特別な感慨は何も無い
──渋さ知らズ、結成20周年を迎えた今の心境は?
不破大輔(以下、不破):何も無いです(笑)。ちょうど30歳の時から始めた訳ですが…子供の頃は一日がとっても長かったのに対して、歳をとるとどんどん時間の感覚が早くなって1年のサイクルが短くなっていく。あっという間で別に感慨というよりは…このまま行けば、もうあっという間に死んでしまえるのか私は…みたいな感じですね(笑)。気がついたらお墓の中というような。
そもそもバンドをやろうと思って渋さ知らズを結成したわけではなく(1989年劇中音楽を担当したのがきっかけで結成)、仲間と集まって花見や忘年会とかそういう集まりで始まったようなものなんですよ(笑)。そんな感じだから、続けるための努力というのはたぶん何にもしないでも済んでいるし(笑)。そのうちに自前でテントでも立てて、みんなでヨーロッパでも旅行しようかと、いろんな事が重なってあっという間に今まで来たという事です。
──20年続けてきた中でバンドが変化した事、変化しない事は?
不破:始めの頃のメンバーは一緒にいた仲間達も多かったし、先輩と後輩が同じ数くらいだった。今はほとんどが年下になっちゃうんですよね。それは自分にとっては“変わってきたな”というのはあります。それはもう何十人の数が集まっているから、色々な人達がいて、色々な事がありました。
現場の事でいえば、ずっと繰り返してきて “こういうのは飽きたからもう止めよう” みたいのはありますね。義務感を持ってやっていたり。まぁ近頃は“義務感もいいじゃん”と思ったりもしますが(笑)。
それこそ色々な現場があるんです。先日も宮城県の「ARABAKIロックフェス」では、土砂降りの雨で気温が8℃位なんですよ。これはもう息をつく間もなく身体動かしていた方がいいよねということで、ずっとガチャガチャ演奏してました。その時の現場で状況に合わせてやり方を変えていくという様な事はずっと変わっていないですね。
──人数が増え続けてますが、メンバーはどのように見つけてくるんですか?
不破:見つけたり見つけられたりなんですけど、例えば、ここの「なってるハウス」店長の広沢リマ哲さん(当日は、広沢リマ哲を加えた「リマ渋」のライブ)は僕がライブハウスで面白いと思って誘いました。
女の子達のダンサーは、渋さのライブ2回目位からいました。あと、フェダイン(不破在籍のフリージャズトリオ。2000年末に解散)のスタッフだった人がその後、『駱駝艦』に在籍して“踊らせてくれ”と…そんな感じで仲間内で色々な人を誘って徐々に今の形になったという感じ。技術的な所や感覚的に似ている所がやりやすいんだろうなって思います。それと「お調子組合」というのは渋さで作った感じです、あのバナナ振っている人たちです(笑)。
自分が見たいものを一番いい席で見ている
──ダンドリストとして渋さをまとめているわけですが…
不破:あんまりまとめていないんですけどね(笑)。
──ダンドリストは他のメンバーとは全く違う感覚で全体を見ていると思うんですけども、曲を作ってメンバーに伝えていく所も含めて、その面白いところ、苦労するところは?
不破:曲は、それぞれメンバーが作った数曲と、あとは時々やるロックやジャズのスタンダードナンバー以外は僕の曲です。これはほとんどアングラ芝居の公演ために作ったものです。なぜか僕の関わる芝居はスペクタルというか、過酷な所ばっかりでやるイベントやお芝居が多いので、自然とドカーンというダイナミックなものが多くなって。渋さの人数が多いのもあって、何かそういうのがマッチしているのかな。人によってはそういうのが趣味に合わなくて嫌だという人ももちろんいるとは思うんですけども。それでもそういう曲を多く作ってますね。
やっぱり渋さというのはオーケストラであって、僕が指揮でもない人生を棒に振っているような気がするんですけども(笑)。見た目にはバンドを仕切っているように見えるとは思うのですが、仕切っているというよりは、自分が見たいものを一番いい席で見ているという感じなんです。
エンターテイメントとしてどうした方がいいというよりは、見たいという方を優先しているんです。例えば完全にお客さんとして見ていれば、プレイヤーがソロ弾いてて “もっと聴きたい!まだいけるだろー!”と思っている時に終わったりするのは嫌じゃないですか。“ちょっとこれ退屈だから聴きたくないな”みたいのもあったりするわけじゃないですか。そういうのを指揮しながら切り替えたりしてる感じですかね。
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