個人投資家の夕凪です。前回、株式投資の上達する段階を三つに分けた表現として「守・破・離(しゅ・は・り)」をご紹介しました。


 「守」は、師匠の教えを忠実に守って、基本や型を身に付ける段階

 「破」は、師匠の教えをから少しずつ不要な部分を取り除き、本当に重要な骨格・真理を追求する段階

 「離」は、骨格・真理から、自分の創意工夫を加え、自分流へと発展する段階

 では実際にどのように適用すれば良いのか、私の経験から解説してみたいと思います。

 「守(しゅ)」は、師の教えを忠実に守ります。私の師となる手法はJ_Coffeeさんの「コバンザメ投資法」です。ファンダメンタルズ投資でもテクニカル投資でもない、単純に株式の需給の崩れを狙う投資手法です。

 具体的には、日経平均やTOPIXの新規採用銘柄について、インデックスファンドの機械的な購入による上昇を狙うものです。この投資法の視点は私にとって、とても新鮮であり、必勝法につながるものではないかと感じ、実践することにしました。

 最初は書籍に書いてあった通りに、TOPIXに採用される銘柄について狙うことにしました。始値で買い、終値で売るだけで大金持ち... 注文を入れた段階で既に勝利した気分になっていました。

 しかし、そんな甘い夢はすぐに打ち砕かれます。その日終わってみれば株価は下落していました。この結果には大ショックを受けたのですが、出来高の推移を見ると確かに大引けに売買が膨らんだ様子がありました。「運悪く、今回は大株主がたまたま売ったためかも知れない。
書籍にもそのような事が書いてあるし、次の機会にまたやってみよう」

 そして翌月に再度挑戦です。状況はあまり変わりませんでした。ひとつの銘柄はうまく上昇し成功したのですが、下落した銘柄もあり、トータルでマイナスです。書籍に書いてある通りにはなかなかうまくいきません。損するばかりです。

 そこでこの状況を何とか打開するべく、上昇する銘柄と下落する銘柄の違いはどこにあるのか「コバンザメ投資法」の原理・原則を研究することにしました。

 「TOPIXは東証1部に上場している全銘柄の時価総額と連動する指数。銘柄数だけでも軽く1,000は超える。インデックスファンドは大小様々なものがあり、すべてのファンドがこれら1,000銘柄を所持しているとは思えない」。

 「小さいファンドはTOPIXに影響を及ぼす時価総額が大きい銘柄だけを保有するはず。またTOPIXをベンチマークにしているファンドも、ある程度TOPIXに追従する必要があるため、時価総額が大きい銘柄は買わざるを得ないはず」。こんな推理を基に、時価総額と株価の関連について調査してみました。
そうした所「時価総額が高い銘柄ほど上昇しやすい」ことが分かったのです。

 ここからいよいよ「破(は)」に移ります。

 師匠の教えにはなかった「時価総額の低い銘柄は購入せず、時価総額の高い銘柄だけ資金を集中」することにしました。私が調べたその当時、時価総額240億円がその境目でした。

 結果は見事に成功でした。

 これ以降、全銘柄を購入することは避け、時価総額の低い銘柄には空売りを入れ、時価総額の高い銘柄だけ購入する作戦を続けました。それからというもの、成果がはっきり現われました。100%完勝したわけではないのですが、今までのマイナスを補って余りがでてきました。

 そして「離(り)」に移ります。TOPIXで重要なのは「時価総額」、つまり指数に占めるウエイトが大きい銘柄を狙う事でした。

 同じように、日経平均、MSCI(世界的なインデックスファンド)、FTSE(欧州を中心としたインデックスファンド)といった指数にも応用できるのではないかと調査しました。

 結果は良好でした。
指数に占めるウエイトが大きくなればなるほど、上昇する傾向にあったのです。私はこの原理を用いて様々な指数に応用し、成果を上げることができるようになりました。

 こうして自分流の「イベント投資」の原型が出来上がったのです。 現在のコバンザメ投資法も「ウエイトが大きいものを狙う」事に変わりありません。

 ただし最近では先回り買いをする人が多くなり、あまり上昇しなくなっていますので、気をつけてください。(執筆:個人投資家 夕凪 情報提供:エンジュク)

夕凪(ゆうなぎ)
プロフィール: 電気通信大学卒。1996年に渡米し、アメリカ人技術者と共にインターネットプログラム開発に参加。同時にインターネットを利用した株式投資に目覚める。現在、日本の超大手IT企業で最新技術研究を行う一方で、ファーストクラスの人生を願う方々へ、「ワクワクした人生を送るための投資」を提供すべく、日々研究に励んでいる。著書に「イベント投資でゆったりはじめる ”夕凪式”株式システムトレード講座」(技術評論社)がある。

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