来春2月に東京と大阪で開催される映画『銀河鉄道999』のシネマ・コンサートの公演に先立ち、原作者の松本零士と、星野鉄郎役の声優・野沢雅子に公開当時の話を聞いた。
『銀河鉄道999 シネマ・コンサート』は、1979年に公開された『劇場版 銀河鉄道999』のセリフや効果音はそのままに、音楽パートをオーケストラが本編上映に合わせて生演奏するコンサート。
音楽を担当したのは、TV版(1978年9月放送開始)に続いて青木望。全編にわたって叙情的なストリングスの美しい旋律が奏でられる作品。松本零士はクラシック音楽にも造詣が深く、劇伴の制作にあたっては自身が思い描くイメージを音楽担当の青木望に伝えたという。
松本零士の音楽との出会いは、少年の頃に聴いたベートーヴェンやチャイコフスキー。終戦直後、近所に捨てられていたクラシック音楽のレコードを持ち帰り、自宅の蓄音機で貪るように聴いた。 中学生になると映画に夢中になる。『風と共に去りぬ』、ディズニーの『白雪姫』…。当時、小倉市内の映画館で見た数々の作品は、映像における音楽の重要さを気づかせてくれた。なかでも『わが青春のマリアンヌ』(1956年日本公開)は劇中の音楽の使い方に感銘を受けたという。
「(音楽が入ることによって)非常に綺麗に見えるんですよね、そのシーンの映像が。こういうものを自分でも作りたいと思いました」と振り返る。 『銀河鉄道999』の音楽は
「ベートーヴェンの交響曲やチャイコフスキーの白鳥の湖と、現代音楽が混ざったようなイメージ! と、好き勝手なことをお願いしまして(笑)」。
青木望はこの想いを受け、
「見事に私の伝えた雰囲気が出てました!」と松本を唸らさせるスコアを描き上げた。
また、『銀河鉄道999』の音楽といえば
ゴダイゴが歌う主題歌。今回のシネマコンサートでは、ゴダイゴのタケカワユキヒデがゲストで参加し、オーケストラをバックに生歌唱する。主題歌は映画のエンディングに流れる。
「最後ですから、思い出として残るときに、悲しさだけではダメなんですね。少年の青春の夢から旅立つための曲をください」と松本はゴダイゴに依頼。かくして、アニメ映画史上に燦然と輝くエンディングが出来上がったのである。
「スタジオの中でメーテル(CV:池田昌子)が他の男性と話してるのみて、すごくヤキモチ焼いてたんですよ(笑)」。 星野鉄郎の声を演じた野沢雅子は、TV/映画の収録期間中は自身が星野鉄郎になっていたと話す。それほど、この作品に対する想いは強かった。声優のオーディションには松本零士も参加した。野沢を推した松本によると、
「頭の中で思い描いていた通りの、見事な少年の声!」だったという。
野沢を信頼していた松本は収録にあたって注文はなく、声の演じ方は本人に任せた。当初は不安に感じたが、収録を1話終えるたびに星野鉄郎に入り込んでいった。この作品には不思議な磁場があるのか、メーテルを演じた池田昌子もメーテルになっていく。いつしか、お互いを役名で呼び合うようになっていたほどだ。
野沢や池田を作品の中に入り込ませた要因の一つには、青木望が書いた美しいスコアも少なからず影響しているようだ。野沢の中には『銀河鉄道999』の音楽がいまだに耳に残っているという。「最初に流れる音楽を聴いた瞬間、鳥肌が立ちます!」と話す。
鉄郎が旅立つメーテルを見送るところで、主題歌が流れてくるのを見るたびに
「今でも、泣けてきます。ずっと旅は続いてくんだなぁって。私の中では鉄郎は永遠に生きてるんです」とラストシーンを振り返り、涙ぐむ。 野沢雅子の中では『銀河鉄道999』は永遠に生き続けている作品なのだ。
『銀河鉄道999 シネマ・コンサート』は2021年2月6日(土)に東京(昼夜2回公演)で、2月11日(祝・木)には大阪で開催される。
東京公演のチケットは本日(12月4日あさ10:00~)より、大阪公演は12月5日あさ10時より発売される。詳細はコンサート公式サイトを参照していただきたい。
©松本零士・東映アニメーション