネタ出しの中で驚いたことや作品に落とし込んでいく中でピースがきれいにはまって気持ちよかったことなど。
佐藤:台詞やキャラクターというよりも、それぞれのジャンルの持つ雰囲気が、主人公たちが旅をしていく途中で出逢う不思議な場所や国といったイメージにうまくハマった時には、よかったなと思います。グランジで学園ものとかシューゲイザーで没落貴族ものという雰囲気とかです。
――世界観と物語が上手く合わさっていき化学反応を起こすという感覚があったんですね。
佐藤:こちらもコアメンバーでの脚本会議中にも、具体的な夢キャスティングをしていたので、それを監督やプロデューサーのみなさんが、ほぼ実現していただいたので、大変だったのはキャスティング・スタッフだったのでは…。選ぶのは、楽しかったです。
――設定資料集は出ますか?これだけコダワリのある作品なので欲しいです。
佐藤:私もほしいです。プロデューサーにお願いしたいです。

――是非よろしくお願いします。たくさんのお話を伺いましたが、改めてここに注目してほしいという点があれば教えてください。
佐藤:主人公の2人が旅の中で成長していく様は、もちろん。同時にであう様々な国や場所での大人たちが、若い主人公2人と出会って変化していく様にも注目してほしいです。
――多くの謎がちりばめられているのでその謎が解けていくのもこれから楽しみです。
佐藤:楽しみにしていてください。マッギィの活躍も(笑)
――はい、楽しみにしています。作品のテーマの1つにもなっている、佐藤さんにとっての「決して忘れられない“音”」はなんですか。
佐藤:夕暮れの下校時に聴いた遠くから響くカンカンという踏み切りの音。基地の近くの学校だったので体育の時に遠くから反響するジェット機のエンジン音。どちらも学生時代がフラッシュバックします。
――どこか哀愁を感じる空気感も作品の中から感じられます。お話を伺う事でますますこれからの展開が楽しみになりました。最後に改めてファンの方へのメッセージをお願いします。
佐藤:音楽ネタがいろいろと入ってる作品ではあるんですけど、そういう部分はわからなくても大丈夫です。声優さんらの素敵な演技や、ロボットのアクションや、サウンドトラックなど、いろいろな聴きどころ、見どころがある作品だと思います。

<1話~4話の一挙振り返り配信が決定>
