2020年8月9日(日)より、計8日間にわたって開催していた日本最大のネットの夏祭り「ニコニコネット超会議2020夏」が閉幕した。本レポートでは、8月16日(日)19時より実施した超歌舞伎 Supported by NTT「夏祭版 今昔饗宴千本桜」の模様をお届け。
イベントレポート
日本最大のインターネット夏祭り「ニコニコネット超会議2020夏」のフィナーレを飾る目玉イベントとして、8月16日(日)、超歌舞伎 Supported by NTT『夏祭版 今昔饗宴千本桜(なつまつりばん はなくらべせんぼんざくら)』が無観客の「東京建物 Brillia HALL」から無料生配信された。画面からは中村獅童をはじめとする歌舞伎俳優たちの熱がビシビシと伝わり、生身の俳優たちと違和感なく「存在」するバーチャルシンガー・初音ミクの細やかな演技も冴え渡る。歌舞伎を"観る"だけではなく "参加する"ような新感覚のカメラワーク----カメラ総数17台により、無観客を逆手に舞台上や客席含めあらゆるアングルから臨場感ある表情と動きを捉え、随所にサプライズが散りばめられた作品に約23万5千人の視聴者が熱狂した。
「超歌舞伎」とは、獅童とバーチャルシンガー初音ミクを中心に、伝統芸能と最新テクノロジーを融合させた新時代のエンターテインメント。2016年に開催された「ニコニコ超会議」で初披露され、新作歌舞伎のインターネット生放送という史上初の試みに挑戦したことでも話題を呼び、初年度から約2万5千人の観客、そしてニコニコ動画サイトでは16万人以上が視聴した。毎年新しい演出、技術が試みられ、昨年、初めて挑んだ南座での1カ月公演では獅童と初音ミクが宙乗りを見せ、客席をわかせたのも記憶に新しい。
今年も春の「ニコニコネット超会議2020」で上演予定だったが、新型コロナウイルスの感染拡大により中止。6月の京都南座公演も中止となり、今回の「双方向オンライン公演(無観客)」決定のニュースは、「もう今年は無理かも……」と諦めていたファンにとっては「待ってましたっ!」の発表だった。
これが私の目に、耳に、焼きついております
今やすっかりファンも定着した「超歌舞伎」だが、『今昔饗宴千本桜』は初年度の2016年に上演された作品で、獅童にとっても、ファンにとっても、思い入れの深い演目だ。古典歌舞伎の『義経千本桜』と、初音ミクの代表曲「千本桜」の世界観を融合させた作品で、いまを盛りと咲き誇る千本桜をわがものにしようと企む青龍、それに立ち向かう佐藤四郎兵衛忠信と美玖姫の活躍を描く。今回は「夏祭版」と冠されたバージョンアップ版で、進化し続ける超歌舞伎の革新性を証明した。

舞台は神代の昔……千本桜の前に初音の前(中村蝶紫)が現れると、映像の青龍が登場。初音の前は戦いを挑むものの力及ばず、娘の美玖姫(初音ミク)に後を託して息絶える。それから千年後、枯れ果てた千本桜の前で姫がひとり寂しく舞っていると、佐藤四郎兵衛忠信(獅童)が現れる。この忠信こそ、千年前、美玖姫の母である初音の前と共に、千本桜を守護していた白狐(びゃっこ)が転生した姿だった。

「超歌舞伎」では、役者の屋号など声をかける歌舞伎の"大向う"よろしく、獅童がきまると「萬屋(よろずや)!」、初音ミクは「初音屋!」とユーザーのコメントが画面に踊る。ユニークなのは、迫力あるアクションで魅せる青龍の精に「ウロコ屋!」、女性舞踊家たちが華麗に舞う千本桜の精に「はなびら屋!」、NTTの最新技術に「電話屋(でんわや)!」と、随所に自由な大向うが掛かるところ。
数多の人の言の葉

「数多の人の言の葉」とは、2016年の「超歌舞伎」初披露から必ず盛り込まれている台詞。2017年、獅童がガンにおかされていることを公表した直後、ツイッターに「#中村獅童に数多の人の言の葉を」というハッシュタグが生まれ、超歌舞伎で結びついた歌舞伎ファンと初音ミクファンらの間で拡散、見舞いの言葉が次々と書き込まれた。

そしてカーテンコール。獅童からの今回の抜擢配役に込めた思い、未来を信じるメッセージ、「みなさまどうかお元気で。また会おうぜ。どうもありがとう!!」というまっすぐな言葉には、多くの人が感涙したであろう。