中国大都市の中間層、富裕層を中心に、中学生から高校生の子どもを海外留学に送り出す家庭が増えているという。中国の大学入試センター試験に相当する「高考」(6月に実施)を回避する学生が急増しており、2010年では80万人以上が自主的に不参加、2011年にはこの数値が100万人に到達するのではないかと見られ、その中のかなりの部分が、海外留学を選んでいるという。


 中国現地報道によれば、100万人の「高考」不参加者のうち、21.1%が海外留学を選択するとみられている。2010年、高校生以下の海外留学生数が前年と比べて2-3割増えているともされる。

 「家庭にとって、子どもを海外に行かせるのは、非常に重大な人生計画上の選択であり、非常に大きなリスクを抱えることになり、巨額投資ともなる」(中国現地メディア)が、北京、上海、広州、深センなど大都市を中心に、中間層、富裕層家庭で数十万元から数百万元(ざっくりと、日本円で数百万円から数千万円)必要であっても、海外に行かせ、海外の教育を受けさせるケースが多くなってきている。

 この要因の一つとして、中国の教育体制や、「高考」を頂点とする評価システム、中国の大学そのものなどに対する失望があるという。まだケースは少ないと見られるが、子どもを一人で海外に行かせるのが不安で、子どもの教育のために、一家で海外移住を実行する、あるいは考える富裕層も現れ始めている。

 ある女子中学生は、「(中国最大の名門の一つ)清華大学の付属高校に入れなければ、海外留学を選択する可能性がある」とする。清華大学や北京大学など、大学内でのトラブルや不祥事が報じられることもあるが、一部の大学の威光は依然根強い。一方で、そこに入れなければ「すぐに海外」という選択肢が出るほど、いまや海外留学も気軽だ。

 統計によれば、1978年以来、106万人の中国学生が海外留学しているが、その中で帰国しているのはわずかに27.5万人。「78.5万人の英知が中国から失われており、この数字は北京大学30校分に相当する」(同上)。「海帰族(海外留学からの帰国組)」という言葉が一世を風靡(ふうび)したこともあるが、安心はできない。中国で儲けて、海外で子弟を教育、こんな風潮が生まれかねない状況だ。
(編集担当:鈴木義純)

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