
“あの人は今?”という感じで、一時、忘れられたスターになっていたエディ・マーフィが、ここ数年、好調なキャリアを見せている。『星の王子 ニューヨークへ行く』や『ビバリーヒルズ・コップ』といった、かつての当たり役で新作を完成。
エディ・マーフィといえば、スターになったきっかけは、現在も続く人気長寿番組の『サタデー・ナイト・ライブ』。そこから数々のヒット映画で主演を務めるようになったわけだが、この『ザ・ピックアップ』では、同じく『サタデー・ナイト・ライブ』で有名になった若手コメディアンのピート・デイヴィッドソンとW主演。2人のやりとりを楽しむのが、本作の大きなポイントだ。彼らが演じるのは、現金輸送員。マーフィが演じるラッセルは仕事に真面目なベテラン。そしてデイヴィッドソンは、能天気でだらしない性格も、運転テクは自慢の新人トラヴィス役。そんな2人が同乗するトラックが、犯罪グループの標的になる。そのきっかけを作ったのはトラヴィスの、ある大失態だった……という物語。舞台は巨大カジノで有名なアトランティックシティということで、敵の狙いは単にラッセルらのトラックではなく、そこから先のさらなる大金強奪。ラッセルとトラヴィスも犯罪の片棒をかつぐ立場に追い込まれる。
犯罪作戦はかなり強引だし、ツッコミどころもある。ただその分、映画として気楽に観られるのが本作の魅力かも。そこは主演コンビが作り出すムードのおかげなのだが、意外なのはエディ・マーフィが完全に“受け”の演技に徹していること。若き日のマーフィの、しゃべりまくって暴走する得意芸は、本作でピート・デイヴィッドソンが担当。時代の変化を実感するとともに、かつてマーフィが苦手だった人も、すんなり入り込めるのでは? 結婚記念日を祝おうとする愛妻家で、実直なラッセルというのも、マーフィの演じる役としては新鮮だ。アクション面でも、トラックvs.犯罪集団側の車のチェイスと激突、クライマックスでの大爆発など見ごたえ満点。さらに現金輸送車が襲撃された場合の対処法など、知られざるネタもたっぷり出てくるので、“お仕事ムービー”としても発見の多い快作だ。
『ザ・ピックアップ ~恋の強盗大作戦~』配信中
製作・出演/エディ・マーフィ 製作・監督/ジョン・デイビス 出演/ピート・デヴィッドソン、エヴァ・ロンゴリア、イスマエル・クルス・コルドバ 配信/アマゾンプライム・ビデオ
2025年/アメリカ/視聴時間96分
文=斉藤博昭 text:Hiroaki Saito
『ザ・ピックアップ ~恋の強盗大作戦~(原題:The Pick Up』8 月 6 日(水)より Prime Video で独占配信開始
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