教育局は2010年度から「中文中学/英文中学」に分けた現行制度を改正する計画を発表した。香港では返還後、「母語教育(中国語による授業)」促進のため、中文中学の数を増やしたが、英文中学への進学を希望する風潮が根強い上、香港人の英語力の低下を問題視する声が上がった。
香港には現在、すべての授業を英語で行う「英文中学」が114校、中国語(広東語)で行う「中文中学」が282校ある(9日付『香港経済日報』)。新たな制度では、英文/中文に二分するのではなく、過去2年間における1年生の学力検査の成績分布に従い、一定条件を満たした学校が英語の授業を選択できるようにする(新クラス編制案参照)。今年5月に具体策をまとめ、2010/11年度の新学期から改正の見通しだ。
「母語教育の微調整」を見出しに掲げる政府の方針転換。教育局の孫明揚(マイケル・スン)局長は15日、教育関係者を招致した立法会教育事務委員会で次のように説明した。香港は、中国語と英語の両方を公用語と認めている世界唯一の地域であること、中国の一部でかつ国際金融センターの役割を果たす国際都市であること、経済の支柱である金融・貿易などの業界では英語が主要言語であること。中学1年から英語に触れる時間を増やせば、高等中学や大学への進学、あるいは就職もスムーズにいく、という。
母語教育を推進する目的で現在の制度に移行したのは1998年9月。そして2005年、「母語教育元年」の学生たちが大学進学に必要な統一試験、香港高級程度会考(HKALE)を受け、英語の成績は過去10年での最低となった。また08年の調査では、中文中学は大学進学率が英文中学の半分程度であることが分かった。もともと英文中学には名門校が多い。
9日付『明報』は社説で、香港の学生たちの英語レベルが落ちたとは言え、それ以外の科目では成績が明らかに進歩しており、母語教育は当初の目的とされた「知識の理解」を達成したと論じた。英語を重視するあまり、その他の科目の習得がおろそかにされる弊害を懸念している。
この新制度が実施されれば、英語で授業するクラスは現在の約550クラスから900クラスに増えると予測される(9日付『星島日報』)。となれば、各科目を英語で教えられる人材の育成が急務となる。現在、教員として働く人たちへの英語研修、代用教員の採用に充てる費用として、政府は2010年からの4年間に6億4千万ドルの予算を組む。また小学校でも英語教育を充実させるべく、3億1千万ドルの予算を組むほか、卒業後少なくとも3年間は小学校の英語教師として働くことを条件に毎年50人の大学生に奨学金を支給する計画もある。
『星島日報』は「自分は不幸にも言語政策のモルモットになり、もっと多く英語を学ぶ機会を失った」と嘆く高等中学生のコメントを伝えている。日本では昨今「ゆとり教育」を見直しているが、政策の揺れが教育現場を混乱させたのは香港も同じであるようだ。
母語教育の歩み
中国への返還が目前に迫った1997年3月、香港政庁は「98年9月から一部を除いて中学での母語教育を全面的に推進する」と発表した。当時、数学や理科などの一般科目も英語を使って教える英文中学は219校、これに対して広東語で授業を行う中文中学は74校あったが、政府はこの英文中学を96校に減らし、123校は中文中学に移行させる計画だった。
母語教育は、1935年に英国政府の要請で視察に訪れたE・バーニー氏が初等教育での母語の使用を勧めたことが始まりという。
1970年代以降、香港人の生活水準が上がり、教育が大衆化する一方で、英語による授業のマイナス面が指摘されるようになる。そもそも植民統治下で英語による教育が行われたのは、英国人をサポートする少数精鋭の香港人エリートを育成するためであった。80年からは初等中学(日本の中学校に相当)までが義務教育となり、学力にかかわらず全員が中学へ進学するようになると、難解な内容を英語で教わるため授業についていけない生徒が出たり、習得の度合いが生徒自身のみならず教師の英語力にも左右されることなどが問題視され始めた。84年には中国への返還が決まり、教育統籌委員会は「中学での母語教育」を奨励する内容の答申を提出した。
しかし返還後、母語教育を推進してきたものの現在に至るまで、英語で教育を受けた方が社会的に有利であるという風潮にあまり変化はない。むしろ英文中学のエリート化に拍車をかけるという結果を招いた。(情報提供:香港ポスト 編集担当:杉村朋子)
新クラス編制(案)
(1)英文クラス
資格:過去2年間、85%以上の1年生が全港上位40%の成績を取得
授業:すべての科目を英語で教える
(2)弾性クラス
資格:過去2年間、85%以上の1年生が全港上位40%の成績を取得
授業:どの科目の授業を英語で行うか学年開始前に決められる
(3)中文クラス
資格:特になし
授業:一般科目は中国語で教える。英語科目の授業時間は25%以内
資料:『星島日報』
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