グルメジャーナリスト東龍のホテルグルメで“口福”体験!〈星のや東京〉で、再解釈された郷土料理に舌鼓!

2016年7月20日にオープンした〈星のや東京〉は、地下2階から地上17階という建物の中に日本旅館の要素を詰め込み、“塔の日本旅館”と形容されている。各階にある6室のゲストルームと“お茶の間ラウンジ”はプライベートな空間と共有スペースが両立しており、地下1500mから湧き出る露天風呂付きの天然温泉が、17階という高層階にある。

都市型の〈星のや〉として好評を博しているけれど、美食も堪能できるとあって、食通も足繁く訪れる。

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畳敷きの個室

地下1階の静謐な空間に位置する〈星のや東京ダイニング〉では、宿泊者限定でディナーコース(3万3880円)を提供。日本各地に受け継がれている食文化を、現代風の解釈とフレンチの技法によって再発見できる。

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総料理長の岡亮佑さん

2023年5月1日から総料理長を務めるのが岡亮佑さん。〈神戸北野ホテル〉や〈レストラン オマージュ〉、〈ピエール・ガニェール〉などで研鑽を積み、その土地でしか創ることができない料理を追求する。この岡さんが日本の郷土料理を再解釈して紡ぎ出した新感覚の夏メニューを紹介しよう。

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キャビア:鯵の三杯

最初の“キャビア”は香川県の郷土料理、“鯵の三杯”をテーマにしたフィンガーフード。小鯵を三杯酢と白ワインビネガーでマリネして、レタス、生姜、フロマージュと合わせた。上には赤いエディブルフラワーのビオラとたっぷりの“キャビア”。塩味と酸味が効いていて、食欲をかき立ててくれる。

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ちりめんじゃこ:うすやき

山梨県の“うすやき”から着想を得たのが、“ちりめんじゃこ”。小麦粉の生地に胡麻油で味つけした“ちりめんじゃこ”を練り込み、その上にはオカヒジキ、キュウリ、薄切りしたアスパラガス、青いエディブルフラワーのコーンフラワー。
包んで食せば、生地の香ばしさと、野菜のフレッシュさとシャキシャキ感に魅了される。

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鶏:味噌ころばかし

“鶏”は、青かいしきの蓮の葉の上にのせられたガラスの器が涼しげ。なめらかなゴボウのムース、味噌、ダイスカットした宮崎県の地鶏“地頭鶏(じとっこ)”、お酢に漬けた玉子の黄身という構成で、下まで掬って食べれば、様々な食材が渾然一体となる。地鶏は、塩麹でマリネして味噌ダレで焼いたものと、炭火焼したものとがあり、味わいに変化を与える。

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南瓜:あちゃら漬け

福岡県の“あちゃら漬け”をイメージした“南瓜”は、燻製したヒラマサが乙な味わい。ニンジン、カブ、ミョウガ、アマランサスの葉の彩りが豊かで、クミンとマスタードシードの効いた南瓜のペーストが風味抜群。

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茄子:烏賊そうめん

岡さんの自信作が、北海道の名産物“烏賊そうめん”と石川県の夏の郷土料理“茄子そうめん”を融合させた“茄子”。炭火で炙った烏賊は香気をまとい、“翡翠茄子”のキャビア・ド・オーベルジーヌは茄子のつぶつぶ感が小気味いい。きらびやかなジュレと可憐な花穂紫蘇が映える。

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鱧:鱧皮ザクザク

“鱧”は、身をミンチにして揚げたさっくりとした衣のベニエと、上にのせられた大阪の“鱧皮ザクザク”がよいコンビネーション。“鱧”の上味が見事に閉じ込められていて、コロンとした見た目もキュート。

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太刀魚:太刀焼

巻いた太刀魚の中に枝豆とバタークリームを包んだのが“太刀魚”。
上にはカラフルなピーマンのピューレが網掛けされ、下には濃厚な魚の出汁とニンジンのソースが敷かれている。

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旬魚:苺煮

青森県の“苺煮”は、雲丹と鮑を用いた贅沢な吸い物。“旬魚”は、幻の魚とも呼ばれる“オオモンハタ”に優しくしっとりと火を入れ、雲丹と鮑を惜しげもなく添えた。モロッコインゲンの青い味わい、リゾットのクリーミー感が脇を固める。

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牛:鮒ずし

滋賀県出身の岡さんが力を入れるのが、“鮒ずし”を肉料理にアレンジしたメインディッシュの“牛”。滋賀県が誇る黒毛和牛“近江牛”の外腿肉を“鮒ずし”の飯に漬け込んで旨味を増してから焼き、鮎の“うるか”=内蔵の塩辛をまとわせた。“鮒ずし”の適度な酸味が脂を軽やかに感じさせ、“うるか”のコクが“近江牛”の俊味を引き立てる。“近江牛”の筋から作られたソースは旨味にあふれている。

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西瓜:ミルクセーキ

プレデセールの“西瓜”は、角切りした果肉、グラニテ、クリームとスイカのデクリネゾン=変化を楽しめる。上にかけられた白カビチーズのクリームのほのかな酸味とコクが全体を引き締める。

グルメジャーナリスト東龍のホテルグルメで“口福”体験!〈星のや東京〉で、再解釈された郷土料理に舌鼓!
桃:あさづけ

“桃”は、米を用いた秋田県の甘酸っぱいデザート“あさづけ”からインスパイアされたグランデセール。甘い桃のコンポートに酸味のあるカラマンシーのビネガーを合わせて、絶妙な抑揚をつけた。
下に幽香たっぷりのアーモンドクリームのリオレ=煮込んだ米の甘いデザート。

食材の力を引き出した料理にぴったりなお酒も用意されている。11種類ものグラスワインや日本酒から好きなものをチョイスしてもいいし、“ワイン&酒ペアリング”(2万1780円/8種、1万2100円/4種)でおまかせしてもOK。

グルメジャーナリスト東龍のホテルグルメで“口福”体験!〈星のや東京〉で、再解釈された郷土料理に舌鼓!
左:“タケダワイナリー サン・スフル 2024” 左から2番め:“ドメーヌ・トラペ ピノ・グリ マセレアンブル ルージュ 2021” 右から2番め:“加茂錦 荷札酒 月白 純米大吟醸” 右:“フリードリッヒ・ベッカー ゲヴェルツトラミナー シュペートレーゼ 2022”

“タケダワイナリー サン・スフル 2024”(2178円/グラス)は山形県産デラウェアを用いたスパークリングワイン。無濾過のためブドウ由来のにごりや澱が残り、これがまた格別の風味を醸し出す。

フランス・アルザスのオレンジワインが“ドメーヌ・トラペ ピノ・グリ マセレアンブル ルージュ 2021”(2783円/グラス)。イチゴやチェリーを思わせる赤い果実の香りが印象的で、バランスがいいので優しく魚介類を包み込んでくれる。

“加茂錦 荷札酒 月白 純米大吟醸”(2178円/一合)は淡白ながらも深みのある味わいで、キレの良さもその特長。ベニエなどの揚げ物の油をサラリと流してくれる。

デザートに合わせたい甘口ワインが“フリードリッヒ・ベッカー ゲヴェルツトラミナー シュペートレーゼ 2022”(1573円/グラス)。ゲヴェルツトラミナーらしく、バラやライチを思わせる香りが素晴らしい。グランデセールをより華やかな味わいにしてくれる。

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グルメジャーナリスト東龍のホテルグルメで“口福”体験!〈星のや東京〉で、再解釈された郷土料理に舌鼓!
 店内は、地層をイメージした左官仕上げの壁と、エントランスの大きな御影石が印象的。6室の畳敷きの個室と4つのテーブル席が設けられており、プライベート感がある造り。和の静けさが漂う落ち着いた雰囲気で、滞在着のままリラックスできる。食事の後は、エレベーターを昇って部屋に帰ればいいだけだから、とっても気軽でいい。テーブルに置かれたメニューにもこだわりがあって、ちょっとしたサプライズがあるから楽しみにして。


グルメジャーナリスト東龍のホテルグルメで“口福”体験!〈星のや東京〉で、再解釈された郷土料理に舌鼓!
“めざめの朝食”

朝食の“めざめの朝食”(9680円)もイチオシ。1日10食の限定で、五味・五色・五法が取り⼊れられており、心身のバランスを調えてくれる。ディナーと合わせて予約すると、美食の楽しみが広がりそう!

日本各地の食材の魅力を再発見させてくれる〈星のや東京ダイニング〉。宿泊者限定だからこそ味わえるガストロノミーを、ご賞翫あれ!

●夏のメニュー 3万3880円
キャビア:鯵の三杯(香川県)
ちりめんじゃこ:うすやき(山梨県)
鶏:味噌ころばかし(宮崎県)
南瓜:あちゃら漬け(福岡県)
茄子:烏賊そうめん(北海道)
鱧:鱧皮ザクザク(大阪府)
太刀魚:太刀焼(愛媛県)
旬魚:苺煮(青森県)
牛:鮒ずし(滋賀県)
西瓜:ミルクセーキ(長崎県)
桃:あさづけ(秋田県)   

 

INFORMATION

●〈星のや東京〉星のや東京ダイニング
住所:東京都千代田区大手町1-9-1 星のや東京 B1
営業時間:17:30~19:30(最終入店)
TEL:050-3134-8091(星のや総合予約)
URL:https://hoshinoresorts.com/ja/hotels/hoshinoyatokyo/
※サービス料込
※前日18:00までに要予約
※宿泊者のみ

●グルメジャーナリスト 東龍さんの連載、記事はこちら!
グルメジャーナリスト東龍のホテルグルメで“口福”体験!
アレが食べたいからこの店へ!

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文=東龍 text:Toryu
1976年台湾生まれ。テレビ東京「TVチャンピオン」で2002年と2007年に優勝。ファインダイニングやホテルグルメを中心に、料理とスイーツ、お酒をこよなく愛する。炎上事件から美食やトレンド、食のあり方から飲食店の課題まで、独自の切り口でわかりやすい記事を執筆。

審査員や講演、プロデュースやコンサルタントも多数。

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