「野人」とは、ヒマラヤ山脈に伝わるイエティ、米国のビックフット(サスクワッチ)など、いわゆる「雪男」と同様に、全体に毛が生え直立歩行する生物。もし実在するなら古いタイプの人類の可能性があるが、現在は熊や猿など他の生物の誤認とする見方が強い。
■「野人」探しに生涯をかけた男性、森をさまよい15年
しかし張さんによると、「野人」は存在する。1994年に、自分の生涯を「野人発見」に捧げることに決めた。それ以来、原始林での長期にわたる捜索を繰り返している。すでに「野人」の見られる足跡や糞便など、19回にわたり“証拠”を発見したという。
調査報告をまとめ、中央緒政府に提出したこともある。研究を政府事業として認め、予算をつけるよう求めたが、「道義的な応援」をしてもらっただけという。資金はいつも不足気味。森林での調査中に食料が足りなくなり、野草などで飢えをしのいだこともある。髪やひげも伸び放題。
張さんは戸籍を神農架地区に移した。戸籍の移動が難しい中国で、わざわざ農村部住民を選ぶ人はまれだ。地元ではちょっとした有名人。ただし、風変わりな人と見る住民も多く「あの人は、野人を探している奇人だよ」などと言われている。
■見え隠れする行政の思惑、「野人」は地域ぐるみのペテンか
野人については、「地域ぐるみの一大ペテン」との厳しい見方もある。法律関連の専門サイト「法律界」は15日付で、同問題を批判的に論じる文章を掲載した。
まず、神農架地区の「野人」については中国政府が1998年、公式に「存在しない」と発表した。中国科学院動物研究所の汪松研究員は、「徹頭徹尾、デマだ」と断言した。
しかし神農架地区の行政機関幹部の朱厚倫氏は今年(2010年)4月13日になり、改めて「野人存在の四大証拠」を発表。その上でなぜか「観光業活性化のための方策ではない」と、念を押した。
「野人」関連の書物などはこれまで頻繁(ひんぱん)に出版されており、同地の知名度を高めるため、大いに貢献している。
「法律界」の文章は、「神農架の『野人』がペテンであるかどうか、もう言うのをやめよう」と結んだ。明らかに、経済絡みの「うそ」だとする主張だ。
気になるのは、「野人探し」を続ける張金星さんが、世間をだますために活動しているようには思えないことだ。経済的にも苦労しているだけで、利益を得ているようにはみえない。一生を費やしてロマンを追い求める人と、儲け本位の思惑が見え隠れする行政など。中国の社会模様は、「野人伝説」以上にミステリアスだ。(編集担当:如月隼人)
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