サーチナ読者の皆様、はじめまして。鄭雅英と申します。

 
 私は日本生まれで韓国籍を持つ在日朝鮮人2世(回りくどいですね)、50代男性です。ただいま立命館大学経営学部で教員をしていますが、専門は経営学ではなく中国に生活するコリアン(中国朝鮮族)のエスニシティに関することがらを中心に、日本・韓国・中国の相互関係やマイノリティ問題に関心を持って様々な角度から研究をしています。

 文字通りグローバルに、とまではいかなくとも、せめてこの近隣国家同士で多少なりとも国境や民族の垣根を低くできないものか、はやり言葉でいえば3者(日・中・南北朝鮮)が「win-win-win」関係を築き将来にわたってもっと豊かで穏やかな暮らしを一緒に享受できるようになるにはどうすればよいのか、という問題意識を土台にして、日本で生まれ育ち中国にも関心をもつ韓国人の視点から見た東アジアの「いま」を読み解いていこうと思います。1~2週間に一度、お邪魔する予定です。

 さて私の名前、鄭雅英ですが、日本語で音読みすれば「テイ ガエイ」、小学校から大学まで日本の学校に通った私は当時クラスで「ガエイくん」と呼ばれていました。「ガエイ」は訓読みすれば「まさひで」ですから日本では普通に男性の名前です。ところが朝鮮語で姓名を発音するとChung Ah Young(チョン アヨン)となり、ファーストネームの「アヨン」という音は朝鮮半島では無条件で女性をイメージさせます。因みに中国語(漢語)での発音はZheng Ya Ying(ヂォン ヤーイン)で、中国でもやはり女性っぽい名前のようです。

 韓国人や中国人とメールでやり取りをし、いざお目にかかる約束をすると先方はメール上の名前から私を可愛らしい女性とすっかりイメージしていて、実際には額の後退した中年のオッサン(すなわち私)がぬっと現れるものですから、ひどくびっくりされた経験が何度もあります。今から70年近くも昔に朝鮮半島から日本に渡ってきたわが親は、まったく何を考えて息子に女性風の名前を付けたのか、とも思いますが、名前と実態のギャップのお陰(?)で印象深く私を覚えていてくださる方も多く、それはそれであながち悪くはありません。

 東アジア文化圏内の共通性と差異性を名前で体現している、と自己宣伝すればいかにもオーバーですが、同じ漢字文化を共有する人々の間の種々多様な習慣や考え方の違いは、知れば知るほど興味深くもあり、ややこしくもあります。「同文同種」という言葉は麗しい響きを持つ一方で、ある年代の方々には「大東亜共栄圏」を思い起こさせたりもしますね。
お互いの観念の中にある差異を認め合ったうえで、虚心坦懐にとことん議論しあえれば、100%の一致はなくとも、その議論の場がすでに「東アジア共同体」の基盤になっているはずと信じる私の思考法は、ナイーブに過ぎるでしょうか。

 ともあれ、何やら入り組んだ背景を持っていそうで、そのわりにやけに単純な物言いをする一在日朝鮮人の戯言に、しばしお付き合い願えれば幸甚です。

 どうぞよろしくお願いします。(執筆者:鄭雅英 立命館大学准教授)

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