『キン・ザ・ザ』と言えばこの言葉「クー」。1986年に製作された実写版映画である『不思議惑星キン・ザ・ザ』に登場し、最初は意味不明ながらも、子どもから大人まで誰もが真似しやすいこともあり、映画の舞台となるキン・ザ・ザ星雲プリュク星を象徴する言葉として広く知られている。 キン・ザ・ザ星雲プリュク星には「キュー」という相手を罵倒する言葉があるが、それ以外の名詞、動詞、形容詞、副詞、感嘆詞などはすべて「クー」で表される。我々人類における「YES」「NO」を遥かに凌駕する機能を有し、挨拶もすべて「クー」だ。目上の人には必ず「クー」でお辞儀が礼儀。 このたび公開となるアニメ版『クー!キン・ザ・ザ』も実写版を踏襲、チジョフとトリクの2人の主人公やさまざまな形容の宇宙人やロボットも「クー」を連発してコミュニケーションをとる。 この「クー」開発時にはほかに候補として「キュー」のほかに「ケー」や「カー」もあったというが、ゲオルギー・ダネリヤ監督は政府の検閲により「クー」が消滅の危機に瀕したエピソードを残している。
「検閲によって、『クー』も消滅の危機に晒されそうになった。当時の最高指導者ブレジネフの葬儀の後に、重要な『クー』という単語を、急遽、別の言葉に替えなければならなくなりそうだった。ある日、『プラヴダ』紙を見ると、一面には『K.U.チェルネンコ』の名が太字でいくつも印刷されていた。これはブレジネフの後継者としてコンスタンチン・ウスチノフ・チェルネンコが任命されたという報道であった。プリュク星では『クー(KU)』が全てを意味して繰り返し使われていた。

そんな涙ぐましい努力によって生み出された「クー」。人類は常に利便性を追求して進化してきたが、もしかすると未来ではさまざまな言語が集約されて「クー」同様、最小限の言葉で深いコミュニケーションをとる状況になるかもしれず、その観点からいえば「クー」は人類を数百年、数千年先取りしたものともいえる。さらに想像すれば「クー」の先にあるのは言語消滅、テレパシーしかない。
