常に全力の状態
――40年以上も続いている『ロボコンシリーズ』ですが、演じられる前に持っていたロボコンの印象を伺えますか。
斎藤:『がんばれ!!ロボコン』は生まれる前、『燃えろ!!ロボコン』は社会人になっていたので、リアルタイムでガッツリ観いたわけではないんですが、印象としてはヒーローランキングなどの番組で出てきていたイメージが強くて、「ロボコン100点!」「ロボコン0点…」といったコミカルでいいとこ取りのイメージを最初持っていました。
――今までシリーズで好きなキャラはいましたか。
斎藤:ガンツ先生の印象が強くて。結構、理不尽なことを言っているので、印象に残っていました。なので今作で江原(正士)さんになって、どんな感じになるのかなというのは楽しみでした。
――江原さんのガンツ先生は渋くてカッコよかったですね。逆に演じられたロボコンはテンションの高いキャラクターですが、アフレコでもテンションを高めて演じられたのですか。
斎藤:もう、最初からマックスです。
――『がんばれいわ!!ロボコン』がシリーズ3作目ということで、今までのロボコンは山本圭子さん・伊倉一恵さんとまさに名優のお二人が演じられ根強いファンがいる作品ですが、今作でロボコンを演じるにあたってプレッシャーはありましたか。
斎藤:もちろん、ありました。最初は山本さんや伊倉さんのロボコンを凄く意識してしまったんです。台本を読んでも謎が深まるばかりでどうしようと。
――意識するなというほうが無理だと思います。
斎藤:そうなんですけど、収録までのあいだ子供の送り迎えをするときなどに「ロボ根性!!」「おいらロボコン!!」とセリフを言っているのを聞いた子供が笑ってくれるのを見たときに、この感じかと“ロボコン”像を少しずつ探していく中で「子供たちを意識しないといけない」と思ったんです。いままでのロボコンを見ていた大人の方を意識したノスタルジックな感じではなく、今の子供を爆笑させることが出来るロボコンを作ったら、当時の子供だったファンにもきっと響くだろう。それはトレースするものではなく、ただ作品・演じられたお二人のスピリットを持って子供たちを楽しませるのが私としての答えかなと思いました。
――正解だと思います。
斎藤:ありがとうございます。なので実際に演じるまで今までのロボコンはあえて観返しませんでした。終わってから観直しましたけどね。観直して「やっぱり、レジェンドは凄い!!」と思いました。
――観てしまうと変に引っ張られてしまうこともありますからね。
斎藤:逆に真似をしたら失礼と思ったので、私のスピリットで出来る全力をやりました。
“?”のままでいるのが正解
――先ほど読み込んでも謎が深まるばかりとのことでしたが、脚本をご覧になっての感想を伺えますか。
斎藤:オーディションでは汁なしタンタンメン役も受けさせていただいたんです。なので、汁なしタンタンメンというパワーワードは知っていたんですね。
――(笑)。
斎藤:オーディションでも今回の物語を想像させるワードも入っていたので、ロボコンが汁なしタンタンメンを生み出して何かをするんだなと。その状態で“?”だったんです、大きな“?”(笑)。実際の台本をいただいても元々あった“?”もなくならず、新しく大きな“?”が生まれるという不思議体験をしたんですけど。多分、これが答えだと思いました。普段、演じる際は“?”が生まれたら、それを解消するのが演者としての1つの役割だと思うんですけど、これはもしかしたら“?”を作ることが今回の仕事かもと思って、いわゆる台本を読み込んで流れを汲んでという事は意識しないことにしました。
――中華料理が話し始めるなどツッコミどころ満載ですもんね。
斎藤:そうなんです。解消することを変に意識し始めたら面白くなくなるんじゃないかと思って。“?”のままでいるのが正解だと思ったんです。“?”をもっと大きくする、ド派手にするという変換の仕方が正解かなと思いました。
――斎藤さんが感じるロボコンの魅力はなんですか。
斎藤:全力感かなと思いました。私も自分の子供を見てて「え、アホなの…」と思うことがあるんです。それくらい子供は全力になってしまって、時に意味が解らない行動をするんです。その全力で生きているのを見ていて私もパワーをもらうんですけど、それがロボコンにもある気がします。常に全力疾走で、急にオーバーヒートしてしまうのは、私の中でのヒーロー像なんですよね。カッコいいことをしようとは思っているんですけど、本当のカッコいいことが出来ないというのが、凄いカッコよくて。そういうところが魅力かなと思いました。
――今回もロビンちゃんに全力疾走ですね。
斎藤:全力ですよ。全力でエロでした。監督に「エロく」って言われました(笑)。
――そうだったんですね(笑)。今作では監督は石田(秀範)さん・脚本も浦沢(義雄)さんと前シリーズも担当された黄金コンビでロボコン愛の強いお二人だと思いますが、監督はどのような方ですか。
斎藤:ダンディでかっこいいおじさまで、まさかロボコンを撮る人だとは思えないくらいでした。職人のような雰囲気の方で、実際に言われたわけではないんですけど、本当に1か所でも力を抜いてしまうとNGを出すだろうなという鋭さがある方でした。
――そんな職人のお二人からこんな作品が出るのは衝撃ですね。
斎藤:そうなんです。でも、お二人が今作でもということで世界が出来ているので、私が無理にロボコン感をプラスしなくてもいいのかなと思いました。お二人が作っている段階で作品世界があるのかなと。
当たり前のようにやっていてそれがツボに入るんだなと思いました。
――ロボコンと言えばガンツ先生とロビンちゃん。今作でのロビンちゃんはいかがでしたか。
斎藤:個人的なことなんですが、ロビンちゃん役の土屋(希乃)さんの出られていた番組に私の子供がドはまりしていて、一緒に全部観たんです。でも今作では印象は変わっていて、最初はわからなかったんです。なんだか見たことあるなとは思ったんですけど。土屋さんのロビンはもちろん可愛いんですけど、今回はけっこう変顔をしたりとかいままでやらないようなお芝居をしていましたよね。それもものすごく可愛くて、今回は甘々な感じはないんですけど、そのこびない感じがピッタリでものすごく可愛かったです。大人っぽさもあって不思議なバランスでした。呼び方も「ロビンちゃん」ではなく「ロビン」なんですよね。
――確かに、いま言われて気づきました。
斎藤:私も言われて気付いたんですけど、「ロビン」と呼ぶことに違和感がなくて、むしろ「ロビンさん」くらいの感じで(笑)。凄く面白いバランスで不思議な像でしたけどぴったりでした。
――いつもサイドにいる感じですけど、今回は前に出てくるキャラでしたね。
斎藤:なかなかの暴れっぷりで、ロビンさんは素敵でした。
――今作では演じられているほかのみなさんも個性的な方ばかりで、それに輪をかけるように各キャラクターも個性的ですが、お気に入りのキャラクターはいますか。
斎藤:私はやっぱりロビンちゃんです。ロビンちゃん凄い素敵でした。あぁ、でもヒロシも可愛いなぁ。
――何かあればズボンを直しているところが子供らしくてかわいいですよね。
斎藤:そうなんです。やっぱり子供たちが可愛かったです。ヒロシも私の子供っぽくて凄い可愛かったんですよ。常に寝癖がついているのもすごい可愛くて、子供たちに癒されました。
――私は清水(ミチコ)さんのトルネード婆々が好きでした。いちいちコミカルで、作中のみなさんと一緒になってツッコミながら観てしまいました。
斎藤:そういうのをさらって入れてくるじゃないですか、それがすごい面白いんですよ。パパをオカモチに詰めようとしたり、小さいネタがいっぱい入っていて、それをフォーカスするわけじゃなくて、当たり前のようにやっていてそれがツボに入るんだなと思いました。
――みなさんの掛け合いのテンポも素晴らしかったです。
斎藤:嬉しいです。
――アフレコはどのような雰囲気だったのですか。
斎藤:実際の現場では全然考えていたことじゃないこともやりたくなってしいました。その場面、その場面で、ロボコンがすごくかわいいので、それをもっと盛り上げるのは何だろうと凄いテンション上がってあっという間に収録は終わりました。
――観ている側も凄いあっという間でした。もう終わるんだ。
斎藤:すごいパワーで押される感じですよね。凄い物量だったと思います。
――その物量が観ていて重すぎない、無理なく受け止められるように作られているのが素晴らしいなと思いました。
斎藤:そうですよね。
――今回、演じる中で一番の挑戦は何でしたか。
斎藤:今まで、こんな感じでお芝居をしたことがなかったです。とはいえ無理したという事ではなく、ただ私が楽しいと思う事をやりました。あとは子供にヒントをもらった面白フレーズをやったので、芝居をしましたというよりは楽しくしゃべって帰ってきましたという感じですね。
――自然に出てきたものに近かったんですね。
斎藤:とはいえ現場ではずっと全力・テンションマックスでやってきたので、最後のほうとか声がかすれるくらいでした。最初はそれを気にしていたんですけど、「そういう事じゃない!魂!!魂!!」と思ってからはどんどんやりすぎてしまって、でもやりすぎても監督は「どんどん行っちゃって」という感じだったので、凄い久しぶりに消耗感というか、燃焼しました。
――終わったら燃え尽きた感じですか。
斎藤:楽しかったですけど、2日間くらい燃え尽きてました。
パワーをくれる作品
――全力で演じていただいてありがとうございます。嬉しいです。全力の本編に加えて。今回は主題歌も歌われてますが、『がんばれいわ!!ロボコン- U-LA-LA』の印象を伺えますか。
斎藤:私の中では正統派な子供向けの番組の歌でした。自分の名前を言って、必殺技じゃないですけど「ロボ根性」とか「ウララー!!」とか全部入っていて、最後まで元気が出る歌でした。凄い楽しい歌で私も歌っていて、腕を振ってリズムをとりたくなりました。子供たちが歌うような画が浮かんで、凄く正しい主題歌でした。
――ロボコンの世界が満載で主題歌ふくめ最後まで楽しかったです。演じられて改めて40年たった今も愛される理由は何だと感じられましたか。
斎藤:ロボコンがいるだけで作品が成立しているので、キャラクターとして凄い強いんだなと思いました。画面に出てくるだけでロボコンに目が行ってしまうので、シンプルだけどキャラクター性として強いんだなと思いました。
――そうですね。ロボコンがいるからそれが正解ってなりますよね。
斎藤:そうなんですよ。いるんだから深く考えてもしょうがないみたいなところがありました。
――その楽しみ方が作品ですよね。ロボコンで深く意味を考えてしまうのは逆に野暮ですから。ただ、“?”のままも含めて純粋に楽しむのが正解な作品です。
斎藤:そうですね。
――あっという間でしたがロボコンの色んなモードも見れて楽しいですね。
斎藤:この感じも可愛くていいですよね。このチョット付けただけみたいな感じが可愛くて。
――それも含めて緩いのが正解だと思います。最後に改めて今回の映画の観どころを伺えますか。
斎藤:本当に懐かしい気持ちで観に来てくださるかたも沢山いると思うし、今回はじめて観てくれる小さい子供たちもいると思うんですけど、注目としては大人が全力で楽しませようと思っている作品なんです。だから深く考えてしまうと“?”がいっぱい出てきてしまうんですけど。今、元気がなくなっている方に来ていただけると、凄く元気でハッピーな気持ちになって帰ってもらえると思うので、注目ポイントというよりは、理由はないけど観に来てほしいです。本当はいっぱいあるんですよ(笑)。見れば凄くハッピーになれると心から言える作品なので。みんなが全力で楽しませようという感じが大好きなのでそれを感じてもらえたら嬉しいです。
――私も観ていてパワーをもらえました。
斎藤:ありがとうございます。何かをするってすごくパワーのいることだけど、何をしたらいいんだろうと思っている人に見て欲しいです。答えがあるわけではないんですけど、何かしなきゃとかどうすればいいんだろうという気持ちを全部吹き飛ばして「なんでもいいけどまぁいっか、楽しかった、明日も頑張ろう、何を頑張るかは分からないけど。」と悩みを吹き飛ばしていただければと思います。それは凄く必要なことで、そういうパワーをくれる作品だと思います。観ていただいて純粋に気持ちになっていただけたら嬉しいです。そして、お久しぶりのロボコンの方は是非お手柔らかに、子供だった気持ちにかえって観ていただけたら嬉しいです。